アルファベット(グーグル:GOOG)解体の可能性?昨年12月9日に発表されたWillowチップが示唆する将来とは?
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- 本稿では、昨年12月9日に発表されたGoogle Quantum AIの新しい世代の量子プロセッサ「Willowチップ」の分析を通じて、足元で噂されるアルファベット(グーグル:GOOG)解体の可能性に関して詳しく解説していきます。
- Google Quantum AIは、グーグル(GOOG)が進める量子コンピューティングの研究プロジェクトで、複雑な問題を高速に解決する技術開発を目指しており、Willowチップはその成果の一例です。
- Willowチップは、古典的コンピューターでは解けない問題を数分で処理可能な性能を持ちますが、実際には現実世界の問題とは無関係なベンチマークに基づく比較が行われています。
- 量子コンピューティングは今後、現実世界の問題解決に活用が期待されますが、現段階では過剰な期待と現実の間に大きな隔たりがあり、その進展を見守る必要があるでしょう。
※「注目の量子コンピュータ関連銘柄4選(米国株)」の続き
前章では、Google Quantum AIのWillopチップ発表に伴い株価が急騰した注目の米国量子コンピュータ関連銘柄4選に関して詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
Google Quantum AIのWillowチップとは?
では、グーグル(GOOG)が発表したWillowチップと、それが最速のスーパーコンピューターでも解くのに10澗年(10の25乗年)かかる問題をわずか5分以内で解けるという話に戻ります。
まず、Google Quantum AIは、グーグルが主導する量子コンピューティングの研究プロジェクトです。このプロジェクトでは、量子コンピュータの開発を通じて、現在のコンピュータでは解けないような複雑な問題を解決することを目指しています。量子コンピューティングの分野では、グーグルは超伝導量子ビット(qubit)を採用したシステムを構築しており、その性能を飛躍的に向上させる技術開発を続けています。
そして、注目すべきは、解決される問題の性質です。この問題は「RCS」、つまりランダム回路サンプリングと呼ばれています。これは一体何でしょうか?簡単に言えば、グーグルが量子コンピューティング(QC)には最適で、古典的コンピューティングには全く向かないよう意図的に設計したベンチマークです。言い換えれば、現実世界の問題とは一切関係のない架空の課題です。
ちなみに、グーグルはこのテーマについて5年以上も話し続けています。2019年、同社がSycamoreプロセッサを発表した際(詳細はこちら)、このRCSベンチマークにおけるQCと古典的計算の時間比較が次のように示されました。
(原文)Our Sycamore processor takes about 200 seconds to sample one instance of a quantum circuit a million times—our benchmarks currently indicate that the equivalent task for a state-of-the-art classical supercomputer would take approximately 10,000 years.
(日本語訳)Sycamoreプロセッサは、量子回路の1つのインスタンスを100万回サンプリングするのに約200秒かかります。一方、最新鋭の古典的スーパーコンピューターで同じタスクを実行する場合、約1万年かかると現在のベンチマークは示しています。
わずか6か月前、同社の量子コンピューティング責任者であるハートムート・ネーヴェン氏は、このTEDトーク(7:51)で、同じ問題を古典的コンピューターで解くには10億年かかると述べていました。それがたった6か月で10澗年(10の25乗年)に跳ね上がったわけです。桁を間違えているのでしょうか?
実際、このような比較を使うのは典型的な「おとり商法」のような手法です。量子コンピューティング技術を用いて現実世界の問題を解決する進展に焦点を当てるのではなく、この馬鹿げた、無関係な指標に私たちの関心を向けようとしているのです。次のブレイクスルーでは、どれだけの年数を持ち出してくるのか気になります。
同じTEDトークで、ハートムート・ネーヴェン氏は冒頭でまたしても彼のマルチバース仮説に触れています。
(原文)0:43:Quantum computing is the first technology that takes the idea serious that we live in a multiverse. It can be seen as farming out computations to parallel universes. Let me explain. In quantum physics, the key mathematical object to describe many worlds is called superposition. To understand what it is, ...
(日本語訳)0:43:量子コンピューティングは、私たちがマルチバース(多元宇宙)に生きているという考えを真剣に受け入れた最初の技術です。これは計算を平行宇宙に委ねるものと見ることができます。説明しましょう。量子物理学では、多世界を説明するための重要な数学的概念として「重ね合わせ(スーパー・ポジション)」と呼ばれるものがあります。これを理解するには…
そして、プレゼンテーションの10分後にも再びこの話題に触れています。
(原文)10:44:An attractive conjecture is that consciousness is how we experience the emergence of a single classical world out of the many the multiverse is composed of. With academic collaborators, I have started a program to experimentally test this conjecture using methods of quantum neurobiology.
(日本語訳)10:44:魅力的な仮説として、意識とは、多元宇宙を構成する数多くの世界の中から、単一の古典的な世界が生じる過程を私たちが体験するものである、という考えがあります。私は学術的な共同研究者とともに、この仮説を量子神経生物学の手法を用いて実験的に検証するプログラムを開始しました。
正直なところ、量子力学や量子物理学が奇妙で難解なものであり、大半の人には理解しきれないのは分かります。しかし、量子コンピューティングを技術として真剣に捉えるのであれば、それが平行宇宙の存在を示唆していると主張するのは、あまり助けにならないと思います。あくまで私の意見ですが。
さて、親会社であるアルファベットがこのタイミングで量子コンピューティングにこれほど力を入れている理由ですが、それは同社が分割される可能性という脅威と関係があるのでしょうか(詳細はこちら)。
アルファベット分割の可能性浮上。その影響で株価に追い風?
(出所:Barron's)
(原文)The Justice Department has suggested a breakup of Alphabet Google as a potential way to address its de facto search monopoly. The company is fighting back against the prospect.
(日本語訳)司法省は、アルファベット(Google)の事実上の検索独占状態に対処する方法の一つとして、同社の分割を提案しています。これに対し、同社はその可能性に強く反発しています。
量子コンピューティング分野に対する結論
量子コンピューティングは非常に魅力的なテーマであり、将来的には現実世界の問題をより迅速に解決したり、古典的コンピューターでは対処できない問題を独自に解決するために活用されることに疑いはありません。ただし、量子コンピューティングが私たちにとって有益に機能するための道のりは、まだ始まったばかりと言えるでしょう。
同時に、過去10年間で増え続けてきたハイプ(過剰な期待)のサイクルが、また一つ始まったばかりと言えるでしょう。特にDウェイブ・クアンタム(QBTS)とリゲッティ・コンピューティング(RGTI)にとっては、再び上場廃止の危機に直面しながらも、またしてもそれを回避できたことは、まさにクリスマスの奇跡といえるでしょう。一方で、アルファベットはマルチバースに関する考察でさらなる賭けに出ているようです。そして今、エヌビディア(NVDA)がイオンキュー(IONQ)と提携してこの分野に参入しました。量子コンピューティングと加速コンピューティングの融合です。エヌビディアのCEOであるジェンセン氏が決算発表で量子コンピューティングに言及するのは、どれくらい先のことになるでしょうか?私の予想では、そう遠くはないでしょう。では、量子コンピューティングの進展を楽しみにしたいと思います!
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