【Part 5】インテル(INTC)の将来性は明るい?新体制下で想定されるシナリオを徹底解説!
ダグラス・ オローリン- 本稿は、注目の米国半導体企業であるインテル(INTC)のパット・ゲルシンガーCEOの退任と取締役会の詳細と役割、並びに、同社の将来性を詳細に分析した長編レポートとなります。
- 本稿は「Part 1:ゲルシンガーCEOの退任の背景」「Part 2:取締役会のメンバーの詳細」「Part 3:取締役会に対する私の見解」「Part 4:取締役会の失態」「Part 5:インテルの将来性」の5つの章で構成されています。
- そして、本稿【Part 5】では、インテルの今後の見通しに関して詳しく解説していきます。
- インテルの事業再編の一環として、アルテラやモービルアイの売却、ファウンドリー事業の縮小、IFSの分社化の可能性があり、これにより財務状況を改善できる可能性があります。
- 現在の深刻な財務状況から早急な資産売却とリストラが必要であるように見え、対応が遅れると倒産のリスクが高まる可能性もあるでしょう。
- 同社の取締役会には責任が問われており、企業文化の改革や経営陣の刷新を通じた抜本的な再建が求められているように見えます。
※「【Part 4】インテル(INTC)の取締役会の失態:Glass LewisやISS等の議決権行使助言会社が取締役会に与える影響とは?」の続き
前章ではインテル(INTC)の取締役会の失態、並びに、議決権行使助言会社が同社の取締役会に与える影響に関して詳しく解説しております。
本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。
インテル(INTC)の将来性
インテル(INTC)がこれからどのように進んでいくのか、とても興味深いですが、実際、最近、いくつか気になる動きがありました。
新しい取締役がゲルシンガー氏を引き戻そうとするのかどうか、少し気になるところです。
ただ、最近の雰囲気の変化を見る限り、取締役会が取引を進める方向に動いているのは明らかだと思います。
それでは、今後どんな展開がありそうなのか。
数か月前、この件について皮肉を込めてツイートしましたが、大半の内容は今でも通用すると思っています。
ただ、少し見方を変える部分もあります。
そして、面白いことに、これらの動きはインテルの株価にとってプラスに働くのではないかと考えています。
近い将来、いくつか明らかな変化が起きるのではないでしょうか。
私の想定するシナリオは下記の通りです。
1. インテルはアルテラを売却すると思います。これは現金化しやすい資産であり、売上高の10~12倍程度、もしくはそれ以上で売却できる可能性があります。
2. また、モービルアイ(MBLY)の持分はさらに早い段階で現金化されるでしょう。STマイクロエレクトロニクス(STM)がインテルの持分を迅速に買収する可能性が高いと考えています。
3. ファウンドリー事業については、キャッシュの消耗を抑えるために規模を縮小する方向に進むと思います。
4. IFS(Intel Foundry Services)は分社化され、グローバルファウンドリーズ(GFS)とAMD(AMD)が分離した際の形態に似た構造になるでしょう。ただし皮肉なことに、私はIFSがグローバルファウンドリーズのように非公開化するべきだと考えています。これは非常に困難な道のりとなり、公の場では厳しい局面を迎えるでしょう。もし可能であれば、大手ファブレス企業によるコンソーシアムが関与するか、さらに独創的な解決策を模索する必要があるかもしれません。
5. 設計(デザイン)事業は独立した形で存続することになり、最終的にはインテルで唯一上場企業として残る部分になる可能性があります。
6. 加えて、大規模なリストラが早急に行われると予想されます。インテルは現在、深刻な財務悪化に陥っており、今すぐに行動を起こさなければなりません。
具体的な数字を出してみましょう。
少々雑ではありますが、SOTP(サム・オブ・ザ・パーツ)分析のシートを作成しました。
SOTP分析とは、企業を事業ごとに分けて、それぞれの事業の価値を個別に評価し、それらを合算して企業全体の価値を算出する手法です。
この分析は、多角化企業や複数の異なる事業を持つ企業の評価に役立ちます。
事業単位での評価により、企業全体の潜在的価値をより正確に把握できるとされています。
そして、その結果、現時点でインテルにはかなりの上昇余地があると考えています。
仮定の詳細は下記のシートをご覧ください。
アルテラとモービルアイを売却して多額の資金を確保すれば、インテルがIFSを分社化するための狭い道筋が見えてくると思います。
(出所:筆者作成)
計算してみると、同社の分割を真剣に進めた場合の方が、企業価値はより高くなると考えています。
このプロセスの多くは、比較的短期間で実行可能だと思います。
ただし、問題は、IFSを分社化することで未来へのビジョンが大幅に縮小されることです。
18Aノードやその次の14Aノードにおけるウェハー生産量は、かなり小規模にとどまる可能性が高いです。
一方で、現状ではIFSの「宴会費」を賄うのはほぼ不可能だと思います。
私の考えでは、外部顧客を取り込むことができる小規模なファブを立ち上げ、そこでコンセプトを実証して再投資を進める方が、巨大なメガファブを目指すよりも良い結果を生む可能性があります。
何もないよりも、ニッチなファブを持つ方が断然無難であるように見えます。
また、分社化はインテルの企業文化にとってもプラスになると考えます。
ゲルシンガー氏が文化改革に尽力しているものの、インテルに染み付いた「傲慢さ」という古い体質はまだあらゆる部分に根付いており、分社化という形で一新することが、再出発のきっかけになるでしょう。
これは逆張りの意見かもしれませんが、状況が落ち着けば、インテルの保守的なSOTP評価が妥当性を持ち、短期的には「買い」として魅力的になる可能性があると思います。
ただし、現時点でインテルは「負のスパイラル」に陥っており、何かを完全に売却するだけでも株価に大きなプラスの影響を与えるでしょう。
しかし、これは時間との戦いです。
もしIDM戦略を放棄するのであれば、迅速な行動が必要だと見ています。
株価を持ち直すためには、今すぐにでも資産を売却しなければならないでしょう。
そうしない場合、IFSのキャッシュ消耗はますます増大し、インテルはさらなる借金を背負い込むことになるでしょう。
インテルは今、岐路に立っているように見えます。
そして、ここで声を大にして言わなければならない時が来たと思います。
かつてのインテルはもはや終わりを迎え、ゲルシンガー氏の解任がその事実を最終的に認めた形となりました。
どんなに正しい選択をしたとしても、早急に行動を起こさなければ、SOTP評価どころか倒産の危機について語らなければならない状況になるでしょう。
事態は一刻を争うものであり、取締役会の責任は非常に重いように見えます。
新しく採用された人材には期待していますが、インテルにとって「良い結果」を得るにはもはや手遅れです。
今求められているのは、患者の命を救うための行動であり、そのためには厳しく、避けられない決断を下す必要があります。
この状況を招いた責任者を忘れてはいけません。
現在インテルの取締役会にいるメンバーの中で、フランク・イヤリー氏、リサ・ラヴィッツォ=ムーリー氏、グレゴリー・スミス氏、オマール・イシュラク氏、ツージャイ・キング・リウ氏は、長期間その地位にいた以上、この事態の責任を免れません。
名前を挙げて批判するだけでは足りませんが、彼ら全員が解任されるべきだと見ています。
インテルの崩壊の責任は、間違いなく彼らにあります。
ノイス氏、ムーア氏、そしてグローブ氏が築き上げたインテルという会社は、今やその最後の章を迎えようとしているように見えます。
たとえその一部が生き残ったとしても、それが良い結果と言えるでしょう。
ここまで追い込まれてしまったのは、本当に悲しいことです。
本稿は以上となります。
加えて、直近の2024年第3四半期決算後に下記の分析レポートも執筆しておりますので、併せてご覧いただければと思います。
さらに、インベストリンゴの半導体セクター担当のアナリストであるウィリアム・ キーティング氏も、インテルに関する下記の詳細な分析レポートを執筆しております。
もし関心がございましたら、インベストリンゴのプラットフォーム上より、併せてご覧いただければと思います。
次期CEOに関して
次期CEOが直面する課題
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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
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