米国株の2025年の見通し:米国政府や米国企業の大量の借り換えとインフレ圧力の再燃には要警戒!
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- 本稿では、想定されるリスク要因の詳細な分析を通じて、米国株式市場の2025年度の見通しを詳しく解説していきます。
- 世界的な高金利環境により、米国政府や企業が2025年までに大量の借り換えを行う必要があり、これが市場の流動性を低下させ、株式市場に悪影響を与える可能性が高まっています。
- FRBによる追加政策(利回り曲線管理や隠れた量的緩和など)が予想されますが、これらはインフレ圧力を再燃させるリスクも伴い、複雑な市場環境を作り出しています。
- 中国の景気刺激策の遅れや日本の利上げ準備、中東やウクライナなどの地政学的リスクが市場にさらなる不透明感をもたらし、慎重な資産運用が求められています。
※「ドラッケンミラー氏は米国債をショート?エヌビディアを売却したドラッケンミラー氏の今後の米国経済見通しに迫る!」の続き
前回のレポートでは、米国の著名投資家であるスタンレー・ドラッケンミラー氏の米国経済への見通しに関する詳細な分析を開設しております。
その為、本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、下記のレポートも併せてご覧いただければと思います。
大規模な借り換え:ドル、金利、そしてグローバル流動性
先日、再びマイケル・ハウエル氏と話す機会がありました。
ハウエル氏は、1996年にロンドンを拠点とする投資リサーチ会社「クロスボーダー・キャピタル」を設立し、現在そのCEOを務めています。
彼の見解によれば、2025年に向けて私たちが直面する課題について、スタンレー・ドラッケンミラー氏と同様の懸念があるようです。
これから1〜2年の間に、米国政府や多くの企業がバランスシートを借り換えなければならず、その過程で市場から流動性が吸い上げられることが予想されます。
いわば、「支払いの時が来た」ということです。
コロナ禍発行のジャンク債がリファイナンスの壁に
今後3年間で償還期限を迎える債券のうち、40%以上を占める
(出所:Bloomberg)
この問題は、企業だけでなく米国政府にも当てはまります。
連邦債務の利払いが政府支出に占める割合
実績値および予測値
(出所:ECONOFACT)
現在のような高金利環境で行われる借り換えは、特に流動性を大きく削る可能性があります。
その結果、債務比率と流動性のバランスが崩れるリスクが高まります。
以下のクロスボーダー・キャピタルのチャートは、この状況を理解するための重要な手がかりを示しています。
先進国における債務と流動性の比率
満期構成を考慮した調整値
(出所:CrossBoarder Capital)
マイケル・ハウエル氏が指摘するように、本当の問題は「債務の総量」そのものではなく、「債務を借り換えること」にあります。
企業や家庭、さらには経済全体が高い債務を維持できるのは、それを継続的に借り換えられる場合に限られます。
しかし、借り換えを行うには、強固なバランスシート、つまり十分な流動性が不可欠です。
ところが、債務がその基盤(バランスシートや流動性)を超えて大きくなりすぎると、問題が顕在化します。
そして、まさにそのリスクが今後1〜2年で現実のものとなる可能性があります。
市場にとって何を意味するのか?
短期的には、株式市場に向かい風が吹く可能性が高いと考えられます。
理由は、借り換えを進める過程で市場から流動性が引き上げられるためです。
少なくとも、株価が一度調整局面を迎える必要があると思いますし、ポジションの観点からもそれは理にかなっています。
資産運用会社による米国株先物のポジション(S&P500時価総額に対する割合、ベーシスポイント単位)
現在、誰もが(株式投資に全く関心の無い人さえ)株式を「ロング」している状況です。
このように買い手がいなくなった状態では、売りが発生しやすくなります。
中長期的な影響
中長期的には、FRBが借り換えを支援するために追加の措置を講じる可能性が高いでしょう。
たとえば、以下のような政策が考えられます:
・イールドカーブコントロール(利回り曲線の管理)
・隠れた量的緩和(ステルスQE)
・さらなる利下げ
ただし、こうした政策にはリスクも伴います。
これらの措置はインフレ圧力を再燃させる恐れがあり、それが市場の不安を引き起こして利回りを押し上げる可能性があります。
これは、誰も望んでいない展開です。
理想的なシナリオは?
ある意味では、FRBやトランプ政権(あるいはその後の政権)が2025年初頭に意図的に景気後退を引き起こすのが最善策かもしれません。
その場合、景気後退の責任を前政権に押し付けつつ、借り換えを進めやすい環境を整えることができるでしょう。
主要なリスク要因:中国、日本、そして戦争
現在の市場環境は流動性の面で引き続き厳しい状況にあり、いくつかの重要なリスク要因が存在しています。
中国のジレンマ
世界経済の勢いと中国人民銀行(PBoC)による流動性注入(+3ヶ月)
(出所:CrossBorder Capital)
特に中国は、バランスシート不況とドル連動(ドルペッグ)の板挟みに陥っています。
刺激策を講じる必要があり、実際に実施したい意向があるかもしれませんが、人民元がさらに米ドルに対して下落するのは避けたいという状況です。
米ドル/中国人民元
(出所:TradingView)
今、世界経済が本当に必要としているのは「ドル安」です。
ドルインデック
(出所:TradingView)
個人的には、ドル安が起きる可能性は十分にあると考えています。
通常、ドル安はリスク資産の上昇を後押しするものですが、ここ1カ月の動きを見ると逆の現象が起きています。
今後、ドル安と株価上昇が同時に進む展開になるのでしょうか?
日本のリスク
一方、日本も無視できない存在です。
日銀、金融緩和時代に終止符を打ち、政策見直しで利上げを正当化へ
(出所:Reuters)
かつて恐れられていた「日本のキャリートレード解消」のリスクを、いつの間にか忘れてしまった感があります。
現在、日銀(BOJ)は利上げに向けた準備を進めており、一方の米国はさらなる利下げを検討しています。
このギャップが拡大すれば、いずれどこかのタイミングで米国資産売却が急激に進む可能性があります。
こうした状況を考えると、FRBが利下げに慎重な理由も理解できます。
米ドル/日本円
(出所:TradingView)
戦争リスクの高まり
さらに、戦争リスクのエスカレーションは現実的な課題です。
中東、ウクライナ、そして中国と台湾など、いずれも緊張が高まる可能性を秘めています。
一部の投資家はトランプ政権の復帰に期待を寄せていますが、正直なところ、ウクライナ侵攻以前の安定した世界にはもう戻れないかもしれません。
これら複数のリスク要因が絡み合う中で、市場の動向には一層の注意が求められます。
マクロポートフォリオの最新アップデート
ここからは、具体的な私が実施しているアクションプランについて説明していきます。
私のマクロポートフォリオは、過去1カ月で堅調に推移し、運用開始以来18%以上の成績を記録しています(詳細はこちら)。
しかし、今こそ大きな動きを取るべきタイミングだと思っています。
金への再投資
(出所:TrendSpider)
以前、金が割高感を示していると警告しましたが、その後しっかりと調整が入りました。
200日指数平滑移動平均線(200 EMA)まで下落するのを待って本格的なポジションを構築する予定ですが、現時点でも一部買い増しを始めています。
金は依然として貨幣インフレへのヘッジとして有効であり、将来的にはさらなるインフレが避けられません。
2025年にはそうした兆候が少ないかもしれませんが、それ以降には高い確率で現れると見ています。
同様のことはビットコイン(BTCUSD)にも言えますが、慎重にアプローチしています。
イーサリアムを売却、ビットコインは慎重に
(出所:TrendSpider)
金と同じく、ビットコインは長期的に貨幣インフレへのヘッジ手段として保有する価値があります。
ただし、現在の価格水準は割高感があり、注意が必要です。
ビットコインは流動性と強く連動していますが、流動性は今後低下する可能性があります。
また、テクニカル的には10万ドル付近で天井をつける可能性が高く、1.618拡張線で5波動のパターンが完了する兆しがあります。
これらを踏まえ、暗号資産へのエクスポージャーを減らすため、イーサリアム(ETHUSD)のポジションを売却しました。
(出所:TrendSpider)
ビットコインは貨幣インフレに対するヘッジとしての地位を確立していますが、イーサリアムを含むアルトコインは依然として投機的な資産であり、流動性が低下する中で大きな下落リスクを抱えています。
これまでアルトコインの強気相場を予測してきましたが、最近では徐々に「ビットコイン中心主義(ビットコインマキシマリスト)」の考え方に傾きつつあります。
リスクとリターンのバランスを考えると、現時点ではその方が合理的に思えます。
中国市場からの撤退
(出所:TrendSpider)
現状では、中国市場から距離を置くことを選択します。
中国は経済に必要な刺激策を十分に打ち出しておらず、状況が明確になるまで様子を見るのが得策だと考えます。
小型株(IWM)の優位性
以前から取り上げてきたテーマですが、今後さらに加速する可能性があると見ています。
小型株は大型株に対して25%割安で取引されています
(出所:@JeffWeniger)
これまで小型株は大幅に出遅れていましたが、ここ数カ月で回復の兆しが見えています。
(出所:TradingView)
これは通常、ラリーの終盤で見られる典型的な動きです。
株価の天井や底を正確に予測するのは難しいものの、リスクとリターンの観点から考えれば、現在の状況では小型株で構成されるラッセル2000指数に連動するiシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM)の方が優位に立つと判断しています。
ナスダック100(NDX)は重要な天井をつけた可能性が高く、小型株との相対比較ではその傾向がより明確になっています。
最終的なポートフォリオの姿
現在、私のマクロポートフォリオではショートポジションを取っていません。
債券でさえショートしていませんが、注目していただきたい点は現金の比率が約37%に達している点です。
今後2〜3四半期で資産のラリーが続けば、この比率はさらに増加する可能性があります。
今は利益を確定する絶好のタイミングと考えており、その方向で売却を進めています。
また、トランプ政権の今後の政策が米国経済に与え得る影響に関して関心がございましたら、私が直近執筆した下記のレポートも、インベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧いただければと思います。
加えて、インベストリンゴのアナリストであるローレンス・ フラー氏も、トランプ新政権の政策が米国経済に与え得る影響に関する下記のレポートをリリースしています。
こちらも併せてご覧いただければと思います。
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アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード
📍米国マクロ経済&テクノロジー担当
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