05/06/2024

アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価見通しは明るい?最新の決算分析を通じて同社の将来性に迫る!

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  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の4月30日に発表された最新の2024年第1四半期決算の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • 最新の決算では、市場予想とほぼ一致するEPSを達成したものの、売上は若干予想を下回り、第2四半期のガイダンスも同様の結果となっています。
  • 特にMI300の需要に対する期待は高かったが、通年売上見通しは市場期待を下回り、サプライチェーンの制約もありつつも供給体制は整備されつつあるように見えます。
  • クライアント部門やエンベデッド部門の成長鈍化に加え、競争環境の激化が懸念され、特にインテルやエヌビディアとの競争が厳しく、将来の成長見通しに課題が残る内容となっています。

アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の2024年度第1四半期決算の概要

アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価は、先週の決算の内容を受けて6~7%下落している。

同社の決算について、また、なぜそれが非常に残念な内容だったのかについて話していきたい。

第1四半期決算において、AMDはEPSに関しては市場予想の水準を達成した一方で、売上高をわずかに市場予想を下回るも、第2四半期ガイダンスに関しては市場予想とほぼ一致する着地となった。

第1四半期決算

非経常損益項目を除くベースでのEPS:0.62ドル(ファクトセット予想:0.62ドル)

売上高:54.7億ドル(ファクトセット予想:54.8億ドル)

第2四半期ガイダンス

売上高:57億ドル±3億ドル(ファクトセット予想:57.3億ドル)

これはまた、ここ数年で最もわずかな市場予想対比でのEPSと売上高の上振れであったと言える。

前回、同様の展開が起きた際は、同社のPC部門は崩壊していたが、今回はエンベデッド部門の売上高が問題となっている。

しかし、ここでの真の論点はMI300にかかっており、市場の失望はそこにあった。

前四半期は、MI300の売上高を35億ドルと予想し、一時はバイサイドの予想が年間50~60億ドルだったことを思い出してほしい。

しかしながら、上述の期待にもかかわらず、同社はMI300の売上高を通期で40億ドルと予想した。

この内容は残念なことであるが、同社は今年いっぱいをサンドバッグと見なしているのかもしれない。

(原文)MI300 demand continues to strengthen. And based on our expanding customer engagements, we now expect data center GPU revenue to exceed $4 billion in 2024, up from the $3.5 billion we guided in January.

(日本語訳)MI300の需要は引き続き強化されています。また、顧客との契約拡大に基づき、データセンター向けGPUの売上は2024年に40億ドルを超えると予想しており、1月に発表した35億ドルのガイダンスから増加することとなります。

AMDのMI300Xには、特に第1四半期から第3四半期、そして第4四半期半ばまで競争力があることに留意していただきたい。

B100/200の立ち上がりは第4四半期に行われ、総保有コストは遥かに改善され、その後R100の製品立ち上げは2025年第1四半期までに行われるだろう。

別の言い方をすれば、同社のシリコンが輝くのは今だけであり、この数字しか出せないのであれば、この先どうなるかは疑問である。

さらに悪いことに、需給問題は真の混乱を引き起こしている。

ここでは、その幾つかを見てみたい。

最初の質問の一つは、パートナー(サムスンだと思われる)が供給の遅れを生じさせており、それがMI300の売上高低迷につながっているのではないかというものであった。

しかし、リサ・スーCEOはそれを一蹴し、供給の立ち上がりは非常に順調で、これまでで最速の製品立ち上がりだと述べている。

また、第1四半期と第2四半期の供給が増えれば、もっと良くなるだろうとも言っていた。

(原文)I think Q2 will be another significant ramp. And we're going to ramp supply every quarter this year. So I think the supply chain is going well. We are tight on supply. So there's no question in the near term that if we had more supply, we have demand for that product, and we're going to continue to work on those elements as we go through the year. But I think both on the demand side and the supply side, I'm very pleased with how the ramp is going.

(日本語訳)第2四半期も大幅な増産になると見ています。そして、今年は毎四半期、供給を拡大するつもりです。ですから、サプライチェーンは上手くいっていると思います。供給はタイトです。ですから、もし供給が増えれば、その製品に対する需要があることは短期的には間違いありません。そして、私たちは今年もそうした課題に取り組んでいくつもりです。しかし、需要サイドと供給サイドの両方において、立ち上がりには非常に満足しています。

しかし、ヴィヴェク・アーリャ氏(個人的には今回の決算説明会で最高の質問)からは、着地点はどうなのかという質問があった。

実際に、今年も半分が過ぎたのだから、もっと視界が開けているはずである。

しかしながら、リサ・スーCEOの答えは少し期待外れで、混乱させるものだった。

内容としては、年後半には40億ドル以上の供給能力があるという意味合いであり、実際は需要が主導であるというガイダンスとなっている。

(原文)Yes. Vivek, let me try to make sure that we answered this question clearly. From a full year standpoint, our $4 billion number is not supply capped -- I'm sorry, yes, it's not supply capped. It is -- we do have supply capability above that. It is more back half weighted. So if you're looking at sort of the near term, I would say, for example, in the second quarter, we do have more demand than we have supply right now, and we're continuing to work on pulling in some of that supply.

(日本語訳)そうですね。ヴィヴェク、この質問に明確に答えられるよう努力します。通年で見た場合、40億ドルという数字は供給上限ではありません。それ以上の供給能力はあります。そして、より年後半(下期)に比重があります。ですから、近い将来のことを考えれば、たとえば第2四半期は供給よりも需要のほうが多いわけです。そして、我々はその供給源の一部を引き出す努力を続けています。

以上を踏まえると、つまり、下期は供給上限があるわけではなく、注文がないだけかもしれない。

これは、エヌビディア(NVDA)の製品立ち上げのタイミングとも一致している。

そのため、現実問題として、MI300はもうだめかもしれない。

MI300のシェアは伸びておらず、ブロードコム(AVGO)はAMDよりもはるかに早く2番手のポジションを獲得している。

しかし、この内容が残念なのは、上述の点だけではない。

他のすべてのセグメントを見ると、AMDがかなり平凡な四半期だったことが分かる。

仮にMI300が急成長したとしても、それ以外の部門があり、どのセグメントにも弱点があるように見える。

ゲーミング(Gaming)部門、エンベデッド(Embedded)部門、そしてデータセンター(Data Center)向けCPUビジネスでさえ、期待されたほど好調ではなかった。

そして、データセンター部門は、全四半期のMI300の売上高が約6億ドルであることを意味しており、これは データセンター向けCPU の売上高が前年同期比で約 34%増加したことを意味する。

サーバーのシェアがカニバリゼーションしていることを考えれば、これは好調な結果と言えるが、当初のGenoaのシェア拡大目標を大幅に下回っている。

しかし、ここでの本当の問題は、インテル(INTC)から少しシェアを奪ったクライアント(Client)部門から始まっている。

現時点ではそれほど収益性が高くなく、インテルとAMDはこのセグメントで価格競争を繰り広げている。

特にインテルが2025年に復活する18Aプロセスを発表すれば、ここからのシェア獲得は減速し始めると見ている。

さらに、このセグメントはもう成熟したビジネスであり、それほどの価値はないと見ている。

さて、ここからは、ゲーミング部門に話を移していきたい。

当部門の売上高は前四半期比で33%減、前年同期比では50%近く減少している。

コンソールは明らかにオフサイクルに入っており、来期もこれ以上良くはならないと予想している。

AMDはエンベデッド部門とゲーミング部門は「2桁の大幅な落ち込み」を予想しており、私はこのサイクルは本格的に始まったばかりだと見ている。

そして、これらは決して素晴らしい内容ではない。

そこで、エンベデッド部門に話を移そう。

昨年は、AMDのEBITと収益性が主にエンベデッド部門によって牽引されてきたという側面があった。

PCビジネスが一巡した昨年、XilnixとFPGAはまさに先行指標であった。

しかし、CPUビジネスが改善するにつれ、FPGAは減速し始めている。

歴史的にエンベデッド部門はAMDの総利益に占める割合が大きかった。

2023年度第1四半期ではEBITの70%を占めていたが、現在はデータセンター部門が伸びており、エンベデッド部門は減速している。

ごく短期的には、この点もAMDにフラストレーションを与える問題であろう。

それでも、今年後半にはデータセンター部門の売上高と連動してエンベデッド部門が再び成長し始める可能性が高いことは指摘しておきたい。

そうなれば、同社を評価する際の財務モデルはようやく再び機能し始めることになるだろう。

しかし、そうなれば、クライアント部門におけるインテルとの競争や、エヌビディアのR100製品と戦わなければならなくなり、MI400製品は完全に不発に終わるだろう。

そのため、個人的には、将来を展望すると、AMDの競争上の位置づけは、良くなる前にかなり悪くなりそうである。

本当の望みは、新しいコンソール・サイクルがいずれ実現し、FPGAが最終的に回復することであり、私はMI300よりもFPGAに対しての方がずっと強気である。

AMDのわだかまりを解く明確なドライバーは、MI400ではなくエンベデッド部門である。

そして、私は依然として同社を懸念している。

私は、彼らの競争上の位置づけは今後2年間が最高のものだと考えている一方で、ハイパースケーラーにおいて競争力のあるインストールベースを作るために必要な売上を上げることができていない。

グーグル・クラウドはAMDのチップを提供する予定すらない。

ではお聞きしますが、AMDの今後の計画はどういったものなのだろうか?

というのも、現在のアクセラレーター製品は、ブロードコムのカスタムソリューションやエヌビディアのマーチャントには到底敵わないように見えるからである。

つまり、AMDの将来はx86CPUメーカーであり、それはあまり良い市場ではなく、それでも尚、インテルとの競争が激化しているという事実に直面しなければならない。

そのため、私はAMDの競争上の位置づけについて非常に否定的である。

同社の株価倍率は、同社がエヌビディアのナンバー2になるという期待から大きく上昇したが、実際にはハイパースケーラー独自のカスタムチップがその役割を果たすだろう。

そして、どういうわけか、両社共にに大幅に割高なバリュエーションとなっており、特に厄介なFPGAサイクルを経験している。

また、MI300は、ほぼすべてのクラウド企業が設備投資を大幅に引き上げた後でさえ、年間予想を大幅に引き上げることができなかった。

これは、実際には需要の問題であることを示唆している。

私にとって、AMDの将来価値は、市場が現在評価しているバリュエーションよりもはるかに低いように思える。

同社のクライアント部門のストーリーから目を覚まし、現実を直視すべき時であるように思える。

次章では、FPGA関連企業についての考察と、重要なハイパースケーラー関連企業の設備投資結果についてさらに掘り下げていきたい。

※続きは「ハイパースケーラーとFPGA(Field-Programmable Gate Array)の現状を徹底分析!」をご覧ください。

さらに、その他のアドバンスト・マイクロ・デバイスAMD)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクよりアドバンスト・マイクロ・デバイスのページにアクセスしていただければと思います。


アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA

📍半導体&テクノロジー担当

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