やや弱気アルファベット クラスCグーグル・アルファベット / GOOGL / 弱気:財務&強み(優位性)分析と今後の株価見通し・将来性(Google)
ウィリアム・ ゼットラー- 2022年のアルファベット(GOOG/GOOGL)の収益増加率は2017年以来最低となり、2018年以降は右肩下がりである。
- 2023年の同社の財務指標は、EPSとEBITDAが減少し、大きな改善は見られなかった。
- アナリストらは同社の見通しについて肯定的な見通しを示しているが、規制当局との戦いや業績の低迷といったリスクもあるのが現状である。
アルファベットの概要
アルファベット(GOOG/GOOGL)は時価総額で世界第3位のテクノロジー企業であり、アップルとマイクロソフトの後塵を拝している。
2022年の収益増加率10%は少なくとも2017年以降で最低となり、2021年を除けば2018年以降右肩下がりを示している。
アルファベットの年度別増収率 | |
2017 | 23% |
2018 | 23% |
2019 | 18% |
2020 | 13% |
2021 | 41% |
2022 | 10% |
この傾向は続いている模様であり、2023年6月20日ベースのTTM(過去12か月)の収益は4%増にとどまっている。過去12ヶ月間のアルファベットのトータル・リターン(配当込み)を比較すると、S&P500(SPY)を15%程、アウトパフォームしている。
以上を踏まえ、アルファベット株は、配当も含めて妥当な潜在的投資リターンを示しているのか、或いは、投資家はより良い投資パフォーマンスを他の投資対象に求めるべきなのか、ということが論点となる。
この記事では、アルファベットの今後1~2年の見通しを分析し、昨年と比較することを通じて、2025年までの株価の方向性を判断してみたい。
アルファベットの主要指標
アルファベットの財務指標を、TTM(過去12ヶ月)と前年のTTMを比較しながら見てみよう。私はこの方法を通じて、プラスの投資指標を発見し、マイナスの投資指標と比較したい。目標は、投資する価値のある再建候補を見つけることだ。
単位:10億ドル / 2年間のTTM(過去12か月)の実績の比較
# | 指標 | 2022 | 2023 | 変化率 |
1 | 一年前の株価 / 現在の株価 |
101 | 131 | 30% |
2 | 売上高 | 278 | 290 | 4% |
3 | 株価売上高倍率 | 4.68 | 5.86 | 25% |
4 | 売上総利益 | 159 | 161 | 1% |
5 | 売上総利益率 | 57.2% | 55.5% | -3% |
6 | 時価総額 | 1300 | 1700 | 31% |
7 | 企業価値 | 1412 | 1806 | 28% |
8 | 売上総利益 / 時価総額 |
12.2% | 9.5% | -23% |
9 | 売上総利益 / 企業価値 | 11.3% | 8.9% | -21% |
10 | EPS | 5.45 | 4.75 | -13% |
11 | PER | 18.5 | 27.6 | 49% |
12 | 純有利子負債 | 112 | 106 | -5% |
13 | EBITDA | 96 | 91 | -5% |
14 | EBITDA有利子負債倍率 | 1.2 | 1.2 | 0% |
15 | FCF(フリーキャッシュフロー) | 65 | 71 | 9% |
16 | 株価FCF倍率 | 20.0 | 23.9 | 20% |
17 | 年間配当金 | 0.00 | 0.00 | - |
18 | 年間配当率 | 0.0% | 0.0% | - |
2023年のTTMと2022年の同期間を比較した上記の財務指標の表を見ると、アルファベットは多くの指標において、目立った改善を示していないことが分かる。売上高(2行目)が4%増とやや控えめだったにもかかわらず、株価(1行目)は30%上昇した。株価売上高比率(3行目)は25%上昇し、売上総利益率(5行目)は3%低下した。
マイナス比較はこれだけにとどまらない。EPS(10行目)は13%減少し、PEレシオ(11行目)は49%上昇、EBITDAも5%減少した。
株価が30%上昇した割には「下落」が多いことに気付くだろう。良いニュースもあったことは認めるが、総じて控えめなものだった印象を受ける。
フリーキャッシュフロー(15行目)は9%増加したが、株価が上昇したため、株価フリーキャッシュフロー倍率(16行目)は20%の大幅上昇となった。
ちなみに、アルファベットはアップルやマイクロソフトと違って配当金を支払っていない。
以上より、過去4四半期におけるアルファベットの財務実績は、過去の実績から推測されるよりも大幅に悪化している。
そして、ここでの問題は、この状況は投資家が気づいていない内部的な問題を示しているのか、それともこの12ヶ月は、長期的な上昇トレンドにおける単なる一時的な、例外的な状況なのかということである。
アメリカのアナリストはアルファベットをどう見ているか?
marketwatch.comのアナリストの過去3ヶ月の評価は以下の通りである。
マーケットウォッチ |
3ヶ月前 |
1ヶ月前 |
現在 |
買い |
42 |
44 |
46 |
ホールド |
10 |
9 |
9 |
売り |
0 |
0 |
0 |
MarketWatchのアナリストもアルファベットを一貫して「買い」と評価し、「売り」は全くないのが現状である。以上の評価から、アルファベットは市場では、「買い」との評価を受けているようだ。
アルファベットの株価は、同業他社と比較してどう映るか?
どの銘柄を見るにしても、同じセクター内の他の銘柄とのパフォーマンスを比較することは正当なアプローチである。アルファベットの昨年1年間のパフォーマンスをハイテクセクターの他の銘柄と比較してみよう。
アルファベットとマイクロソフトは、共に35%以上上昇しているのに対し、アップルは21%と控えめな結果である。アルファベットとマイクロソフトは、エヌビディアによる最新の四半期決算が発表されて以来、「AI、チャットボット、エヌビディア」の熱狂が市場を支配している恩恵を受けているのかもしれない。
しかし、8月30日以降のエヌビディアを見ると、熱狂が冷めるにつれて価格が19%下落している。このことは、おそらくアルファベットもそう遠くない将来に同じような下げに見舞われる可能性があることを暗示しているのだろうか。
銘柄 | 1年前の株価 | 現在の株価 | 変化率 |
アルファベット |
100 | 137 | 37% |
マイクロソフト | 236 | 327 | 38% |
アップル | 143 | 173 | 21% |
銘柄 | 8月30日時点の株価 | 現在の株価 | 変化率 |
エヌビディア | 494 | 414 | -19% |
アルファベットの配当と自社株買い
アルファベットには配当金はなく、またすぐに配当金を出すとも言っていない。最新の決算報告で配当について言及されたのは、スンダー・ピチャイCEOのこの言葉だけである。
「データセンターのマシン効率は順調に進んでおり、AIへの投資を継続する中で配当が得られるだろう」
但し、これは投資家が求める配当ではないだろう。アルファベットは過去10年間で株式数を約4%減少させている。アルファベットの配当はゼロで、自社株買いの記録も印象的ではないというのが現状である。
アルファベット株への見通し
アルファベット株投資にはリスクが存在ある。日々の競争リスクに加えて、インフレや景気後退のリスクもある。その他にも、AIやチャットボットの可能性を過剰に売り込むなど、少なくとも短期的には、目先の業績が思わしくなければ、投資家は躊躇したり、売却したりする可能性があるのではないかと考える。
確かに、この記事で示した最新の12カ月の財務指標上では、大した問題が生じていないように見えるかもしれない。但し、このような状態があと1~2四半期続いた場合、投資家はエヌビディアと同じように、アルファベットの船を見捨てる決断を下すのだろうか。
一つポジティブな点としては、アルファベットの株価売上高比率が5年前とほぼ同じ水準であることである。これは、業績が改善すれば株価が好転する可能性があることを示す好材料かもしれない。
しかし、この好材料は、アルファベットの独占、さらに、反競争的製品に関する規制当局との戦いによって相殺されてしまう可能性がある。アルファベットはデジタル広告を独占しているとして、欧州では分割命令、米国では訴訟に直面している。
これらの法廷闘争のいずれか、または両方に敗れた場合、アルファベットの収益に大きな影響を与える可能性がある。
最近の財務指標と収益動向の弱さ、昨年1年間の株価の30%の上昇、無配当、積極的ではない自社株買い方針、巨大な規制リスクなどから、私のアルファベットへの見通しは「弱気」である。
インベストリンゴでは、弊社のアナリストが、高配当関連銘柄からAIや半導体関連のテクノロジー銘柄まで、米国株個別企業に関する動向を日々日本語でアップデートしております。そして、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は200銘柄以上となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームよりレポートをご覧いただければと思います。
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