01/14/2025

【テクノロジー:Part 2】カーバナ(CVNA)の強み:参入障壁とユーザー評価、並びに、コロナ時に直面した急成長と破綻危機からの復活の真相に迫る!

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  • 本稿では、注目の自動車関連銘柄カーバナ(CVNA)のビジネスにおける参入障壁とユーザーからの評価、そして、COVID-19時に直面した急成長と破綻危機からの復活に関する詳細な分析を通じて、同社の強みに関して詳しく解説していきます。 
  • 同社の参入障壁は、新規参入者が直面する巨額の設備投資や在庫管理の難しさにより、競争を限定的にしています。特にADESAの買収でネットワーク密度を高め、ユーザー体験の向上とコスト削減を実現しています。 
  • COVID-19による需要急増の恩恵を受けたものの、市場の正常化と金利上昇が原因で2022年に財務危機に直面しました。しかし、コスト削減や効率化を通じて成長重視から利益とキャッシュフロー重視の方針転換を遂げています。 
  • データ駆動型のアプローチや顧客体験の改善により、競合他社よりも高い評価を得ており、今後、車両価格設定やリスク管理においてネットワーク効果を活用し、さらなる競争優位を目指しています。

※「【テクノロジー:Part 1】カーバナ(CVNA)の将来性とは?同社のビジネスモデルと競合環境、並びに、競争優位性を徹底解説!」の続き

前章では、注目の自動車関連銘柄カーバナ(CVNA)のビジネスモデルと競合環境、並びに、競争優位性に関する詳細な分析を解説しております。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。

カーバナ(CVNA)のビジネスにおける参入障壁

カーバナ(CVNA)はユニークなビジネスモデルを持ちながらも、中古車市場を真に革新したとは言い難い、という意見もあるかもしれません。彼らのモデルは、オンライン体験と在庫管理を融合させたものに過ぎないからです。しかし、この融合型モデルを成功させるのは非常に難しいのです。これまでにも触れたように、新たに参入してくるプレイヤーの多くは、まずオンラインマーケットプレイスとして出発しますが、在庫管理への拡大がなければ同社にとって大きな競争相手にはなり得ません。在庫管理には、調達、検査、再整備、保管、配送といったプロセスが含まれますが、これを実現するには巨額の投資が必要であり、新規参入者がこれに取り組む可能性は非常に低いのです。新たな競合候補が物理的な車両管理に参入するには、まず大規模な資本とリソースを得る必要があるため、相当な規模に到達する必要があります。同社がこれを成し遂げたのは、先行者としての立場を活かし、優れたオンライン体験を重視するとともに、数年前に競争が少なかった状況を利用して配送ネットワークを徐々に構築できたからです。このように、インフラを時間をかけて整備することで、過度な負担を避けることができたのです。

現在存在するこれらの参入障壁の結果として、オートネーションAN)やカーマックスKMX)を除けば、他の車購入サービスでは、オンラインマーケットプレイス、個人の売り手、ディーラー、サードパーティの輸送サービスなど、複数の関係者が関与することになります。そのため、ユーザー体験が一貫性に欠けたものになっています。

過去数年間で、カーバナは大規模な設備投資とADESAの買収を通じて参入障壁をさらに高めてきました。この結果、現在扱っている車両量の3倍を処理できるインフラを構築しました。ADESAの拠点を完全に統合すれば(現在、買収した56拠点のうち3拠点が改修済み)、カーバナは非常に密なIRC(検査・再整備センター)および配送センターのネットワークを持つことになります。改修済みのIRCにはオークション施設も引き続き残ると見込まれており、これにより同社は小売市場よりも大幅に割引された価格で車をまとめて購入し、その場で検査・再整備を行うことで、かなりのコスト削減が可能になります。また、改修済みのADESAオークション拠点は、修理費用が高すぎる未開示の問題を抱えた在庫車両を規模の経済を活用して売却する機会も提供します(このような予期せぬコストは同社の運営費用に含まれています)。さらに、ADESAの拠点を活用することで、小売顧客だけでなくディーラーやフリートオペレーターといった商業顧客にも対応できる在庫をより多く確保することが可能になっています。

カーバナのネットワークの密度が高まったことで、顧客までの距離が短縮され、納車時間の短縮やより良いユーザー体験が可能になりました。また、これにより、GPU(車両1台あたりの粗利益)のさらなる向上が期待できます。具体的には、地域ごとの価格差を利用したアービトラージが可能となり、ある市場で全国平均より安く車を購入し、別の市場で全国平均より高い価格で販売することができるのです。さらに、複数の拠点で一括調達、検査、再整備、物流手配を行える体制を整えることで、より多くのADESA拠点を統合した際にはGPUの向上にさらなる効果が期待されます。

垂直統合とフルフィルメント

自社物流ネットワークによる支援

(出所:カーバナのプレゼンテーション資料

カーバナは無敵ではありません。2022年に破産寸前まで追い込まれたことがその証拠です。しかし、垂直統合を強化することで、つまりバックエンド(調達、IRC、在庫管理、配送)とフロントエンド(オンラインでのユーザー体験)の両方を自社で掌握することで、中古車市場の調整期を乗り切るための十分な柔軟性を確保しました。

同社の参入障壁について、最後に触れておきたいのがデータとネットワーク効果に関するフライホイール(好循環の仕組み)です。同社のデータに関するフライホイールは極めて重要です。同社の規模が大きくなるほど収集されるデータも増え、データ量が増えることで、車両価格の設定やリスク管理(車両の価格設定および顧客への融資の提供)において精度が向上します。その結果、車を売買しようとするユーザーをさらに引き寄せ、ネットワーク効果を強化し、それがさらに多くのデータ収集につながります。つまり、同社が自動車ローンに関するこの危機的な局面を乗り切ることができれば(詳細は後述)、同社のプラットフォームはさらに拡大し、結果として参入障壁は一層高くなるでしょう。

カーバナ(CVNA)のNPSの実態は?

カーバナ(CVNA)は全体的に優れた顧客体験を提供しているとされていますが、いくつか注意すべき点もあります。同社は高いNPS(顧客満足度指標)を主張しているものの、Comparablyなど他の情報源では異なる見解が示されています。TrustPilotの評価では、同社は67%が5つ星レビューを獲得している一方で、19%が1つ星レビューとなっており、顧客の5人に1人がサービスに非常に不満を感じていることを示唆しています。ただし、実際の不満を持つ顧客の割合は20%未満である可能性もあります。というのも、満足している顧客の中にはレビューを残さない人も少なくないと考えられるからです。

また、メディアによって取り上げられた不満を持つ顧客の事例も少なくありません。調査の結果、同社の顧客体験に関する課題は、同社が取り組んでいる非常に複雑な業務運営から生じていることが分かりました。市場が2022年以降の20%の価格下落から安定し、消費者にとっての資金調達やマクロ経済環境が改善されるにつれて、同社はこうした顧客の不満を引き起こしている業務上の問題を解消していくと期待されます。一般的には、COVID-19による急成長が多くの問題を引き起こしたと考えられており、今後、より安定した成長と落ち着いた市場環境、さらには良好な資金調達条件の下で、同社は顧客中心の業務改善に注力し、NPS(顧客満足度スコア)やブランドの評判を向上させる絶好の機会を得るでしょう。

同社のユーザー体験に関する疑問があるものの、TrustPilotの評価概要からもわかるように、同社は主要な競合2社であるオートネーションAN)やカーマックスKMX)と比較して、はるかに良好な評価を得ています。これは非常に示唆的であり、カーバナのテクノロジー重視かつデータ駆動型のアプローチが、競合他社と比べて優れたユーザー体験を生み出していることを示していると考えられます。

(出所:Trustpilot)

(出所:Trustpilot)

カーバナ(CVNA)の直面したCOVID-19時の急成長と破綻の危機

カーバナ(CVNA)は設立当初から急速な成長を遂げてきましたが、収益が数十億ドル規模に達するにつれ、その成長スピードは自然と鈍化しました。COVID-19による世界的なサプライチェーンの混乱は新車製造に必要な部品の供給不足を引き起こし、その結果、中古車の需要が急増しました。同社を含む自動車小売業者はこの恩恵を大きく受け、一時は成長率が100%を超える勢いを見せました。しかし、多くの市場がサプライチェーンの混乱から大きな影響を受けたのと同様に、中古車市場も供給の滞りが解消された後、急激な調整局面を迎えました。2022年には新車と中古車の需要が正常化し、同社のような企業は成長が停滞、あるいはマイナス成長に陥る事態となりました。

(出所:Seeking Alphaのデータを基に筆者作成)

中古車価格の下落に加え、同社が多額の債務を抱えていた状況で金利が上昇したため、同社は2022年に破産寸前まで追い込まれました。株価は2021年8月の最高値から2023年1月の最安値までに99%下落し、財務上の義務を果たすのに苦闘しました。しかし、同社は債務の再編、コスト削減策の実施、業務効率化を図ることで破産を回避しました。

この財務的な危機を経て、経営陣の方針は「成長最優先」から「利益とキャッシュフローの重視」へと転換しました。2022年以降、同社はマージンをマイナスからプラスに転じさせることに成功し、直近の3四半期では成長も回復しています。

次章以降では、カーバナが直面する自動車ローンに関する危機的な状況やバリュエーション分析を踏まえて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性に関して詳しく解説していきますので、是非、お見逃しなく!

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※続きは「【テクノロジー:Part 3】カーバナ(CVNA)ヒンデンブルグ・リサーチ社による空売りレポートの詳細な分析を通じて同社の将来性に迫る!」をご覧ください。

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