07/05/2024

やや強気
アリババ・グループ・ホールディング
やや強気
足元、過小評価されているアリババ株の成長を間もなく再活性化する重要な強気のカタリストが現れると見ている。
アリババ(BABA:予想配当利回り2.6%)最新の2024年4Q決算まとめと中国経済を踏まえた今後の株価見通し・将来性

a large building with a giant orange object in the middle of itダニル・ セレダダニル・ セレダ
  • アリババ・グループ・ホールディング(BABA:予想配当利回り2.6%)の欧米の同業他社が輝き続ける一方で、同社の最近の不振は中国経済の弱体化によるものだと見ている。
  • 信じがたいことだが、同社のバランスシート上の現預金は約0.5兆元にも上り、現在の現金比率はすでに44%となっている。
  • 私は、足元の割安な同社株式の成長を復活させる重要な強気のカタリストがまもなく現れると見ている。
  • テクニカル面から考察すると、直近の強い抵抗線は現在の水準から56%~57%上であり、これは同社株が現在取引されている大幅なディスカウントのバリュエーションと一致している。
  • そのため、私はアリババ・グループ・ホールディングの今後の見通しに対して「強気」で見ている。

アリババ・グループ・ホールディング(BABA)に関して

私の意見では、市場は依然としてアリババ・グループ・ホールディング(BABA:予想配当利回り2.6%)の潜在能力を十分に認識しておらず、現時点で最も過小評価されている魅力的な銘柄の一つであるように見える。

米国の同業他社が大幅な利益を上げているにもかかわらず、アリババの最近の低調なパフォーマンスの主な理由は、中国経済の弱さにある。

しかし、アリババおよび中国株式市場にとって転機となり得る有望なカタリストが見込まれていると考えている。

※カタリスト:金融や投資の分野において、特定の企業や株式の価値や価格に急激な変化をもたらす可能性があるイベントや要因のこと。

そのため、私はアリババ株式の今後の見通しに関して「強気」に見ており、その理由を説明していきたい。

アリババ・グループ・ホールディング(BABA)の2024年度第4四半期決算に関して

2024年5月14日に発表された2024年度第4四半期(暦年で第1四半期)決算において、アリババ(BABA)は売上高が前年同期比で7%増加し、約310億ドルの売上高を計上している。

これは、米ドル換算での売上高に影響を与えた大幅な為替変動にもかかわらず達成されたものである。

米ドル/人民元の為替レートは昨年の約6.85から約7.22に上昇したが、それでもアリババはアナリストの売上予測を約2億5000万ドル上回り、競争が激化する中でも市場シェアを維持している。

しかし、アリババの純利益はアナリストの期待を下回る着地となっている。

この主な要因は、営業利益が3%減少し、調整後EBITAが5%減少したことであり、これは主にeコマース事業への投資や菜烏網絡(Cainiao)の従業員を維持するためのインセンティブに伴う支出によるものである。

この利益の縮小により、多くのウォール街のアナリストは今後数四半期の予測を引き下げ、アリババの株価に売り圧力がかかることとなった。

2024年度第4四半期には、現金創出の面でも課題があった。

営業活動により生み出された純現金は26%減少して約3,233百万ドルとなり、フリー・キャッシュフロー(FCF)は52%減少して約2,127百万ドルとなった。

その結果、FCFマージンは売上高の11%に減少した。

それでも、アリババは直近12か月ベースでは、約13.3%のFCF利回りを達成しており、私としては、これだけの規模の企業としては非常に優れた成果であると見ている。

※FCFマージン:企業のフリー・キャッシュフローを売上高で割ったもの。

※FCF利回り:企業のフリーキャッシュフローをその企業の時価総額で割ったもの。

(出典:YCharts

アリババは、中国および海外セグメントにおいて、前年同期比で二桁成長の流通取引総額(GMV)を記録している。

同社は、売上高と流通取引総額を向上させるために、売り手から顧客に焦点を移しており、これにより価格競争と顧客優先の戦略のため、一時的にマージンへの逆風が生じる可能性がある。

Argus Researchのアナリストは、この戦略が時間とともに売上成長と高いマージンに寄与すると信じている。

2024年度第4四半期において、アリババのAI製品に関連するクラウドコンピューティング売上高は成長を加速させ、調整後EBITAは製品ミックスと運営効率の改善により前年同期比で45%増加した。

また、アジア太平洋地域のクラウドインフラ市場が2032年までに市場評価額5937億ドルに達し、2024年から2032年の予測期間中に25.93%の年平均成長率で成長すると予測されており、アリババはこのトレンドを持続し続けるための十分な資源と専門知識を有していると言える。

2024年3月時点で、アリババは約0.5兆元の現金および現金同等物を保有し、債務はわずか1700億元であり、現金比率は44%となっている。

これは、他の地域の同様のテクノロジー大手企業と比較して、市場から2~3倍ほど過小評価されている可能性を示していると見ている。

アリババは2025年度の指針を示していないものの、その強力なキャッシュポジションとフリー・キャッシュフロー、並びに、多額の自社株買いと2024年度の40億ドルの配当は、同社の株主に対して大きな価値を還元する能力を強調している。

それにもかかわらず、アリババの株価は年初来横ばい、やや下落しており、来年のNon-GAAPベースのPERでは約9倍というバリュエーションとなっており、セクターにおけるNon-GAAPベースのPERの中央値に対して40%のディスカウントが適用されている。

そして、他の評価指標も、アリババがかなり過小評価されていることを示唆している。

(出典:筆者作成)

※TTM:直近12か月間

※MRQ:直近四半期

※P/E Ratio(PER):株価収益率

※Price to Sales:株価売上高倍率

※Price to Cash Flow:株価キャッシュフロー倍率

※Price to Free Cash Flow:株価フリー・キャッシュフロー倍率

※Price to Book(PBR):株価純資産倍率

※Price to Tangible Book:株価有形資産倍率

しかしながら、バリュエーションが過小評価されているだけでは、株式を購入する十分な理由にはならない。

なぜなら、各企業が深刻な内部問題や事業上の問題を抱えていた場合には、それに伴いバリュエーションをさらに下落させる可能性があり、所謂「バリュートラップ」に陥る可能性があるためである。

※バリュートラップ:株価が割安に見えるために投資家が魅力を感じて投資するものの、実際にはその企業の業績が低迷しているために株価が上昇せず、期待したリターンを得られない状況。

近年、中国の厳しい経済状況と規制および不動産リスクが重なり、中国の株式市場は低迷している。

中国経済は不動産に大きく依存しており、現在の住宅ローン危機と緩慢な消費需要の成長が大きな障害となっている。

株式市場の回復には、中国経済の大きな変化が必要であり、それが回復プロセスを開始し、株式市場に先行指標としてプラスの影響を与えるきっかけとなるだろう。

私は、特に7月に予定されている中国共産党政治局会議(第20回党大会の第3回全体会議)が、プラスの変化のきっかけとなることを期待している。

ゴールドマン・サックス(GS)のアナリストによれば、政治局会議では2024年の残りの期間の政策が概説される見込みである。

大規模な景気刺激策は期待されていないが、不動産市場への支援が増加する可能性がある。

これは不動産セクターを安定させ、年末までに約5%の実質GDP成長率を維持するための下方リスクを緩和するための重要な一歩となるだろう。

これらのインセンティブは、中国の不動産市場に非常に強いプラスの影響を与え、それが経済成長を促進するだろうと私は見ている。

このことにより、投資家の中国個別株への信頼が回復し、アリババが持つ競争優位性と前述の過小評価によるバリュエーションのディスカウントのため、市場のポートフォリオマネージャーにとって同社が主要な注目対象となるのではないかと見ている。

アリババ・グループ・ホールディング(BABA)に伴うリスクに関して

アリババ(BABA)に対して強気の見方をする上での大きなリスクは、継続的なマクロ経済の逆風の可能性である。

中国経済の現在の問題(低い需要成長、テクノロジー企業への厳しい規制、長期化する不動産危機)が実際に長期的なものであるならば、アリババの回復および成長見通しに確実に影響を与えるであろう。

また、予期せぬ地政学的緊張や貿易紛争も投資家のセンチメントに悪影響を及ぼす可能性がある。

したがって、同社への投資を検討する際には、自身で十分な調査を行い、強気となる上での根拠を自ら確認することが重要である。

さらに、私が強気である理由は、今後のカタリストの出現に依存しているが、それが最終的に実現しない可能性もある。

つまり、中国政府が現状の問題に早期に対処できなかった理由、また、ケースを考慮する必要があるだろう。

また、最近の数年間に見られるように、中国企業のバリュエーションの過小評価が無期限に続く可能性もある。

中国当局がローカル通貨の切り下げを決定した場合(これは以前から憶測されている)、これはアリババや他の国内にフォーカスした小売業者の米ドル換算ベースの売上高に大きな影響を与えるであろう。

これにより、アリババの現在の低いバリュエーションは本質的に無意味となる可能性がある点にはご留意いただだきたい。

アリババ・グループ・ホールディング(BABA)に対する結論

上述の通り、アリババ(BABA)の株式には多くのリスクが伴うが、アリババ株を今日購入する潜在的なリターンは、潜在的なリスクを上回ると見ている。

同社は現在、その本質的価値に対して大幅なディスカウントで取引されている。

同社の各セグメントの成長見通しは非常に有望である。

もちろん、アリババの今後のパフォーマンスは、中国資産に対する強気のセンチメントがどれだけ早く戻るか、そして中国共産党が特に不動産セクターを安定させるためにどのような措置を講じるかに依存するだろう。

最初のステップのタイミングは不確実であるが、私は第二のステップが間もなく待望のカタリストとなり、アリババ株に新たな命を吹き込むと見ている。

さらに、その他のアリババ(BABAに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、アリババのページにアクセスしていただければと思います。


アナリスト紹介:ダニル・ セレダ

📍テクノロジー担当

セレダ氏のその他のテクノロジー銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、セレダ氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


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