【後編】ラティス・セミコンダクター(LSCC)の今後の株価見通し:足元の業績は軟調も来年以降は増収?直近の株価下落の理由に迫る!
ダグラス・ オローリン- 本稿では、ラティス・セミコンダクター(LSCC)の足元の業績と今後の売上高見通し、さらに、直近の株価下落の理由の分析を通じて、同社の今後の株価見通しを詳しく解説していきます。
- フォード・タマー新CEOはラティス・セミコンダクターの売上成長目標を達成するために強力なインセンティブを持っており、報酬パッケージはその達成を後押しする設計となっています。
- 2024年には売上減少が予測されていますが、2025年には16%の成長が見込まれており、タマー氏のリーダーシップが同社の再成長を支えると期待されています。
- ラティス・セミコンダクターがAlteraの買収を検討する可能性もゼロではなく、これが実現すれば同社にとって大きな成長機会となる可能性があるでしょう。
※「【前編】ラティス・セミコンダクター(LSCC)の将来性:巨額報酬の新CEO就任で株価上昇!報酬の詳細と今後の株価見通しに迫る!」の続き
ラティス・セミコンダクター(LSCC)の足元の業績と売上高予想
では、本稿では、私がラティス・セミコンダクター(LSCC)に興味を持った2つのポイントについて話します。
まず1つ目は、Gartner社による売上成長についてです。正直に言うと、これはかなり達成しやすい条件のように感じます。フォード・タマー新CEOは最低でも10%の売上成長を達成し、Gartner社が示すメモリ以外の市場成長率(おそらく長期的には約7%と見積もられます)を上回る必要があります。今回の就任、並びに、報酬パッケージの詳細はこちらです。
(原文)The size of the revenue growth percentage determines the extent to which any tranche will be eligible to vest and can range from 0% to 250% of target, with payment at or above 100% possible with achievement of revenue growth at or above 10%. Additionally, for each measurement period, the revenue growth must exceed the Gartner Non-Memory Semiconductor Revenue Growth market benchmark to be eligible to vest. Vesting of any tranche will occur on the 13-month anniversary following the annual measurement period for that tranche.
(日本語訳)売上成長率によって、報酬の付与割合が0%から最大250%まで変動し、10%以上の成長を達成すれば、100%以上の報酬が得られる可能性があります。さらに、各測定期間でGartner社のメモリ以外の半導体市場成長率を上回らなければ、その報酬は付与されません。また、各トランシェの報酬は、該当する測定期間の終了後13か月後に付与されます。
ここで注目すべきなのは、2024年には売上が30%減少するとの予測が出ていることです。そのため、そこから二桁(10%以上)の成長を達成できなければ、ラティス・セミコンダクターには構造的な問題が生じる可能性があります。一方で、2025年にはすでに16%の売上成長が予測されています。
(出所:Bloomberg)
私はラティス・セミコンダクターがチャネル面で課題を抱えていると思いますが、タマー氏がしっかりとインセンティブを得ていることや、底値に近づいているタイミングを考えると、同社の状況が好転していることに安心感を覚えます。これは大きな転機であり、タマー氏の報酬パッケージがその実現を後押ししています。さらに、この報酬は彼が200%の支払いを達成するための魅力的な条件でもあるかもしれません。
とはいえ、すべてが簡単に手に入るわけではありません。特に興味深かったのは、株価目標に関する部分です。表現は少し曖昧ですが、彼の就任日の60日前の株価平均が基準となっているようです。つまり、基準となる株価は約50.31ドルで、この数値はかなり現実的です。
(出所:筆者作成)
タマー氏が目標の上限を達成すれば、莫大な利益を得る可能性があります。売上成長目標をクリアすれば、最大で約2,500万ドル(約36億円)相当の株式を獲得できる可能性があります。さらに、株価が上昇すると仮定すれば、タマー氏はすべての目標を達成した際に、約1億8,300万ドル(約264億円)を手にする計算になります。
以上より、フォード・タマー新CEOが再び指揮を取り、大成功を収めるための強力なインセンティブを持っているのは明白です。ラティス・セミコンダクターはサイクルの底に近づいており、特にAlteraやXilinxに対して多くの有望な設計案件を獲得しています。タマー氏はこの役割に最適な人物であり、成功するためのインセンティブも十分に与えられています。これまでに彼が見せてきた成果を考えると、ラティス・セミコンダクターの将来には大いに期待しています。大好きなCEOが再び舞台に立つ姿を見られることが私としても非常に嬉しいです。
「インセンティブが結果を決める」。私はフォード・タマー新CEOがラティス・セミコンダクターで活躍することに大いに期待しています。
ラティス・セミコンダクター(LSCC)に関するその他の考察
まず、いくつかのメモを共有する前に、結論から述べたいと思います。フォード・タマー新CEOをリクルートしたのは誰かと考えると、それはジェフ・リチャードソンでしょう。彼は取締役会の会長で、LSIでタマー氏と知り合った可能性が高く、指名・報酬委員会のメンバーでもあります。おそらく、タマー氏の推薦や報酬パッケージの策定に深く関わっているはずです。
報酬委員会の他のメンバーは以下の通りです:
・ジョン・フォーサイス(Cirrus社のCEO)
・クエ・タイン・ダラーラ(Medtronic社のEVP、元Honeywell Software社のCEO)
・ジェームス・レデラー(QCT社の元CFO/COOで、委員会の議長)
これらのメンバーは全員、業界で豊富な経験を持つ元従業員や現在もエグゼクティブとして活躍している人物であり、その経験が報酬パッケージに反映されています。このパッケージには2つの目的があります。1つはタマー氏を少なくとも3年間引き留めること、もう1つは彼にさらなる成功のチャンスを与えることです。さらに、タマー氏がこれを早く達成すれば、それに越したことはない、というわけです。
ラティス・セミコンダクター(LSCC)の株価下落について
足元のタイミングはラティス・セミコンダクター(LSCC)への投資を検討する上で良いタイミングかもしれません。同社は2009年以来、最悪の下落局面にあり、2016年の下落と同じくらい深刻です。確かに同社は割高ですが、こうした下落局面こそが良い押し目買いのタイミングである可能性もあります。そして今、フォード・タマー新CEOがその状況を打開するために登場しました。
(出所:Koyfin)
下落の一因はサイクルによるものですが、もう一つの要因は、株価の倍率とEPSが下がり始めたことです。同社は成長性のある数少ない小型半導体企業の一つとして、常に高値で取引されてきました。
(上記チャート)P/E (NTM):今後12カ月間の予想ベースのPER
(下記チャート)EV/EBITDA (NTM):今後12カ月間の予想ベースのEV/EBITDA倍率
(出所:Koyfin)
正直に言うと、私は非常にワクワクしています。タマー新CEOはこの会社を次の段階に引き上げるために最適な人物です。さらに、私が一番面白いと思うのは、ラティス・セミコンダクターが思い切ってAlteraを買収しようとする可能性です。Alteraはおそらく150億~200億ドルで売却されるでしょうが、それはラティス・セミコンダクターの時価総額の3倍にもなります。それでもラティス・セミコンダクターは借金がなく、優れた経営陣を持っています。夢を語るのは自由ですよね?
現実的には、こうした取引が成立するのは難しいかもしれませんが、もしタマー氏がAlteraを買収したら、私は大興奮するでしょう。
アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
ダグラス・オローリン氏は、自身が2020年に設立した半導体調査会社ファブリケイティド・ナレッジ社のチーフアナリストを務め、主に半導体関連銘柄とAIセクターの最新動向の分析に焦点を当てています。
ファブリケイティド・ナレッジ社設立以前は、テキサス州ダラスを拠点とする投資会社Bowie Capitalで投資アナリストを務めていました。そして、Bowie Capitalでは、コンパウンダー(長期間にわたって一貫して高いリターンを生み出し、その価値を複利で成長させる能力を持つ企業)とクオリティ重視の投資に焦点を絞って分析 / 投資活動に従事しておりました。
その経験を通じて、オローリン氏は半導体、特にムーアの法則の終焉という変化するストーリーと、それが半導体業界/ 銘柄にとってどのような意味を持つのかに興味を持つようになりました。結果、半導体セクターに対する理解を一層追求するためのプロジェクトとして、ファブリケイティド・ナレッジ社を設立しました。
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