12/03/2024

ASMLの株価見通しは険しい道のり?ASMLを取り巻く集団訴訟の詳細な分析を通じて、同社の将来性を徹底解説!

a judge's gavel on top of a flagウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、注目の欧州半導体銘柄であるASMLホールディング(ASML)を取り巻く集団訴訟と、その訴訟を踏まえて、同社の将来性と今後の株価見通しを詳しく解説していきます。
  • ASMLホールディングに対する集団訴訟は、同社が半導体市場の回復ペースや中国市場の事業リスクについて投資家を誤解させたとして提起されましたが、これらの主張には信憑性が欠けると私は考えています。 
  • ASMLの株価は半導体業界全体の景気循環の影響を受けており、同社の以前の決算発表では2024年が成長ゼロの年になるとの警告が既に出されていました。 
  • 半導体業界は現在調整期にあり、短期的な株価の下落に直面している一方で、長期的には魅力的な投資対象であると考えています。

ASMLホールディング(ASML)を取り巻く集団訴訟

昨年11月15日、ローゼン法律事務所が、ハリウッド消防士年金基金の指示を受けているとみられる形で、ASMLホールディング(ASML)に対して連邦証券法違反の疑いで訴訟を提起しました。

その後、12月1日には、同事務所を含む複数の法律事務所が、2024年1月24日から2024年10月15日までにASML株を購入したすべての投資家に対し、集団訴訟への参加を呼びかけました。

この資格期間の終了日である2024年10月15日が、ASMLの直近の2024年度第3四半期決算発表日であることは、皆さんもお察しの通りでしょう。

この決算発表については、以前、下記のレポートで詳しく解説しております。

そのため、同社への理解をより一層深めるために、インベストリンゴのプラットフォーム上より、是非、併せてご覧いただければと思います。

今回の訴訟では、ASMLの経営陣が、中国市場での事業の持続可能性や半導体市場全体の回復速度に関して、投資家を誤解させる発言を行ったとされています。

実際に、2024年1月にASML株を購入した投資家は現在、約34%の損失を抱えている状況です。

また、ASMLの株価は2021年半ばの水準まで下落しています。

(出所:Yahoo Finance)

では、ASML経営陣に対するこれらの主張には信憑性があるのでしょうか?

私はそうは思いません。

その理由を以下で詳しく解説していきます。

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ASMLホールディング(ASML)の経営陣への主張

ASMLホールディング(ASML)の経営陣に対する具体的な主張の詳細は、ローゼン法律事務所が提出した資料に記載されています。

要約すると、主な主張は以下の3点です。

(原文)

1. The issues being faced by suppliers, like ASML, in the semiconductor industry were much more severe than defendants had indicated to investors

2. The pace of recovery of sales in the semiconductor industry was much slower than defendants had publicly acknowledged;

3. Defendants had created the false impression that they possessed reliable information pertaining to customer demand and anticipated growth, while also downplaying risk from macroeconomic and industry fluctuations, as well as stronger regulations restricting the export of semiconductor technology, including the products that ASML sells.

(日本語訳)

1. ASMLのようなサプライヤーが半導体業界で直面している問題は、被告が投資家に伝えていた内容よりもはるかに深刻でした。

2. 半導体業界の売上回復ペースは、被告が公に認めていたよりもかなり遅れていました。

3. 被告は、顧客需要や将来の成長に関する信頼性の高い情報を持っているかのような誤解を与えつつ、マクロ経済や業界の変動リスク、またASMLの製品を含む半導体技術の輸出規制強化によるリスクを軽視していました。

しかしながら、これらの主張はどれも正当性に欠けると私は考えています。

まず、ASMLはすでに2023年10月の第3四半期決算発表で、2024年は成長が見込めない年になると投資家に警告していました。

そして、2023年10月の第3四半期決算発表直後に、私は下記のようにコメントしております。

「ASMLの決算発表で特に目立ったネガティブな点は、2023年に前年比30%の成長を遂げたにもかかわらず、翌年の収益が横ばいになると予想されたことです。第3四半期の決算発表で翌年の見通しを示すのは非常に珍しいことで、これはすでに状況が厳しいと認識しており、悪いニュースを早めに伝えたいという意図があったと考えられます。」

したがって、もし2023年後半にASMLへの投資を検討していた場合、同社やその株価に関する豊富な情報を簡単に手に入れることができたと認識しています。

(出所:Yahoo Finance)

例えば、ASMLの株価が過去最高値に近い水準であることに気付いたかもしれません。

また、2021年後半のピークから2022年後半までの間に株価が急落していたことも確認できたはずです。

つまり、ASMLが他の多くの半導体企業と同様に、景気のサイクルに左右される企業であるという最近の明確な証拠を持っていたということです。

そして、2024年が成長ゼロの年になるという情報もすでに得られていたでしょう。

このことだけでも、2023年後半がASMLに投資するのに適したタイミングではない可能性を示していたはずです。

実際、2024年の厳しい見通しにもかかわらず、ASMLは他の多くの同業他社と同様に、2024年前半に株価が大きく上昇しました。

これは生成AIに対する期待感によるもので、将来の収益成長の基盤とは全く関係ありませんでした。

このバブルは2024年半ばから収縮し始め、その傾向は現在も続いています。

特にASMLの場合、2024年第3四半期の決算発表後にその収縮が急激に進行しました。

ASMLホールディング(ASML)を含む半導体業界全体の課題

この集団訴訟では、ASMLホールディング(ASML)の株価が過去6か月間で大幅に下落したことが、同社に特有の問題であるかのような印象を与えています。

しかし、実際にはそうではありません。

2024年後半にかけて、ASMLも含めた同業他社の株価は、例外なく大幅な調整を経験しています。

(出所:Smartkarma)

直近、私は半導体製造装置(WFE)セグメントに関する見解を下記のレポートで取り上げています。

当レポートでの結論は以下の通りです:

「WFEセクターは、2021年に記録した売上高44%増という大幅な成長を経て、現在「調整期間」に入っています。それでも、この新たな高水準の売上を3年間維持し、さらに今後も2年間続く可能性が高いという点は、驚くべきことです。年間売上高が成長していないと嘆くよりも、この「新常態」をしっかりと維持していることを評価すべきではないでしょうか。」

「株価については、今四半期中も下落傾向が続く可能性があります。ただ、現在の価格水準には個人的にすでに魅力を感じています。これらの企業は優れた経営を行っており、半導体の未来において欠かせない役割を果たす存在です。ただし、投資には3年以上の長期的な視点が求められることを忘れてはなりません。半導体業界にはサイクルが存在し、今後もそれが続くと考えられるからです。さて、この先どうなるか、注視していきましょう。」

レポートの詳細に関心がございましたら、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、ご覧いただければと思います。

上記のコメントをまとめると、ASML(およびその経営陣)は、他の同業他社と同じ船に乗っているということです。

この半導体業界の不況がこれほど長引くとは誰も予想していませんでしたし、AI関連だけが急成長し、それ以外が停滞するという「デカップリング現象」を予測できた人もいませんでした。

ASMLホールディング(ASML)を取り巻く米国における規制について

ASMLホールディング(ASML)の経営陣に対する主張では、米国の規制の影響が大きく取り上げられています。

しかし、この「ダモクレスの剣」のような状況は、ASMLや同業他社にとってここ数年にわたり常に存在している問題です。

ダモクレスの剣とは、古代ギリシャの哲学者キケロが語った逸話に由来する表現で、 「権力や栄光には常に危険が伴う」 ことを象徴しています。

この表現は、不安定な状況や差し迫った危険がすぐ近くにある状況を示す際に使われます。

そして、米国における規制に関しては、顧客との会議でも頻繁に議論されるテーマであり、市場の投資家もこのリスクを十分に理解しています。

また、ASMLが規制についてやや楽観的な態度を取っていると感じる人もいるかもしれません。

しかしながら、ASMLは米国が課す制裁をコントロールする立場にないことも事実です。

彼らの役割は、その制裁が発動された際に従うことだけです。

そのため、この制裁についてASMLを責めるのは的外れであると考えています。

ASMLホールディング(ASML)に対する結論

半導体が私たちの未来において重要な役割を果たすのは間違いありませんが、半導体株への投資は覚悟が必要です。

私の経験では、最低でも3年、理想的にはそれ以上の長期的な視点が求められます。

2023年後半にASMLホールディング(ASML)への投資を検討していた投資家は、2024年の見通しについて同社が非常に明確な警告を発していたことを含め、多くの情報を手にしていました。

一方で、前述の通り、WFEセグメントにおける株価の急激な調整は、近い将来に魅力的な再投資のタイミングをもたらす可能性があります。

個人的には、しばらく様子を見て、2024年第4四半期の決算シーズンで2025年以降の見通しがどう示されるかを確認したいと思います。

さて、ASMLを含め、半導体業界がどうなるか見守っていきたいと思います。

加えて、インベストリンゴのアナリストであるダグラス・ オローリン氏ジェームズ・ フォード氏も、最新の決算発表後にASMLに関する下記の詳細な分析レポートを執筆しております。

是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、併せてご覧いただければと思います。

ダグラス・ オローリン氏

ジェームズ・ フォード氏

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アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

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