ハイパースケーラーとFPGA(Field-Programmable Gate Array)の現状を徹底分析!
ダグラス・ オローリン- 本稿では、ハイパースケーラー企業の定義と設備投資の状況、並びに、FPGA(Field-Programmable Gate Array)に関する考察を詳しく解説していきます。
- ハイパースケーラー企業の2024年の設備投資は増加しており、メタやアルファベットを含む主要企業がAIインフラやデータセンターへの投資を強化しています。
- FPGAサイクルは年後半に底打ちが予想され、ラティス・セミコンダクターなどの企業は自動車、インダストリアル、テレコム市場での回復が見込まれています。
- エヌビディアやAMDなど半導体企業に対する設備投資の増加が期待されており、今後の決算で更なる投資状況が明らかになる予定です。
※「【前編】アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価見通しは明るい?最新の決算分析を通じて同社の将来性に迫る!」の続き
ハイパースケーラー企業の設備投資に関して
ハイパースケーラー(hyperscaler)は、膨大なデータとコンピューティングリソースを扱うために、大規模なデータセンターやクラウドインフラを構築・運営する企業や組織を指す。
具体的には、Google、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureといった企業がその代表例である。
ハイパースケーラーは、複数のデータセンターを連携させてデータの処理や保存を行い、需要に応じて柔軟かつ迅速にリソースを増減させることができるのが特徴である。
このような大規模なインフラは、AIやビッグデータ分析、機械学習などの高い計算能力が必要とされる分野で重要な役割を果たしている。
本稿ではハイパースケーラ関連の設備投資について話していきたい。
この決算シーズンの収穫として、全てのハイパースケーラー企業は2024年の設備投資額を引き上げ、そのほとんどは有意義なものであった。
そして、どのハイパースケーラーの大手企業も、当ビジネスの更なる加速を示している。
決算説明会議での設備投資に関するコメント集をリリースする予定だが、ここでは年間を通じてさらなる加速が暗示されていることを指摘したく、それらの設備投資額は年後半へのに後ろ倒しになると見ている。
そして、これは、少なくともB100の立ち上がりと一致している。
メタ(META)は、通年の設備投資額を350億〜400億ドルとしており、2024年度第1四半期に〜64億ドルを投じたばかりである。
このことは、今年度の設備投資額の加速を意味し、下期には1四半期あたりで130億ドル以上となる可能性が高い。
(日本語訳)次に設備投資の見通しについて話していきたいと思います。当社のAIロードマップをサポートするためのインフラ投資を引き続き加速させるため、2024年通年の設備投資額は、従来の300億ドルから370億ドルの範囲から増加し、350億ドルから400億ドルの範囲になると予想しています。2024年以降についてはガイダンスを示していませんが、意欲的なAI研究と製品開発を支えるために積極的な投資を行うため、設備投資額は来年も増加すると見込んでいます。
アルファベット / グーグル(GOOG/GOOGL)は、設備投資額が第1四半期と同水準になると予想している。
つまり、今年の設備投資額は490億から500億ドル程度になり、昨年の支出額より55%増加することになる。
そして、これはブロードコム(AVGO)にとって非常に良いことである。
(日本語訳)設備投資に関しては、第1四半期の設備投資額は 120 億ドルと報告されており、今回も圧倒的に技術インフラへの投資が中心となっており、サーバーが最も多く、次いでデータセンターとなっています。ここ数四半期における設備投資額の前年同期比での大幅な伸びは、当社の事業全体にAIがもたらす機会に対する自信を反映したものです。今後については、現金支払いのタイミングによって四半期報告される設備投資額にばらつきが生じる可能性があることを念頭に置きつつ、年間を通じて四半期ごとの設備投資額はほぼ第1四半期の水準かそれを上回ると予想しています。
一方、マイクロソフト(MSFT)は設備投資額が前四半期比で大幅に増加すると予想している。
私はこれを、今年いっぱいは前四半期比12%増、約520億ドルになると見ている。
これは、暦年全体では前年比50%増となる。
(日本語訳)設備投資は、クラウドとAIのインフラ投資が牽引し、前四半期比で大幅に増加すると予想しています。注意点として、クラウド・インフラストラクチャーの構築のタイミングやファイナンス・リースのタイミングには、四半期ごとに通常の支出額の変動があり得ます。当社は、需要の増加に伴いAIへの投資を拡大するため、キャパシティをオンライン化し続けています。現在、近い将来のAI需要は、当社の利用可能なキャパシティを少し上回っています。
アマゾン(AMZN)は、設備投資額が大幅に増加し、第1四半期は今年の低水準の四半期になると予想している。
さらに、フルフィルメントからAWSへのミックス・シフトが有意義になると予想している。
(日本語訳)2024年の設備投資全体は前年比で大幅に増加すると予想していますが、これは主に生成AIを含むAWSの成長をサポートするためのインフラ設備投資の増加によるものです。では、設備投資に関してです。現在、第1四半期の設備投資は140億ドルでした。そして、この水準は、今年度の四半期毎の水準において、最低の水準になると予想しています。
私は上述の内容から、総額700億ドルの設備投資が行われると見ている。
AWSの10Kには毎年の設備投資の概算が記載されているすが、歴史的に見ると、それは総設備投資額の約30%となっている。
昨年は総設備投資額の約50%であり、将来的にはもっと高くなると予想している。
AWSとAIへの支出がさらに増えることを考えると、この数字は設備投資の~70%以上と、もっと高くなると推測される。
この分析では、AWSの設備投資の概算を示したが、年間では50%以上増加していると思う。
では、この話をまとめよう。
私がここでまとめようとしている本当のポイントは、エヌビディア(NVDA)が今年の設備投資予算総額の伸びを上回る余地がどれだけあるかということである。
その答えは、このグラフからかなり見えてくる。
これは、エヌビディアの売上高と設備投資総額の将来予想における絶対的な金額の変化を比較したものである。
さて、すべてがエヌビディアであると直線的に仮定するだけでは意味がない。
ネオクラウド(neoclouds)があることを忘れてはならないが、ハイパースケーラはエネルギーや新しい液体冷却シェルに相当な額の設備投資を行っている可能性が高い。
しかし、このような状況であっても、設備投資の絶対的なドルベースの成長率は、エヌビディアが勝てる余地がかなりあることを示していると見ている。
設備投資の増加分の85%がエヌビディアに支払われると仮定すると、第2四半期、第3四半期、第4四半期のデータセンター売上はそれぞれ~270億ドル、310億ドル、350億ドルとなる。
これは、今日の予想から大幅に上振れする可能性があるが、シェル関連の支出を考えると、おそらく可能性は低いだろう。
いずれにせよ、私が指摘したかったのは、今年の設備投資がいかに大幅に上昇したか、そしてこのことがエヌビディアが市場予想を上回る上でどれだけの余地を与えているかということである。
この質問に対する答えとしては、エヌビディアの売上はおそらく高いが、B100の受注ギャップのようなものを懸念している。
これらは第3四半期決算で分かるだろう。
また、ご参考までに、FPGAの話をする前に、下記のグラフは今年の設備投資に関する私の推測である。
FPGA(Field-Programmable Gate Array)といくつかの考察
では、次にFPGA(Field-Programmable Gate Array)について少し考えてみたい。
まず、FPGAとは、プログラム可能なデジタル集積回路の一種で、設計者が特定の機能やロジックを自由に構築できるハードウェアのことである。
FPGAは、ハードウェアの構成を後から変更できるため、「フィールド(現場)でプログラム可能」という特性を持ち、必要に応じて機能を再構築できる柔軟性が特徴である。
具体的には、FPGAは回路設計をビット単位で制御し、並列処理が得意なため、高速なデータ処理や特定の計算処理を行う場面で使われる。
特に、AI、ビッグデータ解析、5G通信、画像処理など高い計算能力が必要な分野での利用が増えているのが現状である。
また、FPGAはASIC(特定用途向け集積回路)と異なり、開発後でも構成を変更できるため、プロトタイプやカスタマイズが必要なプロジェクトにも適している。
そして、インテル(INTC)、AMD(AMD)、ラティス・セミコンダクター(LSCC)のレポートと合わせると、AMDの結果は、おそらく循環的な底値買いを検討する時期なのだろうと思わせる内容である。
私は少し前からラティス・セミコンダクターを弱気で見てきたが、読者の皆さんには、そろそろこの同社に対する弱気の見通しを終わりにしようと言いたい。
FPGAサイクルは2~3四半期に入り、第2四半期か第3四半期が底だと思っている。
いずれ事態は好転するだろうし、それはもっと早い時期になるのではないかと思っている。
自動車関連、インダストリアル、テレコムは今年後半に底を打つはずで、ラティス・セミコンダクターはこれらの業界に特にさらされている。
また、特に同社は下半期に製品の発売を控えている。
さらに、アルテラのスピンアウトが前倒しされれば、景気回復の前にスピンアウトできることになり、とても楽しみである。
加えて、ザイリンクスとアルテラの上向きなガイダンスは良かったと見ており、アルテラが上場企業なら、私はこの結果を受けて同社株式を買っていただろう。
これが実質的な最後の減額となる可能性が高く、第2四半期と第3四半期に業績が順次改善する可能性があると見ている。
特にFPGAは例年より長く熱を帯びているため、在庫サイクルを理解し恐れているが、ザイリンクスとインテルの大幅な削減を見ると、それも近いと見ている。
2024年度第1四半期で前年同期比50%減、第2四半期でさらに50%減となり、最悪期は脱したと思われる。
第2四半期に底を打たないとしても、第3四半期には底を打つだろう。
第2四半期決算の見通しで、底を打つ可能性は高いことからも、今のうちにロング・ポジションをとっておいた方がいいかもしれない。
ともあれ、在庫の底打ちが間近に迫っていると思わせるような、具体的な情報をいくつか紹介したい。
ラティス・セミコンダクターは、下期は上期より強いと考えている。
これは、同社にとって大きな市場であるテレコム、自動車関連、インダストリアルにおける見通しと一致している。
(日本語訳)そして今年後半には、在庫の減少が解消に向かうと考えています。つまり、徐々に解消していくのです。電気のスイッチのように消えるのではなく、下半期にかけて消えていくのです。そのため、私が準備した挨拶では、下半期の収益は上半期よりも好調になると考えていると述べました。
新製品の投入がその一因です。
(日本語訳)先ほど申し上げましたように、6 ネクサス・デバイス・ファミリーは生産が開始されたばかりです。そのため、今年の後半はその恩恵を受けられると見ています。7番目のネクサスは第3四半期に生産を開始する予定です。そして、アバントの最初のデバイス・ファミリーは、今年、立ち上がりつつあります。昨年末にアバントからの最初の売上がありました。今年から来年にかけて、アバントEシリーズからの売上高が今年下半期にさらに増加すると見込んでいます。このような理由から、下半期は上半期よりも好調になると考えています。
一方、インテルは、アルテラが年末までに20億ドルの四半期ランレートになると考えている。
これは今四半期より30%高く、意味のある加速となる。
ザイリンクスは、年後半には徐々に回復すると考えている。
結論として、FPGAは今年後半に底を打つと私は考えているため、このセグメントの企業をやや支持しており、特にアルテラのIPOが実現すれば、同社株式を支持するだろう。
実際、次の四半期は、これ以上ないほど悪くなりそうだ。
しかし、第3四半期(つまり第2四半期決算発表時)がおそらく状況が好転し始めるタイミングであると見ている。
下記のグラフは、底打ちに関する私の非常に単純化した計算であり、おそらく年間を通じて悪化することはないだろうと見ている。
そして、下記の結果は上述の企業のコメントに基づいている。
また、最後に、FPGAをこのサイクルにおいて他のあらゆる景気循環企業と比較してみよう。
これはコルボ(QRVO)、インテル、マイクロン・テクノロジー(MU)の谷と回復のグラフである。
PC、スマートフォン、メモリー市場を表しています。
このサイクルは歴史よりもはるかに長く続き、約5四半期にわたって売上高が減少した。
しかし、在庫の取り崩しが始まった第3四半期か第4四半期に、株価は底を打ち始めたということである。
そして、ラティス・セミコンダクターとFPGAプレーヤーは、その時期に近づいている。
私たちは今、サイクル(最初の2つの悪い四半期)に突入した時点にいますが、株価はまだ底を打っていない。
そして、歴史が将来の道しるべとなるのであれば、株価が底を打つ時期は近いと言える。
さらに考えさせられるのは、自動車産業が第1四半期を終えようとしていることである。
底打ちは後半だと思うが、先日書いたように、少し早すぎるようにも感じる。
今のところ、決算後の反応はそれを裏付けているが、歴史が導くとすれば、シクリカルの谷を買うにはまだ早い。
では、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)とFPGAに関するレポートはここまでにしたい。
来週早々には、その他半導体企業の決算に関するレポートをリリースするつもりである。
さらに、その他のアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、アドバンスト・マイクロ・デバイスのページにアクセスしていただければと思います。
アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
📍半導体&テクノロジー担当
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