やや強気ギットラブギットラボ(GTLB:GitLab)の将来性:最新決算は好調も株価下落で割安?目標株価は60ドル!今後の株価見通しに迫る!
コンヴェクィティ - 本稿では、2024年6月3日に発表された、ギットラボ(GTLB:GitLab)の最新の2025年度第1四半期決算とテクノロジー面での同社の強み(競争優位性)を詳しく分析していきます。
- そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性に関する詳細な分析を解説していきます。
- 2025年第1四半期の決算で前年同期比33%の売上成長と利益率の大幅な改善を発表しましたが、株価は20%以上下落しました。
- 企業セグメントへの浸透拡大とAI製品GitLab Duoの導入が、今後の成長と利益率向上の重要な要因として注目しています。
- DCF法に基づくと、ギットラボの現在のバリュエーションは割安と評価されており、長期投資に適した銘柄であると見ています。
※「【コンヴェクィティ:2024年度中間バリュエーション・レビュー】注目の米国テクノロジー企業の今後の株価見通しを徹底解説!」の続き
ギットラボ(GTLB:GitLab)の最新の2025年第1四半期決算発表に関して
ギットラボ(GTLB:GitLab)は、2024年6月3日に発表した最新の2025年第1四半期の決算報告で、前年同期比33%の成長と利益率の大幅な改善という堅実な業績を発表しました。同社は、セキュリティやコンプライアンス、ソフトウェア開発の全工程にわたるAI統合を重視し、最も充実したエンドツーエンドのDevOpsプラットフォームを目指す戦略を推進しており、これが開発者にとっての魅力をさらに高めています。以下にいくつかの主要な財務指標を示します。
・売上成長率は33%で、ガイダンスの30.4%を上回りました。
・Non-GAAP EBITマージンは-2.2%で、ガイダンスの-7.6%を大きく改善しました。
・ネット・ドル・リテンション(NDR)は129%を達成。
・フリーキャッシュフロー(FCF)マージンは22%。
・年間契約額が10万ドル以上の顧客数は前年同期比で35%増加(前四半期は37%増加)。
・2025年度の売上高ガイダンスは700万ドル上方修正され、7億3500万ドルに。
・2025年度のNon-GAAP EBITガイダンスは2850万ドル増加し、3600万ドルに引き上げられました。
関連用語
エンドツーエンド:ソフトウェア開発やビジネスプロセスの最初から最後まで、すべての工程や機能を一貫して管理・実行することを指す。例えば、製品の企画から開発、テスト、デプロイ、運用までを一貫して行うことを意味する。
DevOps:ソフトウェアの開発(Development)と運用(Operations)を統合したプロセスや文化を指す。開発チームと運用チームが連携し、迅速かつ高品質なソフトウェアのリリースを目指すアプローチである。
ネット・ドル・リテンション(NDR):既存顧客からの売上がどれだけ維持・増加しているかを示す指標である。既存顧客が追加で購入した分や解約による減少分を反映して計算される。100%以上であれば、既存顧客からの売上が増加していることを示している。
ギットラボ(GTLB:GitLab)は2025年第1四半期に素晴らしい業績を発表しましたが、その後の株価は20%以上下落しました。この株価の下落は、高いバリュエーションのSaaS株全般に対する市場の懸念や、現在の不透明なマクロ経済状況に対する反応と一致しています。こうした慎重なマクロ観は、クラウドフレア(NET)を含む多くの企業経営陣も共有しています。
一方で、ギットラボの経営陣は異なる見解を示しており、販売サイクルやディスカウントの状況は前四半期と変わらないと述べました。また、129%のネット・ドル・リテンション(NDR)のうち半分以上がアカウント数の増加によるものであり、少なくとも開発者に関しては採用環境が堅調であることを示しています。経営陣は慎重なマクロ観を持ちながらも、今後の四半期で強い需要を予測しており、これが2025年度の売上予測引き上げに反映されています。
過去4四半期で、ギットラボは直近過去12カ月間(TTM)ベースでのフリーキャッシュフローマージンを-13%から13%に改善し、大幅な収益性の向上を達成しました。そのため、他の多くの企業と比べて成長鈍化の管理もうまく行われています。しかし、それでも株価は前年同期比で5%下落し、年初来で30%下落しています。現在のEV/GP(LTM)(企業価値 ÷ 直近過去12カ月間の粗利益)が10.8倍であることから、同社は長期投資に魅力的と考えられますが、アルファベット(GOOG/GOOGL)による買収の可能性が高まっているため、投資が短期で終わるリスクもあります。アルファベットはギットラボの持株比率を増やしており、マイクロソフト(MSFT)のAzureやアマゾン(AMZN)のAWSに対してさらなる影響力の低下を避けるため、ギットラボの買収が現実味を帯びています。ただし、このようなM&Aには多くの摩擦が伴う可能性があります。
ギットラボの将来的な持続的成長と利益率の向上には、主に2つの要因が挙げられます。1つ目は、企業セグメントへの浸透拡大(これにはアルファベットも特に関心を持っています)、2つ目は、同社のAI製品であるGitLab Duoの導入です。
企業向けの浸透拡大の進展は、企業向けに設計されたUltimateサブスクリプションプランからの売上高の割合に表れています。2025年第1四半期には46%を占め、2024年第4四半期の44%、そして前年同期の42%から増加しています。また、残存履行義務(RPO:Remaining Performance Obligations)の成長も企業の採用拡大を示しています。2025年第1四半期のRPOは48%成長し、前年同期の37%から増加しています。売上成長が減速する一方でRPOが成長していることは、同社が大規模な企業顧客と長期契約を結んでいることを示しており、こうしたコストに敏感でないセグメントへの浸透が、解約率の低下や高いNDRの維持に寄与すると考えられます。
もう一つの成長と利益率向上の要因であるGitLab Duoは、競合他社が無償で提供しているコパイロットとは異なり、積極的に生成AIの収益化を図っています。GitLab Duoは自然言語によるAIアシスタントで、コードの説明や提案、自動補完、脆弱性の説明、テストの生成などを開発者のIDE内で行うことができます。また、GitLab Duoは、開発者のコード作業をレビューするのに最適なレビュアーを、スキルや能力、過去のレビューに基づいて提案するという、非常に革新的で便利な機能も提供します。これは多くのDevOpsプラットフォームにはない、あるいは少なくともDuoほどの高度なレベルでは提供されていない機能です。同社はDuoの価格設定においても積極的で、GitLab Duo Proを1ユーザーあたり月額19ドルで提供しており、これがPremiumプラン(1ユーザーあたり月額29ドル)とセットで利用されることが多いと考えられます。つまり、同社は新しいAI製品を通じて、ユーザーあたりの支出をほぼ倍増させようとしているのです。
関連用語
GitLab Duo:ギットラボが提供するAIアシスタントである。開発者が使用する統合開発環境(IDE)内で、コードの説明、提案、自動補完、テスト生成などの支援を行う。また、最適なコードレビュー担当者を推薦する機能も備えている。
残存履行義務(RPO:Remaining Performance Obligations):企業が顧客と契約したが、まだ履行していないサービスや製品に関する義務のことである。RPOは将来の収益を予測する指標として用いられ、契約上の残りの義務を数値化して示すものである。
IDE(統合開発環境):ソフトウェア開発者が効率的にプログラムを作成するための統合されたツール群を提供する環境である。通常、コードエディタ、デバッガ、ビルドツール、テストツールなどが含まれており、開発作業を一つのプラットフォームで完結させることができる。
ギットラボ(GTLB:GitLab)のバリュエーションに関して
(出典:筆者作成)
企業向けの採用拡大とAIの収益化が、今後、ギットラボ(GTLB:GitLab)の成長や利益率にどのように影響するか注目しています。今後12ヶ月で、同社は優れた「Rule of X」企業として成長する可能性が高いと考えています。EV(企業価値)とFCF(フリーキャッシュフロー)から株式ベースの報酬を差し引いた指標はマイナスですが、EV/GP(企業価値 ÷ 直近過去12カ月間の粗利益)が10.9倍であることから、私たちはこの株に良好なバリューを見出しています。
また、DCF法に基づくバリュエーションによると、同社のの現在の株価は適正な範囲内で取引されています。弊社のDCFモデルに基づくと、同社の1株当たりの本質的価値は60.21ドルとなっており、現在の株価は47ドル程度となっていることから、弊社のDCFモデルに基づく目標株価対比では23.1%(上記グラフのDCF Val.discount)程度割安となっています。さらに、これは2026年から2029年にかけての年平均成長率(CAGR)を20%と仮定したもので、少し控えめかもしれません。現在進行中のAIの進展に伴い、同社が成長を加速させる可能性は十分にあり、特にTAM((獲得可能な最大市場規模)と比較的小さな売上高基盤を考えると、それが現実的に見えます。また、株価は過去6ヶ月で約40%下落しましたが、最近は安定しており、反転の兆しが見られます。総じて、この水準ではギットラボは長期投資に適した銘柄と考えています。
弊社のDCFモデルに基づくバリュエーションの詳細と株価予想は、下記リンク内のギットラボ(GTLB:GitLab)のシートにおける「Intrinsic value per share(1株当たりの本質的価値)」をご覧ください。
また、ギットラボに関するさらに詳しい分析は、下記のレポートをご覧ください。
上記テーブルにおける関連用語
※各用語の詳細な解説は、「【コンヴェクィティ:2024年度中間バリュエーション・レビュー】注目の米国テクノロジー企業の今後の株価見通しを徹底解説!」をご覧ください。
Rule of X (inc. NTM growth & LTM SBC):Rule of X(今後12カ月間の成長率と直近過去12カ月間のSBC含む)
LTM EV/ (FCF-SBC) :企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)
Financials / Valuation / Price Chg / Vol Chg:財務 / バリュエーション / 株価変動 / ボラティリティ変動
Rule of X (inc SBC):Rule of X(SBC含む)
EV/(FCF-SBC):企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)
EV/GP:企業価値 ÷ 直近過去12カ月間の粗利益
DCF Val. Discount:DCF法により算出されたバリュエーション対比でのディスカウント水準
Price Change:株価変動
Implied Vol:インプライド・ボラティリティ
Hist Vol:ヒストリカル・ボラティリティ
Implied Vol vs Hist Vol:インプライド・ボラティリティとヒストリカル・ボラティリティの差
・ギットラボ (GTLB)2025年1Q決算&アルファベット(グーグル)による買収の可能性と将来性を探る(Gitlab)
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