【配当王】アボット・ラボラトリーズ(ABT)今後の株価見通し:52年増配の配当王の配当利回りは1.89%で配当金は0.59ドル!
- 本稿では、注目の米国配当株であるアボット・ラボラトリーズ(ABT:配当王・予想配当利回り1.89%・配当性向47%・1株当たり配当金0.59ドル)の2025年1月22日に発表された最新の2024年度第4四半期決算と配当推移の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、医療機器や診断機器、栄養製品などを提供するグローバルヘルスケア企業で、特に持続血糖モニター(CGM)や植込み型医療デバイスで高い評価を得ており、売上の約60%が米国外で発生し、新興市場での成長が顕著となっています。
- 同社は「配当王」として知られ、52年にわたり配当を増やし続けており、過去5年間の配当成長率は13.30%と高く、さらに2024年第4四半期決算では堅調な業績を報告し、EPS(1株当たり利益)が前年同期比12.6%増加しています。
アボット・ラボラトリーズ(ABT)の概要
セクター:医療機器・機器
現在の株価:125ドル
時価総額:2,168億6,000万ドル
過去5年間の配当成長率:13.30%
前回配当落ち日:2025年1月15日
次回配当支払い日:2025年2月14日
予想配当利回り:1.89%
過去5年間の売上高成長率:7.70%
過去10年間の売上高成長率:7.60%
関連用語
安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。
売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。
足元の株価推移
(出所:筆者作成)
アボット・ラボラトリーズ(ABT:配当王・予想配当利回り1.89%・配当性向47%・1株当たり配当金0.59ドル)は、米国イリノイ州アボットパークに本社を置くグローバルヘルスケア企業です。1888年に設立され、医療機器、診断機器、栄養製品、医薬品など多岐にわたる製品を提供しています。同社は、心血管デバイス、糖尿病ケア、成人および小児向け栄養製品、診断機器などの分野で強固な市場地位を築いており、特に持続血糖モニター(CGM)や植込み型医療デバイスで高い評価を得ています。
同社のビジネスモデルの特徴は、多様な製品ポートフォリオとグローバル展開にあります。売上の約60%は米国外で発生しており、特に新興市場での成長が著しいです。また、同社は研究開発(R&D)に積極的に投資しており、イノベーションを原動力とした持続的な成長を実現しています。例えば、Freestyle Libreシリーズは、糖尿病患者向けの画期的なCGM製品として世界的に高いシェアを誇っています。
配当に関しては、アボットは「配当王(Dividend King)」として知られ、52年にわたり配当を増やし続けている数少ない企業の一つです。直近の四半期配当は1株当たり0.59ドルで、予想配当利回りは1.89%です。過去5年間の配当成長率は13.30%と高い伸びを示しており、今後も9%以上の成長が期待されています。
投資家にとって、同社は安定した収益成長と堅実な配当政策を兼ね備えた魅力的な投資先と言え、医療分野の長期的な成長トレンドを背景に、同社は今後もグローバル市場での拡大を続けると見込まれています。
そして、同社は2025年1月22日に2024年第4四半期決算を発表しており、本稿では同社の最新の決算と財務パフォーマンス、並びに配当推移を詳しく分析していきます。
また、私はバリュー・インカム関連、並びに、テクノロジー銘柄に関するレポートを毎週複数執筆しており、私のプロフィール上にてフォローをしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることができます。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)の最新の2024年度第4四半期決算発表に関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、2025年1月22日に発表された最新の2024年度第4四半期決算において堅調な業績を報告しました。
非経常項目を除いたEPS(1株当たり利益)は1.34ドルで、2024年第3四半期の1.21ドルから10.7%増加し、前年同期(2023年第4四半期)の1.19ドルからは12.6%の成長を達成しました。
希薄化後のEPSは5.27ドルで、前四半期の0.94ドルから大幅に上昇し、高い運営効率と利益最大化を示しています。
1株当たり売上高も、2024年第3四半期の6.084ドルから6.285ドルに増加しました。
過去5年間および10年間のEPS(非経常項目除く)の年間平均成長率(CAGR)は12.20%を維持し、一貫した利益成長を実現しています。
粗利益率は55.41%と堅調ですが、過去5年間の中央値である56.65%および過去10年間の中央値の56.52%をわずかに下回っています。
最近の自社株買いでは、1年間の自社株買い比率が0.10%と控えめで、過去1年間に発行済み株式の0.1%を買い戻したことを示しています。
一方で、過去10年間の自社株買い比率は-1.90%で、発行済みの株式数が増加したことを反映しています。
因みに、自社株買いは発行済み株式数を減らすことでEPSを押し上げ、株主価値を高める可能性があります。
今後の見通しとして、同社の売上高は大幅に成長すると予想されており、市場のアナリストは2025年までに4,445億7,740万ドル、2027年までに5,108億2,390万ドルに達し、次年度のEPSは3.981ドル、その次の年度は4.522ドルと予測されています。
そして、業界の成長率は今後10年間で年間平均3-5%程度と見込まれています。
次の決算発表は2025年4月17日を予定しており、今後の業績に関するさらなる洞察が明らかになるでしょう。
非経常損益項目を除くベースでのEPS
(年間ベース:直近4四半期の合計値)
(出所:筆者作成)
関連用語
EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。
非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。
希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。
1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。
粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。
自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)の財務パフォーマンスに関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。
同社は、ROICがWACCを大幅に上回っており、高い財務効率と価値創出を示しています。
現在のROICは24.38%で、WACCの8.53%を大きく上回っています。
これは、同社が資本を効果的に活用して利益を生み出し、経済的価値を創出していることを示しています。
過去5年間のROICの中央値は10.63%で、5年間のWACCの中央値の6.16%を一貫して上回っています。
この傾向は、同社が効率的な資本配分と価値創出を維持していることを強調しています。
また、同社の自己資本利益率(ROE)は34.54%と高く、収益性の高さと自己資本の有効活用を示しています。
全体として、同社の財務パフォーマンスは、資本コストを上回るリターンを生み出すことで株主価値を創出する、優れた経営体制を反映しています。
投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の比較
(出所:筆者作成)
関連用語
総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。
自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。
投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。
ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。
加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)の配当に関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、近年にわたって強い配当成長を実現しており、過去5年間の配当成長率は13.30%、過去3年間の配当成長率は12.30%です。
この配当の成長傾向は、直近の四半期配当が1株当たり0.55ドルから0.59ドルに増額されたことにも表れており、株主への高いリターンを示しています。
加えて、同社は過去52年間連続して増配しており、米国株配当王の一角を担っています。
予想配当利回りは1.89%で、過去10年間の中央値1.79%をわずかに上回っていますが、過去最高の2.69%には及んでおらず、配当利回りには改善の余地があることを示唆しています。
一方で、同社のEBITDA有利子負債倍率は1.65倍で、低水準であり、債務返済能力が強いことを示しています。
基本的には、EBITDA有利子負債倍率は2倍以下であれば財務リスクが低く、4倍以上であれば財務リスクが高いことを示すとされています。
そのため、この低いレバレッジは、同社が債務に過度に依存せずに配当を維持・拡大する能力を支えています。
さらに、今後3-5年間の配当成長率は9.17%と予測されており、継続的な収益成長と財務安定性に対する信頼を反映しています。
全体として、同社の配当戦略は堅固であり、強力な財務管理と株主への価値還元へのコミットメントを示しており、配当収入を重視したインカム投資家には魅力的な選択肢となっているように見えます。
予想配当利回り:1.89%
配当性向:47%
配当カバレッジ・レシオ:3.48倍
過去5年間の配当成長率: 13.30%
EBITDA有利子負債倍率:1.65倍
DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出所:筆者作成)
Dividend Yield:予想配当利回り
(出所:筆者作成)
Dividend Payout:配当性向
(出所:筆者作成)
関連用語
1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。
配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。
予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。
配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。
EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。
配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。
配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。
配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)のバリュエーションに関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)の現在の株価は125.03ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である108.16ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-15.6%となっていることから、やや割高である可能性が示唆されています。
一方で、TTM(過去12ヶ月)の実績ベースの株価収益率(PER)は16.34倍で、過去10年間の中央値36.08倍を大幅に下回っており、予想PERは24.25倍で、将来の利益成長への期待が反映されています。
しかし、TTMの実績ベースの株価売上高比率(PSR)は5.21倍で、10年間の中央値4.37倍を上回っており、市場が同社の売上高を歴史的平均よりも高く評価していることを示しています。
さらに、TTMの実績ベースのEV/EBITDA倍率は24.63倍で、10年間の中央値である20.00倍を上回っており、利息・税・減価償却前利益(EBITDA)に対する過大評価の可能性を示唆しています。
同様に、TTMの株価フリーキャッシュフロー倍率は33.7倍で、10年間の中央値30.49倍を上回り、キャッシュフロー生成に対するプレミアムがかかっていることを示しています。
そして、TTMの実績ベースの株価純資産倍率(PBR)は5.45倍で、10年間の中央値4.66倍を上回り、過去の水準よりも高い簿価倍数で取引されていることを示しています。
一方で、市場のアナリストの評価は全体的にポジティブで、コンセンサス目標株価は3ヶ月前の129.76ドルから132.41ドルに上方修正されています。
これは、アナリストコミュニティにおける同社に対する中程度の楽観的な見通しを示していますが、バリュエーション指標は、同社が歴史的な数値や本質的価値に対して過大評価されている可能性を示唆しているように見えます。
以上より、市場の投資家は、現在のバリュエーションにおけるプレミアムと成長見通しを慎重に検討し、安全余裕の欠如を投資判断に反映させる必要があるでしょう。
(出所:筆者作成)
上記グラフにおける関連用語
Price:現在の株価
Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値
DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価
DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価
Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価
Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価
赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値
関連用語
実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。
株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。
株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。
EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。
PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)のリスクとリターンに関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)のリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。
まず懸念材料として、同社は低い税率を適用しており、これが持続不可能である可能性があり、利益を人為的に膨らませている可能性があります。
また、粗利益率は長期的に低下傾向にあり、年間平均1.2%減少しています。
さらに、売上高の成長率は過去1年間で減速しています。
そして、株価は3年ぶりの高値近くで取引されており、株価売上高比率(PSR)も同様に高水準であり、過大評価の可能性を示唆しています。
加えて、配当利回りは2年ぶりの低水準であり、インカム投資家にとっての魅力が低下している可能性があります。
一方、同社にはいくつかの強みもあります。
まず、ピオトロスキーFスコアは8で、財務的に健全な状態にあり、運営効率と収益性の高さを示しています。
また、ベニッシュのMスコアは-2.66で、利益操作のリスクが低いことを示唆しています。
さらに、拡大する営業利益率は、コスト管理の改善を示すポジティブな指標です。
加えて、アルトマンZスコアは5.54と高く、破産リスクが低いことを示しています。
全体として、バリュエーションや成長に関する懸念はあるものの、同社の強力な財務指標と運営改善は、投資家にとってバランスの取れた視点を提供しています。
関連用語
財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。
アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。
ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。
ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。
ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して
過去1年間のアボット・ラボラトリーズ(ABT)のインサイダーによる同社株式の取引活動では13件のインサイダーによる売却が記録されている一方で、過去3ヶ月間には売却がありませんでした。
これは、同社の取締役や経営陣が保有株式を減らしている可能性を示唆しており、利益確定や個人の財務戦略の変更が背景にあると考えられます。
また、同じ期間にインサイダーによる同社株式の買い付けがなかったことは、同社の将来の業績や株価に対するインサイダーの慎重な見通しを示している可能性があります。
ただし、インサイダーによる同社株式の保有比率は0.87%と比較的低く、同社の役員や取締役が会社の株式を多く保有していないことを示しています。
一方、プロの機関投資家の保有比率は83.48%と非常に高く、機関投資家からの強い関心と信頼を示しています。
この高い機関投資家所有率は、インサイダーによる買い付けがなくても、株式に対する安定性と持続的な関心を提供する可能性があります。
全体として、インサイダーは売却しているものの、高いプロの機関投資家による保有比率は、同社の将来に対する投資家コミュニティのミックスされたセンチメントを示していると言えるでしょう。
インサイダー(内部関係者)による売買
(出所:筆者作成)
関連用語
インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。
機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。
アボット・ラボラトリーズ(ABT)の流動性に関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、顕著な流動性と取引活動を示しています。
過去2ヶ月間の平均取引量は5,435,519株で、市場参加者の活発な参加を示しています。
直近の取引日では、取引量は9,882,808株に急増し、平均を大幅に上回り、投資家の関心の高まりや特定の市場イベントの影響が反映されています。
また、同社のダークプール指数(DPI)は47.93%です。
この指標は、非透明な取引場での取引が中程度の水準であることを示しており、通常は大規模な取引を市場価格に大きな影響を与えずに実行するために機関投資家が利用します。
DPIが50%に近いことは、ダークプールと公開市場の取引がバランスよく行われていることを示し、機関投資家と個人投資家の両方が参加していることを反映しています。
全体として、同社の流動性プロファイルは強く、高取引量と重要なダークプール活動により、大規模な取引を価格に大きな影響を与えずに実行できる能力を持っています。
この流動性の多様性は、投資家にとって柔軟性を提供し、取引コストを削減することで、同社株式の魅力を高めていると言えるでしょう。
関連用語
※ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。
※ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。
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