重要な配当関連指標を徹底解説!米国株高配当銘柄を含む配当重視のポートフォリオを作成し、将来の配当生活を実現!(後編)
ヴェンカット・ ラガーヴァン- 本稿は、これから米国高配当銘柄を含む、配当関連銘柄への投資を検討している方、或いは、既に配当関連銘柄から成る投資ポートフォリオを所有しているが、改めて企業の配当支払いに関する理解を一層深めたい方のためのレポートとなっている。
- 前編では、配当、並びに、配当利回りの仕組みについて詳細に解説した。
- 後編では、配当収入を目的として投資する際に考慮すべき非常に重要な要素である「配当の成長」に関する概念を深堀りし、配当金の成長が株主に与えるインパクトについて説明していきたい。
※「重要な配当関連指標を徹底解説!米国株高配当銘柄を含む配当重視のポートフォリオを作成し、将来の配当生活を実現!(前編)」の続き
配当の成長とは何か?
長い歴史を有する大手上場企業は、収益性の向上とその成功を株主と分かち合いたいという思いから、株主への配当金の支払額を増加させようと努力する。
名称 / クラス | 基準 | 例 |
Dividend Achievers / 配当達成企業 | 10年以上連続で増配している企業 | アップル アッヴィ |
Dividend Contenders/ 配当コンテンダー企業 | 10年~24年間に渡り連続して増配を継続している企業 | マイクロソフト コストコ |
Dividend Aristocrat / 配当貴族 | 25年以上連続で増配を継続している、S&P500指数の構成銘柄である企業 | メドトロニック エマソン・エレクトリック |
Dividend King / 配当王 | 50年以上連続で増配を継続している企業 | ウォルマート ジョンソン・エンド・ジョンソン |
・前編の例において、ABC社が2023年に1株当たり5ドルの配当金を支払い、2024年には1株当たり5.5ドルの配当金(四半期ごとに1株当たり1.375ドルの配当金)に引き上げた場合には、それは「増配」と言える。
・ABC社が2024年も同じ1株当たり5ドルの配当金の支払いを発表すれば、配当を「維持」したとみなされる。
・ABC社が1株当たり4ドルの配当金(四半期ごとに1株当たり1ドルの配当金)に減額した場合には、「減配」と言われ、配当収入重視のインカム投資家にとってはネガティブな結果である。
・ABC社が2024年に無配(配当金の支払いの停止)となった場合には、「配当停止」と言われ、これも配当収入重視のインカム投資家にとってはネガティブな内容である。
下記のグラフからも、各カテゴリーの過去のパフォーマンスを調査すると、配当を継続して支払う企業や配当を継続して成長させている企業は市場全体を大きくアウトパフォームしているが、減配を実施した企業や配当の支払いそのものを停止した企業は市場全体を大きくアンダーパフォームする傾向にあることが分かる。
※Dividend Growners and Initiators:配当金支払い額を成長させている企業&配当金支払い開始企業
※Dividend Payers:配当金支払い企業
※Equal-Weighted S&P 500 Index:S&P500イコールウェイト指数
※No Change in Dividend Policy:配当金支払い方針に変更の無い企業
※Dividend Non-Payers:配当金支払いの無い企業
※Dividend Cutters & Eliminators:配当金支払い額を減額した企業&配当金支払いを停止した企業
(出典:Hartford Funds)
つまり、配当の支払いにおいては、一貫性と実績が非常に重要であると言える。
特別配当とは?
特別配当とは、通常、利益や現金が余った場合に、企業が株主に対して行う臨時の1回限りの支払いである。通常の配当金とは別に支払われるもので、支払い金額が多額になることもある。企業によっては、通常の配当金と合わせて、状況に応じて臨時の特別配当金を支払う企業がある。
一般的に、普通配当は保証されてはいないが、企業は通常、何らかのネガティブな状況が発生しない限り、支払いを維持する努力をする傾向にある。一方で、特別配当の場合、継続的な支払いは必ずしも期待できない。なぜなら、特別配当は、例えば、足元のコストコ(COST)に見られるように、各上場企業が達成した素晴らしい業績に対する一時的なボーナスに過ぎないからである。
配当収入を重視する投資家はどの指標を見るべきか?
1. 配当金支払いの歴史
歴史的に、配当金支払いの維持や増加の実績がある企業は、配当収入重視の投資家のニーズに適していると言える。
2. 持続的な収益性
企業の四半期または年次報告書を分析し、EBITDA(金利・税金・減価償却費控除前利益)、純利益、フリー・キャッシュフロー、営業活動によるキャッシュフローなどの指標を見ていただきたい。そして、次に、その期間中に会社が配当支払いに費やした金額を見ていただきたい。これらの指標はすべて配当金の支払いにおける支出を上回っているのだろうか?もしそうであるならば、どの程度、超過しているのだろうか?この超過分が多ければ多いほど、今後の配当支払いの安全性は高まると言える。
これは家計のキャッシュフローに似ている。例えば、あならの月収が10,000ドルで、月間に、生活必需品に3,000ドル、娯楽やレジャーに1,000ドル使用する場合、その娯楽費は超過収入によって十分に保護されていると言える。一方で、別の人が月収4,000ドルだった場合、3,000ドルを必需品に使い、1,000ドルを娯楽に使うのは非常に危険であると言える。
同様に、企業も自社に再投資して成長するために、ある程度の利益を保持しておく必要がある。つまり、配当金支払い後の余剰利益の金額が大きい程、配当収入重視の投資家のパッシブ・インカム(受動的所得)のニーズにとって、より良い企業であるということになる。
そして、企業が純利益の何パーセントを配当金の支払いに充てるかを「配当性向」と呼ぶ。この数値は低ければ低いほど良いと言え、配当性向が50%~60%の企業に投資するのが一般的である。この数字が90%を超えると、米国で税務上特別に登録されている会社でない限り、減配のリスクが高まる可能性がある。ただし、そのような特殊な会社は日本人の投資家にとっては投資できない可能性もあるので、これ以上の説明は省略したい。
実際、利益が出ていない会社が持続的に配当を支払うことが出来ないということは言うまでもない。また、定期的に黒字を計上している企業でも、赤字の時期が何度かある場合もある。しかし、その様な場合には、その様な赤字が単なる会計上の一時的な調整なのか、或いは、同社のビジネスそのものに逆風が吹いており、その逆風が続いているのかを慎重に見極める必要がある。また、そのような逆風に直面しながらも、配当を維持できるだけの十分な内部留保があるかどうかを確認することも有益であろう。
3. 負債水準
多額の負債を抱えている企業は、損益計算書上、巨額の支払利息を抱えていることになる。ここで良い点としては、前述の「配当性向」は支払利息を差し引いた後の数字を基に算出されている点である。とは言え、それでも自身が投資する企業の負債水準と負債の種類を把握しておくことは極めて重要である。固定金利の負債が大部分を占める企業であれば、支払利息の予測は容易だが、変動金利の負債は、特に現在のような金利動向が不安定な経済情勢下では、各企業の収益性に大打撃を与える可能性がある。私たちは、EBITDAに対する有利子負債を、利益で負債を処理する企業の能力の尺度として使用している。この指標に標準的な範囲はなく、業種によって異なるため、ケースバイケースで比較する必要があると言える。
4. 多様化
これまで配当に関して詳細に説明してきたが、繰り返しとなるが、「普通配当の支払いは一切保証されていない」点にはご留意いただきたい。2020年には、COVID-19が経済や消費者に与える影響が未知数、或いは、予測不可能であったため、今後の厳しい経営状況を予想して、いくつかの企業が配当の停止や減配を行っていた。
そのため、配当収入重視の投資家になりたいのであれば、複数の配当支払い企業に分散投資することが非常に重要である。しっかりと分散されたポートフォリオであれば、仮に一部の企業が配当金の支払いに関して否定的な政策(減配や配当停止)を発表したとしても、ポートフォリオ全体としての配当金からのキャッシュ・フローへの影響を最小限に抑えることが出来るだろう。
最後に
配当収入を重視する投資家にとって、配当銘柄や高配当銘柄への投資は非常に有益な戦略である。安定した配当を支払う企業に投資することで、株価の変動に左右されず、定期的なキャッシュフローを得ることができる。そして、特に米国株式市場では、多くの企業が高配当を提供していることからも、配当投資に最も適した環境であると言える。
米国株式、特に、米国配当銘柄に関する情報を豊富に提供するインベストリンゴは、配当重視の投資家にとって非常に役立つプラットフォームである。最新の配当情報や投資戦略、各企業の財務状況など、必要な情報を簡単に入手できるため、より効果的な投資判断が可能になるだろう。
そのため、配当銘柄への投資を検討する際には、インベストリンゴの情報を上手に活用することで、より洗練された投資判断を行っていただければと思う。
アナリスト紹介:ヴェンカット・ ラガーヴァン
📍インカム・高配当株担当
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