07/18/2024

【投資コラム】PERはマイナスになることがあるのか?PERの詳細と目安を徹底解説!

red and blue light streaksインベストリンゴ編集部  インベストリンゴ編集部
  • 本稿では、PER(株価収益率)、並びに、PERがマイナスになる理由について徹底的に解説していきます。
  • PERは、株式投資における基本的な分析指標であり、株価を一株当たり利益(EPS)で割って算出されます。
  • 企業の利益が赤字の場合、PERはマイナスとなり、これは一時的な損失か長期的な問題かを判断する際に重要です。
  • PERは投資判断において重要な指標であり、実績ベースと予想ベースの両方を考慮して企業の成長見込みとリスクを評価することが推奨されます。

1: PER(株価収益率)の基礎知識

PER(株価収益率)の基本

株価収益率、通称PERPrice Earnings Ratio)は、株式投資における最も基本的な株価分析指標の一つです。この指標は、株式の価値がその企業の利益に対してどれだけ高いかを測るもので、具体的には「株価 ÷ 一株当たり利益(EPS)」で計算されます。

ここで重要なのがEPSEarnings Per Share、一株当たり利益)で、これは企業の純利益を発行済み株式数で割った値です。

 

EPS(一株当たり利益)の基本

EPSを理解するには、企業の利益と株式数の関係を見る必要があります。例えば、企業が1億円の純利益を出し、発行済み株式が100万株だった場合、EPSは「1億円÷ 100万株 = 100円」となります。このEPSが高いほど、一株当たりの利益が多いことを意味し、企業の収益性が高いと評価されます。

PER(株価収益率)の計算と例

PER(株価収益率)の計算に戻ると、株価が1000円でEPS100円の場合、PERは「1000÷ 100 = 10倍」となります。この値から、投資家がその株を買うために現在の利益の10年分相当の価格を支払っていることが分かります。低いPERは一般的に投資対象としての魅力が高いとされますが、必ずしもそうとは限りません。業界によって適正なPERは異なり、また市場の成長性や経済状況によっても左右されます。

例として、成長が期待されるIT企業ではPER30倍を超えることも珍しくありません。対照的に、成熟した製造業ではPER1015倍程度が一般的です。このような差は、成長性の違いや将来の収益見込みが反映されているためです。

PER(株価収益率)の投資判断への応用

投資家が米国株に投資を考える際、アルファベットGOOG/GOOGL)やアップルAAPL)などの企業は、その成長性により高いPER(株価収益率)が設定されがちです。そして、これらの企業が示す高いEPSは、投資家にとって魅力的な利益成長の指標となります。逆に、ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJ)のような安定した企業は、安定したEPSとともに、比較的安定したPERの水準を保つ傾向にあります。

PER(株価収益率)の限界

ただし、PER(株価収益率)にはいくつかの限界も存在します。主に、一株当たり利益がマイナスの場合(つまり企業が赤字の場合)、PERは計算できない、または意味をなさなくなるためです。さらに、非常に高い成長を遂げる企業や、新興市場における企業の場合、利益が再投資されることが多く、短期的な利益が少ないためにPERが異常に高くなる場合があります。

このように、PERは多くの場面で有用な指標ではありますが、それを用いる際には他の多くのファクターと組み合わせることが求められます。投資家はPERをはじめとする多様なデータを総合的に解析し、自身の投資戦略に合った株を見極めることが成功への鍵となります。

この章では、PEREPSという二つの基本的な投資評価指標を紹介し、それらがどのように計算され、投資判断にどのように利用されるかを解説しました。次章では、PERがマイナスになる具体的な状況とその背景、意味についてさらに詳しく見ていきます。

2: PER(株価収益率)がマイナスになる原因とその意味

PER(株価収益率)は、一株当たり利益(EPS)が正の値を取る場合に有効な指標ですが、企業が赤字を出しているとき、すなわちEPSがマイナスの場合、PERもマイナスとなります。この状況は投資家にとって重要な意味を持ち、ここではPERがマイナスになる原因とその投資への影響について掘り下げていきます。

PER(株価収益率)がマイナスになる原因

PER(株価収益率)がマイナスになる最も一般的な理由は、企業が赤字(負のEPS)を報告している場合です。これは、企業がその期間に損失を出しており、一株当たりの純利益がマイナスになることを意味します。例えば、経済的な困難、業界の不況、高額の訴訟費用などが原因で損失が生じることがあります。

特に新興市場や高成長が期待される技術企業では、研究開発費用の増加や市場への投資により短期的に赤字になることがあります。例として、テスラTSLA)は過去に高い成長投資を行い、一時的にEPSがマイナスに転じ、それによりPERもマイナスになった時期があります。

マイナスのPER(株価収益率)の意味と投資戦略

マイナスのPER(株価収益率)は一見して投資リスクが高いように感じられますが、必ずしも投資を避けるべきサインではありません。マイナスのPERを持つ企業の中には、将来的に大きな収益を上げるポテンシャルを秘めている場合があります。したがって、マイナスのPERが示すのは一時的な赤字か、それとも長期的な問題によるものかを判断することが重要です。

投資戦略としては、マイナスのPERの企業への投資を検討する場合、その企業の将来の回復力と成長潜在力を詳細に分析する必要があります。業界のリーダーや革新的な技術を持つ企業は、赤字からの回復後に高い収益を生み出す可能性もあります。また、業界のトレンドや政府の政策変更が企業の業績に与える影響も考慮に入れるべきです。

PER(株価収益率)の具体的な事例とデータの活用

投資判断を行う際は、マイナスのPER(株価収益率)の企業がどのような業界に属しているか、またその業界の将来性がどうかを理解することが不可欠です。例えば、再生可能エネルギー業界に投資する場合、多くの企業が設備投資により初期段階では赤字を経験しますが、長期的には政策支援や技術革新により利益を上げる可能性が高まります。このようなケースでは、短期的なPERの値よりも業界の成長性や企業のビジネスモデルを重視すべきです。

また、企業の財務報告や市場分析レポートを利用して、過去の赤字の原因やその後の業績改善の具体例を詳しく調べることが推奨されます。これにより、投資家はPERのマイナス値が示すリスクと収益機会をより正確に評価することができます。

この章では、PER(株価収益率)がマイナスになる原因とその意味、およびこれが投資戦略にどのように影響を与えるかについて解説しました。次の章では、実績ベースのPERと予想ベースのPERの違いに焦点を当て、投資判断においてこれらのどちらがより重要かを探ります。

3: 実績ベースのPERと予想ベースのPERの違い

投資分析において、PER(株価収益率)は重要な指標の一つですが、その計算には実績ベースと予想ベースの二つの方法があります。これらのアプローチは、どちらも幅広い業界で利用されていますが、それぞれの状況によって選択することが重要です。本章では、両者の違いと使用時のリスクを解説します。

実績ベースのPER(株価収益率)

実績ベースのPER(株価収益率)は、過去の財務データに基づいて計算されます。具体的には、最新の財務報告から得られる過去12ヶ月の純利益と現在の株価を用いて求められます。この計算法は、過去の実績が今後も続くという前提に立っているため、過去のデータが豊富で業績が安定している企業の評価に適しています。

実績ベースのPER(株価収益率)の使用時のリスク

実績ベースのPER(株価収益率)を使用する際の主なリスクは、過去のデータが未来の業績を保証しない点にあります。市場環境の変化や業界内のイノベーションが起きた場合、過去の業績は参考にならなくなる可能性があります。また、非常に安定した業績を持つ企業であっても、突発的な経済危機や競争の激化によっては、過去の成功が反映されないこともあります。

予想ベースのPER(株価収益率)

予想ベースのPER(株価収益率)は、将来の利益予測を基に計算されます。この方法では、アナリストの予測や企業のガイダンスを元に来期または今後数四半期のEPSが用いられることが一般的です。新興市場や成長が期待される業界において、将来のポテンシャルを評価するのに特に有用です。

予想ベースのPER(株価収益率)の使用時のリスク

予想ベースのPER(株価収益率)を使用する最大のリスクは、予測の不確実性にあります。市場の変動、経済状況の変化、または内部的な問題など、予期せぬ要因により予測が外れることがあります。特に、業績が不透明な新興企業や高成長が期待される企業では、楽観的な予測が株価を不当に高くする場合があります。

実績ベースのPERと予想ベースのPERのバランス

投資判断を下す際には、実績ベースのPERと予想ベースのPERのどちらも考慮することが重要です。例えば、安定した業績を持つ大手企業では実績ベースのPERが有効ですが、革新的なビジネスモデルや技術を持つ企業では、予想ベースのPERで将来の成長を評価する必要があります。

例として、アップルAAPL)のような企業は、安定した実績と市場での地位を持ちつつも、新製品の発売や市場拡大の予定が株価に影響を与えるため、両方のPERを見ることが有益です。投資家はこれらの情報を総合的に解析し、個々の企業のリスクとリターンを考慮した上で投資判断を行うべきです。

この章では、実績ベースのPERと予想ベースのPERの違い、それぞれの適用場面とリスクについて詳しく解説しました。次の章では、これらの指標を如何にして米国株投資に活かすかを掘り下げていきます。

4: 米国株への投資におけるセクター毎の平均的なPER(株価収益率)水準の理解の重要性

米国株市場への投資では、セクターごとのPER(株価収益率)の平均的な水準を理解し、個々の企業のPERを業界平均と比較することが極めて重要です。これにより、投資家は各企業の市場評価が過大評価されているのか、それとも過小評価されているのかを判断できます。本章では、セクター毎のPERの平均の理解と、そのデータを如何に利用するかを詳細に解説します。

セクター毎のPER(株価収益率)の重要性

米国株市場には多岐にわたるセクターが存在し、それぞれのセクターでPER(株価収益率)の平均は大きく異なります。例えば、テクノロジー企業は一般に高い成長期待が価格に織り込まれているため、高いPERが見受けられます。対照的に、公益事業(ユーティリティーズ)のようなセクターは、安定した収益が見込まれるため、比較的低いPERで取引されることが多いです。

2023年のデータに基づくと、テクノロジーセクターの平均PERは約30倍、ヘルスケアセクターは約25倍、消費財セクターは約20倍、エネルギーセクターは約15倍、そしてユーティリティセクターは約10倍となっています。これらの数値は、それぞれの業界の成長見込みとリスクを反映しており、投資戦略を練る上での重要な基準となります。

企業とセクター平均のPER(株価収益率)比較の重要性

企業のPER(株価収益率)をセクター平均と比較することで、その株価が業界内でどのように位置づけられているかを把握することができます。例えば、マイクロソフト(MSFT)のPER35倍である場合、テクノロジーセクターの平均PER30倍であれば、マイクロソフトは業界平均よりも高く評価されていると言えます。これは、市場がマイクロソフトの成長潜力を高く評価していることを示しており、投資家にとっては将来の収益成長に対する期待が高いことを意味します。一方で、同時に、マイクロソフトの株価が市場から過大評価され、割高である可能性もあります。

逆に、エネルギーセクターでPER10倍の企業がある場合、セクター平均が15倍であれば、その企業は市場に過小評価されている可能性があります。この場合、株価が割安であるため、長期的な投資の機会と見なすことができる可能性があります。

PER(株価収益率)を用いた投資戦略

投資戦略を立案する際には、セクター毎のPER(株価収益率)の理解をもとに、それぞれの企業の成長見込みとリスク評価を行う必要があります。高いPERの企業に投資する場合は、その高いバリュエーションが正当化されるほどの高成長を期待できるかを慎重に分析する必要があります。また、低いPERの企業に投資する場合は、その低評価が市場の過小評価によるものか、それとも他のリスク要因が存在するためかを評価することが重要です。

特に、投資家が米国株に投資する際には、単に個々の企業のPERだけでなく、セクター毎のPERの平均をも理解することが非常に重要です。これにより、市場全体の動向と個々の企業の位置づけを正確に把握し、より効果的な投資判断を下すことが可能になります。この章で紹介した分析手法を用いることで、投資家は米国株市場においてより戦略的かつ効率的な投資を行うことができるでしょう。次章では、この知識を基にした具体的な投資戦略の立案について掘り下げていきます。

5: PER(株価収益率)を用いた投資戦略の立案

PER(株価収益率)は投資判断において重要な指標です。この章では、PERを活用した具体的な投資戦略の立案方法を、実例を交えて詳細に解説します。特に、マイナスPER銘柄の分析と成長株選定に焦点を当て、それらの銘柄が投資家にどのような機会を提供するかを探ります。

マイナスのPER(株価収益率)銘柄へのアプローチ

マイナスのPER(株価収益率)は通常、企業が赤字を記録している状況を示しますが、これを回避すべき信号とだけ見るのではなく、投資の機会として捉えることも重要です。例えば、2018年に大幅な赤字を記録したテスラTSLA)は、その後の数年間で劇的な業績改善を遂げ、株価は急上昇しました。投資家は、テスラが電気自動車市場での革新的な技術と強力なブランドポジションを持っていることを評価し、初期の損失を将来の成長ポテンシャルで補うと見込みました。

投資戦略としては、マイナスのPERを記録している企業の事業モデル、市場の成長性、競争状況、財務健全性を綿密に分析し、その企業が直面している問題が一時的なもので、改善が見込まれるかどうかを判断します。さらに、経営陣の質や事業再構築計画の実行力も重要な評価ポイントです。

成長株(グロース株)選定のためのPER(株価収益率)分析

成長株(グロース株)の選定においては、PER(株価収益率)は市場の期待値を反映します。例として、クラウドコンピューティングと人工知能に強みを持つアマゾンAMZN)は、しばしば高いPERを記録しますが、その背後には持続的な成長の見込みがあります。アマゾンの事業拡大計画や新サービスの投入が予想される収益増加を支えると市場は捉えています。

成長株を選定する際の戦略としては、単にPERが高いからといって避けるのではなく、その高いPERがどれだけ持続可能な成長によって支えられているかを分析します。また、業界トレンド、技術進化、消費者行動の変化など、外部環境の変動を綿密に監視し、それらが企業の成長にどのように影響するかを評価することが必要です。

PER(株価収益率)戦略の立案と実行

具体的な投資戦略を立案するには、以下のステップを踏むことが推奨されます。

業界分析:関連する業界の成長見込みと市場動向を詳細に調査します。

企業選定:業界内で競争力のあるポジションを持ち、財務健全性が確保されている企業を選びます。

リスク評価:投資する企業のリスク要因を洗い出し、それらが投資成果に与える潜在的な影響を分析します。

ポートフォリオ管理:多様化を図りながら、定期的なレビューを通じて最適な資産配分を維持します。

この章では、PER(株価収益率)を用いた具体的な投資戦略の立案方法を解説しました。これらの戦略は、投資家がマイナスPER銘柄の潜在的なリターンを活用し、成長株の持つ可能性を最大限に引き出すのに役立ちます。それぞれの戦略は市場環境に応じて適宜調整が必要であり、投資判断の精度を高めるためには、継続的な市場分析と柔軟な対応が求められます。

最後に

PER(株価収益率)は投資判断に不可欠なツールです。本稿ではPERの基礎から応用までを解説し、特にマイナスPERの銘柄や成長株選定の戦略に焦点を当てました。PERは単なる数字ではなく、その背後にある企業の業績や市場環境を理解するための鍵となります。投資家はこの指標を用いて、適切な投資先を見極め、リスクを管理しながら機会を最大限に活用することが求められます。

また、インベストリンゴでは、弊社のアナリストが、AIや半導体関連のテクノロジー銘柄から高配当関連銘柄まで、米国株個別企業に関する動向を日々日本語でアップデートしております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームよりレポートをご覧いただければと思います。

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