【テクノロジー:Part 1】カーバナ(CVNA)の将来性とは?同社のビジネスモデルと競合環境、並びに、競争優位性を徹底解説!
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- 弊社は注目の自動車関連銘柄カーバナ(CVNA)の分析を開始し、本編では、同社の長期的な投資のテーマに加え、空売りレポートを発表することで知られるヒンデンブルグ・リサーチ社による最近のレポートで指摘された懸念点についても掘り下げていきます。
- 同社の強みは、オンラインマーケットプレイスと実際の在庫管理をうまく融合させた点にあり、この実現は非常に難しいことです。
- 弊社の見解では、同社が現在の不安定なオートローン問題を乗り越える可能性は高いと考えており、これが実現すれば、同社は今後有利な立場を築くことができると見ています。
- 現在のリスクと長期的な投資テーマを総合的に検討した結果、同社には魅力的な上昇余地があると判断しています。
- そして、本稿Part 1では、まず、カーバナの将来性を見極める上で不可欠な同社のビジネスモデルと競合環境、並びに、競争優位性に関して詳しく解説していきます。
注目の自動車関連銘柄カーバナ(CVNA)とは?
2012年に設立されたカーバナ(CVNA)は、8000億ドル規模の米国中古車市場に革命をもたらしました。同社は、完全オンラインプラットフォームを通じてコスト削減と顧客体験の向上を実現し、車の購入・売却プロセスを刷新しました。「価格交渉不要」「詳細な車両情報」「柔軟な配送オプション」といった特徴により、従来型のディーラーに代わり、対面でのストレスや非効率を排除しました。
初期には、少数の大規模な集中型倉庫で車両を保管し、第三者の運送サービスを利用して配送を行っていました。その結果、顧客は購入品を受け取るために遠方まで出向く必要があったり、高額な自宅配送費用を負担したりするケースが多くありました。また、外部配送パートナーに依存していたため、車両の受け取りに遅延が発生することも多く、顧客満足度が十分に高まらない課題がありました。
その後、同社は独自の配送ネットワークや象徴的な「自動車自販機」といった革新的な取り組みによって、モデルを強化しました。自販機の導入や独自のトラックを備えた自社配送サービスの開発により、車の取引がより迅速で手頃な価格になり、顧客にとって大幅に利便性が向上しました。また、2022年のADESAの買収をはじめとする戦略的買収により、卸売能力とサプライチェーンの効率性を強化し、さらに過去の技術系企業の買収により、デジタルプラットフォームの進化を遂げました。
(出所:カーバナのHP)
パンデミック後の市場調整期には大きな課題に直面しましたが、同社は「成長優先」から「収益性と運営効率の向上」に方針転換しました。現在では、垂直統合された運営体制と規模の大きさが競争優位性をもたらし、細分化され未開拓の市場で長期的な成長を目指しています。
カーバナ(CVNA)の対象市場
カーバナ(CVNA)は、規模が8000億ドルに達する米国中古車市場で事業を展開しています。この市場は非常に成熟しており、細分化が進んだ巨大な業界で、従来は伝統的なディーラーが支配的でした。従来のディーラーは対面での販売手法に依存しており、時間がかかるうえに透明性に欠け、不安や脅威、威圧感を顧客に与えることが少なくありませんでした。同社はこうしたギャップに着目し、「完全オンラインモデル」を採用することで市場を変革しました。利便性、透明性、ストレスの少ないスムーズな体験を強調することで、従来のモデルを革新しました。同社の規模と垂直統合型の運営体制は、小規模で地域密着型のディーラーには真似できない競争優位性をもたらしています。
同社はコアである小売事業に加え、車の購入プロセスをさらに簡便にするため、サービスの幅を広げています。同社のプラットフォームを通じて、顧客はローンや保険のオプションを直接利用できるほか、車両の下取りサービスを活用して自身の車を売却することも可能です。さらに最近では、卸売市場にも進出し、個人消費者だけでなく法人顧客にもサービスを提供しています。この多角化により、同社は事業範囲を拡大するだけでなく、自社インフラを活用して、競争の激しい業界で新たな収益源を確保しています。
カーバナ(CVNA)の製品・サービス
カーバナ(CVNA)の主力商品は、中古車の購入と売却を可能にするeコマースプラットフォームです。同社はソフトウェアに多額の投資を行い、閲覧から配送まで一貫してシームレスなオンライン体験を提供しています。利便性を高めるため、顧客は象徴的な「自動車自販機」で車を受け取るか、自宅配送を選ぶことができます。すべての購入には7日間の返品ポリシーが適用されており、購入した車がニーズに合っているかを確認できる安心感を提供します。
同社の製品・サービスには以下が含まれます:
・中古車マーケットプレイス
約45,000台の中古車を取り揃えたオンラインプラットフォームで、360度バーチャルツアーや詳細な車両履歴情報を含む幅広い選択肢を提供。
・Carvanaファイナンス
事前審査時に信用スコアへの影響がない統合型のローンソリューションを提供。車を閲覧しながら、リアルタイムで月々の支払い額を確認可能。
・Carvanaバリュートラッカー
車の価値を時系列で追跡し、売却や下取りの意思決定を支援する個別化ツール。
・Carvana保険
自動車保険を迅速かつ簡単に購入できるサービス。
・CarvanaCareプロテクションプラン
車購入者にさらなる安心感を提供する、包括的な延長保証オプション。
これらの多彩なサービスにより、同社は顧客の中古車購入・売却体験をより便利で安心できるものにしています。
カーバナ(CVNA)のM&A(合併・買収)
カーバナ(CVNA)は、技術力と運営インフラを強化するために戦略的な買収を活用してきました。同社の成長における重要な節目は、2022年に220億ドルで買収した大手卸売自動車オークション会社のADESAです。この買収は、16億ドルのシニア担保付き債券と優先株式発行による調達資金などを組み合わせて資金を調達しました。ADESAの買収により、同社の物流ネットワークが拡大し、配送時間の短縮、車両の検査・再調整コストや在庫コストの削減、さらには車両の選択肢拡大が実現しました。また、ADESAの広範なネットワークは同社のサプライチェーンを強化し、さらなる競争優位性をもたらしました。
初期の買収では、技術革新に重点を置いていました。2017年には、車両分析を向上させ、より正確な価格設定やリスク管理を実現するため、自動車データスタートアップのCalypsoを買収しました。さらに2018年には、3Dコンピュータビジョンと拡張現実のリーダーであるCar360を買収し、同社のプラットフォームに高度な360度車両写真技術を導入しました。
これらの買収は、同社が進化を遂げる上で重要な役割を果たし、競争の激しいオンライン中古車市場において破壊的存在としての地位を確立する原動力となっています。
カーバナ(CVNA)の販売における流通構造
カーバナ(CVNA)は実店舗を持たないダイレクト・トゥ・コンシューマーモデルを採用しています。購入者は自宅への直接配送や自動車自販機での受け取りを選択でき、柔軟性と利便性を提供しています。2024年第3四半期には、小売ユニット販売数が10万8000台を超え、前年同期比34%増を記録しました。
流通構造の観点では、同社とグーグル(GOOG)には共通点があると言えます。グーグルはスマートフォンを製造せず、Android OSを管理・提供することでハードウェアの管理者として機能しています。一方、カーバナは車両を製造せず、車の売買の物流とインフラを担っています。また、グーグルがPlayストアやエコシステムを通じて付加サービスを提供するように、カーバナも保険、ローン、延長保証プランを通じて顧客体験をさらに向上させています。さらに、両社はそれぞれの市場で中価格帯から低価格帯をターゲットにしている点も共通しています。
対照的に、テスラ(TSLA)やアップル(AAPL)は垂直統合モデルを採用しており、製品のハードウェアからソフトウェア、サービスまでを一貫して管理することで、シームレスで厳密に管理された顧客体験を提供しています。これらの企業は市場のプレミアムセグメントをターゲットにしています。この比較は直感的ですが、カーバナとグーグルのアナロジーは市場の非効率性に対する異なるアプローチを浮き彫りにしています。
ただし、カーバナとグーグルの類似性には限界もあります。グーグルはハードウェアメーカーの広範なネットワークを支援する「エネーブラー(他者や他社が製品やサービスを実現・提供できるよう支援する存在)」として機能している一方で、カーバナはディーラーと直接競合する「ディスラプター」として、しばしば自動車メーカーの延長線上にあるディーラーと対峙しています。また、グーグルがスマートフォンOS市場で圧倒的なシェアを誇るのに対し、カーバナは細分化された中古車市場での競争に直面しており、従来型の競合他社に比べると市場シェアは控えめです。これらの違いは、アナロジーの限界を強調しつつも、構造的な類似点が興味深いことを示しています。
小売業務に加え、カーバナはADESAの買収を活用して卸売市場にも対応しています。ADESAの広範なオークションネットワークを通じて、ディーラーやフリートオペレーターなどの法人顧客に車両を販売しています。この卸売業務により、カーバナの在庫や車両の選択肢が拡大し、消費者が求める車を見つけやすくなっています。小売と卸売の両方に注力することで、同社は市場へのアプローチと収益源を拡大し、豊富な選択肢、魅力的な価格設定、迅速な配送を通じて顧客体験を向上させています。
カーバナ(CVNA)を取り巻く競争環境
カーバナ(CVNA)は、地域密着型の伝統的なディーラー、カーグルス(CARG)のような純粋なオンライン車両マーケットプレイス、そしてカーマックス(KMX)やオートネーション(AN)といったハイブリッド型プラットフォームと競合しています。これらのハイブリッド型企業は、従来型の実店舗販売から消費者向けのeコマース体験へ進化しようとしています。
また、AIやVR、ARといった次世代技術を活用する新興スタートアップも台頭しており、VR/ARを活用した車両ツアー、AIによる検査ツール、動的価格設定アルゴリズムなど、バリューチェーン内の特定の領域に焦点を当てています。これらの革新は業界の一部を再構築する可能性がありますが、同社のような完全統合型のeコマースソリューションを提供するには至っていません。
純粋なオンライン車両小売業者をスケールさせる難しさは、最近のブルーム(VRM)のeコマース事業崩壊からも明らかです。大規模な運営において、価格設定、在庫管理、物流、融資、カスタマーサービスの複雑さが露呈しました。特に、ブルームは物流と在庫管理で課題を抱え、高コストや遅延、顧客体験の低下を招きました。深読みすれば、ブルームは車両の調達、検査、再調整、顧客への配送を行うために必要なインフラ構築に十分な投資を行わなかったのではないかと考えられます。
2023年10月、中古車販売業界でShiftも破綻し、破産申請を行いました。カーバナやブルームと同様、Shiftも中古車市場に変革をもたらすべく、車の購入・売却を完全オンラインで行うプラットフォームを目指していました。しかし、Shiftはハイブリッド型の在庫モデルを採用し、自社で一部の在庫を抱えながら、個人間取引やディーラー間の販売を促進していました。このモデルは非効率性を生み出し、コスト超過を招いたようです。
ブルームと同様に、Shiftは在庫管理や物流を効率的に運営するための規模とインフラが不足しており、運営コストが膨れ上がりました。また、外部の物流業者への依存や、自社独自の配送および再調整インフラへの投資不足により、配送遅延や品質問題が発生。これにより顧客の信頼が損なわれました。さらに、悪いレビューや顧客満足度の低下が評判を傷つけ、収益の急減を引き起こしました。
損益計算書
(出所:Seeking Alpha)
(出所:Seeking Alpha)
一方で、カーバナは価格分析、在庫管理、物流、そして顧客の購入体験に多額の投資を行っており、これらの課題に対応する体制を整えています。このような積極的な投資が、進化し続けるオンライン車両マーケットプレイスでのリーダーシップを維持する要因となっています。
以下に、カーバナの競争環境を簡単にまとめています。
・カーマックス(KMX)
実店舗と強力なオンラインプレゼンスを組み合わせた支配的なハイブリッドプラットフォーム。
・オートネーション(AN)
新車と中古車の両方を扱い、eコマース機能を強化。
・Shift Technologies
完全オンラインプラットフォームとして展開していたが、2023年10月に深刻な運営・財務上の課題に直面し破産。現在は事業を停止。
・Cars.com
車両リスティングからオンライン取引の促進へと拡大。ただし、売り手と買い手の間で実際に車両と書類を引き渡すには、第三者ディーラーとの提携が必要。
・カーグルス(CARG)
エンドツーエンドのeコマースツールに投資する車両リスティングプラットフォーム。Cars.com同様に第三者ディーラーに依存するが、個人間取引や直接売買により適している。
・トゥルーカー(TRUE)
ディーラー提携を通じたデジタル小売に注力。
・Edmunds
自動車リサーチで知られ、現在はオンラインマーケットプレイスを統合。
・Manheim(Cox Automotiveが所有)
卸売自動車オークションのリーダーで、広範な物流能力を持つ。
・テスラ(TSLA)
消費者向けの直接販売オンラインモデルは、デジタル小売体験の標準を確立。
・Amazon Autos(AMZN)
パートナーシップを通じた自動車販売を模索中で、将来的な市場の破壊者となる可能性。
・オートゾーン(AZO)
主に自動車部品に特化しているが、中古車購入者層と顧客層が一部重複。
カーバナの差別化要因は、オンラインマーケットプレイスと流通ネットワークの両方を兼ね備えた独自のビジネスモデルにあります。他の多くの競合他社は、いずれか一方のモデルに偏っており、オンラインマーケットプレイスとして運営しながら車両の管理ができず、シームレスな購入体験を提供できないケースや、実店舗を主体としながらオンラインの存在感が限定的なケースがほとんどです。
特に注目すべきは、オートネーション(AN)とカーマックス(KMX)だけが、中古車市場におけるパンデミック後の調整期を乗り越えられるビジネスモデルの強靭性を示した点です。これは、実店舗からオンライン事業への拡大が、オンラインマーケットプレイスから在庫管理や物流運営に取り組むよりも自然な進化であるためと考えられます。ブルームやShiftの例が示すように、経験のないままオンラインマーケットプレイスから在庫管理や物流に取り組むモデルは、大きな課題に直面しやすいことが明らかです。
次章以降では、参入障壁やバリュエーション分析を踏まえて、カーバナの目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性に関して詳しく解説していきますので、是非、お見逃しなく!
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※続きは「【テクノロジー:Part 2】カーバナ(CVNA)の強み:参入障壁とユーザー評価、並びに、コロナ時に直面した急成長と破綻危機からの復活の真相に迫る!」をご覧ください。
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