【Part 2】インテル(INTC)の取締役会のメンバーは半導体業界の経験が限定的?各メンバーの詳細な分析を通じて将来性に迫る!
ダグラス・ オローリン- 本稿は、注目の米国半導体企業であるインテル(INTC)のパット・ゲルシンガーCEOの退任と取締役会の詳細と役割、並びに、同社の将来性を詳細に分析した長編レポートとなります。
- 本稿は「Part 1:ゲルシンガーCEOの退任の背景」「Part 2:取締役会のメンバーの詳細」「Part 3:取締役会に対する私の見解」「Part 4:取締役会の失態」「Part 5:インテルの将来性」の5つの章で構成されています。
- そして、本稿【Part 2】では、インテルの取締役会の各メンバーの詳細を詳しく分析していきます。
- インテルの取締役会メンバーは、半導体業界の経験が限定的な者が多く、取締役の多くは他業界での豊富な経験や専門分野を持ちながらインテルの混乱期を経験しています。
- フランク・イヤリー氏をはじめとする一部の取締役は、M&Aや財務、ガバナンスなど特定の分野での専門知識を活かしつつ、取締役会の改革や運営に関与しています。
- 新任のメンバーを含む取締役会の構成は多様性があるが、半導体業界の専門性を持つメンバーは少数であり、業界特有の課題への対応において課題があるように見えます。
※「【Part 1】インテル(INTC)パット・ゲルシンガーCEO退任の背景とは?在任期間はわずか1386日と最短の理由とは?」の続き
前章ではインテル(INTC)のゲルシンガーCEOの退任の背景に関して詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
インテル(INTC)の取締役会の紹介
本稿ではインテル(INTC)取締役会についてお話しします。
各取締役の主要な特徴を理解することが重要です。
この分析では、以下の点に注目します:
・半導体業界での経験
・他社での職歴や業務経験
・インテルでの在任期間
それでは、取締役会のメンバーと担当する委員会を詳しく見ていきましょう。
(出所:インテルのHP)
フランク・イヤリー(取締役会会長兼M&A委員会委員長)
(出所:インテルのHP)
フランク・D・イヤリー氏は2009年からインテルの取締役を務め、2023年には取締役会会長に就任しました。
現在は投資会社ダーウィン・キャピタルのマネージングメンバーであり、かつては企業アドバイザリー会社のエグゼクティブチェアマンを務めていました。
彼の主な専門分野はM&A(企業買収・合併)であり、そのキャリアの中でシティグループで25年間にわたりM&Aに従事してきました。
「取引のプロ」として知られる彼は、2023年に取締役会会長に選ばれています。
また、彼はペイパル(PYPL)とモービルアイ(MBLY)の取締役も務めています。
ペイパルではシュルマン氏とドナホー氏がCEOを務めていた全期間にわたり取締役を務めており、特にシュルマン氏がペイパルを危機的状況に陥らせた時期にもその役割を果たしました。
半導体業界での経験は限定的なようですが、インテルの混乱期を取締役として経験し、さらにM&A委員会の委員長としても責任を果たしていました。
バーバラ・ノビック(ガバナンス・指名委員会委員長)
(出所:インテルのHP)
バーバラ・G・ノビック氏は、非常に重要な指名委員会のメンバーです。
彼女は1988年にブラックロック(BLK)を共同設立し、その実績だけでも目を引きます。
キャリアのほぼ全てをブラックロックで積み上げており、2022年12月にインテルの取締役会に加入しました。
半導体業界での経験はほとんどなく、取締役としての在任期間もまだ短いことから、現在の状況に関して彼女に責任があるとは言えないでしょう。
リサ・ラヴィッツォ=ムーリー(指名委員会副委員長)
(出所:インテルのHP)
リサ・ラヴィッツォ=ムーリー博士をご紹介します。
彼女は2018年3月にインテルの取締役会に加わりました。
ハーバード大学で医学博士号を取得し、現在はプロフェッショナルな取締役として活動しています。
GEヘルスケアやメルク(MRK)の取締役を務めるほか、これまでにGE、Better Therapeutics、Genworth Financial、Beckman Coulter、Hess Corporationなど数多くの企業で取締役を歴任しています。
彼女のキャリア全体はやや不明瞭な部分もありますが、現在はペンシルベニア大学で保健分野の教授を務める一方、アメリカ最大級のヘルスケア慈善団体のCEOを務めています。
半導体業界での経験は全くなく、2018年以降インテルで起きた混乱の一部を経験している人物です。
グレゴリー・スミス(監査・財務委員会委員長)
(出所:インテルのHP)
グレゴリー・D・スミス氏をご紹介します。
彼はボーイング(BA)の元CFO(最高財務責任者)兼運営部門のEVP(執行副社長)で、2017年からインテルの取締役を務めています。
また、2020年にはボーイングの暫定CEOを務めました。
さらに、アメリカン航空の取締役であり取締役会会長を務めるほか、シエラネバダスペースコーポレーションの取締役も兼任しています。
彼の半導体業界での経験はほぼ皆無で、ボーイングの混乱にも関与していた可能性があります。
また、インテルの混乱期全体を取締役として経験しており、ボーイングの暫定CEOを務めた経歴を考えると、取締役としての専念が十分ではない可能性も指摘されています。
ディオン・ワイスラー(人材・報酬委員会委員長)
(出所:インテルのHP)
ディオン・ワイスラー氏は2020年にインテルの取締役会に加入しました。
現在はBHP(BHP)やサーモフィッシャーの取締役も務めています。
彼は2015年から2019年までHPのCEOを務めており、応用科学(コンピュータ分野)の学士号を持っています。
半導体業界での経験はほとんどないものの、コンピューティング分野での一定の経験があり、比較的適任な候補者といえるでしょう。
また、彼が取締役に就任したのは比較的最近のことであり、インテルの混乱期の大部分には直接関与していません。
ジェームズ・ゴーツ
(出所:インテルのHP)
ジェームズ(ジム)・J・ゴーツ氏は、セコイアのパートナーとして活躍し、2019年11月にインテルの取締役会に加わりました。
これまでネットワーキング関連の企業で取締役を務めた経験があります。
彼は電気工学の学位を持ち、業界に一定の理解があると思われますが、完全な技術的バックグラウンドを持つわけではないようです。
取締役としての在任期間は比較的新しい方ですが、それでも在任期間は十分に長く、インテルの混乱に対してある程度の責任があると見なされる可能性があります。
アンドレア・ゴールドスミス
(出所:インテルのHP)
アンドレア・ゴールドスミス氏は2021年9月にインテルの取締役会に加わりました。
彼女はプリンストン大学で電気・コンピュータ工学の教授を務めており、CTOとしての経験を持つほか、高速無線ネットワーク関連を含む複数の技術系企業を共同設立した実績があります。
また、メドトロニック(MDT)やクラウンキャッスルの取締役も務めています。
取締役としての在任期間は比較的短いものの、半導体分野では十分な資格を備えた人物です。
インテルの混乱が起こる前に取締役会に加わったわけではないため、その問題に対して直接の責任はないと言えるでしょう。
アリッサ・ヘンリー
(出所:インテルのHP)
アリッサ・ヘンリー氏は2020年にインテルの取締役会に加わりました。
2023年2月から同年10月までの9カ月間、スクエア(現在のブロック:SQ)のCEOを務めていました。
それ以前にはアマゾン(AMZN)で勤務し、現在はコンフルエント(CFLT)の取締役を務めています。
また、以前はユニティ・ソフトウェア(U)の取締役も務めていました(少し微妙な経歴ですが)。
彼女は半導体分野での経験がなく、この業界においては未経験者と言えます。
また、わずか9カ月でCEO職を退任したことから、キャリアに関してあまり好印象を与えるものではないかもしれません。
オマー・イシュラク
(出所:インテルのHP)
元取締役会会長のオマー・イシュラク博士は、2023年1月に会長職を退任しました。
2017年に取締役としてインテルに加わり、2020年から2023年まで取締役会会長を務めました。
彼はメドトロニック(MDT)の元CEOで、2020年に引退しています。それ以前はGE(GE)でも活躍していました。
半導体業界での経験は全くなく、インテルの混乱期を通じて取締役として在籍し、さらに取締役会を変える力を持つ会長の立場にありました。
そのため、今回の混乱に対して大きな責任があると言えるでしょう。
彼は現在も取締役として在籍しています。
ツージェイ・キング・リュー
(出所:インテルのHP)
ツージェイ・キング・リュー氏は2016年にインテルの取締役会に加わりました。
彼女はカリフォルニア大学バークレー校で工学教授を務めており、現在はマックスリニア(MXL)の取締役も兼任しています。
半導体分野での豊富な知識と経験を持っていますが、業界での実務経験はありません。
また、インテルの混乱期全体にわたって取締役として在籍していました。
ステイシー・スミス
(出所:インテルのHP)
ステイシー・J・スミス氏は2024年3月にインテルの取締役会に加わり、リップ・ブー・タン氏の後任として選ばれました。
現在、キオクシアの取締役会会長およびオートデスク(ADSK)の取締役会会長を務めています。
半導体業界での経験を持つ数少ない取締役の一人ですが、その経験はインテル内部で培ったものに限られています。
彼は就任したばかりのため、現在の混乱に直接的な責任はありません。
ただし、彼の経歴には気になる点もあります。
Autodeskでは経営が不安定でアクティビスト投資家が関与しており、また、彼が取締役を務めるWolfspeedも経営がうまくいっていません。
そのため、経験豊富ではあるものの、他の経歴における実績には課題があるように見えます。
新任のエリック・メウリス氏とスティーブ・サンギ氏は非常に優れた技術的スキルを持っていますが、今回の分析では過去の取締役会に焦点を当てたいと思います。
では、次章では、インテルの取締役会に対する私の見解を詳しく解説していきます
※続きは「【Part 3】インテル(INTC)の取締役会は改革が必要?取締役会の今後の動向を徹底分析!」をご覧ください。
さらに、インベストリンゴの半導体セクター担当のアナリストであるウィリアム・ キーティング氏も、インテルが足元で受けた助成金に関する下記の詳細な分析レポートを執筆しております。
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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
📍半導体&テクノロジー担当
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