インテル(INTC)CEO退任の理由とは?2021年よりCEOを勤めるゲルシンガー氏の退任の真相と同社の将来性に迫る!
ウィリアム・ キーティング- 本稿では、昨日2024年12月2日に発表された、インテル(INTC)のパット・ゲルシンガーCEO退任の理由と同社の将来性を詳しく解説していきます。
- インテルのパット・ゲルシンガーCEOの辞任が発表されたものの、理由は明らかにされておらず、暫定共同CEO体制が導入されたが、取締役会による解任の可能性があると見ています。
- ゲルシンガー氏の在任中に掲げた「IDM 2.0」構想は評価が分かれ、製造競争力の回復やファウンドリー事業の進展はあるものの、多くの課題が残っているのが現状です。
- インテル取締役会は製品部門の強化を最優先課題として掲げ、新設された製品CEO職にミシェル・ジョンストン・ホルツハウス氏を任命しており、同社の今後の動向に注目が集まっています。
インテル(INTC)のパット・ゲルシンガーCEO退任の真相とは?
インテル(INTC)は、CEOのパット・ゲルシンガー氏が辞任することを発表しました。
詳細はこちらをご覧ください。
(日本語訳)インテル、パット・ゲルシンガーCEOの退任を発表
デビッド・ジンズナー氏とミシェル・ジョンストン・ホルツハウス氏が暫定共同CEOに就任。ホルツハウス氏は新設された「インテル製品CEO」にも任命され、フランク・イエリー氏が暫定執行会長に就任。
【カリフォルニア州サンタクララ】(ビジネスワイヤ)— インテル(NASDAQ: INTC)は本日、パット・ゲルシンガー氏が40年以上にわたる輝かしいキャリアを経て退任することを発表しました。また、同氏は2024年12月1日付で取締役会からも退くことになります。
(出所:インテルのプレスリリース)
プレスリリースによると、デビッド・ジンズナー氏とミシェル・ジョンストン・ホルツハウス氏が共同CEOに暫定的に任命され、ホルツハウス氏は新設された「インテル製品CEO」の役職にも就任したとのことです。
一体インテルに何が起きているのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
まず、市場の反応です。この発表は市場が開く1時間前に行われました。
発表直後、インテルの株価は約4%上昇したものの、引け値ベースではほぼ前日比フラットの着地となっています。
(出所:Yahoo Finance)
この驚きのニュースにもかかわらず、市場はゲルシンガー氏の突然の辞任を好意的に受け止めているようです。
ただし、中長期的に見ればそれが良い兆候とは限りません。
ゲルシンガー氏が2021年3月に初めて「IDM 2.0」構想を発表した際、私は下記のようにコメントしています。
「IDM 2.0は、現実的な判断と楽観的な期待が交錯した大胆な戦略です。最先端の製造をさらに外部委託するのは現実的で賢明な判断であり、他に選択肢がない中での大胆な一手と言えるでしょう。しかし、その一方で、外部委託先であるファウンドリーパートナーと競争しようとするのは、過去のインテルのファウンドリー事業と同様、失敗に終わる可能性が高い無謀な賭けです。」
そして、どうやら、私が3年半以上前に「無謀な賭け」と評した展開が、まさにその通り進んでいるようです。
プレスリリースを詳しく確認し、ゲルシンガー氏の辞任理由を探ってみましたが、具体的な説明は一切ありません。
ただ、彼の在任中の成果を称える言葉がいくつか並んでいるだけです。
(原文)On behalf of the board, I want to thank Pat for his many years of service and dedication to Intel across a long career in technology leadership. Pat spent his formative years at Intel, then returned at a critical time for the company in 2021. As a leader, Pat helped launch and revitalize process manufacturing by investing in state-of-the-art semiconductor manufacturing, while working tirelessly to drive innovation throughout the company.
(日本語訳)取締役会を代表して、長年にわたるインテルへの貢献と、テクノロジー業界でのリーダーシップに対し、パット氏に心より感謝申し上げます。彼はインテルでキャリアの基盤を築き、その後、2021年という会社にとって重要な時期に復帰しました。リーダーとして、最先端の半導体製造への投資を通じて製造プロセスの刷新と活性化を実現し、さらに全社的なイノベーションの推進に全力を注いでくれました。
興味深いのは、インテル取締役会の独立議長であるフランク・イエリー氏のコメントにおいて、ゲルシンガー氏がしばしば強調していた「5N4Y」戦略にもかかわらず、インテルをプロセス技術のリーダーシップ復活へと導いた点に触れられていないことです。
イエリー氏はさらに、「インテルにはまだ取り組むべき課題が数多く残されている」と続けています。
(原文)While we have made significant progress in regaining manufacturing competitiveness and building the capabilities to be a world-class foundry, we know that we have much more work to do at the company and are committed to restoring investor confidence.
(日本語訳)製造競争力の回復や、世界クラスのファウンドリーとしての能力構築において大きな進展を遂げてきましたが、まだ取り組むべき課題が多いことを理解しています。私たちは引き続き、投資家の信頼を取り戻すことに全力を尽くしてまいります。
そして、プレスリリースでの次のコメントは、重要な意味を持っています。
取締役会が最も重視しているのは、インテルの製品部門を立て直すことだと言わんばかりです。
(原文)As a board, we know first and foremost that we must put our product group at the center of all we do. Our customers demand this from us, and we will deliver for them. With MJ’s permanent elevation to CEO of Intel Products along with her interim co-CEO role of Intel, we are ensuring the product group will have the resources needed to deliver for our customers.
(日本語訳)取締役会として、まず第一に、私たちの活動の中心に製品部門を据えることが不可欠だと認識しています。これはお客様からの要求であり、私たちはその期待に応えていきます。ミシェル・ジョンストン氏をインテル製品部門のCEOに正式任命し、同時に暫定共同CEOとしての役割を担ってもらうことで、製品部門が顧客の期待に応えるために必要なリソースを確保できる体制を整えています。
インテル(INTC)のパット・ゲルシンガーCEO退任に関する結論
ゲルシンガー氏の辞任は理由が一切明らかにされておらず、インテル(INTC)の最近の動きの中でも極めて異例な出来事です。
実質的には取締役会による解任である可能性が高いと見られます。
また、暫定的な共同CEO体制には安心感を抱けず、さらにミシェル・ジョンストン・ホルツハウス氏がインテル製品部門のCEOに「正式」に昇格したという発表には、不吉な印象すら受けます。
そもそも、現在のような状況で「正式」という言葉を使う必要があるのか。
この表現には何を伝えようとしているのか、疑問が残ります。
結論として、インテルは現在、危機的な局面に直面しています。
これからどこへ向かうのか、引き続き注視していきましょう。
加えて、足元では、インテルがCHIPS法により助成金を獲得した背景と詳細、並びに、2024年10月31日に発表された最新の2024年第3四半期決算に関する詳細な分析レポートも執筆しております。
インテルへの理解を一層深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、併せてご覧いただければと思います。
CHIPS法による助成金に関して
2024年第3四半期決算に関して
加えて、インベストリンゴのアナリストであるダグラス・ オローリン氏とイアニス・ ゾルンパノス氏も、最新の決算発表後にインテルに関する下記のレポートを執筆しておりますので、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、ご覧いただければと思います。
ダグラス・ オローリン氏
イアニス・ ゾルンパノス
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