やや強気Tロウ・プライス・グループすべて表示Tロウ・プライス・グループ(TROW)の将来性:予想配当利回り4.6%の注目の米国高配当株の今後の株価見通しに迫る!
イアニス・ ゾルンパノス- 本稿では、Tロウ・プライス・グループ(TROW:予想配当利回り4.61%・配当性向58%・1株当たり配当金1.24ドル)の最新の2024年度第2四半期決算発表と配当推移に関するトレンド、さらに、同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。
- そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
- Tロウ・プライス・グループは米国を代表する資産運用会社であり、予想配当利回り4.61%の配当株として魅力が高い一方、自社株買いにも積極的であり、株主還元を重視するインカム投資家には魅力的な投資対象となっています。
- しかしながら、2024年第2四半期のEPSは前年同期比で増加したが、前四半期比では減少し、売上高も減少するなど、市場環境の影響を受けています。
- ただし、長期的には成長が続いており、さらに、ROICがWACCを継続して上回っていることからも、経済的価値を創出し続けていますが、足元のインサイダーの売却動向には注意が必要と言えるでしょう。
Tロウ・プライス・グループ(TROW)の概要
レーティング:やや強気
バリュエーション:やや割安
リスクレベル:低リスク
セクター:資産運用
現在の株価:108ドル
時価総額:241億ドル
弊社算出の一株当たり本質的価値:120.5ドル
安全余裕率(マージン):10.14%
過去5年間の配当成長率:13.20%
前回配当落ち日:2024年9月13日
次回配当支払い日:2024年9月27日
予想配当利回り:4.61%
過去5年間の売上高成長率:6.50%
過去10年間の売上高成長率:9.30%
関連用語
安全マージン(Margin of Safety):株式の内在価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、内在価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。
売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。
足元の株価推移
(出所:筆者作成)
Tロウ・プライス・グループ(TROW:予想配当利回り4.61%・配当性向58%・1株当たり配当金1.24ドル)は、個人および機関投資家向けに資産運用サービスを提供している米国拠点の資産運用会社です。
2024年7月時点で運用資産は約1兆5,870億ドルに達し、株式(51%)、バランス型(34%)、債券およびマネーマーケット(12%)、オルタナティブ投資(3%)と多様な投資商品を提供しています。
同社は主に米国内で活動しており、運用資産の約9%が海外からのものとなっています。
また、同社の特徴は、運用資産の約3分の2が退職関連口座に預けられており、安定した顧客基盤を持つ点であり、さらに、退職プランニングや個別アカウントの運用、ディスカウントブローカーや信託サービスも提供しています。
加えて、同社の財務状況も健全で、配当株としての魅力が高く、予想配当利回りは4.61%と競争力のある水準にある一方で、同社は自社株買いも積極的に行い、株主還元に注力しています。
最近ではさらなる成長のために資産運用関連の戦略的買収も行っており、これによりビジネスの多様化を図っています。
そして、同社は2024年7月26日に2024年第2四半期決算を発表しています。
Tロウ・プライス・グループ(TROW)の最新の2024年度第2四半期決算発表に関して
Tロウ・プライス・グループ(TROW)の2024年第2四半期の非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI)は2.26ドルとなり、第1四半期の2.38ドルから減少しましたが、2023年第2四半期の2.02ドルからは増加しました。前四半期比の減少は厳しい市場環境を反映していますが、前年同期比の増加は業績の回復や安定を示しています。
一方で、長期的なパフォーマンスを見ると、下記のチャートからも分かる通り、同社株の非経常損益項目を除くベースでのEPSの過去5年間の年平均成長率(CAGR)は1.60%で、過去10年間の年平均成長率は10.70%となっており、最近の変動を乗り越えつつも、長期的な成長を続けていることが分かります。
また、2024年第2四半期の1株あたり売上高は7.755ドルで、第1四半期の7.806ドルからはわずかに減少しましたが、前年同期の7.15ドルからは改善しており、売上の成長も堅調に推移しています。
粗利益率は50.69%で、過去5年間の中央値である57.55%、および、過去10年間の中央値である57.70%を下回っており、コスト増加や競争激化による価格戦略の影響が見られます。
さらに、同社は株主還元策の一環として自社株買いを行っており、過去1年間の自社株買い比率は0.70%、過去10年の平均自社株買い比率は1.70%です。このことからも、自社株の買戻しにより発行済み株数が減少し、EPSの向上に寄与しています。
業界予測では、今後10年間で年間約5%の成長が見込まれており、同社の売上高は2026年までに7,793.11百万ドルに達する見込みです。
そして、来年度の予想EPSは8.95ドル、翌年度には8.97ドルと、穏やかな成長が予想されています。
次回の決算発表は2024年10月25日近辺に予定されており、そこで今後の事業戦略や市場動向に関するさらなる情報が明らかになるでしょう。
非経常損益項目を除くベースでのEPS
(年間ベース:直近4四半期の合計値)
(出所:筆者作成)
関連用語
EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。
非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。
希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。
1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。
粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。
自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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Tロウ・プライス・グループ(TROW)の財務パフォーマンスに関して
Tロウ・プライス・グループ(TROW)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)、加重平均資本コスト(WACC)、自己資本利益率(ROE)の観点から分析していきます。
まず、同社は、財務効率と価値創出能力において優れたパフォーマンスを発揮しています。
下記のチャートからも分かる通り、同社のROICとWACCを比較した分析では、常にプラスの経済価値を生み出していることが確認できます。
過去5年間の中央値では、ROICは27.51%と、WACCの中央値である8.81%を大幅に上回っており、資本コストを超えるリターンを効率的に創出し、株主価値を向上させていることが分かります。
また、現在のROICは17.31%で、過去5年の中央値よりは低いものの、現在のWACCの水準である12.50%を上回っており、引き続き資本コストを超える価値を生み出していることがわかります。
このように、ROICがWACCを上回っていることで、同社が経済的な価値を創出し続けていることが示されています。
また、経済環境の変動にもかかわらず、ROICがWACCを上回り続けていることは、同社の資本配分戦略の堅実さと経営効率の高さを物語っています。
総じて、Tロウ・プライス・グループのROICがWACCを上回り続けていることは、同社が持続可能な経済的な価値創出を実現し、効果的な財務管理を行っている証拠といえます。
投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の比較
(出所:筆者作成)
関連用語
総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。
自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。
投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。
ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。
加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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Tロウ・プライス・グループ(TROW)の配当に関して
Tロウ・プライス・グループ(TROW)は、過去5年間で平均13.20%の安定した配当成長を実現しています。
直近では、1株あたりの配当金が1.22ドルから1.24ドルに増額され、株主還元に対する継続的な姿勢が示されています。
また、予想配当利回りは4.61%と、業界内でも競争力のある水準です。
加えて、同社のEBITDA有利子負債倍率は0.11倍と非常に低く、財務レバレッジがほとんどないことから、債務返済能力が非常に強固であることが伺えます。
これは業界の一般的な基準を大きく下回っており、バランスシートの健全さを示しています。
一方で、今後3〜5年間の予測配当成長率は控えめな2.18%となっており、経済状況の変化や企業の戦略的な方針を反映し、より慎重なアプローチが取られる可能性があります。
しかし、現在の配当性向は58%と無理のない水準で、今後の増配の余地を残しています。
過去には配当性向がより高かったため、利益の再投資や将来の柔軟性を確保するための戦略的な判断があったと考えられます。
直近の権利落ち日は2024年9月13日で、次回は四半期配当スケジュールに従った場合には、2024年12月13日に権利落ちが見込まれています。
予想配当利回り:4.61%
配当性向:58%
配当カバレッジ・レシオ:1.72倍
過去5年間の配当成長率:13.20%
EBITDA有利子負債倍率:0.11倍
DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出所:筆者作成)
Dividend Yield:予想配当利回り
(出所:筆者作成)
Dividend Payout:配当性向
(出所:筆者作成)
関連用語
1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。
配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。
予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。
配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。
EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。
配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。
配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。
配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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Tロウ・プライス・グループ(TROW)のバリュエーションに関して
Tロウ・プライス・グループ(TROW)の現在の株価は108.28ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である120.5ドルよりも低い水準にあり、10.14%の安全余裕率(マージン)があることから、同社の現在の株価は割安である可能性を示しています。
また、同社の予想PERは11.89倍で、過去10年間の中央値である15.35倍を下回っているため、さらに割安感があるといえます。
さらに、直近12か月のEV/EBITDAは7.89倍で、過去10年の中央値である9.42倍を下回っており、企業価値に対する収益効率が良いことを示しています。
加えて、直近12か月の株価売上高倍率(PSR)は3.59倍で、過去10年間の最低値である3.13倍に近く、中央値の4.62倍を下回っているため、売上高に対して株価が低く評価されていることがわかります。
そして、PBRは2.43倍で、過去10年間の最低値である2.10倍に近く、中央値の3.85倍を下回っており、割安であることを裏付けています。
一方、株価フリーキャッシュフロー倍率(P/FCF)は19.48倍で、過去10年間の中央値である19.58倍とほぼ一致しており、キャッシュフローに基づいた場合のバリュエーションは安定しているように見えます。
市場のアナリストの評価では、目標株価は最近やや下落したものの、112.92ドル付近で安定しており、現在の価格をやや上回っています。
この目標株価は弊社算出の一株当たり本質的価値と大きな差はないことからも、株価の上昇が期待できるかもしれません。
総じて、Tロウ・プライス・グループのバリュエーション指標は過去の水準と比較して魅力的であり、これらのトレンドが続くと仮定した場合には、投資家にとって足元の価格は良い投資機会であると言えるかもしれません。
(出所:筆者作成)
上記グラフにおける関連用語
Price:現在の株価
Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値
DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価
DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価
Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価
Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価
赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値
関連用語
実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。
株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。
株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。
EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。
PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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Tロウ・プライス・グループ(TROW)のリスクとリターンに関して
Tロウ・プライス・グループ(TROW)のリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。
まず、財務面では非常に健全です。ピオトロスキーのFスコアは8と高く、資産の効率的な活用や収益性が高いことがわかります。
また、アルトマンのZスコアも9.02と、財務リスクが低いことを示しています。
インタレスト・カバレッジ・レシオも十分であり、さらに、PERが過去1年間の最低水準に近いことから、割安感がある可能性があります。
しかし、一部のリスク要因にも目を向ける必要があります。
同社の資産は売上高よりも速いペースで増加しており、効率性の低下が懸念されます。
また、粗利益率と営業利益率は年率でそれぞれ2.5%と5.1%低下しており、収益性に圧力がかかっていることが伺えます。
さらに、インサイダーによる同社株式の売却が続いている一方で、買い付けは確認されていないため、経営陣の同社株式の今後の見通しに対する信頼感に疑問が生じる可能性があります。
さらに、株価が過去1年間の最高値水準に近づいていることも、上昇余地が限られていることを示唆し、すでに株価が適正水準に達している可能性を示しています。
総合的に見て、Tロウ・プライス・グループは財務基盤が安定している一方で、利益率の低下やインサイダーの売却動向には注意が必要です。
投資家は、これらのリスクと同社の財務の安定性や将来的な成長を慎重に見極めた上で、投資判断を行うべきでしょう。
関連用語
財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。
アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。
ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。
ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。
ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の内在価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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Tロウ・プライス・グループ(TROW)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して
Tロウ・プライス・グループ(TROW)の過去1年間のインサイダーによる同社株式の取引活動を見ると、内部関係者による一貫した売却が続いており、買い付けは記録されていません。
直近3か月では3件の売却があり、過去6か月では5件、そして過去1年間では合計12件の売却が確認されています。
この売却トレンドは、内部関係者が足元の同社株式の株価の上昇を活用しているか、短期的な株価のパフォーマンスに自信がないことを示唆している可能性があります。
また、インサイダーによる同社株式の保有比率は8.14%と依然として大きな割合を占めていますが、プロの機関投資家が73.25%を保有しており、長期的な見通しに対する市場の信頼が示されていると考えられます。
インサイダーによる購入がなく、一方で売却が続いている状況は、潜在的な投資家にとって内部関係者の同社の将来見通しに対する懸念を抱かせるかもしれません。
しかし、大規模なプロの機関投資家の保有比率を考慮すると、市場全体としては同社に対してポジティブな見方が残っていると言え、同社のファンダメンタルズや市場状況をさらに調査する価値があるでしょう。
インサイダー(内部関係者)による売買
(出所:筆者作成)
関連用語
インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。
機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。
Tロウ・プライス・グループ(TROW)の流動性に関して
Tロウ・プライス・グループ(TROW)の流動性は高く、過去2か月の1日平均取引量は1,169,832株で、投資家の関心が非常に高いことがうかがえます。また、直近営業日では、取引量が1,466,564株に急増し、通常の水準を大きく上回りました。この急増は、市場での関心が一段と高まったことや、特定のニュースやイベントに対する反応が影響している可能性があります。
また、同社株式のダークプール指数(DPI)は54.63%で、全取引量の大半がダークプールで行われていることを示しています。
ダークプールでは、機関投資家が市場に与える影響を抑えつつ大口取引を行うことができます。
DPIが50%を超えるということは、取引の半数以上が取引所外で行われていることを示しており、これが価格の透明性や変動に影響を与える可能性があります。
総じて、Tロウ・プライス・グループの流動性は高く、通常より多い取引量にもかかわらず、価格への大きな影響は見られません。
投資家は引き続き同社株式の取引動向やDPIの水準を注視する必要があり、これらは機関投資家の動きや将来の価格変動を見極めるための重要な手がかりになるでしょう。
そして、特に高いDPIは、個人投資家が市場外で行われる大口取引の影響を考慮する必要があることを示唆しています。
関連用語
※ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。
※ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。
アナリスト紹介
イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。
以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。
ゾルンパノス氏のその他の配当関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ゾルンパノス氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。
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