【2024年第3四半期】世界半導体製造装置(WFE)市場の今後の見通し:半導体製造装置とは?WFEメーカーの最新の決算分析を通じて将来性に迫る!
ウィリアム・ キーティング- 本稿では、「半導体製造装置(WFE)とは?」という基礎的な内容から、大手世界半導体製造装置メーカーの最新の2024年第3四半期決算分析を通じて、世界WFE市場の今後の見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 2024年第3四半期の世界WFE市場は過去最高の売上高を記録したものの、成長は停滞し、主要メーカーの株価は2022年初頭の水準に戻っています。
- WFEセクターは2021年の急成長後、年間売上高1,000億ドルを維持し続けています。この「新常態」を評価すべきという意見がある一方で、今後も成長が見込まれにくい状況です。
- 株価は短期的に調整局面が続く可能性があるものの、半導体業界のサイクルを考慮し、3年以上の長期的視点で投資判断を行うべきとの指摘がされています。
半導体製造装置(WFE:Wafer Fab Equipment)とは
半導体製造装置(WFE)とは、半導体チップの製造工程で使用される装置群を指します。
WFEは、シリコンウェハー(基板)に回路を形成し、最終的に半導体デバイスを作り上げるために必要な設備やツールを含みます。
主に以下のようなプロセスに関連する装置が含まれます:
1. リソグラフィ装置:ウェハーに回路パターンを転写するための装置。
2. エッチング装置:不要な部分を削り取ることで回路を形成。
3. 成膜装置:薄膜を形成してウェハー表面を覆うための装置。
4. 洗浄装置:不純物や汚れを除去してウェハーを清浄化。
5. イオン注入装置:半導体特性を制御するためにイオンを注入。
これらの装置は、最先端の半導体技術を支える重要な役割を果たしており、特に製造プロセスの微細化が進む中で、その精度と効率性が大きな競争要因となっています。
2024年第3四半期:世界半導体製造装置(WFE)市場の動向
アプライド・マテリアルズ(AMAT)の2024年11月14日に発表された最新の2024年第4四半期(暦年:2024年第3四半期)決算をもって、主要な半導体製造装置(WFE)メーカーの決算シーズンが終了しました。
しかし、その締めくくりも序盤と同様、半導体関連株が軒並み下落する展開となりました。
表面上、AMATの決算内容に市場がこれほど反応する要素は見当たりません。
売上高は70.5億ドルで、ガイダンスの中央値(69.3億ドル)をわずかに上回り、前四半期比4%増、前年同期比5%増となりました。
売上高・純利益・純利益率
(出所:筆者作成)
粗利益率は47.5%で、前四半期比でも前年同期比でもほぼ横ばいです。
一方、次期の見通しとしては、売上高を中央値で71.5億ドルと予測しており、前四半期比で約1.5%増、前年同期比で約10.5%増を見込んでいます。
ビジネスの今後の見通し
(出所:アプライド・マテリアルズの2024年第4四半期決算資料)
しかし、市場の評価は厳しく、発表後にAMATの株価は一時8%下落しました。
同業他社も同じように厳しい反応を受けています。
(出所:Yahoo Finance)
AMATの株価は7月中旬以降下落が続き、現在ではピーク時から約34%下落した170ドル付近に位置しています。
これは2022年初頭の水準とほぼ同じで、3年前の水準に逆戻りした形です。
(出所:Yahoo Finance)
興味深いことに、この株価の逆戻りはラムリサーチ(LRCX)、ASMLホールディングス(ASML)、東京エレクトロンにも共通しています。
KLA(KLAC)は多少持ちこたえているものの、やはり下降トレンドが見られます。
一体、WFEセクターには何が起きているのでしょうか?
なぜ市場の支持をこれほど失ってしまったのでしょうか?
そして、2022年初頭の水準に戻ったことにはどのような意味があるのでしょうか?
これらを詳しく見ていきましょう。
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まず、これらの疑問に答える前に、まず世界の主要なWFEメーカー上位5社の売上高と純利益を確認してみましょう。
2024年第3四半期(Q3)の売上高は260億ドルで、前期比9.27%増、前年同期比14.51%増となりました。
四半期毎の半導体製造装置(WFE)売上高(単位:10億米ドル)
(参照企業:東京エレクトロン・ASML・ラムリサーチ・AMAT・KLA)
(出所:筆者作成)
これにより、四半期売上高は2022年第4四半期(Q4)に記録した過去最高の254億ドルを上回り、新たな記録を更新しました。
純利益は69億ドルで、前期比・前年同期比ともに偶然にも11.5%の増加となり、2022年第3四半期(Q3)の過去最高水準とほぼ同水準に達しました。
四半期毎の半導体製造装置(WFE)純利益(単位:10億米ドル)
(参照企業:東京エレクトロン・ASML・ラムリサーチ・AMAT・KLA)
(出所:筆者作成)
さらに、2024年の第1四半期から第3四半期までの累計売上高は前年同期比で3.5%増加しており、WFEセクターの年間成長率を5%と見込んでいた当初の予測とほぼ一致する結果となっています。
世界半導体製造装置(WFE)メーカーの株価動向と今後の見通し
過去5年間、WFE(半導体製造装置)セクターは2回の大きな強気相場を経験しました。
最初の相場は2019年中頃に始まり、パンデミックによる半導体需要の急増で加速し、2021年中頃まで続きました。
その後、2022年中頃まで調整局面に入りましたが、次に訪れたのが2回目の強気相場です。
この相場は生成系AIの台頭による期待感を背景に勢いを増し、2024年中頃にピークを迎えました。
しかし、それ以降は調整局面が続いており、第3四半期の決算シーズンを通じて形成された市場の見解(正否は問わず)が、その調整をさらに悪化させています。
(出所:Smartkarma)
この期間におけるWFE上位5社の売上動向を振り返ると、以下の2つの点が際立ちます。
1つ目は、2021年の売上高が前年比で44%も急増し、セクター全体が年間売上高1,000億ドルを超える時代に突入したことです。
2つ目は、ここ3年間、年間売上高がほぼ横ばいで推移していることです。
さらに、2024年の売上高も2023年とほぼ同水準にとどまる見込みであり、これで4年連続の成長停滞となりそうです。
2025年について予測するとすれば、2024年と同様の水準が続き、5年連続で大きな変化のない状況が続く可能性が高いといえます。
国・地域別の年間半導体製造装置(WFE)支出(単位:10億米ドル)
(出所:筆者作成)
ただし、これらはセクター全体を俯瞰して見た場合の話であり、すべての企業が同じ状況にあるわけではありません。
たとえば2023年を見てみると、ASMLホールディングス(ASML)の売上高は前年比で37.6%増加した一方、ラムリサーチ(LRCX)の売上高は24.8%減少しており、各社の状況は大きく異なっています。
(出所:筆者作成)
2023年半ばから始まった中国市場の不確定要素も見逃せません。
覚えている方も多いと思いますが、2023年初め、私を含む多くのアナリストは前年比で20%の売上減少を予測していました。
そして2023年上半期が終わる頃までは、実際にその予測どおりの状況が続いていました。
しかし、下半期に入ると中国向けの売上が急増し、その結果、2023年の年間売上高は前年比でほぼ横ばいとなりました。
2022年半ばに始まったWFEセクターの株価上昇は、主要企業全体の売上高が伸びていない中で起きたものでした。
その後も、明確な成長が見込めない状況が続く中で株価は上昇を続けましたが、2024年7月以降の調整局面で、KLAを除く株価は2022年初頭の水準に戻っています。
私が考えるに、この動きの背景には、2022年初頭がこれらの企業全体として初めて年間売上高1,000億ドルを超えたタイミングだったという事実があります。
市場は、この水準が「新たな基準」として定着したと捉え、今のところ2021年のような大きな成長は期待できないという認識を共有しつつあるのではないでしょうか。
世界半導体製造装置(WFE)市場に対する結論
WFEセクターは、2021年に記録した売上高44%増という大幅な成長を経て、現在「調整期間」に入っています。
それでも、この新たな高水準の売上を3年間維持し、さらに今後も2年間続く可能性が高いという点は、驚くべきことです。
年間売上高が成長していないと嘆くよりも、この「新常態」をしっかりと維持していることを評価すべきではないでしょうか。
株価については、今四半期中も下落傾向が続く可能性があります。
ただ、現在の価格水準には個人的にすでに魅力を感じています。
これらの企業は優れた経営を行っており、半導体の未来において欠かせない役割を果たす存在です。
ただし、投資には3年以上の長期的な視点が求められることを忘れてはなりません。
半導体業界にはサイクルが存在し、今後もそれが続くと考えられるからです。
さて、この先どうなるか、注視していきましょう。
加えて、直近、半導体市場を構成するその他の重要な市場である、世界半導体シリコンウェハー市場、並びに、世界半導体メモリメーカー市場の2024年度第3四半期のサマリーに関しても、下記のレポートにおいて解説しております。
半導体市場の最新動向をより包括的に理解するために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、併せてご覧いただければと思います。
世界半導体シリコンウェハー市場のサマリー
半導体メモリメーカー
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アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング
📍半導体&テクノロジー担当
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