米国利下げの影響とは?FOMCの利下げが株価に与える影響と今後の米国株の見通し、並びに、注目セクターを徹底解説!
ジェームズ・ フォード- 本稿では、直近のFOMCでの50ベーシスポイントの利下げが米国の株価に与える影響と今後の米国株の見通し、並びに、注目のセクターを詳しく解説していきます。
- FRBの利下げは通常、株式市場にプラスの影響を与えますが、過去のデータでは必ずしもそうでない場合がありました。
- 1995年のFRBの利下げは、ソフトランディングの成功例として注目されていますが、現在の状況もこれに似ているとされています。
- 特定のETFが金利の低下によって恩恵を受けており、今後も利下げが続くと予想される中で、注目のセクターを紹介していきます。
FOMCでの利下げにまつわる誤解
FRBが利下げをすると、その影響が米国株式市場にどう出るかについて、必ず多くの憶測が飛び交います。
基本的には、利下げは株式にプラスだとされています。なぜなら、借入コストが下がり、投資が促進されるうえ、割引率が低下して株式の評価額が上がるためです。
他の要因がなければ、利下げは株式市場や経済にとって良いことです。
しかし、このチャートは違う視点を示しています…。
Fedの利上げ時に買い、最初の利下げから最後の利下げまで売る
(出所:ISABELNET)
過去3回の利下げサイクルを見ると、その後に弱気相場と景気後退が続いています。
ただし、上記のチャートが示唆するように、最初の利下げで必ずしも売るべきというわけではありません。過去3回の利下げでは、FRBが経済の弱さに対応して利下げを行っており、場合によっては弱気相場の開始後に利下げが行われていました。
さらに長期的なデータを見てみると、利下げ後の年は通常の年よりも市場が好調な傾向があります。
(出所:LPL Research)
1998年は市場が非常に好調だった年の一例です。実際、最初の利下げ後の6ヶ月間でS&P 500は22.6%も上昇しました。
もちろん、その後、ドットコムバブルの崩壊で市場は急落しましたが…。
1995年のケースは、現在の状況に非常に似ています。当時、FRBは7回の利上げを行いましたが、これは2022年3月から2023年7月までの11回の利上げと比較できます。
1995年は、FRBがインフレを抑えつつ経済を崩壊させなかった「ソフトランディング」を実現したとされる例の一つです。
FOMCでの50ベーシスポイントの利下げに対する見解
8月のインフレデータによると、前年同月比のコアPCEインフレ率は2.7%で、依然として高めではありますが、2022年のピーク時の半分まで低下しています。
(出所:Federal Reserve and Bureau of Economic Analysis)
数か月にわたるインフレの落ち着きを考えると、FRBは2%の目標に向けた進展に自信を持ちつつあります。
一方で、労働市場は予想以上に急速に悪化しています。7月のFOMC会合以降、雇用データは低調で、雇用増加ペースが著しく鈍化しています。
8月までの3か月間の平均雇用増加数は11.6万人で、6月の17.7万人から大幅に減少し、パンデミック前の水準を下回っています。さらに、労働統計局による年間雇用改定の予備推計では、81.8万人の大幅な下方修正が見込まれており、これは2009年以来の最大の修正です。
(出所:Bureau of Labor Statistics)
そして、FRBは50ベーシスポイントの利下げを行いましたが、現在のインフレ再燃のリスクは低いと考えられ、経済は弱まってきています。
しかし、リセッション(景気後退)だと判断するには、まだ十分な証拠は揃っていないと見ており、ソフトランディングの可能性は十分にあると考えています。
ただ、50ベーシスポイントの利下げは市場を不安にさせる恐れがあるとも思います。FRBがリセッションを懸念しているという見方が、「流動性の増加」というポジティブな要因を上回るかもしれません。
FOMCでの利下げ後に注目のセクター
FRBが50ベーシスポイントの利下げを行い、今後も利下げが続くと予想されています。これにより経済全体に影響が出るだけでなく、特定のセクターにも大きな変化をもたらし、勝者と敗者が出てくるでしょう。
利下げは資金調達を容易にし、リスクプレミアムを低下させます。これにより、より投機的な投資が成長しやすくなります。
特に、住宅市場や銀行など、金利に大きく依存しているセクターもあります。
ここでは、今後アウトパフォームすると私が注目している2つのETFを紹介したいと思います。
まずは、私たちのETFポートフォリオの中で最も好調なポジションの1つで、ポートフォリオに追加してから41%も上昇したETFです。このETFは、金利の低下から利益を得るだけでなく、長期的な成長を支える多くの要因があります。
SPDR S&P ホーム・ビルダーズ ETF(XHB)
2023年12月にこのSPDR S&P ホーム・ビルダーズ ETF(XHB)をポートフォリオに追加しました。
このセクターは、金利の低下予想だけでなく、厳しい規制によって供給が抑えられていることからも恩恵を受けています。
(出所:TrendSpider)
チャートを見ると、弱気相場の底から2倍の水準に近づくと、やや調整が入るかもしれません。また、RSIが過熱領域に入り、弱気のダイバージェンスを示しています。
それでも、ホームビルダーセクターは引き続き好調だと考えており、私たちのアルゴリズムもロングポジションを維持しています。
(出所:TrendSpider)
アルゴリズムのバックテスト結果も非常に良好なので、私はこのポジションを信頼しています。
iシェアーズ・ラッセル2000 ETF(IWM)
以前も取り上げましたが、iシェアーズ・ラッセル2000 ETF(IWM)を改めて強調したいと思います。小型株は依然として大きなリターンが期待できると考えています。
(出所:TrendSpider)
この指数はまだ高値を更新していませんが、先月はナスダックをアウトパフォームしました。230のレジスタンスを突破すれば、大きな上昇が見込めると考えています。
(出所:TrendSpider)
また、IWM/NDX(iシェアーズ・ラッセル2000 ETF ÷ ナスダック100指数)の比率も低下しており(NDXがIWMに対して割高になっている)、底打ちの兆候を見せています。
マクロETFポートフォリオのアップデート: 新たなポジションを追加
それでは、マクロETFポートフォリオの状況をアップデートします。
(出典:Snowball Analytics SAS)
開始以来8%の上昇を記録しており、市場平均をやや下回っていますが、より分散されたリスクの低い投資を実現できていると見ています。
(出典:Snowball Analytics SAS)
現在最も好調な資産は上述のSPDR S&P ホーム・ビルダーズ ETF(XHB)とグローバルX MSCIアルゼンチンETF(ARGT)ですが、一部の過去の取引が足を引っ張り、現在イーサリアム(ETHUSD)とiシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI)では損失が出ています。
ここで私は、エネルギー分野に資金を再投入することに決めました。なぜなら、売られすぎの状況にあると感じているためです。
ご覧のとおり、原油のショートポジションは2020年の時点よりも増加しています。
(出所:Steno Research、Bloomberg、Macrobond)
また、前回のレポートで述べた原子力エネルギーに関する見解は、今回の状況にも当てはまると見ています。AI革命を支えるためには、原油の需要は依然として存在するでしょう。
(出所:TrendSpider)
今回のE波の安値で、このトライアングルは完成した可能性があります。もしEMA(指数平滑移動平均)を上回ることができれば、レンジ上限を試し、さらなるブレイクアウトを狙う動きが期待できるでしょう。
最後に
私は慎重ながらも強気の姿勢を維持していますが、相場の転換にも十分注意しています。そのため、売り時を判断できる、より体系的なリセッション指標の開発を足元で進めています。楽しみにしていてください!
アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード
ジェームズ・フォード氏は、エコノミストとして、過去10年に渡り、世界市場の分析に従事してきました。そして、自らを「実践的な投資家」と位置付け、資産を継続的に維持・拡大させることを目的とした、分散されたポートフォリオの構築に重点を置いています。
主に、「グローバル・マクロ」、「ハイテク」、「コモディティ」、「暗号通貨」関連銘柄に焦点を当て、ファンダメンタル分析、並びに、テクニカル分析を用いた企業分析を提供しております。
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