09/30/2024

エヌビディア(NVDA)は何がすごい?3月のジェンセンCEOによる基調講演の分析を通じて、同社の強みと魅力を徹底解説!

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  • 本稿では、「エヌビディアは何がすごいのか?」という疑問に答えるべく、2024年3月に行われたエヌビディア(NVDA:Nvidia)のジェンセンCEOによる基調講演の分析を通じて、同社の強みと魅力を詳しく解説していきます。
  • エヌビディアは、現実世界のシミュレーションを安価かつ柔軟に行うことで、AIやLLM(大規模言語モデル)を活用し、未来の技術発展を進めています。 
  • ジェンセンCEOは、シミュレーションが実験よりも効率的であり、物理世界をデジタルに再現することが重要であると述べ、「AIファクトリー」の概念を強調しています。 
  • エヌビディアは、GPUの進化と並列計算の活用を通じて、現実のシミュレーションにおいてリードしており、最新の製品ラインアップでもその取り組みを進化させています。

2024年3月のエヌビディア(NVDA:Nvidia)のジェンセンCEOの基調講演に関して

少し以前の内容となりますが、今年の初め、2024年3月18日のエヌビディア(NVDA:Nvidia)のジェンセンCEOの基調講演について、詳しく解説していきたいと思います。ぜひ全編を見ていただきたいです。そして、このレポートを読む前に基調講演を見ておくと、さらに理解が深まると思います。基調講演のリンクはこちらです

さて、AIの「なぜ」を語る上で重要なポイントを1つお伝えしたいと思います。まずはエヌビディアの製品発表について話し、その後、同社の競争力に関する考察をお届けします。

未来はシミュレーション:エヌビディア(NVDA:Nvidia)が描くAI駆動の世界

「シミュレーションは実際の実験よりもはるかに安価で、テストも柔軟に行える。実験室ではできないことも可能になる…だから、この傾向が続くのは必然です。」—リチャード・ハミング『The Art of Doing Science and Engineering

これは1950年代にリチャード・ハミング氏がベル研究所の社長に語った言葉です。そして今、この洞察は以前にも増して的を射ていると感じます。現実を観察したり直接関与したりするよりも、シミュレーションで再現する方がはるかに柔軟でコストも低いのです。

私は、LLM(大規模言語モデル)や「AI」が、この傾向の論理的な到達点であると考えています。大規模言語モデルは、可能な限り多くのデータ、たとえばインターネット上の情報や、これまでに書かれた書籍等で訓練されます

モデルは、このデータセットから関係性やパターンを学習し、それらをすべて「超要約(Super-Summary)」として保持します。そして、この圧縮された情報から必要な内容を取り出すことができるのです。

つまり、これはあらゆる言語や書かれた情報の非常に効率的な要約、あるいはシミュレーションとも言えます。こうして手にした安価な言語シミュレーションを使って、リチャード・ハミング氏の核心的な洞察を活かしてみましょう。「現実そのものを再現するよりも、コンピュータ上でそれをシミュレートしたり生成したりする方が、はるかに安価で簡単」という点を深掘りしていきたいと思います。

圧縮の力:エヌビディア(NVDA:Nvidia)を取り巻くLLM(大規模言語モデル)とシミュレーション革命

LLM(大規模言語モデル)やAIは、情報の圧縮の究極の形です。そして、現時点で最良の例であると同時に、AIは将来的にあらゆるものをこのレベルの圧縮に到達させる可能性を持っています。私たちは可能な限り多くの情報やデータを集め、それを大規模なモデルで学習させ、そのデータ間の関係を理解させます。そして、新しい言語を学んだりウェブサイトを作ったりといった現実の行動を取る代わりに、圧縮された情報を使ってそれらを生成することができるのです。

コンピュータの進化に沿えば、シミュレーションを使う方が現実に関わるよりも安価で、迅速かつ柔軟です。

ここで例として、このモデルの適用範囲を言語の枠を超えて広げてみましょう。トランスフォーマーモデル(自然言語処理などで使われるAIモデルの一種で、大量のテキストデータから文脈を理解し、言語のパターンを学習することで、翻訳や文章生成などを行う技術)はすでに画像認識や音声認識にも使われており、いずれAIは現実を圧縮し、効果的にシミュレートするようになるでしょう。これを動画に応用できるとしたらどうでしょう?それがまさにOpenAIの「Sora」です。

また、人間のゲノム全体やタンパク質の折りたたみ方が分かれば、遺伝子や薬の発見を正確にシミュレートできるでしょう。これこそがエヌビディア(NVDA:Nvidia)が「NVIDIA Healthcare」で目指しているものです。

さらに、その先もあります。エヌビディアは「Earth 2」と呼ばれる地球のデジタルツインを作り、気象予測をより正確にしたいと考えています。これは、コンピューティングによる圧縮の最終的な形です。なぜなら、現実で実験するよりもシミュレーションする方がコストが安いからです。

実際、トランスフォーマーモデルの汎用性が、十分なデータと計算力があれば何でもシミュレートできるという可能性を切り開きました。最初の構築には非常に高いコストがかかるものの、一度モデルが完成すれば、現実よりも安価になります。これがジェンセンCEOが説明している未来です。十分なデータがあれば、何でも学び、理解することができるということです。これが彼の言う「AIファクトリー」の意味なのです。

一度現実のモデルやシミュレーションが作られ、それが画像生成や動画制作で私たちと同じくらいの精度を持つようになれば、現実に触れるよりもそのモデルを使って生成する方が理にかないます。それこそが当基調講演の要点であり、この深い真実を様々な視点から繰り返し説明しているのです。

ジェンセンCEOは「Generative AI Factory(生成AIファクトリー)」という概念を繰り返し説明し、現実に関わるよりもシミュレーションする方が安価であるという事実を強調しています。このことを理解すれば、AIをこれほどの規模で追求する理由がより明確になるでしょう。

エヌビディア(NVDA:Nvidia)は知識から現実を生み出す?

現実の観測に基づいて天気を予測するよりも、過去の観測データとモデルを使って現実をシミュレートしたほうが、より正確に天気を予測できます。このモデルは必ずしもコンピュータ内に存在する必要はなく、自然界からのデータやフィードバックを取り入れてそれを調整し、その結果をコンピュータでシミュレートすることもできます。

たとえば、車のCMを実際に撮影するより、その動画を生成する方がはるかに簡単です。確かに高度な計算力が必要ですが、砂漠に行って車のCMを撮影するよりも効率的です。そのため、より効率的で安価、そして時には現実以上に優れたシミュレーションと言えます。例えば、CMの色や場所、天候、環境を自由に変えて撮り直すことができるのです。より良いモデルがあれば、それが現実と見分けがつかないほどになりながら、現実で行うよりもはるかに安価で迅速に実現できます。

リチャード・ハミング氏の予測は、実験の枠を超えて正確であるように見えます。私たちは実験をしているのではなく、現実をシミュレートしています。これは現実のモデルを繰り返し生成し、まるで実際に起こったかのように情報を提供するということです。

これがジェンセンが言う「AIファクトリーが情報を生み出す」という意味です。このファクトリーはエヌビディアのGPUポッド(複数のGPUをまとめて配置し、大規模な計算処理を行うためのシステム)であり、そのアウトプットは効率的に圧縮された現実です。

こうしたモデルを作り、訓練し、推論するのには非常にコストがかかりますが、一度圧縮が完了すれば、現実よりもはるかに安価で柔軟になり、より良いデータを得られることも多いでしょう。

このような基盤モデルは高価ですが、一度作れば、そのコストを後から回収する方法を見つけることができるでしょう。これは過去のすべての画期的な技術革新と同じです。

現実では不可能なことを、何百時間もかけたり何千ドルも費やすことなく、フォトリアル(現実の写真のように非常にリアルで細部まで忠実に再現された映像や画像)な動画で表現することが可能になります。生物学に関する既存の知識を活用して新薬を作ることもできますし、物理学の知識を基に新しい素材を開発することもできるのです。

この物理宇宙のモデルの連鎖的な展開こそが、エヌビディアが「オムニバース」と呼ぶものです。率直に言えば、メタバースの夢は現実をデジタルツインとして再現することだと思います。そして、私たちの物理世界をより安価に再現することが、注目すべき重要なトレンドと言えます。

私たちはシミュレーションの中に住んでいるわけではないかもしれませんが、私たちのコントロール下に置くためにそれを作ろうとしています。現実よりもずっと柔軟で、何度でも測定して最終的に一度だけ切り取ることができるのです。

そもそも私たち人間は、情報を処理し予測する機械のようなものではないでしょうか?脳の中は暗く、ほとんど刺激のない場所ですが、感覚から得た情報を基に世界の理解モデルを作り出しています。私たちはこのモデル作りを、より大規模でデジタルな形で進めているのです。そしてついに、私たちの脳というアナログモデルに匹敵するデジタルツインを作り出そうとしています。

そして興味深いのは、エヌビディアがこの分野で大きくリードする可能性があるということです。

エヌビディア(NVDA:Nvidia)がシミュレーションを支配する

長年にわたり最高のビデオゲームグラフィックスを作り、現実をシミュレートしてきた企業が、物理的な現実や言語のモデルをシミュレートする存在になるのは、驚くことではありません。

初期のCGI(コンピュータで生成された画像や映像のこと)はG-Force 6600(エヌビディアが2004年に発売したGPU)で実現されました。当時の目標はシミュレーション、つまりピクセルの再現でした。 コンピュータで私たちの世界を再現し始めたころ、それはピクセルやグラフィックシェーダーを使っていました。その過程で、ジェンセンCEOとエヌビディア(NVDA:Nvidia)は抽象化をさらに一段階進めることができると気づいたのです。当基調講演で、ジェンセンCEOは「AlexNet(2012年に登場したディープラーニングモデル)によって重要な飛躍が可能だと気づいた」と語っていました。

個人的には、AlexNetがその最初の大きな一歩だったと思いますが、トランスフォーマーこそがその可能性を初めて見せてくれたものでした。それは、元々のグラフィックスの夢を超える壮大な計画でしたが、エヌビディアがすでに行っていた、つまり行列計算によって現実をシミュレートすることの延長にあったと言えます。

それ以来、エヌビディアはその道筋を少しずつ描いてきました。ジェンセンCEOが基調講演で見せた驚くべき図が、その歩みを物語っています。データの増加がCPUの限界を超え、CUDA(エヌビディアが開発した並列計算プラットフォームおよびプログラミングモデル)と並列計算がその壁を突破する最初の方法となりました。そしてそこから、すべての決断が計算の夢を広げるためのものとなったのです。

ジェンセンCEOとエヌビディアは、この全過程を最前線で見守ってきました。CUDAの研究と解決すべき課題を見極めながら、ジェンセンCEOはより大規模な現実をシミュレートするため、より強力なGPUを作り、そのシステムに実現させる手段を整えてきたのです。

これが今のエヌビディアです。最近もB100、GB200、NVSwitchといった素晴らしい製品を発表しました。そして今のエヌビディアは、単なるGPUメーカーではなく、ソリューションを提供する企業です。今日のDGXポッド(エヌビディアが提供するAI向けの高性能コンピューティングシステム)は単なるラック(データセンターやサーバールームで、複数のサーバーやネットワーク機器を収めて整理するための金属製の収納ケース)ではなく、完全なシステムであり、それこそが素晴らしい点なのです。

次章では、エヌビディアの製品ラインアップについて詳細に解説していきます。

※続きは「エヌビディア(NVDA:Nvidia)の強み:BlackwellやGB200とは?製品の詳細と推論最適化の仕組みに迫る!」をご覧ください。

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📍半導体&テクノロジー担当

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