04/09/2025

中国が米国債を売却するとどうなる?トランプ関税撤廃へのゆるやかな道のりとは?

silver and black round coinジェームズ・ フォードジェームズ・ フォード
  • 本稿では、「中国が米国債を売却するとどうなるのか?」、「トランプ関税撤廃へのゆるやかな道のりとは?」といった声をよく耳にすることから、これらのポイントに注目し、今後の米国株式市場の見通しと私の注目する4銘柄を詳しく解説していきます。
  • 関税やバリュエーションの調整、政治的な駆け引きが市場に影響を与える一方で、インフレ懸念は後退し、FRBの利下げ余地が広がっています。
  • S&P500はテクニカル的に反転の兆しを見せており、主要銘柄ではエヌビディアやTSMCなどに注目が集まっています。
  • 市場の悲観ムードが強まる中、筆者は流動性の改善やチャートの回復を背景に、逆張り的な視点から段階的な投資を進めています。

関税撤廃へのゆるやかな道、流動性、そして最高値更新へ?

最近の米国株式市場は打撃を受けています。しかし、そのボラティリティの裏には、無視できないほど魅力的な強気の展開が潜んでいる可能性もあると考えています。そこで、本稿では、私の個人的な見解を一歩ずつ分解して説明していきます。

なぜ売りが出たのか?関税だけが理由ではない?

もちろん、関税は見出しを独占しており、実際に影響もあります。しかし、そもそもバリュエーション(株価の割高感)はかなり高まっていました。いわゆる「バフェット指標」(株式市場全体の時価総額をGDPで割ったもの)は過熱状態を示しており、テクニカル指標も買われ過ぎの水準に達していました。市場が過熱すると、たとえ関税戦争のような口実でも、それが調整の引き金になるのです。

ただし、それはあくまで物語の一部に過ぎません。

すべての上場株式の時価総額をGDPで割った比率

(出所:Longtermtrends

関税:その実際の影響と、その背後にある政治的駆け引き

トランプ前大統領による一律10%の関税は、彼の基準からしても衝撃的なものでした。報復関税が相次ぎ、世界の市場はパニックに陥り、不確実性が急上昇しました。しかし、その行間を読んでみると、交渉の余地は大いに残されていることが見えてきます。

現在、各国は次の3つのグループに分かれつつあります。

協調グループ: ベトナム、台湾、日本など、小規模な経済圏で歩調を合わせている国々。

中立・模索グループ: メキシコ、インド、オーストラリアなど、不満を抱えつつも妥協の余地を残している国々。

強硬派グループ: 中国、ヨーロッパ、カナダなどで、その中心は中国です。

市場は解決を求めています。ホワイトハウスが関税を緩和するという誤報が流れた際には市場が大きく反発し、それが否定されると再び下落しました。それでも最終的にはプラス圏で取引を終えました。今後の動向に注目が必要です。

アメリカにとって最も重要な貿易相手国

(出所:Statista)

本当の脅威:関税戦争か、それとも通貨戦争か?

現在、中国は人民元の象徴的な水準である7.2を突破しました。これは1930年代の「競争的通貨切り下げ(通貨安競争)」を彷彿とさせる動きです。さらに、米国が金利を下げたいと考えている中で、中国は米国債を売却しています。これは偶然でしょうか?いいえ、そうとは思えません。

もはや単なる貿易の問題ではなく、金融をめぐるギリギリの駆け引きであるように見えます。

(出所:Google)

中国による米国債と政府機関債の売却額が過去最高を更新

(出所:Bloomberg)

インフレ懸念?それは過剰反応?

少し大胆な見方かもしれませんが、関税は実はデフレ要因です。関税は売上税のようなもので、経済から成長力を奪ってしまいます。そして、実際にその兆候が表れ始めています。

✅ 家賃が下落しています。

✅ 原油価格は急落しました。これはサウジアラビアと米国による協調の可能性も一因です。

✅ 消費者物価指数(CPI)が上昇する可能性?極めて低いです。

結論として、インフレに対する過度な警戒感は和らいでおり、それがFRBに利下げの余地を与えているように見えます。

米国:家賃の消費者物価指数(CPI)と新規入居者指数の比較

(出所:MacroMicro)

FRBの次の一手:政治的な後ろ盾を得た利下げ?

非農業部門雇用者数の伸びは鈍化しました。クレジットスプレッドも拡大しています。しかし、雇用市場は依然として堅調で、製造業も持ちこたえています。インフレが抑制されている現在、FRBはより自由に行動できる状況にあり、6月の利下げの可能性は急速に高まっています。

その舞台裏では、財務省との何らかの協調があるかもしれません。FRBは、市場を救済しているように見せることなく、政治的な後ろ盾を得て緩和政策に動けるのです。この点については、マイケル・ハウエル氏の分析に注目してください。現在の本質的なテーマは「流動性」であると言えるでしょう。

次のセクションでは、私が注目するS&P500の水準、並びに、足元で注目する銘柄について解説いたします。

2025年5月7日のFOMC会合における政策金利の予想確率

(出所:CME)

私が注目するS&P500指数(SPX)の水準

現在、主要なサポート水準に近づいています。バリュエーションは調整され、投資家心理は極めて弱気です。これは典型的な逆張りのシグナルと言えます。

S&P500指数(SPX)を見てみましょう:

✅ 前回の上昇局面に対し、61.8%のフィボナッチ黄金比まで押し戻されています。

✅ 週足のRSIは大きく売られ過ぎの水準にあり、これは非常に珍しいシグナルです。

✅ 200週移動平均線のすぐ上で反転しています。

✅ 現在、強気のRSIダイバージェンスやMACDのゴールデンクロスが出るかどうかを確認中です。

私たちは、いま「第5波の衝撃波(インパルス)」に向けた形成過程にあると考えています。目標水準ですか?S&P500で6,500を見込んでいます。

私が注目する銘柄4選

🔹 エヌビディア(NVDA

確かに定番ですが、それにはきちんとした理由があると考えています。予想PERは21倍強、PEGは0.6未満と、割安に取引されています。成長懸念や中国リスク、AMD(AMD)との競争が株価を押し下げていますが、私は依然として「AIトレンドはまだ始まったばかり」だと考えています。

DeepSeekによる「少チップ推論(few-chip inference)」は脅威ではなく、むしろ市場拡大の兆候であり、これは「ジェヴォンズの逆説」そのものです。効率が上がれば、需要も増えるという理論です。

現在の水準から470~500ドル(200日EMA付近)までは、買いのゾーンと見ています。

🔹 TSMC(TSM 

すでに私の運用するポートフォリオの1つである「EODポートフォリオ」に組み込まれています。堅実な長期投資先で、AI分野への関与も非常に大きいですが、市場ではまだ十分に評価されていないように見えます。

🔹 アメリカン航空(AAL

原油価格が下がれば、利益率が上がると考えています。運航コストの約30%が燃料費であるため、今回の原油価格急落は大きな追い風です。株価は長期平均を大きく下回っており、RSIも極端な売られ過ぎ水準にあるため、急反発の可能性があると見ています。

🔹 ジョビー・アビエーション(JOBY 

これは投機的な銘柄です。空売り比率も高めです。しかし、同社は電動航空に特化しており、米国やドバイでの展開を進めていることから、将来的な成長の可能性はあると考えています。レディット銘柄としてのリバウンドもあり得るため、私の運用するポートフォリオの1つである「YOLOポートフォリオ」においてウォッチリストに入れておく価値があると考えています。

最後に:逆張り的だが前向きな視点

確かに、ニュースの見出しはどれも悲観的です。しかし、市場はすでに多くの悪材料を織り込んでいます。インフレは低下傾向にあり、流動性も改善しています。FRBには利下げの余地があり、テクニカル的にも底打ちの兆しが見え始めているようにも見えます。

そのため、私は、計画的かつ段階的に、上昇余地があると考える、しっかりとしたチャートの形を持つ銘柄に絞って少しずつ資金を投入しています。

今後の分析レポートでは、さらに具体的な注目銘柄に対する詳細な分析をお届けする予定です。それまでの間は、チャートから目を離さず、時には視野を広げて全体像を見渡すこともお忘れなく!


🚀お気に入りのアナリストをフォローして最新レポートをリアルタイムでGET🚀

ジェームズ・ フォード氏はマクロ経済、並びに、注目のテクノロジー銘柄に関するレポートを毎週複数執筆しており、プロフィール上にてフォローしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることが出来ます。

加えて、その他のアナリストも詳細な分析レポートを日々執筆しており、インベストリンゴのプラットフォーム上では「毎月約100件、年間で1000件以上」のレポートを提供しております。

そのため、フォード氏のテクノロジー関連銘柄やマクロ経済に関する最新レポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います!


加えて、フォード氏は下記の4つのポートフォリオを運用しており、各ポートフォリオに関する下記の詳細なレポートも定期的に執筆しておりますので、インベストリンゴのプラットフォーム上より併せてご覧いただければと思います。

1️⃣ YOLOポートフォリオの詳細

・  YOLOポートフォリオとは?

2️⃣ EOW(エンド・オブ・ザ・ワールド)ポートフォリオの詳細

・  EOW(エンド・オブ・ザ・ワールド)ポートフォリオとは?

3️⃣ スイングポートフォリオの詳細

4️⃣ マクロETFポートフォリオの詳細

YOLOポートフォリオの最新動向

EOWポートフォリオ

スイング・ポートフォリオの最新動向

マクロETFポートフォリオの最新動向


アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード

📍米国マクロ経済&テクノロジー担当

フォード氏のその他のテクノロジー関連銘柄やマクロ経済のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、フォード氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


インベストリンゴでは、弊社のアナリストが「高配当銘柄」から「AIや半導体関連のテクノロジー銘柄」まで、米国株個別企業に関する分析を日々日本語でアップデートしております。さらに、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は「250銘柄以上」(対象銘柄リストはこちら)となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームより詳細な分析レポートをご覧いただければと思います。