11/19/2024

【2024年第3四半期】世界半導体シリコンウェハー市場の今後の見通し:大手シリコンウェハーメーカーの最新の決算分析を通じて将来性に迫る!

a close up of a mirror with a reflection of a personウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、大手シリコンウェハーメーカーの最新の2024年第3四半期決算分析を通じて、世界半導体シリコンウェハー市場の今後の見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • 2024年第3四半期の半導体シリコンウェハー出荷面積は増加しており、特にAI向けウェハーの需要が強い一方で、自動車や産業向けは低調となっています。
  • 2025年には成長が期待されるものの、2022年のピーク水準には戻らない見通しです。 
  • 半導体シリコンウェハー市場では、売上は前期比で増加したものの、主要企業の粗利率は低下しており、特にGlobalWafersとSiltronicは厳しい状況が続いています。 
  • 市場の回復には時間がかかると見込まれ、特に200mm以下のウェハーの需要は低迷しており、マクロ経済や需給調整が影響を与える中、今後の回復には企業の生産能力拡充が鍵となるでしょう。

2024年第3四半期:世界半導体シリコンウェハー市場のサマリー

2024年第3四半期のシリコンウェハー出荷面積は3,214百万平方インチ(MSI)で、前期比5.9%増、前年同期比6.8%増となりました(詳細はこちら)。

これにより、ウェハー出荷量は2四半期連続の増加を記録し、前年同期比での増加は2022年第3四半期以来、ちょうど2年ぶりとなります。

四半期毎のシリコンウェハー出荷面積(MSI)

(出所:筆者作成)

SEMI(国際半導体製造装置材料協会)によると:

(原文)The third quarter wafer shipment results continued the upward trend which started in the second quarter of this year. Inventory levels have declined throughout the supply chain but generally remain high. Demand for advanced wafers used for AI continues to be strong. However, the silicon wafer demand for automotive and industrial uses continues to be muted, while the demand for silicon used for handset and other consumer products has seen some areas of improvement. As a result, 2025 is likely to continue upward trends, but total shipments are not yet expected to return to the peak levels of 2022.

(日本語訳)第3四半期のウェハー出荷量は、第2四半期からの増加傾向を維持しました。サプライチェーン全体で在庫は減少しているものの、依然として高止まりしています。AI向けの先端ウェハーの需要は引き続き強い一方で、自動車や産業向けのシリコンウェハーの需要は依然として低調です。また、携帯電話やその他の消費者向け製品用のシリコン需要には一部改善の兆しが見られています。こうした状況から、2025年も増加傾向は続くと見られますが、出荷量が2022年のピーク水準に戻るには至らない見通しです。

過去2四半期のシリコンウェハー出荷面積の増加は、この厳しい状況にある業界にとって前向きな動きではあるものの、電力コストの上昇や低稼働率、膨らむ減価償却費に悩む主要企業の収益改善にはあまり効果がありません。

それでは、より詳しく半導体シリコンウェハー市場を見ていきましょう。

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世界半導体シリコンウェハー市場の売上高とEBIT

2024年第3四半期には、業界上位4社の総売上高が25億ドルに達し、前期比0.5%増、前年同期比6.5%増となりました。

なお、過去最高の四半期売上は2022年第4四半期の29億9千万ドルであり、現在もピーク時から約16%下回る水準にあります。

四半期毎のシリコンウェハー売上高(米ドル)

(出所:筆者作成)

一方、EBITについては状況が異なり、上位4社の合計が3億3,700万ドルで、前期比1.5%増加しましたが、前年同期比では38.9%減少しています。

四半期毎のシリコンウェハーEBIT(米ドル)

(出所:筆者作成)

注記:信越化学のデータについては、同社の電子材料部門の実績に基づいた推定値であり、シリコンウェハーに加えてフォトマスクやフォトレジストの売上も含まれています。

世界半導体シリコンウェハー市場の今後の見通し

第3四半期は特に目立った動きがなく、上位4社は業績と見通しで一貫したパフォーマンスを示しました。

現四半期の見通しについては、GlobalWafers(6488.TW)は具体的な数値を示していませんが、Q&AセッションでCEOのドリス・シュ氏が第4四半期も成長が続くとの見解を示しました。

また、2025年を成長の年と期待している強い姿勢がうかがえました。

(原文)Our Q4 revenue will be higher than Q2, Q3. I think 2025 we hope it can be back to 2022, 2023. Think 2025 revenue will be much higher than this year.

(日本語訳)第4四半期の売上は、第2四半期や第3四半期を上回る見込みです。2025年には、2022年や2023年の水準に戻ることを期待しており、今年を大きく上回る売上を見込んでいます。

また、SUMCOは、売上高が前期比で約1%減少する見通しを示していますが、これは11月に複数の工場で予定されている年次メンテナンスが一因となっています。

(原文)there will be periodic maintenance at the main plant leading to a slight negative

(日本語訳)主要工場で定期メンテナンスが行われるため、若干の影響が予想されます。

(出所:SUMCOの2024年第3四半期決算資料

そして、Siltronic(WAF)は2024年度の業績見通しを「前年から1桁台後半の割合で減少する」としています。

(出所:Siltronicの2024年第3四半期決算資料

世界半導体シリコンウェハー市場の決算発表の主なポイント

2024年第3四半期の決算発表では、シリコンウェハーの需要回復が市場全体で均一ではない点が大きなテーマとなりました。

以下は信越化学の報告からの抜粋です。

(原文)The market recovery has not been uniform, but has varied by product type,  application, and customer. We still expect the recovery of wafer demand to be just a  matter of time, although the timing will vary depending on the wafer diameter and  customer inventory levels.

(日本語訳)市場の回復は一様ではなく、製品タイプや用途、顧客によって差があります。ウェハー需要の回復は時間の問題だと見ていますが、その時期はウェハのサイズや顧客の在庫状況によって変わるでしょう。

具体的に言うと、信越化学は、生成AI関連製品の需要は旺盛であるものの、200mm以下のウェハーについては依然として回復の兆しが見られないとしています。

(原文) In the overall wafer market, sales volume increased both YoY and QoQ. ・ Looking at wafers by diameter, 300 mm wafers grew, driven by strong  demand for generative AI-related products. For smaller diameters of 200  mm and 150 mm and smaller, there are still no signs of recovery.

(日本語訳)ウェハー市場全体では、販売量が前年同期比・前期比ともに増加しました。直径別に見ると、生成AI関連製品の強い需要に支えられ、300mmウェハーは成長を続けていますが、200mmや150mm以下の小径ウェハーでは依然として回復の兆しが見られない状況です。

もう一つの重要なポイントは、顧客がLTA(長期契約)の価格には合意しているものの、ウェハーの在庫が依然として過去最高水準にあるため、納品の「調整」を求めていることです。

これは信越化学も指摘しています。

(原文)Although  we have long-term agreements in place, customers are requesting  purchase adjustments to prevent an increase in wafer inventory.

(日本語訳)長期契約は結んでいるものの、顧客からはウェハー在庫が増えないように購入量の調整を求められています。

200mm以下のウェハ在庫が高止まりしている主な原因は、自動車、民生用、産業向けの需要が低迷しているためです。

(原文) 200 mm wafers are most commonly used for automotive applications, and  are also widely used for consumer and industrial applications. Due to  sluggish demand in these sectors, semiconductor devices are undergoing  inventory adjustments, and demand for wafers remains weak. We believe  that the market recovery depends on macroeconomic conditions.

(日本語訳)200mmウェハーは主に自動車向けに使われており、民生用や産業用にも広く利用されています。しかし、これらの分野での需要が低迷しているため、半導体デバイスの在庫調整が行われており、ウェハーの需要も引き続き低調です。市場の回復は、今後のマクロ経済の動向に左右されると見ています。

200mm以下のウェハー需要の低迷に加え、電力コストや減価償却費の上昇が主要企業の粗利率に影響を及ぼしています。

たとえば、GlobalWafersの第3四半期の粗利率は30%にとどまり、2022年第3四半期のピークである47.3%から大幅に低下しています。

(出所:GlobalWafersの2024年第3四半期決算資料

さらに懸念すべき点として、GlobalWafersの粗利率は前回の低迷期に達した35.1%を大きく下回っています。

そして、2025年の粗利率の見通しについて、CEOのドリス・シュ氏は次のように述べています。

(原文)To make it clear, the current situation is that when we put all the negative costs, freight costs are very high. In summary, our gross margin right now should be the worst, the bottom. Expecting revenue increase, but maybe the recovery is not as sharp as we were expecting. Will start seeing some revenue from new capacity. Also government funding, not all in one shot, but will help improve gross margin.

(日本語訳)現在の状況をはっきりお伝えすると、各種コストに加えて輸送費も非常に高く、粗利率は今が「底」の状態にあると見ています。売上の増加は見込んでいるものの、回復ペースは当初の予想ほど急速ではないかもしれません。ただ、新たな生産能力からの収益が少しずつ出始め、また政府からの支援も一度にではありませんが、粗利率改善に寄与する見込みです。

ここで言及されている政府支援は、米国のCHIPs法による助成金です。

この資金は米国工場の関連コストを補助しますが、企業全体で見ると影響が薄まり、全体の粗利率に大きな効果をもたらすことは難しいと考えられています。

GlobalWafersの粗利率は懸念材料ではありますが、それでも現時点でのSiltronicの水準よりはかなり良好です。

年初来で見ると、Siltronicの粗利率は前年同期の25.3%から20%まで低下しています。

(出所:Siltronicの2024年第3四半期決算資料

世界半導体シリコンウェハー市場へのまとめ

半導体シリコンウェハー業界にとって厳しい時期が続いています。

生成AI関連の先端300mmウェハーの需要は非常に強いものの、その他の多くのエンドマーケットでは依然として需要が低迷しており、高水準の在庫が影響を与えています。

この状況は主要企業の株価にも如実に表れています。

(出所:Smartkarma)

信越化学を除き、主要なシリコンウェハメーカーの株価は5年前とほぼ同じ水準で推移しています。

ただし、この状況がすぐに変わることは難しいかもしれませんが、中長期的には可能性はあるかもしれません。

各企業はここ2年間で生産能力の拡充に大きな投資を行ってきました。

減価償却のタイミング的には今が苦しい時期ですが、いずれ既存の需要が回復すれば、主要企業はその需要にしっかりと応えられる体制を整えています。

今後の展開に期待したいところです。

さらに、過去の世界半導体シリコンウェハー市場に関する四半期レポートに関心がございましたら、是非、下記のレポートをインベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧いただければと思います。

2024年度第2四半期

2024年度第1四半期

2023年度サマリー

その他のGlobalWafers(6488.TW)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、GlobalWafersのページにアクセスしていただければと思います。

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