01/23/2025

【半導体】AMDとエヌビディア(NVIDIA)の比較:AMDとエヌビディアはどっちが魅力?競争優位性分析により両社の将来性に迫る!

blue and yellow round logoイアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、「AMDとエヌビディア(NVIDIA)はどっちが魅力的なのか?」という疑問に答えるべく、両社の比較、特に、テクノロジー上の強み&競争優位性分析を通じて両社の将来性を詳しく解説していきます。
  • AMDはチップレット設計やEPYCプロセッサの競争力を活用し、データセンターやAI市場での成長を牽引しています。特に高いコスト効率とスケーラビリティが優位性を強化しています。
  • MI300Xシリーズは、AI需要の拡大に対応した大規模言語モデル向けの革新的なGPUであり、エヌビディアに対抗する戦略的な製品として市場で高い評価を受けています。
  • データセンター市場の成長やAI需要を追い風に、AMDは収益増加を実現し、時価総額1兆ドル到達の可能性を秘めた競争力を確立しています。

アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が時価総額1兆ドル企業に成長する日は来るのか?

アドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)は、世界有数のマイクロプロセッサおよびグラフィックスプロセッサの供給企業です。1969年に設立された同社は、進化の過程をたどり、製造業からファブレスモデルへと移行しました。この移行により、TSMC(:台湾積体電路製造)などのファウンドリに生産を委託する形となり、大規模な資本投資を必要とせず、最先端の製造技術を活用することが可能となりました。この取り組みは、AMDが設計やイノベーションといったスケーラブルな段階に集中することを可能にしました。

同社は、デスクトップPC、ノートブック、ゲームコンソール、データセンター、プロフェッショナル向け環境に向けたCPU(中央処理装置)やGPU(グラフィックス処理装置)の設計・開発を行っています。多様なコンピューティングおよびネットワークのニーズに応える幅広い製品ラインアップを持ち、主要製品としては、パソコン向けのRyzenプロセッサ、グラフィックス向けのRadeonプロセッサ、サーバー向けのEPYCプロセッサが挙げられます。事業セグメントには、データセンター、クライアント(PC)、ゲーミング、組み込みシステムが含まれており、特にゲーミング市場やデータセンター市場において、インテル(INTC)やエヌビディア(NVDA:NVIDIA)といった業界大手に対抗する強力な競争力を確立しています。

アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の収益構造

アドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)は、多角的な事業セグメントを持ち、半導体製品の設計、製造、販売を手掛けています。主な収益源は、データセンター、クライアント(個人向けコンピュータ)、ゲーミング、組み込みシステムの4つに分類されます。

データセンター

AMDの収益において、データセンター部門は最大の割合を占めています。2024年1月から9月の間、このセグメントは総収益の48.1%を占めました。この部門では、企業向けに高度なコンピューティングソリューションを提供しており、特にデータセンター向けに設計・開発されたEPYCプロセッサが効率性とスケーラビリティを実現しています。

クライアント部門

AMDのクライアント部門は、個人向けコンピューティング市場を対象としています。同社のRyzenプロセッサは、この分野で大きな市場シェアを誇ります。Mercury Researchによると、デスクトップCPU市場で28.7%のシェアを占めています。この部門は、2024年初めから9月までの総収益のうち26.2%を占めました。

ゲーミング部門

AMDのゲーミング部門は、Radeonグラフィックスカードや、PlayStationやXboxといったゲーム機に使用されるセミカスタムチップで構成されています。この部門は2024年1月から9月の間、AMDの総収益の11.2%を占めました。以前は収益構成の中で重要な位置を占めていましたが、2024年にはエヌビディアとの激しい競争により、成長が鈍化しました。

組み込みシステム部門

組み込みシステム部門では、産業用および自動車向けシステム向けのソリューションを提供しています。この部門は、総収益の14.5%を占めています。

AMDの収益構成の進化

(出所:筆者作成)

アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の優れたチップレットアーキテクチャ: AI性能を再定義し、エヌビディア(NVIDIA)の一体型設計を凌駕

アドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)が採用するモジュラー型チップレット設計は、半導体工学における画期的な進化を象徴しており、従来の一体型アーキテクチャに比べて多くの利点をもたらします。複数の小型チップ(チップレット)を1つのパッケージに統合することで、製造効率と歩留まりが向上します。この設計により、各チップレットの欠陥がプロセッサ全体に影響を及ぼさないため、単一の素材を彫刻するのではなく、レゴブロックを組み立てるような柔軟性が実現されます。この手法は製造コストを削減するだけでなく、開発サイクルを短縮し、MI300X GPUのような革新的な製品を迅速に市場投入することを可能にします。

MI300X: GPU分野におけるAMDのチップレット技術の戦略的実践

MI300Xは、AMDがGPU分野でチップレット技術を戦略的に活用した成果を象徴する製品です。このGPUは192GBのHBM3メモリと最大5.3TB/sのメモリ帯域幅を備えており、大規模言語モデルや複雑なシミュレーションなど、要求の厳しいAIワークロード向けに設計されています。一方で、エヌビディアのH200は141GBのHBM3eメモリと4.8TB/sの帯域幅を提供していますが、MI300Xはメモリ容量で36%上回り、帯域幅でも優位性を示しています。この大きなアドバンテージにより、MI300Xはより大規模なデータセットやメモリ集約型アプリケーションを効率的に処理する能力を発揮し、AIやハイパフォーマンスコンピューティング分野での競争力を高めるとともに、エヌビディアの支配的地位に挑戦する強力な存在となっています。

エヌビディアの一体型GPU設計の課題とAMDチップレットアーキテクチャの優位性

エヌビディアの一体型GPU設計は、これまで効果的であったものの、AIやデータ集約型アプリケーションの進化するニーズに適応する上で課題を抱えています。一体型設計は製造コストや複雑性の増加を招き、スケーラビリティや迅速なイノベーションを妨げる可能性があります。一方で、AMDのチップレットアーキテクチャは柔軟性とコスト効率を兼ね備え、多様な機能をスムーズに統合し、市場のニーズに迅速に対応することを可能にします。この適応性は、メモリや計算能力の大規模化が求められるAI駆動型ソリューションへと業界がシフトする中で、極めて重要な要素となっています。

AI推論市場へのAMDの戦略的アプローチ: MI300Xの最適化が示す挑戦

さらに、MI300Xが大規模言語モデル向けに最適化されている点からもわかるように、AMDはAI推論市場への注力を戦略的に進めています。このGPUは強化されたメモリ容量と帯域幅を備えており、データ処理の高速化やモデルの展開が求められる推論タスクに特に適しています。このような特徴により、AMDはAI推論ソリューションへの需要拡大を取り込み、従来エヌビディアが支配していたこの収益性の高い分野で市場シェアを侵食する可能性があります。

まとめ

以上より、AMDの革新的なチップレット設計は、MI300X GPUに象徴されるように、特にメモリ容量、帯域幅、製造効率の面でエヌビディアの一体型アーキテクチャを上回る具体的な優位性を提供します。この技術的な優位性により、AMDはAIやハイパフォーマンスコンピューティング市場で効果的に競争し、エヌビディアの確立された支配的地位に挑戦するだけでなく、市場の競争環境を再定義する可能性を秘めています。

(出所:TechPowerUp)

アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のAIによる躍進: 2025年に半導体市場を凌駕する成長へ

AI需要の急増により、高度なロジックプロセスチップの需要が拡大し、半導体業界は急速な成長期を迎えています。IDCによると、業界全体は2025年に前年比15.0%の成長を遂げる見通しです。一方で、アドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)は高性能AIチップを競争力のある価格で供給する大きな飛躍を遂げており、市場全体を上回る成長が期待されています。データセンター分野が引き続き主力となり、AMDをさらなる高成長の軌道に乗せるでしょう。また、PC(クライアント)およびゲーミング部門も、2025年に訪れる大規模なコンピュータ更新サイクルの恩恵を受ける見込みです。総じて、AMDは2025年に30.0%の収益成長を達成する可能性が高く、データセンター部門が50.0%、クライアント(PC)およびゲーミング部門がそれぞれ10.0%、組み込みシステム部門が20.0%の成長を記録する見通しです。

データセンターが牽引するAMDの成長ストーリー

世界のデータセンター市場は、2024年に2,430億ドル規模と見積もられ、2032年までに年平均成長率(CAGR)11.6%で拡大し、5,850億ドルに達すると予測されています。生成系AI(人工知能)モデルはディープラーニングに基づき、高度な計算能力を必要とするため、より強力なデータセンターが求められています。この拡大する市場は、AMDにとって収益を加速的に伸ばす絶好のチャンスを提供します。

一方で、AMDの優れたEPYCプロセッサは、高いコア数と1ワット当たりの性能の高さを備え、さらに競争力のある価格帯で提供されており、競合他社に対抗する力を持っています。特に大規模なサーバー展開を必要とするデータセンターにとって、EPYCプロセッサはコスト効率の高い選択肢とされています。EPYCプロセッサは最大96コアを提供しており、インテルのXeonプロセッサ(最大60コア)を上回る性能を誇ります。

(出所:AMDのプレゼンテーション資料)

EPYCプロセッサのエネルギー効率と拡張性がデータセンターを支える

AMDのEPYCプロセッサは高いエネルギー効率と優れた拡張性を備え、マルチソケット構成での効率的なスケーリングを実現します。これにより、負荷が増加するデータセンターのニーズにより適した選択肢となっています。また、AMDプロセッサの価格競争力も大きな魅力です。AMDの最上位モデルである96コアのEPYC 6979Pプロセッサは約11,800ドルで、インテルの128コアXeon 6980P Granite Rapidsプロセッサよりも6,000ドル安く提供されています。

これらの優位性により、AMDは2024年第3四半期(7月~9月)のデータセンター分野でインテルを上回る成果を上げました。インテルがこの分野でAMDに追いつくのは容易ではなく、AMDの優れたコスト効率の高いソリューションがすでに市場で大きな影響を与えています。

AMDのMI300シリーズがAI市場を牽引

2023年12月初旬に発売されたAMDのMI300シリーズは、大規模言語モデルのトレーニングと運用向けに設計されており、生成系AI分野で世界最高水準の性能を誇るアクセラレーターの1つとされています。発売直後からMI300 AIチップの売上は2四半期足らずで10億ドルを突破しました。MI300のような高性能製品やEPYCシリーズを通じたAIチップの優位性により、データセンター分野でのさらなる市場拡大が期待されています。

AMDのデータセンター部門がインテルを追い抜く

(出所:筆者作成)

次章では、AMDが戦略的買収を通じてデータセンター事業やAI市場でどのように競争力を強化しているのか、さらに、詳細な株価バリュエーション分析を通じて、同社が時価総額1兆ドルに到達する可能性に関して詳しく解説していきます。

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