中立ブロードコムブロードコム(AVGO)とは?目標株価は216ドルで割安?VMware買収の成果とエヌビディアとの違いを徹底分析!
コンヴェクィティ - 本稿では、ブロードコム(AVGO)のVMware(VMW:VMウエア)の買収後の成果、ブロードコムとエヌビディア(NVDA)のビジネスモデルの違い、さらに、テクノロジー面での同社の強み(競争優位性)を詳しく分析していきます。
- そして、上記の分析と合わせて、DCF法に基づいて算出した同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性に関する詳細な分析を解説していきます。
- 同社はVMwareの買収に成功し、迅速なM&Aの実行や運営効率の向上により、予想以上の成長を遂げています。
- 同社はアルファベット(GOOG/GOOGL)とのパートナーシップを通じてAIチップ市場での地位を強化しており、生成AIブームによる需要の高まりとともに、今後の成長が期待されています。
- 生成AIブームの収束や競合他社の進出など、いくつかのリスクはあるものの、ブロードコムの株価は引き続き上昇基調にあり、足元の過熱感を除くと、特に大きなリスクは見当たらないように見えます。
※「【コンヴェクィティ:2024年度中間バリュエーション・レビュー】注目の米国テクノロジー企業の今後の株価見通しを徹底解説!」の続き
ブロードコム(AVGO)に関して
ブロードコム(AVGO)は2022年後半から一貫して上昇を続けています。そして、そのタイミングは、私達がレポートを執筆し、VMware(VMW:VMウエア)の買収に関する市場の半導体アナリストによる大きな誤解を指摘し、同社が優れた経営陣、製品リーダーシップ、そして高い運営効率を持つ非常に優れた企業であることが明らかにしたタイミングでもあります。
その後、下記の通り、ブロードコムは非常に順調に成長を続けています。
・同社は、コアとなる半導体分野(特にネットワーク分野)でのリーダーシップを着実に強化している。
・半導体業界の低迷も徐々に和らぎつつある。
・生成AIブームが同社の高性能スイッチチップへの需要を後押ししている。
・さらに、アルファベット(GOOG/GOOGL)との10年以上にわたるTPU開発のパートナーシップにより、ブロードコムは世界で2番目に大きなAIチップベンダーとなり、時価総額でも半導体業界で第2位の企業となりました。
関連用語
TPU(Tensor Processing Unit):GoogleがAIや機械学習のタスクを効率的に処理するために開発した専用のプロセッサ。特に、ディープラーニングモデルのトレーニングや推論を高速で行うために最適化されている。
ブロードコム(AVGO)のVMware(VMウエア)の買収に関して
さらに素晴らしいことに、ブロードコム(AVGO)は、当初経営陣が予想していた3年を待たず、買収から数ヶ月でVMware(VMW:VMウエア)の価値を引き出すことに成功しました(もしかすると、予想が控えめだった可能性もあります)。多くの市場のアナリストは、ブロードコムがVMwareから価値を引き出せない、あるいは逆にVMwareの価値を損なうと考えていましたが、私たちはブロードコムが期待以上の成果を出す可能性が高いと見ていました。しかし、ブロードコムの驚異的な成長は私たちの予想をも超え、迅速なM&Aの実行や運営効率の向上、製品ポートフォリオの刷新によって有機的な成長を促進する取り組みは、当初の予測を大きく上回る結果となりました。
ブロードコム(AVGO)とエヌビディア(NVDA)の比較
現在、ブロードコム(AVGO)はXPUの分野でリーダーとしての地位を築きつつあり、特にASICやAIチップが、CPUに代わってコンピューティングの主要な収益源となると見込まれています。また、XPUは、スケールアップやスケールアウトによる大規模なAIクラスターの構築を可能にするため、ネットワークで接続される必要があります。
現時点で、最大のAIクラスターはメタ・プラットフォームズ(META)が所有する2つのデータセンターで、それぞれに24,000台のH100が配備されています。1つはGPUからネットワーキングチップまでをすべてエヌビディア(NVDA)製で構成し、もう1つはエヌビディアのGPUとブロードコム、および、シスコ・システムズ(CSCO)のネットワーキングチップを組み合わせています。7月には、イーロン・マスク氏のAIスタートアップ「X.ai」が、年末までに100,000台のH100を搭載するMemphis AIデータクラスターの初期構築を発表しました。また、エヌビディアとブロードコムによれば、今後、100万台のGPUを搭載するAIクラスターが登場することも予想されています。イーロン・マスク氏が最近のLex Friedman氏とのインタビューで述べたように、課題はH100を調達することではなく、多数のH100チップをオーケストラのように調和させ、ミリ秒単位で通信し、同期してトレーニングを開始し、完了させることです。データセンター内でのチップ数や帯域幅が増加するにつれて、ブロードコムのAIネットワーキングチップに対する需要と平均販売価格(ASP)もさらに高まるでしょう。
さらに、ブロードコムはAIチップ事業においても明るい未来を見据えています。アルファベット(GOOG/GOOGL)とのパートナーシップは非常に順調で、市場ではTPUがスタートアップや新興企業にとって、エヌビディアのGPUに代わる最良の選択肢になると期待されています。これには、すべてのLLM(大規模言語モデル)トレーニングインフラをTPUで処理しているアップル(AAPL)も含まれます。アルファベットは過去1年間で約60億ドルをブロードコムに支払っており、今後数四半期でその注文が倍増すると見込まれています。TPUが早期の顧客成功事例となったことで、ブロードコムは、昨年、メタ・プラットフォームズを、今年はByteDanceを顧客に加えました。アルファベットと同様に、これらの顧客も今後数年間で注文を増やし、ブロードコムが成長の鈍化を管理し、既存の成長ドライバーにさらなる成長を加える手助けをするでしょう。
関連用語
XPU:CPU(中央処理装置)やGPU(グラフィックス処理装置)を含む、さまざまなプロセッサを指す総称。特に、AIや特殊用途に特化したプロセッサを指すことが多い。
プロセッサ:コンピュータや電子機器でデータを処理し、指示に従って計算や操作を実行するための主要な部品。CPUやGPUがその代表例。
ASIC(Application-Specific Integrated Circuit):特定の用途のために設計された集積回路。AIや暗号化など特定のタスクに最適化されている。
CPU(Central Processing Unit):コンピュータの中心的な処理装置で、一般的な計算やタスクを処理する。
スケールアップ:既存のシステムの能力を高めるために、より強力なハードウェアにアップグレードすること。
スケールアウト:システムの能力を拡張するために、複数のコンピュータやサーバを追加して処理能力を分散させること。
AIクラスター:AI処理を行うために複数のコンピュータやプロセッサを連結して構築されたネットワーク。大規模なAIモデルのトレーニングや推論に使用される。
H100:エヌビディアが開発した高性能GPUで、AIやデータセンター向けに設計されている。
GPU(Graphics Processing Unit):グラフィックス処理を専門とするプロセッサだが、AIや機械学習の計算にも広く利用されている。
ネットワーキングチップ:コンピュータやサーバ間でデータを高速に通信するための専用チップ。
Memphis AIデータクラスター:イーロン・マスク氏のAIスタートアップが構築している大規模なAI処理用データセンターの名称。
帯域幅:ネットワーク上でデータが送受信される速度や容量を指す。帯域幅が広いほど、より多くのデータを同時に処理できる。
LLM(大規模言語モデル):大量のテキストデータを使ってトレーニングされたAIモデルで、人間の言語を理解し、生成する能力を持ってい。ChatGPTがその一例。
ブロードコム(AVGO)に関するリスク
一方で、ブロードコム(AVGO)にとってのリスクは明白です。
もし生成AIブームが収束し、エヌビディア(NVDA)の成長が鈍化すれば、ブロードコムも影響を受けるでしょう。
また、いくつかのリスクは、確率は低いものの、影響が大きい可能性があるものも存在します。それらのリスクは下記の通りです。
・アルファベット(GOOG/GOOGL)が独自路線を進むか、低コストの代替策としてマーベル・テクノロジー(MRVL)やAlchip Technologies Ltd(3661.TW:アマゾンのAWSのカスタムチップを手掛ける台湾のASICベンダー)に切り替える可能性。
・メタ・プラットフォームズ(META)が自社開発のトレーニングチップで成功を収めない可能性(推論チップでの進展が芳しくないことを考えるとあり得る)。
・TikTokを運営するByteDanceが米国政府の政治的圧力により市場から排除される可能性(ただし、トランプが再選されれば、ByteDanceの主要株主が共和党支持者であるSusquehannaの創設者であるため、このリスクは低くなるかもしれない)。
・VMware(VMW:VMウエア)がコスト削減や顧客の不満によって最終的に悪影響を受ける可能性。
とはいえ、これらのリスクが近い将来に現実化する可能性は非常に低く、ブロードコムの株価は引き続き上昇基調を維持しています。同社は予想を上回る業績を発表し続けており、市場のアナリストたちは目標株価を次々に引き上げています。現時点では、バリュエーション水準の高騰や未熟な投資家による同社株式の著しい買い付けといった市場の過熱感以外に、同社に対する目立ったリスク要因は見当たらないように見えます。
ブロードコム(AVGO)のバリュエーションに関して
(出典:筆者作成)
ブロードコム(AVGO)は非常に優れた財務パフォーマンスを示しており、「Rule of X」に基づけば、弊社がカバーしているテクノロジー企業61銘柄中トップ5%に入る実力を持っています。EV/GP倍率は高いものの、フリーキャッシュフロー(FCF)と株式ベースの報酬(SBC)の観点から見ると、株価はそれほど割高ではありませんが、割安でもないというのが現状です。また、私たちのDCFモデルに基づくと、同社の1株当たりの本質的価値は216.07ドルとなっており、現在の株価は166ドル程度となっていることから、弊社のDCFモデルに基づく株価予想対比では20%以上のディスカウント(割安)となっています。しかし、私達としては、特に過去6ヶ月で株価が30%以上上昇していることを考慮すると、現在の株価水準では強気で見るよりも中立が適していると考えています。
弊社のDCFモデルに基づくバリュエーションの詳細と株価予想は、下記リンク内のブロードコム(AVGO)のシートにおける「Intrinsic value per share(1株当たりの本質的価値)」をご覧ください。
上記テーブルにおける関連用語
※各用語の詳細な解説は、「【コンヴェクィティ:2024年度中間バリュエーション・レビュー】注目の米国テクノロジー企業の今後の株価見通しを徹底解説!」をご覧ください。
Rule of X (inc. NTM growth & LTM SBC):Rule of X(今後12カ月間の成長率と直近過去12カ月間のSBC含む)
LTM EV/ (FCF-SBC) :企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)
Financials / Valuation / Price Chg / Vol Chg:財務 / バリュエーション / 株価変動 / ボラティリティ変動
Rule of X (inc SBC):Rule of X(SBC含む)
EV/(FCF-SBC):企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)
EV/GP:企業価値 ÷ 直近過去12カ月間の粗利益
DCF Val. Discount:DCF法により算出されたバリュエーション対比でのディスカウント水準
Price Change:株価変動
Implied Vol:インプライド・ボラティリティ
Hist Vol:ヒストリカル・ボラティリティ
Implied Vol vs Hist Vol:インプライド・ボラティリティとヒストリカル・ボラティリティの差
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