ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)とは?株価下落の理由とは?FDAによるセマグルチドに関する発表の影響に迫る!
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- 本稿では、足元で急落している注目の米国テレヘルス関連銘柄である「ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)とは?」という基礎的な内容から、足元の株価下落の理由を探るべく、FDAによるセマグルチドに関する発表の同社への影響、並びに、同社の将来性を詳しく解説していきます。
- 同社は過去1年間で400%以上の株価上昇を記録しましたが、最近の規制リスクによって25%以上急落しました。
- 同社はテレヘルス市場で成長を続けており、特にGLP-1治療の提供により収益源を多様化していましたが、規制の影響で販売が制限される可能性があります。
- 同社のバリュエーションは依然として高く、成長期待が過剰である可能性があるため、投資判断には慎重な分析が必要でしょう。
ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)の急落はチャンス?
1年以上前の2023年11月19日、私はヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)についての分析レポートをリリースしました。
当時、「テレヘルス界のテスラ」と表現しましたが、1年以上経った今では、その比較は以前ほど的を射ているとは言えません。しかし、レポートで述べたポイント自体は今でも有効です。
HIMSはこの1年で非常に興味深い動きを見せ、株価は400%以上上昇しました。すでに広く知られていた企業かもしれませんが、「物議を醸した」スーパーボウルのCMによって、さらに認知度が高まりました。
しかし、先週の値動きを見て同社に投資しようとした人の中には、大きな損失を被った方もいるかもしれません。というのも、同社にとって厳しいニュースが伝わった後、株価は1日で25%以上急落したためです。
HIMSの成長は、巧みなマーケティングと絶妙なタイミングによって支えられたものであり、まさに「ダビデとゴリアテ」のようなストーリーを持つ企業です。
では、本題に入りましょう。
✅ なぜ1年以上前にHIMSを「YOLOポートフォリオ」に加えたのか?
✅ なぜHIMSは過去1年間で400%以上も上昇したのか?
✅ 25%の急落後、「押し目買い」のチャンスなのか?
これらの疑問について、本稿では詳しく解説していきます。では、早速本題に入っていきましょう!
現在、私は下記の4つのポートフォリオを運用しています。そして、各ポートフォリオの詳細に関する分析レポートを定期的に共有しており、本稿の最後では各ポートフォリオに関する最新のレポートを共有しておりますので、本稿と併せてインベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧いただければと思います。
1️⃣ YOLOポートフォリオの詳細
2️⃣ EOW(エンド・オブ・ザ・ワールド)ポートフォリオの詳細
・ EOW(エンド・オブ・ザ・ワールド)ポートフォリオとは?
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加えて、私は自身のポートフォリオ動向、マクロ経済、並びに、注目のテクノロジー銘柄に関するレポートを毎週複数執筆しており、私のプロフィール上にてフォローしていただければ、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることが出来ます。
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私がヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)をポートフォリオに追加した理由
(出所:Seeking Alpha)
私はヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)を2023年11月にポートフォリオに追加し、その際に下記のレポートをリリースしています。
HIMSとはどのような企業か?当時、私は同社について次のように説明しました。
「ヒムズ&ハーズ・ヘルスは、大まかに分類するとテレヘルス企業である。同社は、ヘルスケアとヘルスケア関連製品を消費者に直接提供している。同社のウェブサイトにアクセスすれば、薬を処方してくれる医師と繋がることができ、その医師から定期的に薬が送られてくるのである。」
「最も人気のある治療薬では、抜け毛、ED、減量、メンタルヘルスのための薬が挙げられる。そして、同社は、当初より、男性をメイン顧客として焦点を当てている。」
HIMSの魅力は、成長しているものの十分にサービスが行き届いていない市場にアプローチしている点です。それが「男性の健康・ウェルネス」分野です。
多くの人にとって、医師の診察を受けることには心理的なハードルがあり、ときには社会的なスティグマ(偏見)が伴います。HIMSはこの課題を解決し、診察をスムーズに受けられる仕組みを提供しています。
また、同社の株式は、私が自身の運用するポートフォリオの1つである「YOLOポートフォリオ」において成長株を選定する際に重視するポイントを多く満たしていました。
※詳細はインベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧ください。
2019年にIPOを果たしたHIMSは、まだ比較的若い企業でありながら、将来的な成長が期待され、収益化への明確な道筋も描かれていました。
以下のスライドは、2023年第3四半期の決算資料からのものです。
(出所:ヒムズ・アンド・ハーズ・ヘルスの2023年度第3四半期決算資料)
言うまでもなく、HIMSは引き続き事業を着実に成長させてきましたが、2024年には医学の革新的な進展、GLP-1の登場によってさらに大きな恩恵を受けました。
ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)とは?
ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)は、セマグルチドを含むGLP-1治療の可能性を活用し、体重管理や代謝健康向けのテレヘルス事業を拡大してきました。これらの新しい治療法は、実際に体重減少を促し、血糖コントロールを改善する効果が実証されていることから、ますます人気が高まっています。
GLP-1治療をプラットフォームに統合することで、HIMSはより幅広い顧客層を獲得し、収益源の多様化にも成功しました。同社のデジタルファーストのアプローチにより、利用者はGLP-1治療薬を手軽かつプライバシーを守りながら入手できるため、治療の継続率や満足度の向上にもつながっています。
しかし、この事業には現在、法的・規制面での対立が生じています。WegovyやOzempicといったブランド医薬品を製造する大手製薬会社が、HIMSのジェネリック版の販売に異議を唱えているのです。
実際、最近の株価25%の急落も、この問題に直接関連しています。HIMSが提供していたジェネリック版のGLP-1治療薬が短縮リスト(販売許可リスト)から外されたことで、HIMSはこれらの薬を販売できなくなってしまいました。
この問題は、今もなおグレーゾーンにあります。個人的には、調剤薬局が安価なジェネリック薬を提供することを規制するのは理にかなわないと思います。命を救う可能性のある薬を、より手頃な価格で提供することは、多くの人が賛成することでしょう。とはいえ、大手製薬企業側も簡単には引き下がらないはずです。
ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)のバリュエーション:本当の価値は?
最近の高値では、ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)の株価は72ドルを超えていましたが、この評価は妥当なのでしょうか?2023年にDCFモデル(割引キャッシュフロー分析)を実施した際には、もっと控えめな目標株価に落ち着きました。
ここで視点を変えて考えてみましょう。現在の株価である約50ドルの価値が正当化されるには、どのような条件が必要でしょうか?
(出所:Alphaspread)
8%の割引率と3%の終端成長率を適用すると、かなり積極的な成長と利益率の拡大を織り込む必要があります。
例えば、HIMSの売上を2028年までに40億ドルまで成長させる必要があり、営業利益率もその頃には20%に拡大すると想定しています。
同社は、長期的にEBITDAマージン(税引前・利払い前・減価償却前利益率)を20〜30%の範囲にすることを目標としていますが、その達成にはかなり攻めたスケジュールが必要になります。
現在の売上予測はより控えめで、HIMSの2028年の収益は40億ドルではなく、30億ドル程度にとどまる見込みです。
(出所:Seeking Alpha)
ヒムズ・アンド・ハーズ・ヘルス(HIMS)は今が売り時なのか?
ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)には、弱気な見方を正当化しうるいくつかのリスクがあります。
競争優位性の欠如
ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)はテレヘルスおよびダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC)型の医療分野で事業を展開していますが、この市場は競争が激しく、大きな参入障壁がありません。同社のビジネスモデルは、処方薬やウェルネス商品をサブスクリプション型で提供するものであり、独自技術や特許に依存するものではなく、ブランド力やマーケティングに大きく依存しています。
競争相手には、大手薬局チェーン(CVS、Walgreens)、既存のテレヘルス事業者(Teladoc、Ro、Lemonaid Health)、さらにはデジタルサービスを拡充する従来型の医療機関も含まれます。こうした競争環境の中で、HIMSが長期的に価格決定力を維持し、顧客の忠誠心を確保し続けるのは容易ではありません。
規制リスクと調剤版セマグルチド販売の喪失
ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)の近年の成長を支えた大きな要因の一つは、調剤版セマグルチドの提供でした。これは、ノボノルディスクの人気GLP-1医薬品であるWegovyやOzempicの代替品として需要が高まっていました。しかし、FDA(米食品医薬品局)がセマグルチドの供給不足が解消されたと発表したことで、HIMSはこれらの調剤薬を合法的に販売できなくなる可能性があります。この収益源を失えば、同社の成長は大幅に鈍化するかもしれません。
さらに、テレヘルスによる処方、特に規制の厳しい薬剤や需要の高い医薬品に関しては、今後も規制強化のリスクがあります。監視の強化や法改正によって、HIMSが主要な薬の処方や販売を制限されることになれば、売上や顧客維持に影響を及ぼす可能性があります。
高いバリュエーションと過剰な成長期待
ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)の時価総額は110億ドルに達しており、過去1年間の売上が12億ドルであることを考えると、株価は割高に見えます。売上成長率は目覚ましいものの、利益水準はまだ控えめで、営業利益はわずか4300万ドルにとどまっています。
投資家は今後の大幅な成長を織り込んでいるものの、セマグルチド関連の追い風が弱まり、競争が激化する中で、その成長期待が実現しないリスクもあります。仮に売上成長が鈍化したり、顧客獲得コストの増加で利益率が縮小したりすれば、株価のバリュエーションが圧縮され、大きな調整が起こる可能性もあります。
ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)に対する結論
株式投資においては、利益を伸ばし続けることも大事ですが、一部を確定することも必要です。
私はヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)の今回の決算発表を前に、保有ポジションの50%を売却し、残りの50%はそのまま保持しています。
市場では何が起こるかわかりませんが、私はもう一段の売りが来る可能性の方が高いと考えています。一方で、株価がさらに上昇し、新高値を更新し続けるようであれば、追加で売却することも検討しています。
一方で、もし株価が40ドルを下回り、適切なテクニカルな買い場が形成されるようであれば、再び買い増しを検討したいと思います。
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