AMDとエヌビディア(Nvidia)はどっちがいい?最新の2024年度第4四半期決算分析を通じて、両社の違いを徹底解説!
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- 本稿では、注目の米国半導体銘柄である「アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)とエヌビディア(Nvidia)はどっちがいいのか?」という疑問に答えるべく、AMDの最新の2024年度第4四半期決算分析を通じて、両社の違いを詳しく解説していきます。
- AMDの最新の2024年第4四半期決算では、データセンター向けGPUの成長が注目され、メタ・プラットフォームズやマイクロソフトを含む主要企業がMI300Xを導入していることが明らかになっています。しかし、エヌビディアのCUDAと競争するにはソフトウェアの課題が依然として大きい模様です。
- AMDのROCmソフトウェアは頻繁に更新されており、2024年末にはROCm 6.3がリリースされました。しかし、SemiAnalysisの評価では依然としてバグが多く、トレーニングワークロードでの実用性に課題があると指摘されています。
- MI350のスケジュールが前倒しされるなど、AMDはソフトウェア改善に取り組んでいます。そして、短期的な株価低迷が続く可能性がありますが、長期的には成長の余地があると見ていることから、同社株式の投資には忍耐が求められると見ています。
※「AMDの株価急落の理由とは?最新の2024年度第4四半期決算分析を通じて、同社の将来性を徹底解説!」の続き
前章では、注目の米国半導体銘柄であるアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の2025年2月4日に発表された最新の2024年度第4四半期決算の詳細、並びに、決算におけるポジションなポイントに関して詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のGPU成長の停滞
決算説明会のQ&Aセッションでは、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のデータセンター向けGPUの成長に関する質問がほとんどを占めました。これは当然のことでしょう。なぜなら、同社は2024年にInstinct GPUの売上をほぼゼロの状態から50億ドルにまで急成長させたからです。
表面上は、Instinctシリーズのロードマップに関するアップデートはすべてポジティブなものでした。
「第4四半期において、MI300Xの本格展開が主要なクラウドパートナーで進みました。メタ・プラットフォームズは、Meta.ai上で「Llama 405B Frontier」モデルの運用にMI300Xを独占的に使用し、大規模なAI推論およびディープラーニング推奨モデル向けの「OCP準拠 Grand TETONプラットフォーム」にInstinct GPUを追加しました。」
「マイクロソフトは、MI300Xを使用してGPT-4ベースのCopilotサービスを複数運用し、AIトレーニングや推論、HPCワークロード向けに数千台規模のGPUを活用した主要インスタンスを立ち上げました。さらに、IBM、DigitalOcean、VultrなどのAI特化型クラウドサービスプロバイダー(CSP)も、新規インスタンス向けにAMD Instinctアクセラレーターの導入を開始しました。」
「IBMはまた、Watson X AI & データプラットフォーム上でMI300Xを活用し、エンタープライズ向けの生成AIアプリケーションのトレーニングおよびデプロイを行う計画を発表しました。現在、Instinctプラットフォームは世界中の10以上のCSPで導入されており、2025年にはこの数がさらに増加する見込みです。」
「MI325は、市場での競争力が高く、競合製品と比較して大幅なパフォーマンスおよびTCO(総保有コスト)の優位性を提供しています。また、AMD Instinctの採用企業も着実に増加しています。」
ここまでは順調に思えます。そして、MI350のスケジュールが前倒しされるというニュースもありました。
「初期シリコンの進捗とMI350シリーズに対する顧客の強い関心を踏まえ、今四半期に主要顧客へのサンプル出荷を開始し、中頃までに量産出荷を加速させる予定です。」
では、何が問題なのでしょうか?答えは 「ソフトウェア」 です。
AMDがエヌビディア(NVDA)のCUDAと競争するには、依然として大きな課題が残っています。AMDのアプローチはオープンソースベースであり、「ROCm」と呼ばれるソフトウェアスタックを採用しています。しかし、このROCmの開発には多くの試行錯誤が伴い、現在も頻繁に新バージョンをリリースし続けています。
「2024年末には、ROCm 6.3をリリースしました。このバージョンでは、複数のパフォーマンス最適化が施され、最新の「Flash Attentionアルゴリズム」に対応し、以前のバージョンと比較して最大3倍の速度向上を実現しました。また、「SG Langランタイム」の導入により、「DeepSeek V3」のような最先端モデルへのゼロデイ対応が可能になりました。」
さらに、Lisa Su CEOのコメントによると、1月からはソフトウェアアップデートの頻度を引き上げ、2週間ごとに新しいコンテナリリースを提供する体制に移行したとのことです。
「例えば、1月からは2週間ごとに新しいコンテナリリースを提供し、より頻繁なパフォーマンス向上や機能追加を行うようになりました。また、オープンソースコミュニティに専用リソースを追加投入し、新しいソフトウェアの開発、テスト、リリースを加速させています。」
では、AMDとエヌビディアのCUDAとの差はどれほど縮まったのでしょうか?結論から言うと、依然として大きな差があります。そして、2023年末、SemiAnalysisはAMDのMI300Xを評価するレポートを公開しています(詳細はこちら)。
「理論上、MI300XはエヌビディアのH100やH200と比較して大幅に優れたスペックとTCO(総保有コスト)を持つはずです。しかし、実際には、カタログスペックが示すような性能を現実の環境で発揮できるわけではありません。もしAMDがこのメモリを活かし、マーケティング通りのパフォーマンスを提供できるなら、市場で非常に強力な競争相手となるでしょう。」
しかし、SemiAnalysisの最終的な評価は非常に厳しいものでした。
「AMDのソフトウェア環境はバグだらけで、そのままではトレーニングが不可能です。AMDがトレーニングワークロードにおいてエヌビディアの強力な競争相手になることを期待していましたが、現時点では残念ながら実現できていません。CUDAの壁をAMDが乗り越えるには、ソフトウェアの品質管理(QA)文化が弱く、初期設定の使い勝手が悪いことが大きな課題となっています。」
「SemiAnalysisの評価は本当に正しいのか?」と疑問に思うかもしれません。しかし、彼らは非常に優れた分析チームであり、最終的にはAMDのLisa Su CEO自身が Dylan Patel氏(SemiAnalysisの創設者)に直接コンタクトを取り、彼の指摘内容を詳細に確認し、多くの点を受け入れたことがわかっています。
この件について、Dylan氏はTransistor Radio Podcastにて、ダグラス・ オローリン氏やJon(Asianometry)氏とともに、11分頃から詳しく語っています(詳細はこちら)。
今回のSemiAnalysisの記事は、AMDにとっての「目覚まし」となったのではないかと感じます。もちろん、AMDはすでにCUDAに追いつく必要があることを十分認識していました。しかし、ソフトウェア開発や品質管理において、自社のアプローチがいかに不十分だったかを具体的に指摘されたことは、大きな衝撃だったはずです。
幸いなことに、SemiAnalysisのチームはAMDの改善を支援する意向を持っており、Lisa Su CEOをはじめとするAMDの経営陣がそのフィードバックを真摯に受け止めた点は評価すべきでしょう。今後の改善に期待したいところです。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)に対する結論
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のMI300シリーズの進展について、私の見解をまとめます。AMDは非常に素晴らしいスタートを切ったと思います。インテル(INTC)が成し遂げられなかったことをはるかに上回る成果を上げました。2024年に50億ドルの売上を達成したことは、極めて重要な出来事でした。これは、顧客がエヌビディア(NVDA)の高価な選択肢に対する代替として、AMDに成功してほしいと強く願っていることを証明していると言えるでしょう。
しかし、現時点でAMDが提供している製品だけでは、エヌビディアと真に競争するには十分ではありません。AMDはここで態勢を立て直し、ソフトウェアスタックに最強のチームを投入し、さらに大きく投資する必要があります。MI350のスケジュールが前倒しされたのも、この戦略の一環であると考えています。これは単なる偶然ではなく、より優れたソリューションを迅速に市場に投入するための必然的な動きなのではないでしょうか。
とはいえ、AMDに対する私の全体的な見方は変わりません。今後のコンピューティング分野において、AMDが果たすべき役割は非常に大きいと考えています。特にここ数週間の動向、なかでもDeepSeek R1の発表は、AMDのオープンスタックアプローチを支持するものにほかなりません。
2025年上半期の成長停滞は、AMDのさらなる発展に向けた一時的な障害に過ぎないでしょう。以前から述べているように、AMDへの投資は短期間で成果を求める人向けではありません。長期的な視点で臨むべき銘柄であると考えています。AMDの株価は過去にも約2年間低迷した時期がありましたが、その後大きく回復しました。今回の下落は2024年3月に始まり、まだしばらく続く可能性があります。しかし、個人的には押し目を拾い、強気で持ち続けるつもりです。今後の展開を見守りたいと思います!
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アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング
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