01/25/2025

スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)とイーロン・マスク氏の関係とは?

a cell phone sitting on top of a laptop computerウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、「スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)とイーロン・マスク氏の関係とは?」という疑問に答えるべく、当プロジェクト発表後のイーロン・マスク氏の反応、並びに、MGXがどのような組織であり、AI分野でのリーダーシップや投資戦略においてどのような役割を果たしているのかに関して詳しく解説していきます。
  • スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)は、OpenAI専用の計算リソース供給に特化した取り組みであり、MGXやソフトバンクが主要な資金提供者として関与しています。
  • MGXはUAEで誕生し、AIエコシステムの構築や世界的リーダーとの協力を通じて、社会的・経済的な発展を目指す投資会社です。
  • プロジェクトの詳細やその収益構造、資金調達の持続可能性には多くの疑問が残り、関係企業がどのようなリターンを期待しているのかが注目されています。

※「スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)とは?OpenAI、ソフトバンク、オラクルの関係性に迫る!」の続き

前章では、「スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)とは?」という疑問に答えるべく、初期出資者であるOpenAI、ソフトバンク、オラクル、MGXの関係性や当プロジェクトの内容を関して詳しく解説しております。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。

スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)の資金提供パートナー

前章では、MGXについて後ほど触れるとお伝えしました。ここで、彼らがどのような組織で何をしているのかを簡単にご紹介します。

(原文)MGX is a leading AI and advanced technology investor committed to accelerating the responsible development of AI-led technologies that will deliver a positive economic and social impact.

(日本語訳)MGXは、AI主導の技術を活用した責任ある開発を加速させ、経済的および社会的にポジティブな影響をもたらすことを目指す、先進技術とAI分野のトップ投資家です。

(原文)Born in the UAE, MGX seeks to build one of the world’s most advanced AI ecosystems locally while partnering with global leaders in AI to create value and drive progress around the world.

(日本語訳)MGXはアラブ首長国連邦(UAE)で誕生し、地元に世界最先端のAIエコシステムを構築することを目指す一方で、AI分野の世界的リーダーたちと提携し、価値を創造し、世界的な進歩を推進しています。

MGXは2024年3月12日に設立されました。詳細はこちらをご覧ください

アブダビ、AIに関する包括的なグローバル投資戦略を始動

(原文)ABU DHABI, 12th March, 2024 (WAM) -- The Artificial Intelligence and Advanced Technology Council (AIATC), established on 22nd January, 2024, by President His Highness Sheikh Mohamed bin Zayed Al Nahyan, announced today the creation of MGX, a technology investment company to enable the advancement and deployment of leading-edge technologies intended to improve the lives of current and future generations. Mubadala and G42 will serve as foundational partners in the creation of the new company.

(日本語訳)アブダビ、2024年3月12日(WAM)― 2024年1月22日にモハメド・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン大統領の指導のもと設立された人工知能・先端技術評議会(AIATC)は、本日、MGXという新たな技術投資会社の設立を発表しました。この会社は、現在および将来の世代の生活を向上させるための最先端技術の発展と展開を推進することを目的としています。ムバダラとG42が新会社の設立における基盤的なパートナーを務めます。

このプレスリリースでは、これら2つの基盤的パートナーが選ばれた背景について説明しています。

(原文)Mubadala and G42 have an extensive and robust investment foundation in sectors that are crucial to the new AI investment strategy. G42 is a global AI technology leader, operating in the fields of cloud computing, advanced data centres, and specialized AI applications, ranging from financial services to smart cities. Mubadala was a significant and transformational investor in AMD, and in 2009 created GlobalFoundries, one of the world’s top semiconductor manufacturing companies. Mubadala is also a leading investor in software, life sciences and new commerce.

(日本語訳)ムバダラとG42は、新たなAI投資戦略において重要な分野で、広範かつ堅固な投資基盤を持っています。G42は、クラウドコンピューティング、先進的なデータセンター、金融サービスからスマートシティに至るまで、幅広い分野のAI技術を手掛けるグローバルリーダーです。一方、ムバダラはAMD(AMD)への重要かつ革新的な投資を行い、2009年には世界有数の半導体製造会社であるグローバルファウンドリーズ(GFS)を設立しました。また、ムバダラはソフトウェア、ライフサイエンス、新しい商業分野への主要な投資家でもあります。

また、数か月前に私が執筆したCerebrasのIPOに関する分析レポートにおいて、私がG42について詳しく取り上げたのを覚えている方もいるかもしれません。本稿への理解を深める上で、是非、併せてご覧いただければと思います。

こうして、ソフトバンクとMGXを通じて、OpenAIは日本とドバイから資金を確保し、アメリカおよびその同盟国の国家安全保障を守るための戦略的能力となることを目指しています。この話、本当にフィクションではないのです…!

スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)とイーロン・マスク氏の関係とは?

マスク氏とアルトマン氏の間にある公然の敵対関係を考えれば、今週初めのホワイトハウスでのスターゲート発表にマスク氏が参加していなかったのは、さほど驚くことではありません。むしろ、トランプ大統領がオラクル(ORCL)のラリー・エリソン氏を大いに称賛する様子を聞かずに済んだのは、彼にとって良かったのかもしれません。

(原文)In the case of Larry, well beyond technology, sort of CEO of everything, he’s an amazing man, amazing business person

(日本語訳)ラリーについて言えば、彼は単なる技術の枠を超えた「何でもこなすCEO」といった存在で、驚くべき人物であり、卓越したビジネスパーソンです。

スターゲートに対するドナルド・トランプの熱烈な支持を考えれば、イーロン・マスク氏がこの件について感情を抑えておくかと思われましたが、そうではありませんでした。彼はX(旧Twitter)に投稿し、ソフトバンクからのスターゲートへの資金調達について疑念を呈しました。しかし、すぐにサム・アルトマン氏がそれを訂正し、さらに、イーロン・マスク氏が新たな政府効率化省(DOGE)の役割において、自身の会社ではなくアメリカを優先してほしいという希望を付け加えました。

(イーロン・マスク氏:日本語訳)ソフトバンクが確保している資金は10億ドルには遠く及ばないようです。信頼できる筋から聞いています。

(サム・アルトマン氏:日本語訳)それは間違っていますよね、ご存じのはずですが。すでに進行中の最初の現場に訪問しに来ますか?これは国(アメリカ)にとって素晴らしいことです。もちろん、国にとって素晴らしいことが必ずしもあなたの会社にとって最適であるわけではないのは理解していますが、新しい役割ではアメリカを優先していただけることを願っています。

皮肉なことに、スターゲートを設立してOpenAI専用の計算リソース供給に特化するというサム・アルトマン氏の行動は、彼がイーロン・マスク氏にやってほしくないと願っていることと、まさに同じことをしているようにも見えます。

スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)に対する結論

スターゲート・プロジェクト(Stargate Project)は、非常に興味深い取り組みです。スターゲート・プロジェクトがOpenAI専用の計算リソース供給者としての役割に特化している点を考えると、このビジネスモデルがどのように成り立つのか疑問が湧きます。たとえば、料金設定の問題があります。スターゲートの「運営責任」はOpenAIにあるとされていますが、これがサム・アルトマン氏が計算リソースに対する支払い額を決めるという意味なのでしょうか?

また、主要な資金提供者であるMGXやソフトバンクがどのようなリターンを期待しているのかという疑問も浮かびます。彼らがそのリターンを実現するためのマージンを設定するのでしょうか?さらに、実際にデータセンターを運営するのは誰になるのか、という点も気になるところです。

もちろん、これらの疑問に対する答えは現時点では何も明らかにされていません。スターゲートは、おそらく現在見られるOpenAIの「非営利」構造がもたらした混乱と同じような、十分な精査や細部への注意をもって作られたのでしょう。それでも、ソフトバンクやMGXのような企業が、初期投資として数十億ドルを投入する誘惑に駆られるのは理解できます。ただし、問題は、彼らが4年間で5000億ドルもの資金を用意できるかどうかです。私はそうは思いません。さて、どうなるか見てみましょう!

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アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

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