強気ギガクラウド・テクノロジー【Part 2】ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の株価予想:目標株価は55ドル!急成長の実態と株式市場での誤解を徹底解説!
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- 本稿では、注目の米国上場グロース企業であるギガクラウド・テクノロジー(GCT)の競争優位性、同社を取り巻くリスク、そして、詳細なバリュエーション分析を通じて、同社の株価予想、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- ギガクラウド・テクノロジーは物流とECを統合し、規模の経済や販売データ分析、長年のメーカーとの関係を活かして競争優位性を確立しています。
- 2023年にWondersignを買収し、小売業者の販売効率を向上させるとともに、リアルタイムの在庫・価格データ提供を強化し、GigaCloud Marketplaceの拡大を進めています。
- 米国市場の影響がリスク要因として挙げられるが、強固な財務基盤と成長余地があることから、市場での同社株式の空売りポジションの買い戻しも含めて株価の上昇余地があると考えており、目標株価として55ドルと設定しております。
※「ギガクラウド・テクノロジー(GCT)とは?同社のビジネスモデルの詳細な分析を通じて将来性に迫る!」の続き
前章では、注目の米国上場グロース企業であるギガクラウド・テクノロジー(GCT)の成り立ちや、ビジネスモデル、さらにプロダクトの詳細な分析を解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の競争優位性
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)は、物流分野における規模の経済を確立しており、これをMarketplace(ECプラットフォーム)と統合することで、新規参入者が簡単に競争できない強固なビジネスモデルを構築しています。
さらに、CEOのラリー・ウー氏は、20年以上にわたり中国や東南アジアのメーカーとの関係を築いており、どのメーカーが低コストかつ高品質で信頼性が高いのかを熟知しています。これは、プラットフォーム上のバイヤーにとって非常に価値のある情報であり、短期間で再現できるものではありません。
また、GigaCloud Marketplaceは膨大な販売データ(セールスアナリティクス)を生成しており、セラー(売り手)が市場に投入すべき商品の選定を最適化するのに役立っています。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)のWondersignの買収によるさらなる競争力強化
ギガクラウド・テクノロジーは、この競争力をさらに強化するために、2023年11月にクラウドベースのインタラクティブデジタルサイネージおよびEカタログ管理会社であるWondersignを1,000万ドルの現金取引で買収しました。この企業はSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)モデルで事業を展開しており、全米2,500以上の実店舗小売業者と提携し、63の家具ブランドの販売を支援しています。
Wondersignは、各店舗やその顧客に対して、リアルタイムの製品価格や在庫データを提供しており、以下のような効果をもたらします。
- 販売プロセスの効率化
- 成約率の向上
- コスト削減
- 売上増加
特に、ショールームスペースが限られている小規模店舗にとって大きなメリットがあり、デジタルキオスクを活用することで、店舗全体の在庫をバーチャルショールームとして顧客と共有することができます。
(出所:Wondersign.com)
私自身、エルモンテ本社を訪れた際に、全米の小売店に設置されたインタラクティブディスプレイ技術の各種デモを確認しました。その際、2台のキオスク端末の写真を撮影しました。
長期的な戦略として、ギガクラウド・テクノロジーはこのテクノロジープラットフォームを活用し、これらの小売店をGigaCloud Marketplaceへ統合する計画を進めています。
これにより、Marketplaceのバイヤー数およびGMV(取引総額)が大幅に増加する可能性があると考えています。
実店舗の小売業者にとってのメリットも大きく、数千種類のSKU(商品管理単位)から選択して、クラウド上で仮想在庫を構築できるようになります。これは実店舗の在庫に追加する形で活用できるだけでなく、ギガクラウド・テクノロジーの物流サービスを利用することで、より効率的な販売体制を構築することが可能になります。
(出所:筆者撮影)
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の独自のビジネス慣行 – 柔軟なインセンティブ制度
ギガクラウド・テクノロジーの競争優位性のもう一つの要素として、営業部門の社員を「パートナー」と位置付け、柔軟な報酬体系を選択できる制度を採用している点が挙げられます。
営業社員はグループ単位でP&L(損益計算書)を管理し、以下のような2つの選択肢から報酬体系を決定することができます。
- 高い基本給+インセンティブ上限あり
- 低い基本給+売上に応じた無制限のボーナス
この制度により、インセンティブの透明性が高まり、営業の生産性向上につながっていると考えられます。
例えば、ギガクラウド・テクノロジーの子会社であるDecobus Handelも、この柔軟な報酬体系を適用しているグループの一例です。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)を取り巻くリスク要因
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)にとって最大のリスクは、米国の消費者の購買力です。現在、米国市場が同社の取引総額(GMV)の約78%を占めており、これは外国市場の成長に伴い徐々に低下しているものの、現時点では主要なリスク要因と考えられます。
同社の商品は、1回の購入あたりの平均単価が約400ドルであり、主なターゲット層は低~中所得者層です。こうした層の消費者は、価格に敏感であり、景気の影響を受けやすいため、景気が低迷すると同社のビジネスに直接的な影響を及ぼす可能性があります。そのため、マクロ経済要因を考慮することが重要になります。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)に対する米国住宅市場の影響
米国の住宅市場は、ギガクラウド・テクノロジーの事業にとって特に重要な要素です。なぜなら、住宅の売買が活発になると、家具の購入需要も増加する傾向があるからです。
この点については、ポジティブな要素もあります。既存住宅の売買件数は過去2年間にわたり停滞しており、2024年の販売件数は約406万件と1995年以来の最低水準となっています。しかし、こうした市場環境の中でも、同社はシェアを拡大し、事業を急成長させています。
現状の住宅市場がこれ以上悪化する可能性は低いと考えられます。住宅市場が回復に転じれば、それが同社にとって大きな追い風となるでしょう。一方で、住宅市場がさらに悪化する場合は、同社にとって逆風となるリスクもあります。
関税の影響とギガクラウド・テクノロジー(GCT)の対応
関税の影響についても懸念されていますが、現時点ではトランプ政権が中国よりもメキシコやカナダに対する関税政策に重点を置いているようです。とはいえ、ギガクラウド・テクノロジーはリスク分散のためにサプライチェーンの多角化を進めており、現在では米国市場向けの1P(ファーストパーティ)輸入品の半数以上が東南アジアから調達されています。
また、GigaCloud Marketplaceを利用する3P(サードパーティ)の買い手・売り手に対しても、多様な仕入れルートを提供しており、貿易政策の変化に応じて柔軟に調達先を変更できる体制を整えています。
ただし、関税は全ての市場参加者に適用されるため、同社だけが不利になるわけではありません。むしろ、GigaCloud Marketplaceが提供する物流効率化とコスト削減のメリットが、関税の影響を受ける卸売業者にとって魅力的な選択肢となり得るでしょう。特に、同社のような物流インフラを持たない中小業者にとっては、代替手段がよりコスト高になりやすいため、同社の利用が増加する可能性もあると見ています。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)に対する批判について
昨年行われたインサイダーによる同社株式の売却については、多くの議論がなされています。CEOのラリー・ウー氏は、2024年4月から5月にかけて、10b5-1プランに基づき、1,150,000株を売却しました。売却価格は約29ドルから40ドルの範囲でした。
正直に言えば、私ならもっと多くの株を売却していたでしょう。それでも、最新の報告書によると、彼は現在も8,176,742株を保有しており、依然として最大の株主であることに変わりはありません。彼の売却は、純資産の分散を目的としたものであることは明らかです。
また、2023年のラリー氏の基本給は16万2,000ドル、総報酬額は約28万7,000ドルでした。これは、同規模の米国企業のCEOが受け取る平均300万ドル超の報酬と比較すると、はるかに低い水準です。
もう一つの大規模な売却は、DCM IV LPが年末近くに2.6百万株以上を売却した件です。このファンドは、同社に初期投資を行ったベンチャーキャピタルによって運用されていましたが、2024年末で閉鎖されたため、ファンド解散に伴う強制的な売却となりました。
一方で、最近では企業インサイダーのバーネス・マーシャル氏が、1株17.50ドルで5,000株を購入しています。彼は新たに取締役に就任したメンバーであり、Noble House Home Furnishingsの元CEOです。彼は、退任したDCMのジェネラル・パートナーであるフランク・ハースト・リン氏の後任として取締役に加わりました。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の監査法人に関する批判
もう一つの主要な批判として、ギガクラウド・テクノロジーが米国に法人登記されており、GAAP(米国会計基準)に準拠した財務報告を行っているにもかかわらず、米国の監査法人を使用していないという点が挙げられます。現在、同社の監査は中国のKPMG Huazhen LLPが担当しています。
一部の批評家は、米国の監査法人を利用していないことが、経営陣が何かを隠そうとしている証拠であるかのように指摘しています。しかし、それは全くの誤解であると考えています。
同社は、ここ数年で米国への事業移転や経営陣の配置を進めており、確かに今後もグローバルな企業としての性質を維持するでしょう。しかし、監査法人を変更することは、非常にコストのかかる大規模なプロセスであるため、慎重な判断が求められます。
また、現在監査法人を変更していないからといって、今後も変更しないとは限りません。経営陣は、同社の監査を引き受ける可能性のある米国の大手監査法人との協議を進めているため、今後の動向に注目すべきでしょう。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)のCFOの採用と信頼性の強化
こうした動きの一環として、ラリー氏は2023年8月にエリカ・ウェイ氏を採用し、さらに監査体制の強化を進めました。
エリカ氏は、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)で10年以上キャリアを積んだ後、ギガクラウド・テクノロジーに入社しました。彼女は、1年間企業財務を精査し、Noble HouseとWondersignの全額現金買収を監督した後、2024年8月にCFO(最高財務責任者)に就任しています。
もしギガクラウド・テクノロジーの財務に不正があったならば、エリカ氏がCFOのポジションを引き受け、自らのキャリアをリスクにさらすことはなかったでしょう。この点を考慮すると、同社の財務に対する不安を過度に懸念する必要はないと考えています。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の財務状況とバリュエーション
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の発行済株式数は約4,100万株であり、本稿執筆時点での株価(1株20ドル)を基にすると、時価総額は8億2,000万ドルとなります。インサイダー保有株は約1,150万株(全体の28%)であり、流通株(フロート)は約2,950万株です。
驚くべきことに、そのうち約570万株(流通株の約20%)が空売りされています。これは、同社の堅固なバランスシートと成長軌道を考慮すると、非常に異常な状況です。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の盤石な財務基盤
ギガクラウド・テクノロジーは、2023年末の2件の全額現金買収(総額9,000万ドル)を実施した後でも、2024年第3四半期末時点で2億6,000万ドルの現金を保有しています。
以前にも述べたように、ラリー・ウー氏は、2014年に米国市場へ参入した時点で事業を黒字化していました。彼は明らかに借入を好まず、強力なフリーキャッシュフローを活用して事業を成長させています。
唯一の負債は、倉庫スペースに関する長期リース契約であり、その総額は約5億ドルです。したがって、時価総額の約3分の1が現金という非常に強固な財務基盤を有しています。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の2025年の業績予想と成長ポテンシャル
市場コンセンサスでは、ギガクラウド・テクノロジーの2025年の予想EPS(1株当たり利益)は3.68ドルであり、これは前年比わずか18%の成長と見積もられています。また、売上高は13%増の13億1,000万ドルと予想されています。
しかし、これらの予想は、マクロ経済への懸念を反映しているだけであり、同社の事業実行能力を正しく評価したものとは思えません。
同社は、米国の家具市場でのシェアがまだ2%未満であり、さらに家具以外の商品や国際市場にも展開しています。私は、同社の米国での総アドレス可能市場(TAM)が50億~100億ドル規模であると考えており、今後も長期的な成長余地が非常に大きいと見ています。
(出所:Seeking Alpha)
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)の割安なバリュエーションと株主還元策
現在のギガクラウド・テクノロジーの株価は、同社の成長ポテンシャルを全く反映していないと見ています。少なくとも、現在の倍のPER(株価収益率)を適用すべきであり、仮にエクスペディターズ・インターナショナル・オブ・ワシントン(EXPD)のような物流企業と同等のPER20倍で評価されれば、さらに適正な水準と考えられます。また、同社は売上・利益ともに一桁成長のエクスペディターズ・インターナショナル・オブ・ワシントンと異なり、はるかに高成長を維持しています。
さらに、2024年9月3日、取締役会は4,600万ドルの自社株買いプログラムを承認し、その後11月7日までに467,000株(総額1,140万ドル)を市場で買い戻しました。
この自社株の買い戻しの平均取得価格は24.40ドルであり、これらの株は完全に消却されています。これは、経営陣が自社の財務体質に対して強い自信を持っていることを示すものです。
その後の約2か月間、株価は16.80ドルまで下落しましたが、今後第4四半期決算でさらに多くの自社株買いが実施されることを期待しています。
3週間前、私はラリー氏に今後の買収計画について質問しましたが、彼は「今の最良の投資は自社株の買い増しだ」と明言しました。私も完全に同意しますし、これは同社の異常なほど割安なバリュエーションを象徴する発言であると考えています。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)に対する市場の誤解と今後の見通し
現在、ギガクラウド・テクノロジーの株価が低迷している理由は、単なる誤情報と誤解によるネガティブな市場心理に過ぎないと考えています。
しかし、このような評価は、同社の卓越した事業遂行能力や健全な財務状況とは完全に乖離しています。そのため、賢明な投資家がこの企業の本質的な価値を見出すのは時間の問題でしょう。
来期予想利益に保守的なPER15倍を適用すると、目標株価は55ドルとなります。ただし、1株当たり利益(EPS)3.68ドルの予想自体が控えめである点は考慮すべきでしょう。
また、現在、株価は17〜18ドルの水準で下支えが見られますが、流通株の大きな割合が空売りされている状況を考えると、この水準で楽観視するのは危険だと考えています。
そして、同社が事業を着実に遂行していけば、570万株の空売りポジションの買い戻し(ショートカバー)が発生し、株価が大幅に上昇する可能性もあると考えています。
(出所:Stockcharts.com)
本編は以上となります。
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