【半導体】TSMC(TSM)配当推移:配当利回り1.46%・配当性向33%・配当金0.694165ドル【2025年1月28日時点】
- 本稿では、注目の台湾半導体銘柄であるTSMC(TSM:台湾積体電路製造・予想配当利回り1.46%・配当性向33%・1株当たり配当金0.694165ドル)の2025年1月16日に発表された最新の2024年度第4四半期決算と配当推移の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- TSMCは半導体業界で圧倒的な競争力を持ち、60%以上の市場シェアを誇る世界最大の専業チップ製造企業であり、アップルやAMDなどを主要顧客とし、規模の経済と高度な技術力に支えられた堅調な収益性を維持しています。
- 最新の決算では、EPSが前年比50.6%増の2.218ドルを記録し、業績が大幅に改善しました。 また、粗利益率は56.12%と5年および10年の中央値を上回り、収益性の高さを示しています。
- 財務面では、TSMCは安定した配当成長と高い利益率を特徴とし、配当性向33%で持続可能な株主還元を実現しています。 さらに、ROICはWACCを大幅に上回る水準を維持しており、効率的な資本運用と株主価値創造に成功しています。
TSMC(TSM)の概要
セクター:半導体
現在の株価:192ドル
時価総額:9974.3億ドル
過去5年間の配当成長率:4.00%
次回配当落ち日:2025年3月18日
次回配当支払い日:2025年4月10日
予想配当利回り:1.46%
過去5年間の売上高成長率:21.30%
過去10年間の売上高成長率:13.90%
関連用語
安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。
売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。
足元の株価推移
(出所:筆者作成)
TSMC(TSM:台湾積体電路製造・予想配当利回り1.46%・配当性向33%・1株当たり配当金0.694165ドル)は、世界最大の専業チップ製造企業で、60%を超える市場シェアを誇ります。本社は台湾・新竹にあり、1987年に設立されました。同社は、フィリップスや台湾政府、民間投資家の共同出資により創業し、1997年に米国でADRとして株式を上場しています。TSMCはファウンドリー業界において圧倒的な競争力を持ち、アップルやAMD、エヌビディアなど最先端の半導体技術を求める著名企業を顧客としています。この競争力は、規模の経済と高度な技術力に支えられており、同社は堅調な営業利益率を維持しています。
配当面では、TSMCは配当成長が安定しており、3年間で12.6%増加しました。2025年の予想配当利回りは1.46%、配当性向は33%と持続可能な範囲内で、配当株としての魅力も高いです。そのため、TSMCは、高収益性と安定した配当支払いを兼ね備え、長期的な成長ポテンシャルを持つ企業として、投資家にとって魅力的な選択肢と言えます。
そして、同社は2025年1月16日に2024年第4四半期決算を発表しており、本稿では同社の最新の決算と財務パフォーマンス、並びに配当推移を詳しく分析していきます。
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TSMC(TSM)の最新の2024年度第4四半期決算発表に関して
TSMC(TSM)は、2025年1月16日に発表された最新の2024年度第4四半期決算において、特別項目を除いたEPS(1株当たり利益)は2.218ドルを記録しました。これは、前四半期の1.953ドルおよび前年同期の1.473ドルから大幅に増加しています。四半期ベースでは約13.6%、前年比では50.6%の成長となりました。さらに、過去5年間における年間EPS(特別項目除外)の年平均成長率(CAGR)は25.8%であり、10年間のCAGRは16.4%となっています。
また、1株あたり売上高も成長を見せ、前四半期の4.584ドル、前年同期の3.859ドルから5.14ドルに増加しました。TSMCの粗利益率は56.12%で、5年間の中央値54.36%をわずかに上回り、10年間の中央値51.13%を大幅に上回っています。
過去1年、3年、5年のいずれにおいても自社株買いは行われていませんが、EPSは効果的に増加しています。これは自社株買いによる財務操作ではなく、事業効率の向上や売上成長に起因するものと考えられます。株式数を減少させてEPSを人工的に引き上げる代わりに、TSMCは有機的な成長に注力していると言えます。
今後の見通しとして、2025年度末の予想EPSは7.835ドル、2026年度には8.818ドルに達すると見込まれています。加えて、業界レポートによると、半導体業界は今後10年間、平均年成長率6%で成長すると予測されています。そして、TSMCの2025年、2026年、2027年の売上予測はそれぞれ1124.3億ドル、1339.8億ドル、1547.5億ドルとされています。次回の決算発表日は2025年4月18日と見込まれており、同社の業績や戦略の方向性についてさらなる情報が得られるでしょう。
非経常損益項目を除くベースでのEPS
(年間ベース:直近4四半期の合計値)
(出所:筆者作成)
関連用語
EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。
非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。
希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。
1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。
粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。
自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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TSMC(TSM)の財務パフォーマンスに関して
TSMC(TSM)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。
TSMCは、資本配分と経済価値創出の面で堅調なパフォーマンスを示しています。5年間の中央値であるROICは29.03%、現在のROICは30.17%で、WACC13.45%を大きく上回っています。このROICとWACCの差は、TSMCが実質的な経済価値を生み出していることを示しています。
特に、ROICがWACCを上回る水準を長期間維持している点は、資源を効率的に活用して利益を生み出していることを示しています。これは財務効率性と株主価値創造の重要な指標と言えます。
さらに、5年間の中央値である自己資本利益率(ROE)は29.74%であり、自己資本から高い利益を生み出していることを裏付けています。総じて、TSMCの財務指標は、適切に管理された資本構造と業界内での競争優位性を反映していると言えます。
投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の比較
(出所:筆者作成)
関連用語
総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。
自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。
投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。
ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。
加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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TSMC(TSM)の配当に関して
TSMC(TSM)は、過去3年間で12.60%の配当成長率を記録し、5年間の平均配当成長率は4.00%に達しています。同社の予想配当利回りは1.46%で、半導体業界では競争力のある水準です。半導体業界は、公益事業などの伝統的な配当株セクターと比較して平均利回りが低い傾向がありますが、TSMCの利回りは目を引くものです。
最近の四半期配当は0.694165ドルであり、安定した配当戦略を継続していることを示しています。配当性向は33.0%と控えめで、利益の持続可能な範囲内で株主に還元されています。これは過去のピーク値を大きく下回る水準です。
財務的には、TSMCのEBITDA有利子負債倍率(EBITDAに対する負債比率)は0.48倍で、慎重な目安とされる2.0倍を大幅に下回り、堅実な債務返済能力と低い財務リスクを示しています。
将来的には、3~5年の配当成長率が14.53%と見込まれており、引き続き継続した株主還元が期待されています。この楽観的な予測は、TSMCの強力な収益力と半導体市場での戦略的位置を裏付けるものと言えるでしょう。次回の配当落ち日は2025年3月18日と予定されており、四半期ごとの支払いスケジュールに沿ったものです。
予想配当利回り:1.46%
配当性向:33%
配当カバレッジ・レシオ:3.02倍
過去5年間の配当成長率: 4.00%
EBITDA有利子負債倍率:0.48倍
DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出所:筆者作成)
Dividend Yield:予想配当利回り
(出所:筆者作成)
Dividend Payout:配当性向
(出所:筆者作成)
関連用語
1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。
配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。
予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。
配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。
EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。
配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。
配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。
配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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TSMC(TSM)のバリュエーションに関して
TSMC(TSM)の現在の株価は192.31ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である155.25ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-23.87%となっていることから、割高である可能性が示唆されています。
また、予想PER(予想株価収益率)は23.24倍で、10年間の中央値17.65倍を上回り、過去の平均と比べて割高であるように見えます。TTM(直近過去12か月)のEV/EBITDA倍率は14.94倍で、10年間の中央値8.89倍を大きく上回っています。これは、期待される成長や戦略的な優位性で正当化されない限り、割高と見なされる可能性があります。
さらに、TTMのPSR(株価売上高倍率)は8.83倍で、10年間の中央値6.44倍を上回りますが、10年間の最高値12.62倍には達していません。これは、市場が楽観的であるものの、極端な熱狂状態ではないことを示唆しています。また、TTMのPBR(株価純資産倍率)は5.95倍で、10年間の中央値4.40倍を超えており、資産価値に対して高い評価がなされていることを示しています。さらに、TTMの株価フリーキャッシュフロー倍率(Price-to-Free-Cash-Flow)は29.5倍で、10年間の中央値32.31倍を下回っています。これは他の指標と比較して、フリーキャッシュフローの評価が過度に高まっていないことを示唆しています。
一方で、市場のアナリストは段階的に目標株価を引き上げており、最新の目標株価の平均値は235.12ドルとなっています。これは楽観的な見方を反映していますが、現在の株価との乖離や市場環境の変化があれば、成長期待に対する注意が必要でしょう。
(出所:筆者作成)
上記グラフにおける関連用語
Price:現在の株価
Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値
DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価
DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価
Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価
Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価
赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値
関連用語
実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。
株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。
株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。
EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。
PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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TSMC(TSM)のリスクとリターンに関して
TSMC(TSM)のリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。
まずプラス面では、TSMCは、ピオトロスキーのFスコア8およびアルトマンのZスコア9.67という高い数値で、倒産リスクが低いことを示しています。また、同社の営業利益率は拡大しており、効率的なコスト管理と収益性の向上の可能性を示唆しています。さらに、TSMCは健全な利息支払い能力を維持しており、債務返済の安定性を裏付けています。
しかし、現在の評価にはいくつかのリスクも存在します。株価は10年間の高値に近く、PSR(株価売上高倍率)は3年間のピークに近い水準です。これは割高を反映し、上昇余地を制限する可能性があります。また、予想配当利回りは10年間で最低水準にあり、配当を重視する投資家にとって魅力が低下している可能性があります。
TSMCの債務水準は許容範囲内ですが、過去3年間で2033億ドル(台湾ドル)を新たに発行しています。大きな現金保有によりリスクは軽減されていますが、債務水準や金利の大幅な変化は注意が必要でしょう。
総じて、TSMCのファンダメンタルズ上の強みは魅力的ですが、現在のバリュエーションを考慮する際には慎重に上記のポイントを考慮する必要があるでしょう。
関連用語
財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。
アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。
ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。
ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。
ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
関連コラム
TSMC(TSM)の流動性に関して
TSMC(TSM)は、直近の取引日において1日あたり67,724,775株という大規模な取引量を示しています。これは過去2か月間の平均取引量である13,920,204株を大幅に上回っており、最近の市場イベントやニュースが投資家行動に影響を与えた可能性があります。
Dark Pool Index(DPI)の数値は23.1%で、取引活動のかなりの部分がダークプール内で行われていることを示しています。これは、全取引の5分の1以上が実行後まで公開市場で可視化されないことを意味し、価格形成やボラティリティに影響を与える可能性があります。
取引量の増加は強力な流動性を示しており、投資家が株価に大きな影響を与えることなく容易にポジションを売買できることを意味します。しかし、高いDPIは大規模な取引が公開市場外で行われていることを示唆しており、価格変動の透明性が低下する可能性があります。
全体として、TSMCの市場活動は投資家の強い関心と十分な流動性を示していますが、高いDPIについては市場の透明性やボラティリティへの影響を注視する必要があるでしょう。
関連用語
※ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。
※ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。
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アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏
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