【半導体】インテル(INTC)新CEOのリップ・ブー・タン氏の経歴とは?ケイデンス社出身のタン氏の詳細とインテルの将来性に迫る!

- 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるインテル(INTC)の新CEOである「リップ・ブー・タン氏の経歴とは?」という疑問に答えるべく、タン氏の詳細とインテルの将来性を詳しく解説していきます。
- インテルは2025年3月12日にリップ・ブー・タン氏を新CEOに任命し、彼の就任は3月18日に正式に行われます。
- タン氏は半導体業界で豊富な経験を持ち、ケイデンス社(CDNS)での経営実績を評価されており、インテルの事業再構築に注力する考えを示しています。
- 市場はタン氏のCEO就任を好意的に受け止め、発表後にインテルの株価は時間外取引で10%以上上昇しましたが、今後の経営方針には注目が集まっています。
ついにインテル(INTC)が新CEOを迎える!
2025年3月12日、インテル(INTC)はプレスリリースを発表し、新たなCEOとしてリップ・ブー・タン(Lip-Bu Tan)氏が就任することを発表しました。
(日本語訳)インテル、新CEOにリップ・ブー・タン氏を任命
【カリフォルニア州サンタクララ発—BUSINESS WIRE】インテル(Nasdaq: INTC)は本日、取締役会の決定により、半導体業界で豊富な経験を持つテクノロジーリーダー、リップ・ブー・タン氏を新しい最高経営責任者(CEO)に任命したと発表しました。
タン氏の就任は3月18日付で、暫定共同CEOを務めていたデビッド・ジンスナー氏とミシェル(MJ)・ジョンストン・ホルツハウス氏の後任となります。
また、タン氏は2024年8月に退任したインテルの取締役会に再び加わる予定です。
(出所:インテルのプレスリリース)
(出所:インテルのプレスリリース)
これにより、タン氏はインテルの57年の歴史において9人目のCEOとなり、過去6年間で3人目のCEOとなります。プレスリリースによると、
「リップ・ブー氏は卓越したリーダーであり、テクノロジー業界における豊富な知識、製品およびファウンドリーのエコシステム全体にわたる深い関係、そして株主価値を創出してきた実績は、インテルの次期CEOに求められる資質そのものです」とイヤリー氏は述べています。「彼は長年にわたる輝かしいキャリアの中で、顧客を最優先に考える革新者としての評判を確立し、市場で勝つための差別化されたソリューションを提供し、高い成果を生み出す企業文化を築くことで成功を収めてきました。」
そして、タン氏のコメントについては、次のとおりです。
「インテルのCEOに就任することを光栄に思います。この象徴的な企業に対し、深い敬意と敬愛の念を抱いています。私は、顧客へのサービスをさらに向上させ、株主の皆さまに価値を提供できるよう、事業を再構築する大きな機会があると考えています。」
このプレスリリースは市場が閉じた直後に発表されましたが、このニュースを受けてインテルの株価は時間外取引で10%以上上昇しました。
(出所:Yahoo Finance)
市場はタン氏のCEO就任を評価しているものの、圧倒的な支持というよりも、様子見の姿勢を示しているように感じます。
昨年12月にリリースした下記の分析レポートでは、私はタン氏をゲルシンガー氏の後任として最有力候補の一人として挙げていました。
そのレポートの中で、タン氏に関して以下の点を指摘していました。
「タン氏は非常に優れた技術リーダーであり、講演者としても高い評価を受けています。また、多岐にわたる分野に興味を持ち、幅広い活動をしていますが、その時間には限りがあります。彼はインテルの内情を知る立場にありながら、ほんの数か月前に辞任を選んだ人物でもあります。その背景についてはこちらのリンクより確認できます。」
「私の直感では、彼がインテルのCEO職に興味を持つ可能性は低いように思えますが、実際のところは分かりません。」
ということは、最終的には彼も興味を持っていたということなのでしょう。
しかし、半導体業界の歴史上、最も困難なCEO職になる可能性が高いこの役割において、彼は適任なのでしょうか。
また、インテル・ファウンドリーを切り離し、インテルの製品事業に注力する考えを持っているのでしょうか。
これらの点に関して、本稿では詳しく掘り下げていきたいと思います。
では、早速、本題に入っていきましょう!
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インテル(INTC)を取り巻く背景
プレスリリースには、タン氏の経歴が簡潔にまとめられています。特に注目すべきは、ケイデンス社(CDNS)のCEOとしての在任期間です。
「タン氏は長年にわたりテクノロジー分野で投資を行ってきた実績を持つ経営者であり、半導体およびソフトウェア業界で20年以上の経験を積んできました。また、インテルのエコシステム全体において強いネットワークを築いています。」
「彼は2009年から2021年までCadence Design SystemsのCEOを務め、企業の再構築を主導し、顧客中心のイノベーションを核とした企業文化の変革を推進しました。在任中、Cadenceは売上を2倍以上に伸ばし、営業利益率を拡大し、株価を3,200%以上上昇させるという顕著な成果を達成しました。」
「また、2004年の就任以来、19年間にわたりCadenceの取締役を務め、CEO退任後の2021年から2023年までは会長として経営に関与しました。」
「さらに、Walden Catalyst Venturesの創業マネージングパートナーであり、Walden Internationalの会長も務めています。上場企業の取締役としての経験も豊富で、現在はCredo Technology GroupおよびSchneider Electricの取締役を務めています。」
多くの人が、タン氏のケイデンス社での在任期間は非常に成功したものだったと認めるでしょう。この点については、GoogleのGeminiに確認したところ、同様の見解を示しています。
「これらの抜粋には、タン氏のケイデンス社でのリーダーシップを称賛する明確な引用は含まれていませんが、彼の業績の説明や、インテルがケイデンス社での経験を強調している点から考えると、リップ・ブー・タン氏はケイデンス社のCEOとして高く評価されていたことがうかがえます。彼のリーダーシップは変革をもたらし、成功を収めたと見なされています。」
(出所:Gemini)
タン氏が率いるWalden Catalyst Venturesにおける役割については、彼がこれまで支援してきた企業のリストをこちらで確認できます。
私の見解では、ここでの成功はより複雑な側面を持っているように感じます。
過去の投資先
(出所:Walden Catalystのウェブサイト)
Inphiに関しては、間違いなく成功例と言えるでしょう。同社は2010年に45億ドルの評価額でIPOを果たし、その後2020年にマーベル・テクノロジー(MRVL)によって100億ドルの評価額で買収されました。
Waldenの公式サイトでは、リップ・ブー・タン氏が2002年に同社へ投資を行ったことが明確に記されています。
「リップ・ブー・タン氏は2002年にInphiへ投資を行い、取締役会に参加しました。その後、2007年にヤング・ソン氏をCEOとして迎え入れ、さらにフランシス・ホー氏をInphiのチームに加えました。」
「彼らの尽力により、同社は従業員数を30人から200人へと拡大し、サーバーメモリ分野ではサムスン電子、ネットワーキング分野ではシスコシステムズといった世界的な顧客を獲得しました。」
「Inphiは2010年にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場を果たしました。」
Habanaに関しても、インテルによる買収で20億ドルの成功したエグジットがありましたが、その後の展開については皆さんもご存じのとおりです。
また、ズーム・コミュニケーションズ(ZM)も目を引きますが、公式サイトの詳細を確認すると、タン氏自身の投資についての記載はなく、「シード投資の調達」という表現のみが記されています。
「Walden Catalystのマネージングパートナーであるヤング・ソン氏は、Zoomの創業者兼CEOであるエリック・ユアン氏との既存の関係を活かし、シード投資を調達しました。」
「この初期投資が、後の機関投資家をプラットフォームに引きつける重要な役割を果たしました。」
「また、ヤング・ソン氏は自身の業界経験を活かし、エリック・ユアン氏に対して戦略やリーダーシップに関する助言を行いました。」
Graphcoreは2020年時点で27.7億ドルの評価額を誇っていましたが、最終的には市場での存在感を確立できず、IPOも果たせませんでした。そして2024年7月にソフトバンクに買収されましたが、買収額は非公開となっています。ただし、市場では約5億ドル程度だったと広く推測されています。その詳細はこちらで確認できます。
ただし、Waldenの公式サイトには、同社がGraphcoreにどれだけ投資したのか、また投資の時期についての記載はありません。この点はやや不自然に感じます。
また、量子コンピューティング企業イオンキュー(IONQ)に関しても、Waldenの投資詳細は公式サイトには記載されていません。イオンキューは2021年にSPAC(特別買収目的会社)を通じて上場しました。また、以前、私は下記の分析レポートにおいて同社について取り上げています。
私はSPACによる上場企業にはあまり好感を持っていません。そして、過去6か月間の同社の株価推移を見ると、その理由がよくわかるのではないでしょうか。
ここでお伝えしたいのは、タン氏のWaldenにおける投資実績が必ずしも完璧ではないということです。彼は投資先を巧みにPRし、IPOや買収に向けた準備を進める手腕に長けているとは思います。しかし、同社の具体的な関与の実態が明確でないケースもあり、投資後の企業のパフォーマンスが必ずしも優れているとは限りません。ただ、それだけの話です…。
インテル(INTC)の今後の見通しは?
タン氏のCEO就任を発表するプレスリリースとは別に、彼自身が発表したプレスリリースも存在します。その詳細はこちらで確認できます。
未来に向けた企業変革
(出所:インテルのプレスリリース)
その冒頭で、彼は次のように述べています。
「チームの皆さん、次期CEOとしてこの役割を担うことを光栄に思うとともに、その重責を深く受け止めています。」
「私は長年にわたり、インテルという企業に強い敬意を抱いてきました。幼い頃から、科学、技術、そしてエンジニアリングの持つ力に魅了されてきました。そして、インテルの革新は、これまで数多くの世界を変えるようなブレークスルーの中心にありました。」
謙虚さは、タン氏が自らを語る際によく言及する特徴の一つです。彼はこの言葉を頻繁に使用しています。
こちらは、彼が2022年に SiMa.aiの取締役に就任した際の発言です。その詳細はこちらで確認できます。
「私は謙虚であることの大切さを学びました。自分が常に最も賢い人間であるとは限りません。しかし、自分よりもはるかに優秀な人々に囲まれることで、多くのことを学んできました。」
「SiMa.aiの取締役に就任できることを光栄に思うとともに、その重責を謙虚に受け止めています。この機会をいただけたことに感謝しています。」
タン氏が実際にどれほど謙虚な人物であるかを知りたい場合は、2024年2月に行われたISSCCでのスピーチを収めたYouTubeの動画が参考になるかもしれません。
(出所:ISSCC)
共感を呼ぶコメントをいくつか述べた後、タン氏は次のように語っています。
「私のリーダーシップのもと、インテルはエンジニアリングを重視する企業になります。私たちは最高の製品を開発するために努力を惜しまず、顧客の声に真摯に耳を傾け、約束したことに対して責任を持つことで、信頼を築いていきます。」
うーん、製品にフォーカスするという話はありますが、ファウンドリーについては触れていませんね。
その後、彼は自身の哲学について述べています。そして、ここでもやはり「謙虚さ」がキーワードとなっています。
「私はシンプルな哲学を大切にしています。それは、『謙虚であること』『努力を惜しまないこと』『顧客を満足させること』の3つです。この信念を軸にすれば、良い結果が生まれると信じています。これまでのあらゆる仕事でこの考えは正しかったと実感しており、CEOとしての今後の仕事にもこの姿勢で取り組んでいきます。」
次に、彼は自身が取る予定のアプローチについて、もう少し具体的に説明しています。
「私たちは何事も当たり前だと考えてはいけません。定期的に深く掘り下げて進捗を評価していきます。」
「勢いのある分野では、その優位性をさらに強化し、リードを広げていく必要があります。競争に遅れをとっている分野では、慎重にリスクを取りながら、革新を起こし、一気に追い越すことを目指します。」
「また、進捗が予想よりも遅れている分野については、スピードを加速させるための新たな方法を見つけなければなりません。」
“何事も当たり前だと考えてはいけない” という発言は、インテル・ファウンドリーの今後を示唆しているのでしょうか?
そして、最後の段落では、ついにインテル・ファウンドリーについて触れられています。
「私たちは力を合わせ、インテルを世界トップクラスの製品企業として再び確立し、世界水準のファウンドリーとしての地位を築き、これまでにないほど顧客を満足させることに全力を尽くします。」
「未来に向けてインテルを再構築する今、この瞬間こそが、私たちに求められていることなのです。」
公平を期すために言うと、インテルの最初のプレスリリースでもインテル・ファウンドリーについて言及されています。
「インテルは強力で差別化されたコンピューティングプラットフォームを持ち、広範な顧客基盤を誇ります。さらに、プロセス技術のロードマップを再構築する中で、製造基盤も日々強化されています。」
そして最後に、タン氏が「事業を再構築する」と述べている点にも言及されています。
「インテルのCEOに就任することを光栄に思います。この象徴的な企業に対し、深い敬意と敬愛の念を抱いています。私は、顧客へのサービスをさらに向上させ、株主の皆さまに価値を提供できるよう、事業を再構築する大きな機会があると考えています。」
インテル(INTC)の新CEO就任に対する結論
リップ・ブー・タン氏をCEOとして迎えることは、インテル(INTC)の取締役会にとって大きな成功と言えるでしょう。彼は非常に優れた経歴を持ち、テクノロジー業界で広く尊敬される存在です。何よりも、彼は投資を巧みにPRし、周囲を巻き込む交渉のプロフェッショナルでもあります。
2つのプレスリリースで語られていない部分を考慮すると、インテル・ファウンドリーの分社化は十分にあり得るシナリオではないかと思います。ただし、タン氏はこの決断を急ぐのではなく、十分な調査を行ったうえで、あたかも自身の判断であるかのように進めるのではないでしょうか。これは、インテルの取締役会が彼に課した任務ではなく、彼自身の戦略として見せるためのものかもしれません。
今後数か月間のインテルの動向は非常に興味深いものになりそうです。インテルの元同僚の皆さんの成功を願っています。さて、今後インテルはどうなるでしょうか…。
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