【投資コラム】配当株投資のメリットとリスクとは?
インベストリンゴ編集部- 本稿では、配当株投資のメリットとリスク、さらに複利効果についても詳細に解説していきます。
- 配当株投資は、多くの投資家にとって魅力的な選択肢であり、安定した収入源を提供します。
- 例えば、コカ・コーラ(KO)やジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)などの企業は、長期にわたり安定した配当を支払っており、特にリタイアメントプランにおいて重要な役割を果たします。
- また、配当金を再投資することで、複利効果により、再投資しなかった場合と比較して、長期的に資産が大幅に増加する可能性があります。
※「配当金とは?配当金の詳細と仕組みを徹底解説!」の続き
配当株投資のメリット
配当株投資は、多くの投資家にとって魅力的な選択肢です。ここでは、配当株投資の主要なメリットについて詳しく説明します。
安定した収入
配当株投資の最大のメリットの一つは、安定した収入を得られる点です。配当を定期的に支払う企業に投資することで、四半期ごとや年に数回、安定した収入が得られます。配当収入は、特にリタイアメントプラン(老後の資金計画)において重要な位置を占め、投資家にとって長期的に継続し得る貴重なキャッシュフロー源となります。
※キャッシュフロー(Cash Flow)は、企業や個人の収入と支出の流れを示すものです。簡単に言うと、お金がどれだけ入ってきて、どれだけ出ていくかを表しています。キャッシュフローを理解することで、企業や個人がどれくらいの現金を持っているか、そしてそのお金をどう使っているかを把握できます。
例えば、コカ・コーラ(KO)やジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)などの企業は、長期にわたり安定した配当を支払っています。さらに、これらの2つの企業は、過去50年間以上にわたり連続して増配を継続しており、米国株式市場では配当王(Dividend King)として知られ、多くの投資家に信頼されています。
※配当王(Dividend King)は投資の世界で特に注目される企業のカテゴリーです。具体的には、50年以上連続して毎年配当金を増加させている企業を指します。この厳格な基準を満たす企業は、財務的な健全性と安定性、そして経営陣の優れた戦略と管理能力を持っていると広く認識されています。
配当王に関するより詳細な解説は「50年以上連続増配の米国株配当王の一覧・ランキングと投資を検討する際に考慮すべきポイントを徹底解説!」をご覧ください。
具体的な数字で見ると、例えばコカ・コーラの配当利回りは約3.2%だと仮定すると、もし1,000ドル投資した場合、年間32ドルの配当収入を得ることができます。この収入は、株式保有期間中に継続して受け取ることができ、安定したキャッシュフローを提供します。
また、2024年7月時点で、配当王の中の王者に君臨するアメリカン・ステイツ・ウォーター(AWR)は、過去69年間連続で増配を継続している一方で、下記のチャートの通り、株価も継続的に右肩上がりで上昇しております。このことからも分かる通り、配当王に君臨する銘柄は財務的な健全性と安定性を持っている企業が中心となっていると言えます。
※DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出典:TradingView)
長期的な資産増加
配当金を再投資することで、複利効果を享受できます。配当金を再投資することで、投資元本が増え、次回の配当金支払い日に受け取る配当金の額も増加します。このプロセスを繰り返すことで、長期的には資産が大幅に増加します。具体例として、S&P 500指数に連動する配当再投資戦略を考えると、1960年代から2010年代にかけて、配当再投資が行われた場合のリターンは、配当を受け取らなかった場合の2倍以上になることが知られています。
例えば、100ドルの配当金を再投資し、その再投資分からも次の配当が得られると、投資元本が時間とともに指数関数的に増加します。このように、配当再投資は、長期的な資産形成に非常に効果的な戦略となっております。
※複利効果(Compounding Effect)とは?
利子や利益がさらに新しい利子や利益を生むことで、お金が雪だるま式に増えていく仕組みのことです。複利の効果を理解すると、貯蓄や投資をする際にどれだけお金が増えるかを予測しやすくなります。
簡単な例で説明
想像してみてください:
元本:あなたが銀行に1万円を預けたとします。
利率:この預金には年利5%の利子がつきます。
単利:まず、単利の例です。単利の場合、毎年同じ元本(この場合は1万円)に対して利子がつきます。
1年目:1万円 × 5% = 500円(利子)➡ 合計で1万500円になります。
2年目:また1万円 × 5% = 500円(利子)➡ 合計で1万1000円になります。
3年目:さらに1万円 × 5% = 500円(利子)➡ 合計で1万1500円になります。
毎年500円の利子がつきます。
複利:次に、複利の例です。複利の場合、毎年の利子が元本に加算され、その合計に対して次の年の利子がつきます。
1年目:1万円 × 5% = 500円(利子)➡ 合計で1万500円になります。
2年目:1万500円 × 5% = 525円(利子)➡ 合計で1万1025円になります。
3年目:1万1025円 × 5% = 551.25円(利子)➡ 合計で1万1576.25円になります。
このように、利子が元本に加算され、その合計に対してさらに利子がつきます。
複利のポイント
・時間が味方:複利効果は時間が経つほど強力になります。長期間にわたって運用することで、お金はさらに増えていきます。
・元本が増える:利子が元本に加算され、その合計額に対して次の年の利子がつくため、元本がどんどん大きくなります。
・雪だるま式に増える:最初は小さな増加でも、時間が経つにつれて大きな額に成長します。
複利効果は、利子が元本に加算され、その合計額に対してさらに利子がつくことで、お金が雪だるま式に増えていく仕組みです。時間をかけて運用することで、最初は小さな金額でも大きく増える可能性があります。これが、貯蓄や投資の世界で「複利は最も強力な力」と言われる理由です。
また、少し応用編として、複利効果を下記の投資におけるシナリオを数式で解説していきたいと思います。
例1)5%の配当利回りで再投資を続け、この配当利回りが変動しないと仮定した場合、1,000ドルの投資が20年後には約2,653ドルになります(年率5%の複利計算)。
例2)一方で、5%の配当利回りでも再投資をしなかった場合、1,000ドルの投資が20年後には2000ドルとなります(年率5%の単利計算)。
例1):複利計算の基本式
複利計算には以下の基本式を使用します:
ここで、
は将来の元本の合計額
は最初の元本(この例では1,000ドル)
は年利率(この例では5%、つまり0.05)
は投資期間の年数(この例では20年)
計算のステップ
1. 元本の設定:ドル
2.年利率の設定:(5%)
3. 投資期間の設定:年
これらを基本式に代入します:
計算
まず、(1 + 0.05) を計算します:
次に、これを20乗します:
1.05を20回掛け合わせます:
最後に、元本にこの値を掛けます:
したがって、1,000ドルの投資が年率5%の複利(再投資)で20年間運用されると、約2,653ドルになります。この増加は、毎年の利子が元本に加算され、その合計に対してさらに利子がつく複利の効果によるものです。時間が経つほど、元本が雪だるま式に増えていくことが分かります。
例2):単利計算の基本式
単利計算には以下の基本式を使用します:
ここで、
は将来の元本の合計額
は最初の元本(この例では1,000ドル)
は年利率(この例では5%、つまり0.05)
は投資期間の年数(この例では20年)
計算のステップ
1. 元本の設定:ドル
2. 年利率の設定:(5%)
3. 投資期間の設定:年
これらを単利の基本式に代入します。
計算
まず、(0.05 × 20) を計算します:
次に、これを元本に加算します:
最後に、元本にこの値を掛けます:
したがって、1,000ドルの投資が年率5%で20年間運用され、配当を再投資しなかった場合、最終的な金額は2,000ドルになります。
複利との比較
・複利の場合:1,000ドルが20年後に約2,653ドルになる。
・単利の場合:1,000ドルが20年後に2,000ドルになる。
差異
複利と単利の差異を計算します:
つまり、配当を再投資する複利の効果によって、20年後には653ドル多くなります。これは、毎年の利子が元本に加算され、その合計に対してさらに利子がつく複利の力によるものです。このように、配当を再投資することで、長期的には大きな差が生まれることがわかります。
今回は投資元本として1000ドル(日本円で約15万円)を基準として計算しましたが、当初の元本が1000万円であった場合には、20年後には653万円の差となり、当初の元本が1億円であった場合には、20年後には6530万円の差となります。
さらに、雇用先から得る毎月の所得等の一部を継続して投資することで、投資元本自体を増加させることができ、上述の複利効果による資産増加ペースをさらに拡大させることが可能となります。
資本保全と成長のバランス
配当株は、資本保全(プロテクション)と成長のバランスを提供します。特に高配当株は、株価のボラティリティが低く、安定した収益を提供する傾向があります。これは、投資家が定期的な配当収入を得ることで、短期的な株価変動によるリスクを軽減できるためです。
例えば、アメリカン・ステイツ・ウォーター(AWR)のような公益事業セクターの企業は、一般的に安定したキャッシュフローと高配当利回りを提供します。また、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)などの企業も、経済全体の動向に左右されにくく、安定した配当を支払うことで知られています。
※公益事業セクター(Utility Sector)は、私たちの日常生活に欠かせない基本的なサービスを提供する企業や組織のグループを指します。具体的には、電気、ガス、水道などのインフラストラクチャーを提供する企業が含まれます。
配当株投資のリスク
一方で、配当株投資にはリスクも存在します。ここでは、主要なリスクについて詳しく説明します。
減配リスク
企業の業績が悪化すると、配当金が減額されたり、完全に停止されたりするリスクがあります。特に、経済状況の悪化や業界の変動が原因で企業の収益が減少した場合、配当金が削減されることがあります。例えば、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック時には、多くの企業が配当金を減額または停止しました。
具体例として、航空業界の大手企業であるデルタ航空(DAL)は、パンデミックの影響で2020年に一時的に配当金の支払いを見直すことを余儀なくされました。
資本の減少リスク
配当株投資は安定した収入を提供しますが、株価の変動による資本の減少リスクも伴います。企業の業績が悪化したり、経済全体が低迷したりすると、株価が下落し、投資元本が減少する可能性があります。例えば、エネルギーセクターの企業は、比較的高い配当利回りを提供しますが、原油価格の変動によって株価が大きな影響を受けることがあります。例えば、エクソンモービル(XOM)の株価は、原油価格の下落によって大幅に下落したことがあります。
株価下落リスクとその影響
配当利回りが5%で、例えば1,000ドル投資して年間50ドルの配当を受け取ったとしても、株価が10%下落して900ドルになれば、株価下落に伴う資本損失が100ドルとなり、配当収入である50ドルをはるかに上回る損失を被ることになります。このように、配当収入だけでは株価下落による損失を補うことができない場合があります。
具体例
例えば、XYZ社の株価が100ドルで、年間配当が5ドルだとします。配当利回りは5%です。しかし、XYZ社の業績が悪化し、株価が20%下落して80ドルになった場合、株価下落による損失は20ドルとなります。配当金の5ドルを受け取ったとしても、総合的な損失は15ドル(20ドルの株価下落-5ドルの配当)となります。
ただし、長期的に見れば、投資した企業が倒産しなければ、投資した元本を全て配当で回収できる可能性があります。例えば、配当利回りが5%の株式に投資した場合、この5%の配当利回りが一定だと仮定した場合には、20年で投資元本の100%を回収することができます(1 / 0.05 = 20年)。さらに、企業が存続している限り、同社の株式を売却することで、株式売却益も期待でき、合計ではプラスのリターンとなる可能性もあります。
経済環境の影響
配当株は一般的に経済環境の変動に対して敏感です。景気後退期には、企業の収益が減少し、配当金の支払いが減少する可能性があります。特に、景気敏感型の産業に属する企業は、経済環境の変動による影響を受けやすいです。例えば、自動車業界や建設業界の企業は、景気後退期に収益が減少し、配当金の支払いが減少するリスクがあります。
配当株投資のリスク管理
リスクを最小限に抑えるためには、いくつかの戦略を実践することが重要です。
分散投資
配当株投資でも、分散投資は重要なリスク管理手法です。複数の業界や企業に投資することで、特定の企業や業界に依存するリスクを軽減できます。例えば、ヘルスケア、テクノロジー、消費財など、異なるセクターの配当株を組み合わせると良いでしょう。
具体例として、以下のようなポートフォリオを構築します:
・ヘルスケア:ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)
・消費財:コカ・コーラ(KO)
・テクノロジー:マイクロソフト(MSFT)
※ポートフォリオとは、投資の世界で使われる言葉で、各個人が持っているさまざまな投資商品の組み合わせのことを指します。具体的には、株式、債券、不動産、現金など、さまざまな投資を一つの集まりとして管理することを言います。
財務健全性の確認
投資先企業の財務健全性を確認することも重要です。特に、配当履歴や配当性向(配当金が利益に占める割合)をチェックすることで、配当の安定性を評価できます。一般的に、配当性向が50%以下の企業は、配当金の支払いがより安定していると考えられます。
具体例として、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)は、財務健全性が高く、配当性向も比較的低いため、安定した配当を支払うことができる企業です。また、マイクロソフト(MSFT)も、強力なキャッシュフローと低い負債比率を持ち、安定した配当を支払うことができます。
定期的なチェック
自身の投資ポートフォリオの定期的な見直しとチェックも重要です。市場状況や企業の業績が変動するため、定期的にポートフォリオを見直し、必要に応じて銘柄の入れ替えを行うことが推奨されます。例えば、四半期毎に発表される決算毎にポートフォリオを見直し、特定の企業やセクターに自身の投資が過度に偏っていないか、投資先の企業の業績は堅調か等を確認します。
長期的な視点での投資
配当株投資は長期的な視点で行うことが重要です。短期的な株価の変動に惑わされず、企業の基本的な健全性と配当の持続性を重視することが必要です。例えば、経済が一時的に低迷しても、優良企業の配当株は長期的に見て回復し、再び安定した配当を支払うことが期待できます。
配当株投資のリスク管理に関するより詳細な解説は「インカム・高配当株投資家として成功するためには?米国株高配当銘柄から成るポートフォリオのメリットと作り方を徹底解説!」をご覧ください。
配当株投資の魅力
これまで述べたように、配当株投資にはメリットとリスクが存在しますが、適切な戦略とリスク管理を行うことで、長期的な視点で資産を増加させることができます。以下に、その理由をまとめます。
安定した収入源
配当株投資は、安定した収入源を提供します。特にリタイアメントプランにおいては、定期的な配当収入が生活費の一部を賄うため、非常に重要です。これは、株価が多少変動しても、配当金が継続して支払われる限り、収入が安定していることを意味します。
長期的な資産増加
配当金を再投資することで、複利効果を享受し、長期的な資産増加が期待できます。特に、配当再投資戦略を採用することで、投資元本が時間とともに指数関数的に増加し、資産形成が加速します。
経済環境に対する耐性
配当株は、経済環境の変動に対して比較的耐性があります。特に、ヘルスケアや消費財などのセクターに属する企業は、安定した需要を持ち、経済の変動に対して強いです。これにより、配当収入が安定し、リスクが軽減されます。
財務健全性の高い企業の選定
財務健全性の高い企業に投資することで、配当金の支払いが安定し、リスクが軽減されます。特に、配当履歴が長く、配当性向が低い企業は、配当の持続性が高く、投資家にとって魅力的です。
分散投資によるリスク軽減
分散投資を行うことで、特定の企業やセクターに依存するリスクを軽減できます。異なる業界や地域の企業に投資することで、全体的なリスクが分散され、ポートフォリオの安定性が向上します。
まとめ
配当株投資にはメリットとリスクが存在しますが、適切な戦略とリスク管理を行うことで、メリットがリスクを上回る可能性も十分にあります。安定した収入源、長期的な資産増加、経済環境に対する耐性、財務健全性の高い企業の選定、分散投資によるリスク軽減など、さまざまな要素が組み合わさることで、配当株投資は多くの投資家にとって魅力的な選択肢となります。
以上の理由から、配当株投資は長期的な資産形成において有効であり、投資家に安定した収入と資産増加の機会を提供する優れた投資手法と言えます。適切なリスク管理と戦略を持つことで、配当株投資のメリットを最大限に引き出し、成功を目指しましょう。
次の章では、ここまでに学んだ配当株投資に関する知識を基に、具体的な米国株高配当銘柄から成るポートフォリオの作成方法について詳細に解説していきます。
※続きは「インカム・高配当株投資家として成功するためには?米国株高配当銘柄から成るポートフォリオのメリットと作り方を徹底解説!」をご覧ください。
インベストリンゴでは、弊社のアナリストが、AIや半導体関連のテクノロジー銘柄から高配当関連銘柄まで、米国株個別企業に関する動向を日々日本語でアップデートしております。インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は200銘柄以上となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームよりレポートをご覧いただければと思います。
※本稿は、投資や税務、法律のアドバイスを提供するものではなく、情報提供を目的としています。本資料の内容について、当社は一切の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。具体的な投資や税務、法律に関するご相談は、専門のアドバイザーにお問い合わせください。