【マクロ経済】日銀の利上げが米国株に与える影響とは?日銀が利上げをすると株価はどうなるのか徹底解説!
ジェームズ・ フォード- 本稿では、「日銀の利上げが米国株に与える影響とは?」という疑問に答えるべく、日銀が利上げを決定した際の株価への影響を詳しく解説していきます。
- 日銀はインフレと低賃金成長という課題に対応するため、0.25%の利上げを検討しており、これが円キャリートレードや米国株市場に重要な影響を与える可能性があります。
- 円キャリートレードは円安時に利益を生む戦略ですが、日銀の利上げが円高を引き起こすと、その魅力が低下し、市場のボラティリティを高める要因となります。
- 日銀の発表による米国株式市場の調整は「押し目買い」の好機と見ており、マクロ経済や市場動向を注視しつつ、ポートフォリオを最適化する柔軟な姿勢が求められるでしょう。
はじめに
本日、日銀が利上げに踏み切る見通しで、市場もその動きに注目しています。なぜなら、過去2回の利上げでは、米国株が急落する結果となっているためです。
今回も日銀が市場を揺るがすことになるのでしょうか?
その可能性を示唆する証拠は確かにありますが、もしそうだとしたら、その下落は買いのチャンスとなるのでしょうか?
本稿で学べるポイント:
・なぜ日銀が利上げを行う必要があるのか
・円キャリートレードが市場に与える影響
・今回が過去と違う理由
・ポートフォリオの最適な調整方法
・イベント前後で私が購入予定の投資対象
日銀が再び利上げへ?
日銀は金曜日に政策金利を0.25%引き上げ、基準金利を0.5%にする見通しとなっています。
(出所:CNBC)
しかし、なぜ多くの先進国が利下げに向かう中、日銀は利上げを進めるのでしょうか?
その背景には、他国と異なり、日本がインフレと低い賃金成長という二重の課題に直面している点があります。
実際のところ、日本では実質賃金の伸びがマイナスの状態が続いています。
日本の実質賃金の変化
(出所:Nikkei Asia)
平均を上回るインフレも、少なくとも賃金が追いついていれば容認できるかもしれませんが、米国とは異なり、日本ではそうなっていません。
そのため、植田総裁は利上げの方針を示しており、市場もそれを既定路線として織り込んでいるように見えます。
なぜ円が米国株にとって重要なのか?
では、なぜこれが重要なのでしょうか?一見すると、日本がグローバルなマクロ経済の主役ではないように思えるかもしれませんが、円、ナスダック、日銀の政策には強い相関関係があります。
ドル円とナスダックとナスダック総合指数の推移
(出所:TradingView)
上の図では、紫がナスダック総合指数、青が円、下のパネルにある紫が日銀の金利を示しています。
注目すべき点は、過去2回の日銀利上げ時に、市場と円が大きく変動していることです。
2024年3月、会合を控えて円が大きく上昇しました(青いラインが下方向に動いています)。
一方、ナスダックは会合まで横ばいで推移し、大きな調整が見られたのは会合から1か月後のことでした。この調整は円の大きな動きと一致しており、円が大幅に下落したタイミングでした。
8月には、日銀の政策がどれだけ市場に影響を与えるかがより明確に示されました。利上げ発表を控えて下落が見られたほか、発表後、市場がこのニュースに反応して再び下落しました。
これは非常に厳しいフラッシュクラッシュで、多くの専門家が円キャリートレードの巻き戻しが原因だと指摘しました。
通常、円とナスダックは強い逆相関の関係にあります。つまり、円が下落するとナスダックが上昇する傾向があります。この関係は、円キャリートレードの基盤となっています。
円キャリートレードとは、日本円を低金利で借り入れ、より高い利回りを提供する通貨建ての資産に投資する手法を指します。
この戦略は金利差を活用したもので、トレーダーは円を低コストで借り、他の通貨に換えて、米国債やオーストラリアドル建ての資産などに投資します。
利益は、高利回りの投資で得られる利息から、円での借入コストを差し引いたものです。しかし、この取引にはリスクも伴います。特に為替変動のリスクがあり、円が上昇すると、円に戻す際に利益が消えるか、損失を被る可能性があります。
そして、日銀が利上げを行うと、円が上昇し、円での借入が魅力を失うことになります。
これが今回の状況の基本的な仕組みです。
次のセクションでは以下の内容を取り上げます:
・日銀の決定後、米国株の暴落は起きるのか?
・金曜日の大きな値動きに対して投資家はどう対応すべきか?
・2025年に為替市場のボラティリティが重要テーマとなる理由
・ポートフォリオの最適な調整と利益の保護方法
私たちは「マクロの流れ」の中で生きており、日銀への反応が示すように、この流れはますます重要になっています。
市場で先手を取る唯一の方法は、マクロ経済の動向を把握し続けることです。私が日々執筆するレポートでは、専用の「マクロETFポートフォリオ」や「マクロマトリックス」を活用し、次の大きな景気後退を予測するお手伝いをしています。
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では、続きを見ていきましょう!
金曜日に米国株の暴落は起きるのか?
現状を考えると、ある程度その可能性を想定しておくべき状況にあるように見えます。
EミニNASDAQ100指数先物の推移
(出所:TrendSpider)
ナスダックは再び高値付近にあり、最近のレジスタンスに差し掛かっています。
個人的には、ウェッジをさらに埋める形で下落し、20日や50日移動平均線を再テストする可能性があると考えます。
しかし、8月のような暴落を予想しているかというと、その答えは「いいえ」です。
今回の日銀の利上げは市場に織り込まれており、高い関心を集めています。8月の時とは状況が異なります。
前回の利上げは市場にとって予想外の出来事でしたが、今回はそのようなサプライズはないと思います。さらに、前回の会合では、日銀が今後も利上げや政策の正常化を進めることを市場に示唆しました。
一方で、今回の会合では、植田総裁が「目標金利に近づいている」というメッセージを市場に安心感を与える形で伝える可能性があると考えています。
要するに、今重要なのは日銀が何をするかではなく、何を発言するかという点です。
では、米国株式市場が暴落した場合はどうなるのか?
もし調整が発生したとしても、私の考えでは、それは引き続き「押し目買い」の好機だと考えています。
S&P500指数の推移
(出所:TrendSpider)
少なくともS&P500指数(SPX)では、ブレイクアウトの動きがより明確に見られますし、この上昇には市場全体の幅広い改善が伴っていることが確認できます。
さらに、次回のレポートで詳しく説明しますが(お見逃しなく!)、今後数か月でデフレ傾向がより明確になり、金利やドルが低下し、市場のさらなる高値更新につながると考えています。
とはいえ、2025年は非常にボラティリティが高い年であり、マクロ経済や為替市場の変動が市場の行方を左右するでしょう。
為替市場のボラティリティが米国株指揮市場を支配する理由
2025年、市場で為替ボラティリティが支配的な役割を果たすと予想されるのは、いくつかの相互に関連する要因によるものです。
米国の政策と関税を巡る不透明感
新たなトランプ政権は、特に関税に関して曖昧さをもたらしています。当初は慎重なアプローチを示唆し、即時的な実施を避ける姿勢が見られましたが、カナダやメキシコに対する関税の脅しなど、一貫性のない対応が目立ちます。このような揺れ動く状況は、米国の貿易政策に直接的または間接的に影響を受ける通貨にとって、ボラティリティの高い環境を生み出しています。
金利差と中央銀行の動向
特に米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行(日銀)は、重要な局面に立っています。FRBによるインフレへの対応や金利調整の可能性、さらに日銀の金利政策の決定は、大きな通貨変動を引き起こす可能性があります。これらの期待が市場に織り込まれる過程や、それに反するサプライズが発生した場合、為替市場のボラティリティが一層高まるでしょう。
世界経済の分岐
米国経済の好調なパフォーマンスと、中国のデフレ問題やカナダの財政・債務問題など、他国の経済状況の違いが通貨の価値に影響を与えています。経済回復や景気減速の速度が国ごとに異なることで、為替市場の変動がさらに増幅されるのです。
政治的および地政学的リスク
主要国での選挙などの政治イベントは、政策の変化を通じて通貨に影響を与える可能性があります。さらに、経済政策に直接関係しない場合でも、市場のセンチメントに影響を及ぼす地政学的な緊張が続いており、不確実性が一層高まる要因となっています。
2025年の為替市場は、政策の不透明感、経済状況の分岐、中央銀行の動向、そしてニュースやデータに対する市場の心理的反応が重なることで、高いボラティリティが予想されます。トレーダーは、マクロ経済とミクロ経済の指標を的確に把握しながら、慎重に市場を乗り切る必要があるでしょう。
米国株への適切な対応の仕方とは?
もちろん、柔軟な姿勢を保つことが重要ですが、基本的なテーマは変わっておらず、今後も利益を得るチャンスは十分にあると考えています。
・新興市場は引き続き注目
・金や銀は好調な一年を迎える可能性あり
・ビットコインも好調な年になる可能性あり
・テクノロジー分野はAIの進化を背景に成長を続ける可能性あり
重要なのはタイミングとポジショニングであり、私の運用するポートフォリオの1つである「マクロETFポートフォリオ」は先月、好調な成績を収めまています。
そして、現在、主要なマクロ資産に対して、バランスの取れたエクスポージャーが確保できていると考えています。
(出所:Snowball Analytics)
残りのキャッシュは、特定の分野でチャンスが現れ次第、活用する予定です。現在注目しているのは、ブラジル経済と一部のコモディティです。
本編は以上となります。
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アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード
📍米国マクロ経済&テクノロジー担当
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