02/10/2025

強気
グラブ・ホールディングス
強気
東南アジアのライドシェアやデリバリー市場で圧倒的なシェアを持ち、金融サービスの拡大を含めたスーパーアプリ戦略を推進しています。
【アジア株】グラブ・ホールディングス(GRAB)とは?将来性と今後の株価見通しに迫る!

a red and white toy rocket on a yellow backgroundジェームズ・ フォードジェームズ・ フォード
  • 本稿では、注目の東南アジアのテクノロジー銘柄である「グラブ・ホールディングス(GRAB)とは?」という疑問に答えるべく、同社の詳細な競争優位性とバリュエーション分析を通じて、今後の株価見通しと将来性に関して詳しく解説していきます。
  • 同社は、東南アジアのライドシェアやデリバリー市場で圧倒的なシェアを持ち、金融サービスの拡大を含めたスーパーアプリ戦略を推進しています。
  • 収益性の向上が進んでおり、EBITDAの黒字化やフリーキャッシュフローの成長が見られる一方、フィンテック分野での競争激化やプロモーション依存が課題となっています。
  • 今後の成長は、金融サービスの収益化と市場シェア拡大にかかっており、テクノロジー企業としての地位を確立できるかどうかが注目されています。

※「【2024年2月】YOLOポートフォリオ・アップデート:新規追加した2つのAI関連銘柄が過去2週間で25%の急騰!」の続き

前章では、私が運用するポートフォリオの1つである「YOLOポートフォリオ」に追加したAI関連銘柄2つについて詳しく解説しました。これらの銘柄は過去2週間で合計25%上昇しており、私が投資判断に至ったプロセスや分析手法についてもご紹介しました。特に、テンパスAI(TEM)に関しては、ナンシー・ペロシ氏の保有状況が市場に与えた影響を、また、ネビウス・グループ(NBIS)については、売り崩し後の割安性や成長見通しを詳細に分析しました。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。

グラブ・ホールディングス(GRAB):市場をリードする企業、2倍になる可能性も?

グラブ・ホールディングス(GRABは、東南アジアを代表するスーパーアプリであり、ペイパル(PYPL)、ショッピファイ(SHOP)、ウーバー・テクノロジーズ(UBER)、ドアダッシュDASH)に類似したサービスを統合しています。

米国ではスーパーアプリモデルが苦戦しましたが、アジアでは成功を収めています。

グラブ・ホールディングスはNasdaqに上場しており、ウーバー・テクノロジーズやモルガン・スタンレー(MS)といった有力投資家からの支援を受けています。


グラブ・ホールディングス(GRAB)が際立つ理由

・バリュエーション:時価総額180億ドルに対し、60億ドルの現金を保有(時価総額の30%が現金)。

・成長:売上高は前年比17%増(為替調整後では20%増)。

・収益性:5四半期連続でEBITDAが黒字、3四半期連続でフリーキャッシュフローがプラス。

・拡大:月間取引ユーザー数は前年比16%増の4200万人。

・テクニカルブレイクアウト:チャート上ではさらなる上昇の可能性あり。

・地域成長:東南アジアのGDPは年率5.1%で成長。

もともとはタクシーサービスとして始まったグラブ・ホールディングスですが、現在では交通、デリバリー、金融を支配する企業へと成長しました。

東南アジアには7億人の人口があり、スマートフォンの普及率は2030年までに85%に達すると予測されています。

デジタル化の進展により、同社の長期的な成長ポテンシャルは確固たるものとなっています。


グラブ・ホールディングス(GRAB)のモビリティとデリバリー市場での圧倒的な支配力

グラブ・ホールディングス(GRAB)は、東南アジアのモビリティ(移動)およびデリバリー市場において圧倒的なリーダーとなっています。

ライドシェア市場では、約50%の市場シェアを誇り、最大の競合であるGojekの4倍の規模を持っています。

また、フードデリバリー市場には他社より遅れて参入しましたが、現在は約55%のシェアを確保し、ShopeeFood、FoodPanda、Deliverooを上回っています。

プラットフォーム型ビジネスは、アマゾン(AMZN:eコマース)やGoogle(GOOG:検索)などのグローバルテック企業と同様に、市場を支配するプレイヤーに有利な傾向があります。

グラブ・ホールディングスもこの流れに沿っており、利益率の向上がその優位性を示しています。

第3四半期には、デリバリー部門のEBITDAマージンが前年比60%増加し、モビリティ部門のマージンも18%向上しました。

さらに、両部門ともに二桁の売上成長を記録しています。

同社は、40億ドルの現金を保有し、第3四半期のフリーキャッシュフロー(FCF)は1億3800万ドルに達しました。

この強固な財務基盤により、同社は市場シェアを維持・拡大するための十分な資金を確保しています。

2024年第3四半期の未監査の業績

デリバリー

(出所:グラブ・ホールディングスの2024年度第3四半期決算資料


グラブ・ホールディングス(GRAB)の拡大する市場と強いブランド認知度

東南アジアの人口は7億人、中央値年齢は32歳で、インターネットの普及率は上昇を続けています。

現在、グラブ・ホールディングス(GRAB)の月間取引ユーザー数は4200万人ですが、これは地域人口のわずか5%に過ぎません。

つまり、今後の成長余地は依然として大きいと言えます。

東南アジアにおける市場機会

(出所:グラブ・ホールディングスの資料

同社の戦略は、プロモーションやインセンティブを活用してプラットフォームへの関与を高めることに重点を置いています。

一度利用を開始したユーザーは、その後も継続して利用する傾向があり、使用頻度も時間とともに増加していきます。

さらに、東南アジアでは自家用車の所有率が低いため、都市部の住民はシェア型モビリティを利用する傾向が強く、同社のビジネスモデルにとって追い風となっています。


グラブ・ホールディングス(GRAB)のスーパーアプリ・エコシステム

グラブ・ホールディングス(GRAB)はスーパーアプリへと進化しており、モビリティ、デリバリー、金融サービスを単一のプラットフォームに統合しています。

データによると、フードデリバリーや食料品の注文など、複数のサービスを利用するユーザーは、注文頻度が5倍高く、リテンション率(継続利用率)も2倍高いことが明らかになっています。

そして、最大の長期的な成長機会は、金融サービス分野にあります。

同社は膨大なデータを活用し、個別最適化された銀行サービス、保険、融資商品を提供しています。

通勤パターンや支出傾向など120以上のユーザー変数を分析することで、データに基づいた融資判断が可能となり、従来の銀行に対して競争優位性を確立しています。

また、同社は顧客獲得コスト(CAC)が低い点も強みです。

モビリティやデリバリー事業を通じて既に多くのユーザーを獲得しており、これらの事業が金融サービスの自然な入り口として機能しています。


グラブ・ホールディングス(GRAB)傘下のグラブ・フィナンシャル(GFin:Grab Financial)は高利益率の成長機会を提供

グラブ・ホールディングス(GRAB)のの金融サービス部門には、デジタル決済、銀行、保険、融資が含まれます。

デジタルウォレットのGrabPayは、シンガポールで5年連続で最も人気のある電子ウォレットとなっています。

また、マレーシア、シンガポール、インドネシアでデジタル銀行を運営し、銀行サービスを十分に受けられていない層(アンダーバンク層)にサービスを提供しています。

第3四半期のグラブ・フィナンシャルの売上高は前年比34%増加し、融資ポートフォリオは前年比81%増の4億9800万ドルに達しました。

2024年第3四半期の未監査の業績

金融サービス

(出所:グラブ・ホールディングスの2024年度第3四半期決算資料

現在はまだ黒字化していませんが、グラブ・フィナンシャルの損失は縮小傾向にあります。

調整後EBITDAの損失は、前年比で-74.7%から-40.4%に改善しました。

そして、グラブ・ホールディングス(GRAB)の金融サービス事業は、運営コストの低さと顧客の定着率の高さを考慮すると、長期的には2桁のEBITDAマージンを維持できる可能性があると見ています。

そのため、将来的には、モビリティやデリバリーを上回る主要な利益源となるかもしれません。

すべてのデジタル金融サービスが成長しており、特にデジタル融資が好調

(出所:The eConomy Southeast Asia Report 2021, Google, Temasek and Bain & Company, Nov 2021


グラブ・ホールディングス(GRAB)の強力なリーダーシップと戦略的パートナーシップ

創業者のアンソニー・タン氏は、グラブ・ホールディングス(GRAB)を東南アジアのリーディングカンパニーへと成長させる過程で、その強いリーダーシップを発揮してきました。

家業である自動車業界に入るよう家族からの圧力があったにもかかわらず、独立して同社を立ち上げ、資金調達と事業拡大を成功させました。

さらに、同社は戦略的パートナーシップの恩恵も受けています。

ウーバー・テクノロジーズは同社の株式を16%保有しており、ウーバー・テクノロジーズのCEOダラ・コスロシャヒ氏が取締役会に名を連ねています。

これにより、貴重な市場洞察を得ることができています。


グラブ・ホールディングス(GRAB)のバリュエーション

EBITDA成長予測

現在のEBITDA(最近の報告からの推定値):2億9500万ドル(5四半期連続で黒字)。

年間65%の成長を想定した場合

・2025年末:2億9500万ドル × 1.65 = 4億8700万ドル

・2026年末:4億8700万ドル × 1.65 = 8億300万ドル(約8億ドルと仮定)

(出所:筆者作成)

EV/EBITDA倍率を用いたバリュエーション

EV/EBITDA倍率を40倍で計算すると:

・企業価値(EV)=8億300万ドル × 40 = 321億ドル

現金残高の予測

現在の現金:60億ドル

2026年までに80億ドルに増加すると仮定。

時価総額の算出

時価総額 = 企業価値(EV)+ 現金 - 負債

同社の負債は最小限のため、純現金=80億ドルと仮定。

時価総額 = 321億ドル + 80億ドル = 401億ドル

1株あたりの目標株価

発行済み株式数:40億株

目標株価 = 401億ドル ÷ 40億株 = 10.03ドル

感度分析(リスクシナリオ)

・EBITDA成長率が50%(65%ではなく)の場合、EBITDAは約6億7000万ドルとなり、時価総額は約350億ドル(株価8.75ドル)に。

・EV/EBITDA倍率が30倍に圧縮された場合、時価総額は約320億ドル(株価8ドル)に。

これらの前提は合理的ですが、高成長の持続と市場のバリュエーション環境に依存します。


グラブ・ホールディングス(GRAB)のテクニカル分析

(出所:TrendSpider

グラブ・ホールディングス(GRAB)のチャートを分析すると、現在は理想的な買い場に見えます。

200日指数平滑移動平均線(EMA)のサポートで何度も反発しており、50日および20日EMAを上抜けました。

MACDは強気転換し、RSIは中立でさらなる上昇余地があります。

フィボナッチ拡張の1.618倍の目標値を見ると、8.6ドルまでの上昇が示唆されています。

最低でもこの水準を目指し、最大で10ドルの可能性があるように見えます。


グラブ・ホールディングス(GRAB)のリスク要因

グラブ・ホールディングス(GRAB)はデータ活用の強みを持っていますが、競争の激しい市場で事業を展開しています。

・シンガポールのUOB、DBS、OCBCといった大手銀行はデジタルバンキングの分野で直接競争相手となっています。

・東南アジア最大のeコマース企業Sea Limited(SE)は、ゲーム、小売、金融にわたる膨大なデータを活用しており、同社にとって強力な競争相手です。

・東南アジアの銀行口座を持たない人口は非常に多いため、市場には複数の勝者が生まれる余地がありますが、同社が十分なシェアを獲得するには、完璧な実行力が求められます。

また、月間取引ユーザー(MTU)あたりのGMV(総取引額)が前年比で横ばいである点も懸念材料です。

これは、ユーザー1人あたりの取引額を増やせていないことを示しており、今後の成長戦略に影響を与える可能性があります。

現状では、経営陣は短期的な収益化よりもユーザーの維持を優先していますが、長期的な利益確保のためには、プロモーション頼みではなく、取引単価の向上が不可欠です。


グラブ・ホールディングス(GRAB)に対する結論

グラブ・ホールディングス(GRAB)は、ライドシェアとデリバリー市場でのリーダーシップ、データ活用による金融サービスの成長、スーパーアプリのエコシステムといった強力な成長要因を持っています。

しかし、フィンテック分野の競争激化、収益化の課題、インセンティブへの依存といったリスクも存在します。

同社が長期的なビジョンを実行できるかどうか、特に金融サービス事業での成功が、同社がテックジャイアントとして成長するか、停滞するかを決定する要因となるでしょう。

これまで多くの課題を乗り越えてきたグラブ・ホールディングスですが、次の成長フェーズでは、成長と収益性のバランスが求められていると考えます。

では、今後の展開を楽しみに見ていきましょう!

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