02/08/2025

【半導体】インテル(INTC)の配当推移:配当復活はいつなのか?インテルの決算が赤字な理由と併せて徹底解説!

the intel logo is shown on a white cubeイアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるインテル(INTC:予想配当利回り0%・配当性向0%・1株当たり配当金0ドル)の2025年1月30日に発表された最新の2024年度第4四半期決算と配当推移の分析を通じて、「今後の配当復活はいつなのか?」という点に焦点を当てながら、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • 同社は半導体市場で重要な役割を果たしているものの、売上成長の鈍化や利益率の低下が課題となっています。特に、2024年第4四半期の粗利益率は32.66%と、過去5年の中央値42.61%を大きく下回っています。
  • 配当については、過去5年間の成長率が-19.90%と大幅に減少し、現在の予想配当利回りは0%となっています。財務状況を考慮すると、今後の増配は限定的であり、株主還元よりも成長投資が優先される見込みです。
  • バリュエーション面では、現在の株価は一株当たり本質的価値を上回り、安全マージンがマイナスとなっていることから、割高感が指摘されています。今後の業績改善が求められる中で、慎重な投資判断が必要とされるでしょう。

インテル(INTC)の概要


セクター:半導体

現在の株価:19ドル

時価総額:827ドル

過去5年間の配当成長率:-19.90%

前回配当落ち日:2024年8月7日

前回配当支払い日:2024年9月1日

予想配当利回り:0.00%

過去5年間の売上高成長率-7.20%

過去10年間の売上高成長率:2.60%


関連用語

安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。

売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。


足元の株価推移

(出所:筆者作成)

インテル(INTC:予想配当利回り0・配当性向0%・1株当たり配当金0ドル)は、世界有数の半導体メーカーであり、主にマイクロプロセッサの設計・製造を手掛けています。PCおよびデータセンター市場向けのx86アーキテクチャを採用したプロセッサで高い市場シェアを誇り、半導体業界を牽引する企業の一つです。加えて、通信インフラ、自動車、IoT(モノのインターネット)など、新たな分野にも積極的に進出し、技術の多様化を進めています。近年では、自社の製造能力を活かし、ファウンドリ事業にも注力し、他社向けの半導体製造サービスを展開しています。

財務面では、売上成長の鈍化と利益率の低下が課題となっており、2024年第4四半期の粗利益率は32.66%と、過去5年の中央値(42.61%)を下回る水準です。また、ROIC(投下資本利益率)は-5.08%と、WACC(加重平均資本コスト)の9.54%を大きく下回っており、資本効率の改善が求められています。

配当については、5年成長率が-19.90%、3年成長率が-35.40%と大幅に減少しており、現在の予想配当利回りは0.00%と、投資家にとっての魅力が低下しています。財務状況を考慮すると、今後も配当の増加は限定的であり、株主還元よりも成長戦略への投資が優先される可能性が高いと考えられます。

そして、同社は2025130日に2024年第4四半期決算を発表しており、本稿では同社の最新の決算と財務パフォーマンス、並びに配当推移を詳しく分析していきます。


また、私はバリュー・インカム関連、並びに、テクノロジー銘柄に関するレポートを毎週複数執筆しており、私のプロフィール上にてフォローをしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることができます。

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インテル(INTC)の最新の2024年度第4四半期決算発表に関して

インテル(INTC)は、2025130日に発表された最新の2024年度第4四半期決算において、1株当たり利益(EPS、特別項目を除く)を0.13ドルと発表しました。これは、第3四半期の-0.46ドルから回復したものの、前年同期の0.54ドルには届きませんでした。また、希薄化後EPSは-0.03ドルの赤字となり、第3四半期の-3.88ドルから大幅に改善したものの、前年同期の0.63ドルからは減少しました。1株当たり売上高は3.302ドルとなり、第3四半期の3.095ドルから増加しましたが、前年同期の3.576ドルには届きませんでした。

さらに、過去5年間および過去10年間の年間EPS(特別項目を除く)の年平均成長率(CAGR)は0%と停滞している一方で、業界予測では、今後10年間の年間成長率は6%と見込まれています。

加えて、2024年第4四半期の粗利益率は32.66%で、過去5年の中央値である42.61%を下回り、10年間の最高値62.65%から大幅に低下しています。この利益率の圧迫は、競争が激化する半導体市場における課題を反映しています。

また、直近1年間の自社株買い比率は-2.40%とマイナスとなり、発行済株式数が増加したことを示しています。一方で、過去10年間の自社株買い比率は1.50%で、年間1.5%の株式が買い戻されていたことと対照的です。そのため、足元では自社株買いの不足により、発行株式数の減少を通じたEPSの押し上げ効果が得られていません。

今後の見通しとしては、次の会計年度のEPSは-0.322ドルと予測されており、その翌年には0.292ドルとプラスに転じる見込みです。売上高は、2025年末までに535億6,341万ドルに成長し、2027年には602億5,667万ドルに達すると予測されています。

次回の決算発表は2025年4月25日に予定されており、インテルの戦略的取り組みや市場でのポジショニングに関するさらなる情報が明らかとなるでしょう。

非経常損益項目を除くベースでのEPS

(年間ベース:直近4四半期の合計値

(出所:筆者作成)


関連用語

EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。

非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。

希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。

1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。

粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。

自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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インテル(INTC)の財務パフォーマンスに関して

インテル(INTCの財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。

同社のROICとWACCを見ると、企業価値の創出に課題を抱えていることが分かります。過去5年間の中央値では、ROICは1.80%にとどまり、WACCの6.76%を大きく下回っています。このことは、資本コストを上回るリターンを生み出せておらず、株主価値を創出するどころか、むしろ減少させていることを示唆しています。

さらに、現在のROICは-5.08%で、WACCの9.54%を大きく下回っており、投資効率の低さを示しています。過去10年間でROICが20.11%に達した時期もありましたが、現在はマイナス圏にあることから、経営上の課題が浮き彫りとなっています。

インテルがROICをWACC以上に引き上げられない状況が続けば、資本配分の効率改善が必要となります。そのため、戦略の見直しを行い、投資家の信頼を取り戻すことが求められます。

投下資本利益率(ROIC)加重平均資本コスト(WACC)の比較

(出所:筆者作成)


関連用語

総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。

自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。

投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。

ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。

加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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インテル(INTC)の配当に関して

インテル(INTC)の配当成長率は、過去5年間で-19.90%、過去3年間で-35.40%と大幅に減少しています。これは、市場環境の変化に対応し、戦略的転換を図るために資金を温存していることが主な要因です。現在は配当金が支払われていないことから、予想配当利回りは0.00%であり、当面の間、配当支払いは見込まれていません。結果、配当性向も0%となっています。

また、半導体セクターでは、成長余地が大きいことから高い配当利回りが期待される傾向にあります。そのため、インテルの現在の配当戦略は、投資家にとって魅力が低いものとなっています。

負債と利益の比率を示すEBITDA有利子負債倍率は41.57倍と非常に高く、業界の標準を大きく上回っています。このことは、財務リスクの高さを示しており、配当を増やす余地が限られる可能性を意味しています。

基本的には、EBITDA有利子負債倍率は2倍以下であれば財務リスクが低く、4倍以上であれば財務リスクが高いことを示すとされています。

以上より、インテルは事業への再投資と株主還元のバランスを模索していく必要があると言えるでしょう。

予想配当利回り:0%

配当性向:0%

配当カバレッジ・レシオ:-11.67倍

過去5年間の配当成長率: -19.90%

EBITDA有利子負債倍率:41.57倍

DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金

(出所:筆者作成)

Dividend Yield:予想配当利回り

(出所:筆者作成)

Dividend Payout:配当性向

(出所:筆者作成)


関連用語

1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。

配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。

予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。

配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。

EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。

配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。

配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。

配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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インテル(INTC)のバリュエーションに関して

インテル(INTCの現在の株価は19.1ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である8.96ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-113.17%となっていることから、割高である可能性が示唆されています。これは、投資家にとって下落リスクに対するバッファがなく、株価が過大評価されている可能性があることを意味します。

また、予想PER(株価収益率)は37.97倍と、過去10年間の中央値13.41倍を大きく上回っており、今後の収益予測を考慮しても割高に取引されていることが分かります。EV/EBITDA倍率はTTM(直近12か月)ベースで97.78倍となっており、過去10年間の中央値7.30倍と比較して著しく高い水準であり、これは、現在の業績課題や、市場における過剰な期待を反映している可能性があります。

PBR(株価純資産倍率)は0.83倍で、過去10年間の中央値2.56倍を下回っています。これは、市場がインテルの資産価値を過去よりも低く評価していることを示唆しており、将来の成長性に対する懸念が背景にあると考えられます。

一方で、PSR(株価売上高倍率)は1.54倍と、過去10年間の最低水準1.46倍に近づいており、売上高ベースでは割安に見える部分もあります。しかし、同社のフリーキャッシュフロー(FCF)はゼロであり、自由に使える資金がないことを示しています。これは、投資家にとって大きな懸念材料となるでしょう。

市場のアナリストの市場見通しも慎重な姿勢を示しており、目標株価は過去数か月で引き下げられています。このため、一部の指標では割安と見られる可能性があるものの、現在のバリュエーション指標と市場のセンチメントを総合的に考慮すると、インテル株の投資には慎重な判断が求められるでしょう。

(出所:筆者作成)


上記グラフにおける関連用語

Price:現在の株価

Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値

DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価

DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価

Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価

Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価

赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値


関連用語

実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。

株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。

株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。

EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。

PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。

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インテル(INTC)のリスクとリターンに関して

インテル(INTCのリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。

まず、同社は、投資家にとっていくつかの財務的リスクを抱えています。過去3年間で総額132億ドルの長期負債を発行しており、借入金への依存度が高まっています。これは、将来の収益を圧迫する要因となる可能性があります。

また、過去12四半期のうち、58%の期間で営業利益が赤字となっており、安定的な収益を確保できていません。さらに、財務の健全性を示すピオトロスキーのFスコアは3と低く、事業運営に課題があることを示唆しています。加えて、粗利益率は年率-11.3%で低下しており、過去5年間の1株当たり売上高の減少傾向も続いています。これらの要因から、インテルは価格競争力の維持や、売上成長の確保に苦戦していることが分かります。

財務安定性の指標であるアルトマンのZスコアは1.07と、デフォルト(債務不履行)のリスクが高い「破綻ゾーン」に位置しています。これは、今後2年以内に倒産する可能性がある企業と分類される水準です。

一方で、現在の株価は過去10年間の最安値圏にあり、PSR(株価売上高倍率倍)も歴史的な低水準にあるため、割安感を感じる投資家もいるかもしれません。また、財務不正リスクを示すベニッシュのMスコアは-2.92となっており、財務操作の可能性は低いと見られています。しかし、こうした安値の魅力だけでなく、財務的な不安定さも十分に考慮する必要があります。


関連用語

財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。

アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。

ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。

ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。

ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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インテル(INTC)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して

過去1年間のインテル(INTC)のインサイダー(経営陣や取締役)取引を見ると、慎重な姿勢がうかがえます。直近12か月では、取締役や経営陣による同社株式の買い注文が4件、売り注文が1件あり、ある程度の自信を示しているように見えます。しかし、直近3か月では買い注文はゼロ、売り注文が1件と、慎重な姿勢が強まっています。これは、現在の株価水準では利益確定やリスク回避を意識している可能性があります。

ただし、インサイダーによる同社株式の保有比率は0.52%と非常に低く、経営陣が株主利益と強く連動していない可能性があります。一方で、プロの機関投資家の保有比率は59.39%と高く、大手ファンドが株価の動向に強い影響を与えていることが分かります。

このように、インテルのインサイダー取引は、全体として慎重な楽観と保守的な売却の混在が見られ、投資家の間でも不安定な見方があることがうかがえます。

インサイダー(内部関係者)による売買

(出所:筆者作成)


関連用語

インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。

機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。


インテル(INTC)の流動性に関して

インテル(INTC)の流動性は非常に高く、過去2か月の1日平均取引量は68,951,063株に達しています。これは市場の関心が高いことを示しており、大口取引でも株価への影響が限定的であることを意味します。直近営業日の1日平均取引量は52,354,123株と、やや減少していますが、それでも高い流動性を維持しています。

また、ダークプール取引率(DPI)は33.76%となっており、取引の約3分の1が一般市場には表示されないダークプールで行われています。これは機関投資家の活発な取引を示しており、市場のボラティリティ(変動性)を抑える要因となる可能性があります。

このように、インテル株は高い流動性を持ち、機関投資家による活発な取引が行われているため、売買のしやすさが確保されています。


関連用語

ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。

ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。


加えて、インベストリンゴの半導体セクター担当アナリストであるウィリアム・ キーティング氏ダグラス・ オローリン氏が、同社に関する下記のより詳細なレポートを執筆しております。

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ウィリアム・ キーティング氏

ダグラス・ オローリン氏

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アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏

📍バリュー&インカム・テクノロジー担当

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