【投資コラム】ドル・コスト平均法と一括投資はどちらが良い?複利と市場サイクルとは?ドル・コスト平均法のシミュレーションにより徹底解説!
イアニス・ ゾルンパノス- 本稿では、ドル・コスト平均法の仕組み、並びに、株式投資における複利効果と市場サイクルの概念を詳しく解説していきます。
- そして、ドル・コスト平均法のシミュレーションを用いることで、ドル・コスト平均法と一括投資の比較、さらに、今すぐ投資を始めるべき理由を深掘りしていきます。
- ドル・コスト平均法(DCA)は、市場の変動リスクを分散しながら長期的にリターンを安定させるための戦略で、定期的に一定額を投資する手法です。
- 市場サイクルの理解は、適切な投資タイミングとリスク管理に役立ち、景気拡大期や収縮期に応じて戦略を調整することが重要です。 7
- 複利の効果は、早期の投資開始によって大きな資産形成を可能にし、長期的に大きな利益を生むことが示されています。
ドル・コスト平均法(DCA)とは?
現在の市場では、伝統的なバリュー投資は進化し、規律あるドル・コスト平均法(DCA)を重視するようになっています。この戦略は、市場の景気サイクルを乗り越えるために不可欠です。ドル・コスト平均法とは、定期的に一定額を投資することで、市場の変動リスクを抑えながら、時間をかけてリターンを平準化する手法です。
市場サイクルとは?
市場サイクルとは、経済、政治、心理的要因によって繰り返される成長と後退の段階を指し、これを理解することで、投資家は適切なタイミングでポジションを取り、より効果的にリスクを管理することができます。
市場サイクルを示す指標
GDP成長率や雇用率といった経済指標、金利やクレジットスプレッドなどの金融指標、そして投資家心理調査やボラティリティ指数などがあります。
投資家にとっての重要性
市場サイクルを理解することで、投資家はその時々のサイクルに応じて戦略を調整することが可能です。例えば、景気拡大期には成長機会やリスクの高い投資に注目し、一方で景気収縮期には、防御的な行動を取り、資本の保全を図ることが一般的です。
長期的視点
市場サイクルは非常に重要で、無視すべきではありません。現在の環境では、市場のタイミングを正確に見極めることにこだわるのではなく、サイクルを理解し、資産配分やリスク管理の観点から賢明な意思決定を行うことが重要です。
ケーススタディ: COVID-19における市場サイクルの管理
COVID-19パンデミックは、投資戦略が市場サイクルにどのように影響を与えるかを示す最新の例です。パンデミックによって急激な景気後退と大幅な株価の下落が引き起こされましたが、その後、財政・金融刺激策によって劇的な反発が見られました。
景気収縮期
世界中で数十億人がロックダウンを経験し、多くの経済活動が突然停止しました。株式市場は急落し、わずか数週間で多くの主要株価指数が二桁の損失を記録しました。
底値
2020年3月に市場が底を打ちました。このタイミングを見極め、勇気を持って質の高い企業に投資した人たちは、その後の回復で大きな利益を得ました。
景気拡張期
世界経済は拡張期に入り、各国政府や中央銀行が経済回復のために大規模な財政・金融刺激策を実施しました。
その結果、特にテクノロジーやヘルスケアなどの分野では、パンデミックの影響で利益を得た企業の株価が急速に上昇しました。
市場サイクルは通常、「ステルス期(Stealth Phase)」から始まります。この段階では、賢明な投資家たちが低価格でひっそりと資産を積み上げます。つまり、ステルス期とは、市場サイクルの初期段階で、賢明な投資家(いわゆる「スマートマネー(Smart Money)」)が他の投資家に気づかれないように静かに資産を買い集める期間を指します。この段階では、価格がまだ低く、一般の投資家やメディアの注目を集めていないのが特徴です。その後、「認識期(Awareness)」に移行し、機関投資家(Institutional Investors)の参加により価格が徐々に上昇し、メディアの注目も集まるようになります。
次に訪れるのが「熱狂期(Mania)」で、一般の投資家たち(Public)が熱気と欲望に駆られ市場に参入します。この影響で価格は急上昇し、しばしばバブルが形成されます。この時期、多くの人々は「新しい時代の無限の成長」という幻想を信じるようになります。
最終的に「崩壊期(Blow Off)」が到来し、現実が見え始めると否認や恐怖が広がり、投資家たちは急いで売却に走ります。これにより、価格は急落し、やがて底を打ち、平均的な水準に戻っていきます。
市場サイクル
Return to the mean(平均回帰):資産の価格やパフォーマンスが一時的な変動を経て、長期的な平均値や標準的な水準に戻る現象
(出所:筆者作成)
ドル・コスト平均法(DCA)の仕組み
ドル・コスト平均法(DCA)は、毎月や四半期ごとなど、定期的に一定額を投資する方法です。結果、同じ投資金額で、価格が安い時には多くの株を買い、高い時には少量の株を購入することで、価格変動の影響を分散させます。
このように、時間をかけて投資することで、短期的な市場の変動によるリスクを抑え、リターンを安定させる効果があります。市場のタイミングを狙うのではなく、感情に左右されずに一貫した投資を続けることが重要です。
少額の投資でも、定期的に積み立てていくことで、リターンの複利効果が積み重なり、最終的には大きな資産を築くことができます。
そして、下記のグラフは、1,000ドルを50ドルで一括投資した場合(株式購入単価:50ドル)と、同じ1000ドルをドル・コスト平均法により平均して投資した結果、株式購入単価が45.2ドルとなったシミュレーションを表しています。
ドル・コスト平均法(DCA)
(出所:筆者作成)
上記のグラフからも分かる通り、同じ1000ドルでも、ドル・コスト平均法により分散して株式を購入した場合には、平均取得単価は45.2ドルと、一括して投資した場合(50ドル)よりも安い価格で投資できる可能性があります。ただし、勿論、株価が継続して上昇している局面では、ドル・コスト平均法を用いた場合には、一括投資の場合と比較して、購入単価は高くなる可能性があります。
しかし、上述の通り、ドル・コスト平均法を用いることで、市場における価格変動の影響を分散させることができます。そして、結果として、その投資期間における市場価格の平均的な価格で購入することができることから、リターンを安定させることができます。
複利の魔法: 早く始めて豊かになろう
投資は、数字の計算やタイミングが重要と思われがちですが、実はシンプルな原則を理解するだけで、将来の自信の財政状況に大きな変化をもたらすことができます。その中でも最も強力な原則の一つが「複利」です。アルバート・アインシュタイン氏が「世界第八の不思議」と称したとも言われるこの複利は、長期にわたって大きな影響を与え、早く始めるほどその効果は大きくなります。
複利とは?
複利とは、時間と共にお金が指数関数的に増えていく仕組みです。各期間に得た利息が再投資され、新たな収益を生み出すため、単利(元本にのみ利息がつく)の場合とは異なり、利息に対してさらに利息がつくことになります。これにより、複利は単利では達成できないペースでお金が増えていきます。つまり、早く始めることが成功へのカギとなるのです。
複利の効果を実感するために、仮想の投資家Aと投資家Bの例を考えてみましょう。
・投資家Aは25歳から毎年5,000ドルを10年間投資し、その後は追加の投資をしません。
・投資家Bは35歳から毎年5,000ドルを65歳まで30年間投資し続けます。
この2人のケースを比較すると、Aは早い段階で投資を始めたため、Bよりも長期的に有利な結果を得ることができるのです。
両者ともに年間平均10%のリターンを期待しています。投資家Aは、早く投資を始めたことによる「先行者利益」を享受し、投資期間が短いにもかかわらず、65歳までに投資家Bよりもはるかに多くの資産を築くことができました。これにより、雪だるま式に資産が増えていったのです。
具体的に見てみましょう。投資家Aは10年間で合計5万ドルを投資しました。Aは35歳で投資を止めましたが、その後の30年間、投資額はさらに複利で成長し、65歳時点では5万ドルが1,616,789ドルにまで膨れ上がりました。
一方、投資家BはAより10年遅れて投資を開始し、同じく年間5,000ドルを30年間、合計で15万ドルを投資しましたが、65歳時点では909,717ドルにしかなりませんでした。わずか10年の差で、これほど大きな違いが生まれるのです。
(出所:筆者作成)
アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス
📍バリュー・インカム担当
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