インテル(INTC)のCEOは交代!ゲルシンガーCEOの後任となる次期CEO候補の詳細を徹底解説!
ウィリアム・ キーティング- 本稿では、インテル(INTC)のCEOであるゲルシンガー氏の交代に伴い、後任の次期CEO候補に関するバックグラウンドを詳しく解説していきます。
- ゲルシンガー氏の退任により、インテル株は6%下落した一方で、TSMC(TSM)株は10%以上上昇しており、この事態はインテルの危機と再建戦略の不確実性を浮き彫りにしています。
- インテルの次期CEO候補として、トーマス・コールフィールド氏やリップ・ブー・タン氏、ステイシー・スミス氏が挙げられ、特にファウンドリーサービス(IFS)への注力やスピンアウト戦略が焦点となっています。
- スミス氏の豊富な経験と取締役会への復帰が注目される一方、今後のCEO選定がインテルの再建と市場信頼回復の鍵を握ると考えられています。
インテル(INTC)のパット・ゲルシンガーCEOの退任の株価への影響
インテル(INTC)のCEOであるパット・ゲルシンガー氏の突然の“退任”という衝撃が落ち着き始める中、株式市場ではインテル株がネガティブに反応しており、一晩で約6%も下落しています。
一方、皮肉なことにゲルシンガー氏の退任はTSMC(TSM)株にとって追い風となり、月曜日にこのニュースが報じられて以来、同社株は10%以上も上昇しています。
(出所:Yahoo Finance)
ここで何が起きているのかは明らかです。
ゲルシンガー氏の退任に伴う一時的な興奮が落ち着いた後、2つの現実が浮かび上がりました。
まず、インテルが深刻な危機に直面しており、再建戦略そのものが揺らいでいること。
次に、ゲルシンガー氏が指揮を執っていたとしても、プロセス技術や製造技術でTSMCに挑むチャンスはもはや失われたという事実です。
現在、注目は2つの重要なポイントに移っています。
そして、インテルの次期CEOが誰になるのか、そして新たなリーダーが直面する課題とは何か。
本稿では、これらの2点について詳しく解説していきます!
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インテル(INTC)の次期CEO候補に関して
まず、1点目のインテルの次期CEO次期CEOの有力候補を考える前に、重要な疑問を解決する必要があります。
それは、「次期CEOの具体的な役割は何なのか?」という点です。
この問いを投げかける理由は、インテルのプレスリリースによって、ミシェル・ジョンストン・ホルタウス(MJ)がインテル製品部門を今後も恒久的に統括することが明確に示されたためです。
(原文)As a board, we know first and foremost that we must put our product group at the center of all we do. Our customers demand this from us, and we will deliver for them. With MJ’s permanent elevation to CEO of Intel Products along with her interim co-CEO role of Intel, we are ensuring the product group will have the resources needed to deliver for our customers.
(日本語訳)取締役会として、私たちは何よりもまず、製品部門をすべての活動の中心に据えることが最優先であると認識しています。これはお客様からの強い要望であり、私たちは必ずその期待に応えます。MJがインテル製品部門のCEOに正式就任し、さらにインテル全体の共同暫定CEOを兼任することで、製品部門が必要なリソースを確保し、お客様の期待に応えるための体制を強化しています。
これにより、新しいCEOは主にインテルのファウンドリーサービス(IFS)に注力することになると考えられます。
そして、取締役会会長のフランク・イエアリー氏も、IFSにはまだ多くの課題が残されていることを認めています。
(原文)While we have made significant progress in regaining manufacturing competitiveness and building the capabilities to be a world-class foundry, we know that we have much more work to do at the company and are committed to restoring investor confidence.
(日本語訳)製造競争力の回復や、世界トップレベルのファウンドリーとしての能力構築において大きな進展を遂げてきましたが、まだ取り組むべき課題が多く残されていることを認識しています。私たちは引き続き努力を重ね、投資家の信頼回復に全力を注いでまいります。
ここで気になるのは、取締役会がIFS(インテル・ファウンドリー サービス)をどうするつもりなのか、という点です。
つまり、ゲルシンガー氏が計画していたように子会社化を進めるのか、それともスピンアウト(分社化)のような形を選ぶのか、ということです。
ゲルシンガー氏が退任したという事実は、後者の選択肢が有力である可能性を示しているようにも思えます。
もし後者を選ぶのであれば、取締役会が求めるのは、ファウンドリー業界で深い知識と経験を持つCEOなのか、それともファウンドリーのスピンアウトを実現した経験を持つCEOなのか、という点が注目されます。
この文脈で考えられる候補の1人が、グローバルファウンドリーズ(GFS)のCEOであるトーマス・コールフィールド氏です。
彼はAMD(AMD)の工場がスピンアウトされた当時には在籍していませんでした(2014年に入社)が、その後のスピンアウトの影響に対応する中で豊富な経験を積んでいます。
特に、AMDとグローバルファウンドリーズの間で交渉が長年にわたって続き、何度も見直されたウェハー供給契約には深く関わっており、最後の契約は2021年に更新されています。
その詳細については、こちらをご参照ください。
(日本語訳)AMDとグローバルファウンドリーズのウェハ供給契約が再び更新:2025年までで総額21億ドルに
(出所:AnandTech)
グローバルファウンドリーズのCEOとして約7年間活躍してきたコールフィールド氏は、新たな挑戦を求めている可能性があり、それがインテルであるかもしれません。
また、以前インテルの取締役を務め、ケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS)のCEOを務めたリップ・ブー・タン氏も候補としてよく名前が挙がっています。
最近ではこちらの記事でも取り上げられました。
(日本語訳)【独占情報】インテル、CEO候補として元取締役のリップ・ブー・タン氏を含む複数の候補者に接触か(関係者情報)
(出所:Reuters)
また、こちらのリンクは、彼がサウジアラビアで開催された投資フォーラムで講演した際の動画です。
動画の後半では、ファウンドリーが成功するには顧客からの完全な信頼を得ること、つまり顧客と競争しないことが重要だと述べています。
このメッセージは、まるでインテルに向けたもののように感じられます!
タン氏は非常に優れた技術リーダーであり、講演者としても高い評価を受けています。
また、多岐にわたる分野に興味を持ち、幅広い活動をしていますが、その時間には限りがあります。
彼はインテルの内情を知る立場にありながら、ほんの数か月前に辞任を選んだ人物でもあります。
その背景についてはこちらのリンクより確認できます。
(日本語訳)半導体業界のベテラン、リップ・ブー・タン氏がインテルの取締役を退任
(出所:Reuters)
私の直感では、彼がインテルのCEO職に興味を持つ可能性は低いように思えますが、実際のところは分かりません。
もう一人挙げたい候補が、ステイシー・スミス氏です。
彼は2018年にインテルを退職した元上級幹部で、その詳細についてはこちらをご覧ください。
(原文)Prior to his retirement in 2018, Smith spent nearly 30 years at Intel in a range of leadership roles. He served as the group president of manufacturing, operations and sales, leading the company’s global Technology and Manufacturing Group and its worldwide sales organization. He also spent more than a decade in finance leadership roles, including as chief financial officer. In addition, Smith held the role of chief information officer and was general manager of Intel Europe, Middle East and Africa, where he was responsible for sales and marketing across that region.
(日本語訳)スミス氏は2018年に退任するまでの約30年間、インテルでさまざまなリーダー職を歴任しました。製造、オペレーション、セールス部門のグループプレジデントとして、グローバルなテクノロジー&マニュファクチャリンググループや世界規模のセールス組織を率いました。また、最高財務責任者(CFO)を含む財務部門のリーダー職を10年以上務めたほか、最高情報責任者(CIO)や、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域のゼネラルマネージャーとして同地域のセールスとマーケティングを統括する役割も果たしました。
インテルを退職する以前、スミス氏は長らく将来のCEO候補として期待されていましたが、結局その機会は訪れませんでした。
そして2024年3月、彼はインテルの取締役会に加入しました。
(原文)Stacy Smith, executive chairman of Kioxia Corp. and chair of Autodesk Inc., joined Intel Corporation’s board of directors in March 2024. He is an independent director.
(日本語訳)ステイシー・スミス氏は、キオクシア株式会社のエグゼクティブチェアマン兼オートデスク社の会長を務めており、2024年3月にインテルの取締役会に参加しました。現在は独立取締役として活動しています。
スミス氏がインテルの取締役会に参加したのは、将来のCEO候補として事前に準備されていた可能性があるのでしょうか?
それは分かりません。
彼がインテルのIT部門を率いていた頃に何度もお会いしましたが、非常に尊敬されている人物で、優れたコミュニケーターであり、インテルについて知らないことはほとんどないと言えるでしょう。
挙げた3人の候補の中から選ぶとすれば、私ならステイシー・スミス氏を推します。
もっとも、私自身もこのポジションに挑戦しようかと考えています。
インテルの改善について多くの意見を持っていますし、社員証もまだ手元にあり、社員番号もしっかり覚えています。
それに、ゲルシンガー氏の報酬の半額でその仕事を引き受ける用意があります。
LinkedInでこの求人が出るのを注視していようと思います……。
冗談はさておき、次章では、インテルの次期CEOが直面する課題を詳しく解説していきます。
※続きは「インテル(INTC)は経営難?次期CEOが直面する課題を徹底解説!」をご覧いください。
その他のインテル(INTC)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、インテルのページにアクセスしていただければと思います。
また、足元、ゲルシンガーCEOの退任に関する下記の詳細な分析レポートも執筆しておりますので、インテルに対する理解をより一層深めるために、併せてご覧いただければと思います。
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