【半導体:Part 4】半導体製造装置とは?2025年以降の半導体製造装置市場の今後の見通しを徹底解説!
ダグラス・ オローリン- 本編は、注目の半導体セクターの2024年度の振り返りと今後の見通しに関する詳細な長編レポートであり、6の章で構成されています。
- 本稿Part 4では、「半導体製造装置とは?」という基礎的内容から、2025年以降の半導体製造装置市場の今後の見通しを詳しく解説していきます。
- 半導体製造装置市場は、業界の寡占状態と高収益率を背景に重要な役割を果たす一方、国際貿易戦争や中国市場への依存により競争が激化しています。
- 2025年度以降の市場は、先端プロセスへの投資や中国国内企業の台頭が鍵となり、過去10年間の高成長率とは異なる厳しい競争環境が予想されます。
- 今後の市場動向には変動が予測され、特定の分野では楽観的な見方もあるものの、慎重な投資判断が求められるでしょう。
※「【半導体:Part 3】自動車・産業用半導体市場、メモリー市場、モバイル・スマートフォン関連半導体市場の今後の見通しを徹底解説!」の続き
前章では、2024年度のグローバル半導体関連銘柄の株価パフォーマンスの比較を通じて割安に放置されている可能性のある銘柄、並びに、注目のAI半導体関連銘柄と今後のAI半導体市場の見通しに関して詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
半導体製造装置(Semicap)市場の2025年度以降の見通しとは?
半導体製造装置とは、半導体チップや電子部品を製造するために使用される特殊な機械や装置のことを指します。この装置は、半導体ウェハー(基板)に回路を形成するプロセスや、ウェハーを切断、組み立て、検査する工程に必要不可欠です。以下に主な装置の種類を挙げます:
・露光装置:ウェハー上に微細な回路パターンを形成するための装置。光や電子ビームを使用します。
・エッチング装置:不要な部分を化学薬品やプラズマで取り除き、回路パターンを形成します。
・成膜装置:ウェハー表面に薄い膜を形成し、半導体デバイスの性能を向上させるために使われます。
・洗浄装置:ウェハー表面の微細な汚れや粒子を除去し、品質を保ちます。
・検査・計測装置:製造工程中や完成後のウェハーやチップの品質を確認します。
半導体製造装置は、精密な技術と高い信頼性が求められるため、開発には高度な専門知識と技術が必要です。主なメーカーには、アプライド・マテリアルズ(AMAT)、ASML(ASML)、東京エレクトロンなどがあります。この装置の性能が半導体の品質や生産効率に直接影響を与えるため、半導体業界において非常に重要な役割を果たしています。
そして、ここで四象限理論を適用するのはしっくりこない気がしますが、このセクターは半導体業界全体の中で最も難しい課題に直面している分野だと思います。まず、これらの企業はすべて寡占状態にあり、資本収益率が非常に高い優れたビジネスを展開しています。しかし、国際貿易戦争の影響を強く受けており、売上の30~40%が中国市場に依存しているのが現状です。
次の10年も「中国」が大きな焦点になると思われますが、今回は収益の依存度ではなく競争の観点で注目されるでしょう。Naura、ACMリサーチ(ACMR)、AMECといった企業によって国内生産能力が増強されており、これらの装置は現時点ではまだ品質が劣るものの、いずれ「十分使える」レベルに達する可能性があります。特に市場の下位セグメントでは、確実に大きな変革が起こるでしょう。
中国国内の先端ロジック向けWFE(半導体製造装置)能力(7nm未満)
(出所:SemiAnalysis)
過去3年間は中国市場からの売上が注目されていましたが、これからの5年間は中国企業との競争が主要なテーマになると考えています。2024年の中頃、半導体製造装置(Semicap)関連の株価収益率(マルチプル)が過去最高水準に達し、楽観的な見方が広がっていた時期は、投資するには良いタイミングとは言えませんでした。
(出所:Bloomberg)
その後、大きな調整が入りましたが、それでもなお投資は難しいと感じます。現在、TSMC(TSM)が唯一の重要な先端プロセス対応ファウンドリーである一方で、成熟したファウンドリー市場は低迷しています。先端プロセスへの投資や生産能力の拡大は非常に好調である一方で、後方プロセスはここ最近で最も厳しい状況にあると見ています。
マイクロチップ・テクノロジー(MCHP)は「チップス法(Chips Act)」の補助金を返還し、ツールの収益化を模索している一方、ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス(UMC)は業界全体での供給過剰を警告しています。その一方で、中国は生産能力を着実に拡大し、競争も激化しています。今後の10年間は、競争環境の厳しさや顧客の多様性、ツールへの幅広い投資という点で、過去10年間ほど恵まれた状況にはならないと予想されます。とはいえ、過去10年間の半導体製造装置(Semicap)業界は目覚ましい成長を遂げてきました。業界全体が長期にわたり年率20%以上の成長を維持してきたのです。
半導体製造装置(Semicap)セクターは、現在ちょうど分岐点にあるように思えます。今後も二桁のリターンを期待できる可能性はありますが、この分野は変動が激しく、さらなる輸出規制や投資意欲の低下が起きても不思議ではありません。そのため、現時点での私のスタンスは「ホールド」に近い状態です。価格が大幅に下がったことには満足していますが、市場にはまだ楽観的なムードが残っているように感じます。私が求めているのは、市場に「恐怖感」が漂う瞬間です。TSMCが予想外のWFE(半導体製造装置)関連の数値を発表する可能性がありますが、それがどう展開するかは未知数です。その時の状況を見て判断を下すつもりです。
ただし、これはすべての分野に当てはまるわけではありません。繰り返しになりますが、私はHBM(高帯域幅メモリ)に対しては強気です。特に、TCB(スルーシリコンビア)積層技術において優れたポジションを持つオント・イノベーション(ONTO)やキャムテック(CAMT)のような企業を好意的に見ています。一方で、ハイブリッドボンディングが今年のメモリ分野で大きな成功を収めるとは考えていないため、BE・セミコンダクター・インダストリーズ(BESI)のような企業についてはやや慎重です。ここでは忍耐が求められると思います。また、貿易戦争の影響を受けるのは避けられないリスクであり、その状況は決して理想的ではありません。一方、ボンディング装置を提供しているHanmiは、良いポジションを維持していると考えています。
次章では、PCとロジック市場、ファウンドリと成熟プロセス、光学分野、そして、IoT、電力、通信関連半導体市場の現状と今後の見通しを詳しく解説していきます。
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※続きは「【半導体:Part 5】PC&ロジック市場、ファウンドリ&成熟プロセス、光学分野、IoT・電力・通信関連半導体市場の今後の見通しを徹底解説!」をご覧ください。
アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
📍半導体&テクノロジー担当
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