中立エンブリッジすべて表示エンブリッジ(ENB)の将来性:配当金は0.915ドルで予想配当利回りは6%!最新の決算と今後の株価見通しに迫る!
イアニス・ ゾルンパノス- 本稿では、エンブリッジ(ENB:予想配当利回り6.56%・配当性向134%・1株当たり配当金0.915ドル)の最新の2024年度第2四半期決算発表と配当推移に関するトレンド、さらに、同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。
- そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
- エンブリッジは、石油・ガス輸送に強みを持ち、再生可能エネルギー事業にも進出している企業であり、現在の配当利回りは6.56%で配当収入を重視するインカム投資家には魅力的な投資対象であるように見えます。
- ただし、同社は足元で負債増加が懸念され、配当性向は134%と著しく高い水準となっている一方で、最新の決算ではEPSも減少傾向にあります。
エンブリッジ(ENB)の概要
レーティング:中立
バリュエーション:割高
リスクレベル:中リスク
セクター:石油・ガス
現在の株価:41ドル
時価総額:888.4億ドル
弊社算出の一株当たり本質的価値:30.9ドル
安全余裕率(マージン):-32.97%
過去5年間の配当成長率:5.50%
前回配当落ち日:2024年8月15日
前回配当支払い日:2024年9月1日
予想配当利回り:6.56%
過去5年間の売上高成長率:-2.30%
過去10年間の売上高成長率:-7.40%
関連用語
安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。
売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。
足元の株価推移
(出所:筆者作成)
エンブリッジ(ENB:予想配当利回り6.56%・配当性向134%・1株当たり配当金0.915ドル)は、米国とカナダを結ぶ広大なミッドストリーム資産を保有し、炭化水素の輸送に強みを持つ企業です。
主力となるパイプラインネットワークには、カナダメインラインシステム、地域のオイルサンドパイプライン、そして、天然ガスパイプラインが含まれており、エネルギー輸送において重要な役割を果たしています。
さらに、同社は規制を受けた天然ガス事業を運営し、カナダ最大の天然ガス供給会社を所有するなど、天然ガスの供給にも大きく貢献しています。
エンブリッジはまた、再生可能エネルギー分野にも進出しており、主に陸上および洋上風力発電プロジェクトを中心としたポートフォリオを展開しています。
財務面では、エンブリッジは安定した収益を確保しつつも、負債の増加が見られるため、今後の債務管理が注目されています。
特に同社の配当支払いは投資家にとって魅力的なポイントであり、足元の予想配当利回りは6.56%と高水準です。
過去の配当成長率も堅実であり、長期的に安定した収益を期待できる配当株としての評価が高いです。
しかし、現在の配当性向が著しく高いため、今後の配当維持に関しては慎重な見通しも必要でしょう。
最近の買収活動としては、エンブリッジは再生可能エネルギー分野への投資を拡大し、持続可能なエネルギー源の強化を進めています。
例えば、足元では、米国のMorrow Renewables社から7つの稼働中の埋立地ガスから再生可能天然ガス (RNG) を生成する施設を12億ドルで買収しています。
このような戦略は、同社の長期的な成長を支える一方で、伝統的なエネルギー輸送事業とのバランスを取ることで、安定性を維持しています。
以上より、エンブリッジは多様なエネルギーポートフォリオを活用し、エネルギー業界においてユニークな地位を確立している企業です。
そして、同社は2024年8月2日に2024年第2四半期決算を発表しています。
エンブリッジ(ENB)の最新の2024年度第2四半期決算発表に関して
エンブリッジ(ENB)の2024年6月30日に終了した最新の2024年度第2四半期決算において、非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI)は0.411ドルで、これは、前四半期(2024年第1四半期)の0.7ドルや前年同期(2023年第2四半期)の0.54ドルから減少しています
希薄化後のEPSは0.628ドルで、前四半期の0.495ドルから増加しましたが、前年同期の0.685ドルを下回っています。
1株あたりの売上高は、前四半期の3.832ドルから3.867ドルにわずかに増加したものの、前年同期の3.874ドルを下回っています。
一方で、長期的なパフォーマンスを見ると、下記のチャートからも分かる通り、同社株の非経常損益項目を除くベースでのEPSの過去5年間の年平均成長率(CAGR)は-2.40%と減少している一方で、過去10年間の年平均成長率は9.50%とプラスの成長を示しています。
また、今四半期の売上総利益率は41.41%に達し、過去10年で最高を記録し、過去5年間の中央値である31.30%、過去10年間の中央値である30.19%を大きく上回っています。
しかし、同社の自社株買い活動は、1年間の自社株買い比率が-7.60%と、新たに発行された株式数が買い戻された株式数を上回っており、EPSの希薄化を引き起こしてきました。
そのため、最近の希薄化後のEPSの増加は、他の要因が利益を支えている可能性を示唆しています。
さらに、過去10年間の自社株買い比率は-11.90%で、新規の株式発行を優先する戦略が見られます。
そして、今後の同社の株価見通しとして、市場のアナリストは2024年のEPSを2.171ドル、2025年を2.320ドルと予測しています。
売上高は、2024年に291億1419万ドル、2025年には281億1680万ドル、2026年には324億1609万ドルに変動する見込みです。
加えて、エネルギー業界全体は、今後10年間で年平均4%の成長が見込まれています。
エンブリッジの次回決算報告は2024年11月1日に予定されており、成長予測や業績の詳細がさらに明らかになるでしょう。
非経常損益項目を除くベースでのEPS
(年間ベース:直近4四半期の合計値)
(出所:筆者作成)
関連用語
EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。
非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。
希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。
1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。
粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。
自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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エンブリッジ(ENB)の財務パフォーマンスに関して
エンブリッジ(ENB)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)、加重平均資本コスト(WACC)、自己資本利益率(ROE)の観点から分析していきます。
まず、同社の過去5年間のROICの中央値は4.00%で、現在のROICは3.74%となっています。
一方、WACCの足元の水準は6.49%で、過去5年間の中央値は6.00%となっており、下記のチャートからも分かる通り、ROICが一貫してWACCを下回っていることが分かります。
これは、同社が資本コストを上回るリターンを生み出せておらず、資本から十分な利益を得られていないことを示しています。
そして、このような状況は、経済的価値を創出できていない可能性を意味します。
一方で、自己資本利益率(ROE)は現在9.25%と良好な数値を示しているものの、ROICがWACCを下回っていることから、資本の運用や投資の効率性に課題があることが考えられます。
以上より、真の経済的な価値創出を目指すためには、エンブリッジはROICを改善し、WACCを上回るリターンを実現する必要があります。
これにより、同社の投資が価値を高める方向に進み、資本の無駄遣いを防ぐことができるでしょう。
投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の比較
(出所:筆者作成)
関連用語
総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。
自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。
投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。
ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。
加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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エンブリッジ(ENB)の配当に関して
エンブリッジ(ENB)は、安定した配当成長を続けており、過去5年間の配当成長率は5.50%、直近3年間の配当成長率は3.10%となっています。
また、予想配当利回りは6.56%と高く、業界内でも十分に競争力がある水準と言えます。
ただし、配当性向は134%と非常に高く、過去10年の中央値である101.18%を大きく上回っています。
これは、同社が稼いでいる利益以上の配当を支払っていることを意味しており、長期的には配当支払いにおける持続可能性に課題があるかもしれません。
さらに、負債の多さを示すEBITDA有利子負債倍率は5.57倍であり、財務リスクが高まっていることがうかがえます。
基本的には、EBITDA有利子負債倍率は2倍以下であれば財務リスクが低く、4倍以上であれば財務リスクが高いことを示すとされています。
そのため、この比率は一般的に注意が必要な水準を超えており、負債の管理が今後のリスク軽減において重要な課題となるでしょう。
加えて、今後3〜5年間の予想配当成長率は2.97%とされており、成長のペースが鈍化する見込みです。
この鈍化は、高い配当性向と財務レバレッジが原因と考えられます。
次回の配当落ちは2024年11月14日と予測されており、四半期ごとの配当が継続される見込みです。
以上より、投資家は、高い負債と配当性向を考慮し、エンブリッジが現在の配当を維持できるかどうかを慎重に見守る必要があるでしょう。
予想配当利回り:6.56%
配当性向:134%
配当カバレッジ・レシオ:0.72倍
過去5年間の配当成長率:5.50%
EBITDA有利子負債倍率:5.57倍
DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出所:筆者作成)
Dividend Yield:予想配当利回り
(出所:筆者作成)
Dividend Payout:配当性向
(出所:筆者作成)
関連用語
1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。
配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。
予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。
配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。
EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。
配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。
配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。
配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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エンブリッジ(ENB)のバリュエーションに関して
エンブリッジ(ENB)の現在の株価は41.09ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である30.9ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-32.98%とマイナスとなっていることから、割高である可能性が示唆されています。
一方で、同社の過去12ヶ月間の実績ベースのPERは21.33倍で、過去10年間の最高値である283.57倍に比べるとかなり低いものの、過去10年間の最低値である14.09倍を上回っています。
また、歴史的な中央値である28.66倍よりは低い水準であることからも、株価は利益に対して適度な評価を受けていることが分かります。
さらに、EV/EBITDA比率は13.02倍で、10年間の中央値である15.94倍を下回っており、歴史的な水準と比較すると魅力的なバリュエーションと言えるでしょう。
加えて、株価フリー・キャッシュフロー倍率(P/FCF)は15.44倍で、10年間の中央値である26.11倍を下回っており、フリーキャッシュフローに基づくバリュエーションでは割安感があります。
しかし、PBRは1.99倍で、10年間の中央値である1.82倍を上回っていますが、簿価に対しては公正な評価範囲内にあると言えるでしょう。
そして、市場のアナリストによる評価や目標株価はやや上昇傾向にあり、現在の目標株価の平均は41.67ドルで、現状の株価をわずかに上回っています。
これは概ね安定した見通しを示しており、同社をフォローしているアナリストは15名、そのうち12名が積極的にモニターしており、適度な関心が寄せられていることがわかります。
総じて、エンブリッジの株価は弊社算出の一株当たり本質的価値を超えており割高感があるものの、過去のバリュエーションと比較するとそれほど大きな割高ではないことが示唆されます。
ただし、安全余裕率が低いため、同社への投資を検討する際には慎重な判断が求められるでしょう。
(出所:筆者作成)
上記グラフにおける関連用語
Price:現在の株価
Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値
DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価
DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価
Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価
Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価
赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値
関連用語
実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。
株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。
株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。
EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。
PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。
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エンブリッジ(ENB)のリスクとリターンに関して
エンブリッジ(ENB)のリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。
まずマイナス面では、過去3年間で147億カナダドルの新規の長期負債を発行しています。
そして、この増加した負債に加えて、配当性向が134%と高い水準にあるため、今後の配当支払いの持続可能性や財務の柔軟性に対する懸念が高まっています。
また、1株あたりの売上高は過去5年間で減少しており、収益面での課題が見られます。
さらに、株価は5年ぶりの高値圏にあり、株価売上高倍率(PSR)も10年ぶりの高水準に近づいており、株価が過大評価されている可能性が示唆されています。
アルトマンのZスコアが0.82と低いため、2年以内に倒産リスクがあることも示唆されており、財務状況は厳しいと見られます。
さらに、投資資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を下回っており、資本の効率的な活用ができていないことも課題です。
とはいえ、いくつかのプラス要素もあります。
まず、営業利益率の改善が見られることから、業務の改善が進んでいる可能性もあります。
さらに、ベニッシュのMスコアによれば、財務操作が行われている可能性は低いとされています。
しかし、これらのプラス面を考慮しても、投資家はエンブリッジへの投資を検討する際には、依然として慎重に判断する必要があるでしょう。
関連用語
財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。
アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。
ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。
ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。
ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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エンブリッジ(ENB)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して
エンブリッジ(ENB)のインサイダー取引分析によると、過去3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月の間、インサイダーによる同社株式の売買は一切記録されておらず、役員や経営陣の取引が一切見られない状況です。
このインサイダー取引の不活発さは、インサイダーが同社に対して中立的な姿勢を示している可能性があるほか、規制や戦略上の理由で取引が制限されている可能性も考えられます。
インサイダー取引がない一方で、インサイダーによる同社株式の保有比率はわずか0.12%と低く、経営陣や取締役の持ち株はごく少量であることが分かります。
この低い保有比率は、経営陣や取締役が同社の業績に対する個人的なリスクをあまり負っていないことを示し、株主との利害があまり一致していない可能性があります。
それに対し、プロの機関投資家の同社株式の保有比率は51.16%に達しており、機関投資家による強い関心と投資が伺えます。
通常、プロの機関投資家は大口の投資を行う前に慎重な調査を行います。
そのため、このような高いプロの機関投資家の保有比率は、同社の長期的な成長や経営陣への信頼を示すものであり、同社への強い信頼の表れと言えるでしょう。
関連用語
インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。
機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。
エンブリッジ(ENB)の流動性に関して
エンブリッジ(ENB)の直近営業日の1日あたりの出来高は2,627,021株で、過去2ヶ月の平均出来高である4,180,862株をやや下回っており、一時的に流動性が低下している状況です。
取引量が平均より少ないことは、最近の取引活動が鈍化している可能性を示しており、大口の取引を行う際には価格に影響を与えるリスクがあるかもしれません。
また、同社のダークプール指数(DPI)は59.78%と高く、多くの取引が公開市場外で行われていることを示しています。
そして、DPIが50%を超えると、機関投資家が目立たないように大口取引を実行するために隠れた流動性プールを利用している可能性が高いと言えます。
一方で、このダークプールでの活発な取引は、同社に対する機関投資家の関心が強いことを示唆しており、価格の安定性にもつながるかもしれません。
足元の出来高は過去2カ月間の平均を下回っており、DPIの高さから流動性は安定しているものの、多くの取引がダークプールで行われている点を考慮する必要があります。
以上より、エンブリッジの流動性リスクや価格の動きを判断する際には、これらの点にも注意を払うべきでしょう。
関連用語
※ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。
※ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。
アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏
イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。
以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。
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