01/06/2025

【半導体:Part 5】PC&ロジック市場、ファウンドリ&成熟プロセス、光学分野、IoT・電力・通信関連半導体市場の今後の見通しを徹底解説!

a cell phone sitting on top of a tableダグラス・ オローリンダグラス・ オローリン
  • 本編は、注目の半導体セクターの2024年度の振り返りと今後の見通しに関する詳細な長編レポートであり、6の章で構成されています。
  •  本稿Part 5では、PCとロジック市場、ファウンドリと成熟プロセス、光学分野、そして、IoT、電力、通信関連半導体市場の現状と今後の見通しを詳しく解説していきます。
  • PCとロジック市場について:2025年度以降、AMDとインテルはそれぞれの課題に直面し、特にAMDは市場シェア拡大の壁に突き当たる一方、インテルは一時的な株価上昇が見込まれるものの、長期的な成長ストーリーに乏しい厳しい状況にあります。
  • ファウンドリと光学分野の見通し:半導体市場全体で在庫過剰が深刻化する中、光学分野が成長の牽引役として注目されています。一部企業はこの恩恵を受けるものの、業界全体への波及は限定的です。
  • その他注目分野:IoT、電力、通信関連分野では、特定の企業(シリコン・ラボラトリーズやモノリシック・パワー・システムズなど)が戦略的な成長を示しており、競争激化の中でも注目すべき領域とされています。

※「【半導体:Part 4】半導体製造装置とは?2025年以降の半導体製造装置市場の今後の見通しを徹底解説!」の続き

前章では、「半導体製造装置とは?」という基礎的内容から、2025年以降の半導体製造装置市場の今後の見通しに関して詳しく解説しております。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。

PCとロジック市場の2025年度以降の見通しとは?

ここではインテル(INTC)だけでなくAMD(AMD)についても触れます。ただ、今年はPC生産にとって厳しい一年だったと言えるでしょう。話を簡単にするために、AMDとインテルを同じ「カテゴリ」にまとめていますが、ここでそのカテゴリについて詳しくは触れない予定です。今年はAMDに対して弱気な姿勢を取っていましたが、それが正しかったと確信しています。SemiAnalysisが最近リサCEOと話をしたようですが、私にはこの製品ロードマップに未来があるとは思えません。AMDは、片側にエヌビディア(NVDA)という「岩」、もう片側にカスタムシリコンという「壁」に挟まれており、どちらもAMDより速いペースで革新を進めている状況です。

AMDに関しては、下記のレポートにて詳細に解説しておりますので、同社への理解を一層深めるために併せてご覧いただければと思います。

そして、私はこの状況が変わることはないと思います。AMDは今後もCPU市場で圧倒的な存在感を示し続けるでしょうが、市場シェアが50%を超えると、それ以上拡大するのは構造的に難しくなります。AMD自体は「問題なし」といったところです。ただ、MI300に対する予測は依然として過剰な期待が込められており、一方で株価のマルチプルは下がっています。まだ割高ではありますが、2025年予想利益に基づいて約23倍の水準であれば、大きな損失を被ることはないでしょう。ただし、これで市場を大きく上回るパフォーマンスが得られるとも思いません。

次にインテルについてです。個人的に過去最高の分析レポートを書いたと思うのですが、その中で付録として掲載したSOTP(部門別価値評価)は今でも妥当だと考えています。近いうちに同社ではいくつかの売却案件が出てくる可能性があると見ており、その際、SOTPによる評価が市場に認識されることで、株価が急上昇する「波」がいくつか訪れるかもしれません。

しかし、今のインテルは、企業としては非常に厳しい状況にあるように感じます。ここには長期的な成長ストーリーがなく、株価が一時的に上昇しても、それは純資産価値に基づくものであり、持続的な事業の成長によるものではありません。そのため、そうした上昇局面では売り目線で見ていきたいと思っています。このようなインテルの姿を見るのは、なんとも悲しい限りです。

インテルに関する理解を一層深めるために、是非、下記の5つの章から成る長編の分析レポートを併せてご覧いただければと思います。

ファウンドリと成熟プロセスの2025年度以降の見通しとは?

この分野を語らずにはいられません。現在、半導体市場全体の中でも特に厳しい状況にあるのが、ファウンドリにおける成熟プロセスのキャパシティだと思います。最近、マイクロチップ・テクノロジーMCHP)が倉庫に眠るツールの売却に言及した話は、非常に衝撃的で重要なニュースでした。

ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)は、幅広い分野で供給過剰が起きていると述べています。また、グローバルファウンドリーズ(GFS)の今年の売上は減少しており、粗利益率も20%台にとどまっています。この分野には多くの苦難が伴っていますが、全員が同じ状況にあるわけではありません。この「どん底」ともいえる状況の中で、皮肉にも新たな需要を牽引するものとして浮上してきたのがフォトニクス(光子学)です。ただし、その恩恵を受けるのはタワー・セミコンダクター(TSEM)やフォームファクターFORM)といった一部の企業だけで、業界全体に広がるわけではありません。

そして、2025年度は、この分野では明確な分岐が見られると考えています。フォームファクターやタワー・セミコンダクターは光学分野へのシフトの恩恵を受け続ける一方で、ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス、グローバルファウンドリーズ、アナログ分野の企業は膨大な在庫の重圧に苦しむことになるでしょう。在庫調整はまだ進んでおらず、DIO(在庫日数)は過去最高を記録しています。株価もようやくこの現実を反映し始めています(マイクロチップ・テクノロジーなど)。それでも、この分野全体が在庫問題の現実を反映してさらに苦境に陥ると考えています。

(出所:SemiAnalysis)

ご覧のとおり、この分野の株式を全体的には好意的に見ているわけではありません。ただし、例外として現在注目しているのはフォームファクターとタワー・セミコンダクターです。しかし、これも結局は光学分野の話に過ぎないと言えるでしょう。

光学分野の2025年度以降の見通しとは?

在庫のデータはありませんが、2025年に最も強気で注目している分野がここです。参考までに言うと、投資の順序は、まずGPU、次に電力、そして光学が来るべきだと考えています。光学分野の多くの重要な成長はまだこれからで、株価に織り込まれるのはこれからです。この分野では、シエナ(CIEN)、コヒレントCOHR)、アリスタ・ネットワークス(ANET)に注目しています。その中でも、シエナは純粋にアルファ(市場平均を上回るリターン)を期待できる点で特に魅力的で、他の2社は「ベータ」(市場全体の動きに連動するリターン)に近い性質があると見ています。

アリスタ・ネットワークスによれば、AI関連の成長は2025年後半に集中する見込みで、これはデータセンターの購入タイミングとも一致しています。この流れを待つことが、最も賢明な選択だと思います。

IoT、電力、通信関連半導体市場の2025年度以降の見通しとは?

これらの分野について簡単に触れたいと思います。IoTは良いポジションにあると思います。この分野で注目しているのはシリコン・ラボラトリーズ(SLAB:戦略的な選択肢が近々提示されそうであると見ています)と、トランシーバー分野で勢いを増しているサイタイム(SITMです。

(出所:SemiAnalysis)

ノルディック・セミコンダクターNOD.OL)も底値狙いとして検討の余地があるかもしれませんが、正直なところ、この銘柄には多くの課題が伴っています。

電力分野も注目に値する領域です。中でも、モノリシック・パワー・システムズ(MPWR)は非常に魅力的だと感じています。GB200の損失はすでに市場で十分織り込まれており、これからはTrainiumなどによる電力分野での新たな成功が期待される段階に入っています。ただし、競争も激化しており、インフィニオン・テクノロジーズ(IFX)アナログ・デバイセズADI)といった企業がこの市場に参入してくる状況です。

(出所:SemiAnalysis)

それでも、この分野に賭ける価値はあると見ています。モノリシック・パワー・システムズは以前は過剰に評価されていましたが、今でははるかに妥当な水準に落ち着いてきています。

そして、次章である最終章では、私が2025年度に注目する半導体銘柄と分野に関して詳しく解説していきます。

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※続きは「【半導体:Part 6】2025年度の注目の半導体銘柄とは?」をご覧ください。


アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA

📍半導体&テクノロジー担当

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