12/13/2024

AMDとインテルはどっちがいいのか?AMDのリサ・スー氏が「CEO of the Year」に選出された真相に迫る!

a close up of a computer processor chipウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、「AMDとインテルはどっちがいい?」という疑問に答えるべく、両社の比較を通じて、両社の将来性を詳しく解説していきます。
  • AMDのリサ・スー氏CEO氏は、同社を復活させた功績が評価され、タイム誌の「CEO of the Year」に選出されました。 
  • スー氏の前任であるローリー・リード氏が基盤を整備し、Zenアーキテクチャの開発や市場シェア拡大を支援しました。 
  • AMDはArmアーキテクチャの台頭に直面していますが、x86市場での優位性を維持しつつ、AIアクセラレーション分野での成長が期待されています。

アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のリサ・スー氏がCEO of the Yearに選出

アドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)のリサ・スー氏が、タイム誌の「CEO of the Year」に選ばれました(詳細はこちら)。

歴史の片隅に追いやられる寸前だったAMDを、この10年で見事に復活させたスー氏にふさわしい評価と言えるでしょう。

多くの人が不可能だと考えていた偉業を成し遂げたリーダーです。

(出所:TIME USA, LLC

スー氏は、ローリー・リード氏の後任としてCEOに就任しました。

リード氏はそれまでの4年間、スー氏がその後の成功を築くための基盤を整えていました。

リード氏のLinkedInプロフィールによれば、リード氏は自らのAMDでのCEOとしての功績を次のように述べています。

(原文)At AMD, Read helped develop and led a 3 step transformation of the Fortune 500 semiconductor company, with approximately 95% of its revenue driven by the shrinking PC market. In order to transform AMD, he aggressively diversified the portfolio to produce revenue targets of 50% from new high growth markets. He focused on improving execution, lowered costs by over 30%, built 2b$ in new businesses including a clean sweep of new game consoles, implemented an ambidextrous X86/ARM approach , developed Zen next generation architecture, restructuring our debt strengthening the balance sheet and returning to non-gaap profitability.

(日本語訳)AMDでリード氏は、フォーチュン500に名を連ねる半導体企業である同社の変革を3段階で推進しました。当時、AMDの収益の約95%が縮小傾向にあったPC市場に依存していたため、彼は新たな高成長市場からの収益比率を50%に引き上げることを目指し、事業ポートフォリオの多様化を積極的に進めました。リード氏は、実行力の向上に注力し、コストを30%以上削減する一方で、20億ドル規模の新規事業を立ち上げました。これには、新世代のゲームコンソール向け事業での市場独占も含まれます。また、X86(インテルが開発したマイクロプロセッサのアーキテクチャ)とArmの両方を活用する「アンビデクストラスアプローチ」を導入し、次世代アーキテクチャ「Zen」の開発を進めました。さらに、負債の再編を行い、バランスシートを強化することで、Non-GAAPベースでの黒字化を実現しました。

リード氏がCEOを務めていた頃、ジム・ケラー氏が再びAMDに復帰し、アーキテクチャの全面的な見直しを主導しました。

この取り組みが、現在「Zenアーキテクチャ」として知られる技術の基盤を築くことになります。

その中核となったのが「チップレットベースの設計」という革新的なコンセプトでした。

しかし、2017年当時、このアプローチはインテル(INTC)から公然と嘲笑されました。

インテルは、AMDの考えを否定するために専用のスライド資料を作成し、意見を発信しました。

(出所:インテルの2017年6月のPress Workshops資料)

(出所:インテルの2017年6月のPress Workshops資料)

それからわずか7年後、状況は一変しました。

今、笑っているのは誰でしょうか?

私の考えでは、このスライドこそがインテルの傲慢さと特権意識を象徴する、これ以上ない皮肉の例だと思います。

AMDの復活劇は、「一夜にして成功したように見える10年越しの努力」と表現できるでしょう。

CEOであるリサ・スー氏は、同社の未来に対する楽観的なビジョンと、現実的かつ謙虚な姿勢を見事に融合させました。

私自身、投資家としてクライアント市場やサーバー市場での市場シェアの急拡大を心待ちにしていました。

その成長は確かに実現しましたが、そのスピードは非常に緩やかなものでした。

最新のMercury Researchのデータによると、AMDの市場シェアは現在、デスクトップで28.7%、モバイルで22.3%、サーバーで24.2%に達しています。

一方、サーバー分野の収益シェアは30%台半ばにまで上昇しており、この点は特筆すべき成果です。

今年、AMDは大きな成功を収めました。

その中でも、MI Instinctアクセラレーター製品群により新たに50億ドル規模の収益セグメントを切り開いたことが際立っています。

しかしながら、株価の面では厳しい年となりました。

3月初旬に227ドルの史上最高値を記録したものの、そこから44%下落しており、現在も苦境が続いています。

(出所:Yahoo Finance)

以前にもお伝えしたように、AMDへの投資は簡単なものではありません。もし2021年末の過去最高値付近で株を購入していた場合、利益を出すまでに丸2年待つことになったでしょう。

(出所:Yahoo Finance)

そして偶然にも、現在のAMDの株価は2021年11月の水準と同じです。

この点については以前も取り上げましたが、こうした状況を踏まえて、2025年に向けてAMDの株価をどのように捉えるべきでしょうか。

詳しく考察していきましょう。

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アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の課題

インテル(INTC)が自ら引き起こした問題に直面している一方で、アドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)も将来的な逆風を避けることはできません。

最大の課題は、PCおよびサーバー分野で勢力を拡大するアーム・ホールディングス(ARM)の台頭です。

AMDはインテルと同様にx86アーキテクチャを軸に事業を展開してきました。

この戦略は、過去10年間、インテルとの競争で復活を果たす上で理にかなったものでした。

なぜなら、AMDが狙うのはインテルのx86市場だったからです。

しかし今、長年x86の影に隠れていたアーム・ホールディングスがこれまでにないほどの勢いで市場での地位を築いています。

PC市場において、マイクロソフト(MSFT)はArmベースのPCエコシステムを構築したいという意向を隠していません。

その中で、クアルコム(QCOM)を積極的に支援していることは明らかであり、この点については、以前、下記のレポートにおいて詳しく解説しております。

本稿の内容への理解を一層深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、併せてご覧ください。

現在、エヌビディア(NVDA)がアーム・ホールディングスベースのPC市場に参入するという噂が広まっています(詳細はこちらのReutersの記事をご覧ください)。

さらに、MediaTek(台湾に本社を置く半導体メーカー)も同様の計画を検討しているとされています(詳細はこちら)。

(日本語訳)独占報道:MediaTek、マイクロソフトのAI対応ノートPC向けにArmベースのチップを設計

このArmベースのノートPCへの移行の流れは、アップル(AAPL)がMシリーズプロセッサを採用し、MacBookを完全にx86から移行させた成功に触発されたものです。

数年をかけた取り組みでしたが、多くの人がその成果を大いに評価していることでしょう。

アップルにできたのであれば、他社にも可能性はあると言えます。

ただし、MacOSと比べて、x86向けのレガシーコードがはるかに多い点が課題として残ります。

AMDも、アーム・ホールディングスがPC市場で存在感を拡大することによる脅威を認識しているはずです。

実際、AMDも独自のArmベースPC向けCPUを開発しているという噂があります(詳細はこちら)。

AMDにはアーム・ホールディングスとの関わりがあることを忘れてはいけません。

ジム・ケラー氏が最後にAMDに在籍していた際、K12プロセッサのx86版とArm版の両方に取り組んでいたとの噂がありました。

このArm版は、リサ・スー氏の下で静かに棚上げされましたが、再び取り出され、現代仕様にアップデートされる可能性も考えられます。

Armの進出はPC市場にとどまりません。

先週のAWS Reinventでは、AWSがGravitonプロセッサについて、同社が新たに導入したCPUキャパシティの50%以上をGravitonが占めていると発表しました(詳細はこちら)。

Gravitonは、Amazon Web Services(AWS)が開発したArmベースのプロセッサです。

AWSのクラウドサービス向けに設計され、高いコスト効率と性能を提供することで知られています。

(出所:AWS re:Invent 2024)

さらに、Gravitonを採用している顧客からは、パフォーマンス向上に対する高評価が相次いでいます。

(出所:AWS re:Invent 2024)

現在のところ、AMDはデータセンター市場でx86を強力に守り続け、アーム・ホールディングスに対抗する姿勢を貫いています。

この点については、2024年7月に公開されたAMDのブログ記事でもその姿勢が確認できます。

(原文)As you can see, AMD EPYC processors deliver more than twice the performance of the NVIDIA Grace CPU Superchip across workloads representative of multiple verticals, demonstrating the superior capabilities of AMD EPYC processors for data center performance without compromises.

(日本語訳)ご覧の通り、AMD EPYCプロセッサは、さまざまな分野を代表するワークロードにおいて、NVIDIA Grace CPU Superchipの2倍以上のパフォーマンスを発揮しています。これにより、AMD EPYCプロセッサがデータセンター向けに妥協のない高い性能を提供できることを証明しています。

アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)に対する結論

総合的に考えると、私はアーム・ホールディングス(ARM)が現時点でアドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)にとって大きな脅威になるとは思っていません。

AMDには、PC市場やサーバー市場で今後数年間、インテルからx86のシェアを奪い続けるという大きな強みがあります。

最終的にはアーム・ホールディングスがPCやサーバー市場を支配するようになると確信していますが、同時にAMDにはその変化に対応し、独自のArmプロセッサを提供する能力があるとも信じています。

一方、AIアクセラレーションという新たな市場では、2025年には収益が100億ドルに達する可能性が高いと見ています。

エヌビディア(NVDA)と比較すれば小規模ではありますが、それでもAMDにとっては非常に重要な成長です。

AMDの株価は、この1年間で大きく調整されてきましたが、調整が完全に終わったとは言えないかもしれません。

それでも、2022年3月に私が最後に購入した時と同じ価格水準で取引されている現在、この機会を見逃すのは難しいというのが本音です。

そして、AMDの復活劇はまだ終わっていないと考えています。

それどころか、これからが本当の始まりだと思っています。

AMDがこれからどうなるか、楽しみに見守りたいと思います。

その他のアドバンスト・マイクロ・デバイスAMD)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクよりアドバンスト・マイクロ・デバイスのページにアクセスしていただければと思います。

加えて、AMDの最新の決算直後に、下記の分析レポートも執筆しておりますので、こちらも併せてご覧いただければと思います。

さらにインベストリンゴのアナリストであるダグラス・ オローリン氏も、AMDの最新の決算発表後に下記の詳細な分析レポートを執筆しておりますので、是非、併せてご覧いただければと思います。

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アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

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