やや強気アボットラボラトリーズアボット・ラボラトリーズ / ABT / 予想配当利回り2% / 強気:ヘルスケア銘柄の株価分析と今後の見通し(前編)
ヴェンカット・ ラガーヴァン- ヘルスケア・セクターは、先進国の高齢化現象から追い風を受けている重要なセクターである。
- 医療機器関連株は、ウェイト・ロス(体重減少)新薬の登場により、長期投資家に絶好の買いの場を提供している。
- 当レポートでは、ヘルスケア・セクターをリードし、力強い成長を遂げ、安定したインカムポートフォリオ構築にフィットすべく配当金を継続して増やしているアボット・ラボラトリーズ(ABT:予想配当利回り2.1%)を取り上げたい。
はじめに
医療技術の急速な進歩により 、何百万人もの人々が、より長く、より健康で、より生産的な 生活を送ることができている。
栄養補助食品からインプラント、人工装具から放射線治療まで、医療技術は患者と医療提供者の利益のために医療現場を大きく変えてきた。
全体として、これらのテクノロジーは生活の質を向上させ、入院期間を短縮し、かつては不治の病であった生命を脅かす病気を克服するのに役立っている。
1980年以降、先進医療技術のおかげで、病院で過ごす患者日数が38%減少したことは注目に値する。
技術、装置、機器、診断テスト、健康情報システム等を開発、製造、販売する企業は、人々の寿命を延ばすために、病気の早期発見、より侵襲性の低い処置、より効果的な治療法というサポートを提供している。
治療法へのアクセスが広まった結果、先進国では急速に高齢化が進んでいる。
米国では、高齢者人口(65歳以上)が5,580万人に達している(僅か10年で38.6%増)。
G7諸国では、日本が最も高齢化率が高く(28.5%)、多くの欧州諸国とカナダは、米国よりも高齢化率が高いと報告されている。
恐怖に満ちた市場は不合理な市場である
金利が上昇し、ノボノルディスク社の「オゼンピック」という新しい減量薬が人気を集める中、市場は医療機器への影響についてヒステリックになっている。
市場は、全ての患者が減量薬に頼るようになり、それによって患者がより健康になり、心血管治療やその他の病気の必要性が大幅に減少すると考えている。
下図は、現在の治療法に関して、減量薬の普及によって影響を受ける可能性のある全ての疾患を示している。
(出典:ブルームバーグ)
市場は間違っている。
専門家は、患者が永久に服用(月1000ドル)する意思がない限り、この薬は病気の一時的な解決策に過ぎないと考えている。
これでは、病気や疾患の長期的な解決策とされる手術やその他の治療の必要性を先延ばしにしているに過ぎない。
しかし、短期的な非合理的な市場の動きにより、MedTech(メドテック)セクターの時価総額は3億ドル以上減り、長期投資家にとっては、ロング・ポジションを作る大きなチャンスとなっている。
ここでは、配当王である、アボット・ラボラトリーズを見てみよう。
アボット・ラボラトリーズ(ABT:年間予想配当利回り:2.1%)
アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、医薬品、医療機器、診断薬、栄養学など多様な製品を提供するグローバル・ヘルスケア企業である。
アボット社は、心血管機器、糖尿病治療、診断、成長・回復・持続可能な栄養の分野でリーダー的存在である。
アボット社の事業は160カ国にまたがり、地理的に高度に多角化されており、中核事業分野では複数の製品ラインが2桁の成長率を示している。
医療機器部門の売上高は14.7%増となり、構造的心疾患、糖尿病ケア、電気生理学、神経調節関連製品等の主要分野で、米国、および、国際市場の両方で2桁成長を達成している。
長年に渡り大きな成長ドライバーであり続けている糖尿病ケアでは、FreeStyle Libreの売上が前年同期比30.5%増という目覚ましい成長を達成し、電気生理学の海外売上高は20%以上の伸びを示すこととなった。
診断事業部門は、前年同期比10.1%増となったが、これは中核となる臨床検査診断が牽引したものであり、米国市場、および、海外で好調に推移し、2桁台の成長率を達成した。
栄養事業部門の売上高は、米国で20億7,000万ドル、海外で12億1,000万ドルと、前年同期比18%増という驚異的な伸びを達成した。
この例外的な成長には、主にシミラック(Similac:乳児用調製粉乳)の売上が力強く回復し、米国市場で41.8%増加したことが原動力となった。
小児用栄養製品の世界売上高は前年同期比20.9%増、成人用栄養製品の世界売上高は人気ブランド「エンシュア(Ensure)」に牽引され、前年同期比10.8%増となった。
医薬品部門は、心血管代謝、女性の健康促進、中枢神経系疼痛管理などの重要な分野での成長に後押しされ、売上高が11%急増し、これらの極めて重要なヘルスケア分野におけるアボットの広範囲な影響力を強調した 。
アボット社は、AA-格のバランスシートを維持し、短期借入金はなく、ポートフォリオ全体を強化するために戦略的買収を行っている。
同社は最近、9月にビッグフット・バイオメディカル(Bigfoot Biomedical)社を買収し 、糖尿病部門をさらに成長させ、先進的なインスリン管理システムを開発するのに有利な位置につけている。
減量薬の採用について経営陣は、患者が糖尿病やその他の関連疾患を管理するために、同薬と他の治療法を含めた二重のアプローチを採用しているのを目の当たりにしているとコメントしている。
一方で、アボット社は、51年連続増配中の配当王である。
1株当たり0.51ドルの四半期配当は、年換算利回り2.1%に相当し、株主は、次回の配当発表(12月予定)時に、小幅な増配が発表されることが予想できる。
同社は2023年度の予想EPSガイダンスを4.42~4.46ドルに引き下げ、年間配当の配当性向は45.9%と魅力的な水準にある。
アボット社は、2030年までに地球上の3人に1人にプラスの影響を与えることを目指している。
以上より、アボット社は、株主への配当を増やしながら、この目標を達成するのに有利な立場にあると見ている。
※続きは「メドトロニック / MDT / 予想配当利回り3.9% / 強気:ヘルスケア銘柄の株価分析と今後の見通し(後編)」をご覧ください。