12/10/2024

【Part 3】インテル(INTC)の取締役会は改革が必要?取締役会の今後の動向を徹底分析!

the intel logo is shown on a white cubeダグラス・ オローリンダグラス・ オローリン
  • 本稿は、注目の米国半導体企業であるインテル(INTC)のパット・ゲルシンガーCEOの退任と取締役会の詳細と役割、並びに、同社の将来性を詳細に分析した長編レポートとなります。 
  • 本稿は「Part 1:ゲルシンガーCEOの退任の背景」「Part 2:取締役会のメンバーの詳細」「Part 3:取締役会に対する私の見解」「Part 4:取締役会の失態」「Part 5:インテルの将来性」の5つの章で構成されています。
  • そして、本稿【Part 3】では、インテルの取締役会に対する私の見解を詳しく解説していきます。
  • インテルの取締役会は半導体業界の専門知識に乏しいメンバーで構成されており、現取締役会メンバーにはインテルが苦境に陥った原因を作った責任者も含まれているため、改革が必要であるように見えます。 
  • 現在の取締役会は、同社の解体や資産売却を進める方向性を示しており、これは短期的な株主価値の向上を目的としていますが、長期的には業界や国にとって悪影響を及ぼす可能性があります。 
  • CEO交代や戦略の変更は、取締役会の方向性を反映したものであり、IDM 2.0のような長期ビジョンは放棄され、より短期的な利益追求にシフトしているとの見方が強まっています。

※「【Part 2】インテル(INTC)の取締役会のメンバーは半導体業界の経験が限定的?各メンバーの詳細な分析を通じて将来性に迫る!」の続き

前章ではインテル(INTC)の取締役会の各メンバーのバックグラウンド等の詳細な分析を解説しております。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。

インテル(INTC)の取締役会についての私の見解

現在のインテル(INTC)の取締役会はかなりひどい状態にあるように見えます。

ほとんどのメンバーが技術的な専門知識を持たず、インテルがこの状況に陥った原因を作った責任者の多くが今も取締役会に居座っています。

例えば、ボーイング(BA)の業務担当副社長が監査委員会のトップを務めており、この一連の問題が続く間ずっと取締役会に所属していた点は注目すべきです。

ボーイングは、おそらくインテルと同じくらい苦境に立たされているアメリカの大企業の一つです。

さらに、メドトロニック(MDT)関係者や医療分野のバックグラウンドを持つ人々、「職業的な理事」と思われる人物が多く含まれています。

半導体の専門家で構成された取締役会のほうが、今の取締役会よりはるかに適切に経営を担えるのではないでしょうか。

取締役会の最上層部にいるメンバー、つまりこの混乱を招いた責任者たちが、いまだに権力を握っています。

さらに、前会長までもが取締役会に留まっていますが、本来なら解任されるべきです。

そして、半導体業界の経験が圧倒的に不足している点も深刻です。

業界経験を持つ理事はたった一人で、その人も教授ではなく今年加わったばかり。

この取締役会はまさに「盲目の者が視力を持つ者を導いている」ような状況です。

これがゲルシンガーCEOの解任につながりましたが、そもそも取締役会自体が何をすべきか理解していないのです。

もちろん、ゲルシンガーCEOにも問題はありましたが、この取締役会から客観的なフィードバックを得るのは不可能だったでしょう。

さらに、新会長との間には興味深くも明らかな力関係が浮き彫りになっています。

私の見解では、新会長が2023年に就任したのは、ゲルシンガー氏がCEOに就任してからわずか2年後のこと。

そして、新たに就任した会長として「骨身を削る覚悟で患者を救う戦略をそのまま続けよう」と言っても、賢そうには聞こえません。

それよりも、「変革プランを提示する」ほうがはるかに賢く見えるものです。

フランク氏がM&A(合併・買収)の経験を持っていることを考えれば、彼のアプローチが常にM&Aに基づくものであるのは明らかです。

つまり、会社を分割して売却する時期が来たと判断したのでしょう。

実際、フランク氏は典型的な「ディールメーカー」として動き始めました。

いくつかの案件を模索し、クアルコム(QCOM)による買収の噂やアルテラ売却の話が出てきています。

取締役会が選択肢を探っているのは間違いありません。

しかし、これがゲルシンガーCEOにどのような影響を与えたのでしょうか?

その答えは、「Stratchery」のインタビューに隠されていると思います。

ぜひ、そのインタビューの抜粋をチェックしてみてください。

(原文)Pat Gelsinger: Let me give maybe three different answers to that question, and these become more intellectual as we go along. The first one was I wrote a strategy document for the board of directors and I said if you want to split the company in two, then you should hire a PE kind of guy to go do that, not me. My strategy is what’s become IDM 2.0 and I described it. So if you’re hiring me, that’s the strategy and 100% of the board asked me to be the CEO and supported the strategy I laid out, of which this is one of the pieces. So the first thing was all of that discussion happened before I took the job as the CEO, so there was no debate, no contemplation, et cetera, this is it.

(日本語訳)パット・ゲルシンガー:この質問には3つの異なる答え方があります。そして話が進むにつれて、少しずつ深くなっていきます。まず1つ目ですが、私は取締役会向けに戦略文書を作成し、その中でこう書きました。『もし会社を2つに分割したいのであれば、それを実行するのに適したプライベートエクイティ(PE)型の人材を雇うべきです。私はその役割には向いていません。』と。私の戦略は、現在のIDM 2.0の原型となるもので、その内容を取締役会に説明しました。そして、『もし私を採用するなら、この戦略を実行することになります』と伝えました。その結果、取締役会の全員が私をCEOとして迎えることを支持し、私が提示した戦略にも全面的な賛同を得ました。そして、この戦略の一部がまさにIDM 2.0なのです。つまり、私がCEOに就任する前に、これらの議論はすべて完了しており、そこには議論の余地も、迷いもありませんでした。これが決定事項だったのです。

戦略が上層部で変更され、現在の会長は「PE型の人物」が必要な時期だと考えています。

IDM 2.0という壮大なビジョンはもはや過去のもので、今は「取引」の時代だという判断です。

それを示す兆候はいくつもあります。

インテルは現在、アクティビスト投資家への対抗策を展開しており、取締役会が外部からの圧力を強く感じていることが分かります。

また、クアルコムやアルテラに関する買収の噂が明らかに意図的にリークされており、インテルが外部の買い手を探している可能性が高いことを示しています。

会長の戦略は、可能な限り多くの資産を売却することのようです。

ただし、混乱を招いているのは、最近のCHIPs法(半導体産業支援法)による資金提供には厳しい売却制限が課されている点です。

その一方で、企業解体の気配が漂う中、パットは公然と「私はそういうCEOではない」と発言しており、取締役会はついに「もう限界だ」と判断したのではないでしょうか。

取締役会はインテルを解体する方向に舵を切ったようです。

元理事4人が「会社を2つに分割すべきだ」という内容の意見記事を発表しました

明らかに、IDM 2.0を放棄する流れが加速しており、パットはその計画に適さない存在と見なされています。

正直に言えば、株主価値を考えるとインテルを解体するのは理にかなった選択だと思います。

例えば、アルテラを売却し、モービルアイの売却を加速させるのは明らかに妥当な動きです。

「部分価値の合計」という考え方も成り立つでしょう。

モービルアイやアルテラ、IFS(インテル・ファウンドリー・サービス)、設計部門といった資産は確かに価値があり、現在の株価を上回る可能性が高いと考えられます。

しかし、この結果は非常に短期的な視点に基づいており、長期的には大きな損失をもたらします。

短期的には「価値創造」の観点で正しい判断と見なされるかもしれませんが、長期的には株主、業界のパートナー、そして何よりアメリカにとって、これ以上に悪い結果は考えられません。

これは明らかに取締役会の失敗です。

ただ、疑問なのは、こうした取締役会メンバーを一体誰が選んでいるのかという点です。

次章では、インテルの取締役会の失態をより詳しく解説していきます。

※続きは「【Part 4】インテル(INTC)の取締役会の失態:Glass LewisやISS等の議決権行使助言会社が取締役会に与える影響とは?」をご覧ください。

さらに、インベストリンゴの半導体セクター担当のアナリストであるウィリアム・ キーティング氏も、インテルの倒産リスクに関する下記の詳細な分析レポートを執筆しております。

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その他のインテル(INTC)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、インテルのページにアクセスしていただければと思います

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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA

📍半導体&テクノロジー担当

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