インテル(INTC)ジンスナー暫定CEOの発言の分析を通じて、新体制下の製品重視のスタンスとアウトソーシング戦略に迫る!
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- 本稿では、インテル(INTC)ジンスナー暫定CEOのバークレイズ・グローバル・テクノロジー・カンファレンスにおける発言の分析を通じて、インテルの新体制下での製品重視のスタンスとアウトソーシング戦略を詳しく解説していきます。
- インテルの暫定共同CEOであるジンスナー氏とホルツハウス氏が、課題への一致した認識を示しつつ「レーザーフォーカス」を強調し、製品重視と投資活用を目指す姿勢を明確にしました。
- イベントでは、TSMCの活用やアウトソーシング戦略が注目され、競争力を高めるために最適な製造プロセスを選択する柔軟な姿勢が示されました。
- インテルは製品ロードマップの強化と市場競争力の向上に注力しており、新体制の下での方向性がより具体的に示されました。
インテル(INTC)のジンスナー暫定CEOがバークレイズ・グローバル・テクノロジー・カンファレンスに出席
インテル(INTC)の暫定共同CEOであるデビッド・ジンスナー氏とミシェル・ジョンストン・ホルツハウス(MJ)氏は、12月12日に開催された「第22回バークレイズ・グローバルテクノロジーカンファレンス」に揃って出席しました。
12月2日に新しい役職に就任して以来、2人がそろって公の場に登場するのはこれが初めてです。
同社が抱える課題に対する認識が非常に一致している様子が伺え、その姿から一部では元CEOのゲルシンガー氏の突然の退任に2人が関与しているのではないかという推測も生まれています。
イベント中、特に印象的だったのはキャッチフレーズ「laser focused(レーザーフォーカス)」で、合計5回も繰り返されていました。
(原文)we're going to be laser focused on how do we take advantage of the investments we made how do we bring customers into those fabs and start to see wafers fill them
(日本語訳)これまで行ってきた投資をどう活かすか、顧客をどのようにファブに引き込み、ウェハーの生産を拡大していくかに全力で取り組んでいきます。
(原文)being really laser focused on building the right products to regain share we've two products coming with Clearwater forest and DMR
(日本語訳)シェアを取り戻すために、最適な製品作りに徹底的に注力しています。その中で、Clearwater ForestとDMRという2つの製品を開発中です。
(原文)we're laser focused was obviously made very large investments in our fab footprint and we need it much better ROI for the investment that we've made so we're going to be laser focused on how do we take advantage of that
(日本語訳)これまでファブの拡張に大規模な投資を行ってきましたが、その投資からより高いリターンを得ることが求められています。そのため、これらの投資をどのように最大限に活用するかに全力を注いでいます。
ここで暗に示されているのは、ゲルシンガー氏のリーダーシップの下では、同社がこうした重要な細部に十分な集中を欠いていたという点です。
これは、彼がCEOに就任した直後に、「グローブ流の徹底的な実行力を復活させる」と約束したにもかかわらず起きたことです。
因みに、グローブ流とはインテルの元CEOであり、インテルの共同創業者であるアンディ・グローブ(Andrew Grove) 氏を指しています。
グローブ氏はインテルを世界的な半導体メーカーに成長させた実業家であり、卓越したリーダーシップと革新的な経営哲学で知られています。
全体的に見て、先週のバークレイズセッションは、先週のUBSセッションよりも多くの価値がありました。
ジンスナー氏は、ファウンドリー事業の完全分離について、以前の『戦略に変更なし』という立場よりも慎重な発言をしていました。
一方で、MJ氏は新たに発足したプロダクトグループの一部であるデータセンター部門が抱える課題について率直に語り、明快な見解を示しました。
それでは、さらに掘り下げていきましょう。
インテル(INTC)の製品重視のスタンス
取締役会が発表したゲルシンガー氏の“退任”に関するプレスリリースや、先週のデイブ・ジンスナー氏の発言からも明らかなように、インテル(INTC)は製品重視の姿勢を一層強めています。
MJは、“体制変更”によって何が変わるのかという質問に対し、冒頭の発言でこのポイントにストレートに触れました。
(原文)I think Dave and I will both tell you that as the CEO of Intel products we're going to invest more in products be focused on making sure that we shore up those roadmaps so that we are more competitive in a lot of the growth markets than we have been historically
(日本語訳)デイブと私は声を揃えてお伝えすると思いますが、インテル製品の責任者として、製品への投資をさらに強化し、ロードマップを確実に固めることに注力していきます。それによって、これまで以上に多くの成長市場で競争力を高めることを目指します。
ここでMJが言及しているのは、彼女自身が多大な貢献を認めていた以前のクライアント・コンピューティング・グループのことではないと考えています。
(原文)I feel good about where we are particularly on the client side but you know I'm my say do ratio for my customers I want it to be perfect like I ran sales for a long time
(日本語訳)特にクライアント分野では、現状に対してかなり手応えを感じています。ただ、私は長年セールスを担当してきたので、顧客に約束したことを確実に実行する“言行一致”を完璧にしたいと考えています。
(原文)on the client side our say do ratio for the last four years has been very good we've met our schedules we met our performance so you can expect that to continue but everybody is really excited about the PC market
(日本語訳)クライアント分野では、この4年間で約束したことを確実に実行してきました。スケジュールもパフォーマンスも順調に達成しており、今後もその流れが続くと考えています。また、PC市場に対しても多くの人が大きな期待を抱いています。
インテルがビジネス運営を表現するために次々と新しいフレーズを生み出す才能には本当に驚かされます。最近の例が『言行一致率(Say Do Ratio)』です。
このフレーズ、これから頻繁に耳にすることになると思うので、心の準備をしておきましょう!
インテル(INTC)のアウトソーシング戦略
MJが正式にインテル(INTC)のプロダクトグループのCEOに就任したことで、ウェハーを外部委託する(TSMC:TSM)のか、内部で生産する(IFS:インテルが提供する半導体の受託製造サービス)のかという判断における彼女の考えが特に注目されています。
彼女がCCG(クライアント・コンピューティング・グループ)を率いていた際のアプローチについては、次のように説明されています。
(原文)When I was running CCG the way I made those decisions is really looking at okay you have a market window that you have to hit in client right you have your holiday and you have your commercial buying cycle so your products have to hit those windows obviously we have a very broad set of product portfolio and you need a variety of price points and a variety of performance price points as well and so you look at those and you look at what Intel foundry can offer and you look at what tsmc can offer and what I found was at times picking TSMC was the right decision because where I could land on their performance price curve made the most sense for the ASP that I could get at the time and then other times it made sense to use Intel foundry.
(日本語訳)CCGを担当していた時、意思決定をする際には、まず市場のタイミングを見極めることが非常に重要でした。クライアント向け製品の場合、ホリデーシーズンや商業購買サイクルに合わせる必要があります。そのため、製品はそのタイミングに確実に投入できるようにしなければなりません。また、幅広い製品ポートフォリオを持つ中で、多様な価格帯や性能に応じた価格帯を揃えることも必要でした。そこで、インテルのファウンドリーが提供できるものと、TSMCが提供できるものを比較しながら検討しました。結果として、TSMCを選ぶ方が適切な場合もありました。特に、TSMCの性能と価格のバランスが、その時点で達成可能な平均販売価格(ASP)に最も適していた場合です。一方で、状況によってはインテルのファウンドリーを選ぶ方が合理的な場合もありました。
インテルは以前から、来年リリース予定のPanther Lake製品を18Aプロセスで製造する計画を決めていました。
興味深いことに、MJはこの計画が引き続き進行中であることを確認する際、すぐにTSMCを絶賛するコメントに移りました。
(原文)Panther Lake which is our 2025 product which will land on 18A and you know this is the first time that we're customers zero in a long time on an Intel process…. but we're quite happy with the decision to be on 18A but also say TSMC has been a fantastic foundry partner they're very easy to work with and you know myself being very customer-oriented I would tell everybody at Intel every day is that they are the benchmarks for what's expected in the industry and so I feel like working with Intel foundry I can continue to push the bar to make us more competitive and set expectations for what it means to be a world class foundry.
(日本語訳)Panther Lakeは2025年に投入予定の製品で、18Aプロセスで製造されます。インテル自身がこのプロセスで『カスタマーゼロ』となるのは本当に久しぶりのことです。18Aプロセスを採用する決定には非常に満足していますが、同時にTSMCが素晴らしいファウンドリーパートナーであることも強調したいと思います。彼らとの連携は非常にスムーズで、私自身が常に顧客志向を大切にしている立場から見ても、TSMCは業界で求められる基準を体現していると日々感じています。この経験を活かし、インテルのファウンドリー事業でも基準をさらに引き上げ、より競争力を高めていくことで、世界水準のファウンドリーとしての期待に応えられると確信しています。
彼女は明確に、インテルのファウンドリーがまだ世界水準に達しておらず、TSMCを模範として見習う必要があることを強調しています。
その後の議論で、アウトソーシングに関する質問が再び取り上げられました。
今回は、新しいCEOが就任する前に、共同暫定CEOとしてデータセンター製品を含むさらなるアウトソーシングを進める自信があるかどうかという内容でした。
これに対して、MJは迅速かつ明確に答えました。
(原文)I will feel very comfortable with it because at the end of the day bluntly I can be attached to my Intel foundry but if I have a losing product that doesn't really help. I need to build world-class products that my customers are excited about and they want to buy and if that means landing something on our data center roadmap on TSMC I'll do it do
(日本語訳)その判断には非常に自信を持っています。率直に言えば、インテルのファウンドリーに愛着を持つことはできますが、それによって競争力のない製品を作ってしまうのでは意味がありません。重要なのは、顧客が魅力を感じ、購入したいと思うような世界トップレベルの製品を作ることです。そのために、データセンターのロードマップ上の製品をTSMCで製造する必要があるなら、迷わずそうするつもりです。
以上からも、近いうちにインテルのクライアント製品に続いて、データセンター製品もTSMCで製造されるようになるのは確実と言っていいでしょう。
次章では、インテルの18Aの進捗状況、並びに、AI関連ビジネスにおけるロードマップの詳細を解説していきます。
※続きは「インテル(INTC)の18Aとは?ジンスナー暫定CEOの発言の分析を通じて、同社の18AとAIビジネスの将来性に迫る!」をご覧ください。
また、直近、ゲルシンガー氏の退任に伴い、下記の分析レポートも執筆しておりますので、インテルへの理解を一層深めるために、インベストリンゴのプラットフォーム上より併せてご覧いただければと思います。
次期CEOに関して
次期CEOが直面する課題
加えて、インベストリンゴのアナリストであるダグラス・ オローリン氏も、Part 1からPart 5までの5部作の下記の長編レポートにおいて、ゲルシンガー氏のCEO退任の影響とインテルの今後の見通しに関する詳細な分析を解説しております。
そこで、こちらもレポートも併せてご覧いただければと思います。
その他のインテル(INTC)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、インテルのページにアクセスしていただければと思います。
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