05/10/2024

KLA(KLAC)の将来性:最新決算と強み(競争優位性)分析を通じて今後の株価見通しに迫る!

a cube shaped building on a rockウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるKLAコーポレーション(KLAC)の4月25日に発表された最新の2024年第1四半期(会計年度:2024年度第3四半期)決算と強み(競争優位性)分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • KLAコーポレーションの2024年度第3四半期の売上高は前年同期比3%減の23億6,000万ドルで、ガイダンスの中間値を上回ったが、フラットパネル・ディスプレイ事業からの撤退に伴う在庫費用が影響を及ぼしています。 
  • 同社はフラットパネル・ディスプレイ事業から2024年12月31日までに撤退する計画で、撤退により今後の売上高に大きな影響はないと見込んでいます。 
  • KLAの売上高の42%は中国からのものであり、今後の成長は非中国顧客からの需要によるものと予測されているが、全体としての成長率は低迷する可能性が指摘されています。

KLAコーポレーション(KLAC)の2024年第1四半期(会計年度:2024年度第3四半期)決算に関して

KLAコーポレーション(KLAC)の2024年度第1四半期の売上高は、前四半期比5%減、前年同期比3%減の23億6,000万ドルで、ガイダンスの中間値を6,000万ドル上回った。

これにより、23億6,000万ドルから24億8,000万ドルの範囲内でほぼ同じ売上高を5四半期連続で計上したことになる。

Non-GAAPベースの売上総利益率は59.8%で、修正後のガイダンス範囲の上限を上回ったが、前四半期比では2.8ポイント低下した。

これは、3月18日に決定したフラットパネル・ディスプレイ事業からの撤退に関連する在庫費用によるものである。

(原文)In the March quarter, both non-GAAP and GAAP diluted EPS were negatively impacted by a $62 million charge for excess and obsolete inventory related to the company's strategic decision to exit the flat panel display business announced on March 18.

(日本語訳)3月期のNon-GAAPベースの希薄化後EPSとGAAPベースの希薄化後EPSは、3月18日に発表されたフラットパネル・ディスプレイ事業からの撤退という戦略的決定に関連した過剰在庫・旧式在庫の費用6,200万ドルによりマイナスの影響を受けました。

FPD関連費用を除いたNon-GAAPベースの売上総利益率は62.4%で、前四半期比ほぼ横ばいであった。

FPD事業からの撤退決定の詳細は、このSEC提出書類に記載されている。

(原文)KLA Corporation (the "Company," "we," "our" or "KLA") has made the strategic decision to exit the Company’s flat panel display (“FPD”) business that is part of its PCB, Display and Component Inspection reporting segment (the “exit”). The Company expects to complete the exit through end of manufacturing of FPD products by December 31, 2024. The Company will continue to provide services to the installed base for the discontinued product lines. The decision is based on multiple factors, including the cancellation of a significant new technology project by a major customer, and represents the culmination of our decision to investigate alternatives for our FPD business that was disclosed in our letter to shareholders and quarterly report on Form 10-Q for the quarter ended December 31, 2023. The FPD business accounted for 1.4% of the Company’s total revenue in calendar year 2023.

(日本語訳)KLA Corporation(以下「当社」)は、PCB・ディスプレイ・部品検査報告セグメントに属するフラットパネル・ディスプレイ(以下「FPD」)事業から撤退(以下「本事業撤退」)するという戦略的決定を下しました。当社は、2024年12月31日までにFPD製品の製造を終了し、撤退を完了する予定です。当社は、製造中止となった製品ラインの設置ベースへのサービス提供は継続する予定です。今回の決定は、主要顧客による重要な新技術プロジェクトの中止など複数の要因に基づくものであり、2023年12月31日に終了した四半期の株主宛書簡および四半期報告書(Form 10-Q)で開示したFPD事業の代替案を検討するという当社の決定の集大成となるものです。2023年暦年におけるFPD事業の売上高は当社総売上高の1.4%です。

(原文)This decision has no effect on revenue expectations for the March 2024 quarter and the Company reaffirms its revenue guidance range of $2.3 billion, plus or minus $125 million. In addition, the Company expects that it will incur between: $60-$70 million in non-cash expenses to write off excess and obsolete inventory related to the discontinued product lines for the quarter ending March 31, 2024; and $50-$70 million for impairment of goodwill and purchased intangible assets

(日本語訳)この決定は2024年3月期の売上高予想に影響を与えず、当社は売上高ガイダンスの範囲である23億ドル(プラスマイナス1億2,500万ドル)を再確認しています。また、2024年3月期第1四半期に、非現金支出費用として、非継続製品に関連する過剰在庫および旧式在庫の償却に6,000万ドルから7,000万ドル、のれん代および購入無形資産の減損に5,000万ドルから7,000万ドルが発生すると見込んでいます。

2023年3月期の売上高のわずか1.4%に過ぎないこの決定は、表面的には大きな問題ではない。

しかし、これは、同社(および同業他社)が、新規に市場に参入する他社による競争上の脅威に直面し、低技術分野の市場から徐々に撤退し始める氷山の一角となり得るのだろうか。

FPD事業は「PCB・ディスプレイ・部品検査報告セグメント」に属しており、最新四半期の売上高に占める割合はわずか3%だった。

これは、同社のポートフォリオの中で最も低い技術セグメントである。

私は、同社がこのセグメントの残りをいつまで続けるのか疑問に思っており、今後、注目すべきポイントであると見ている。

今後の見通しとして、KLAコーポレーションは今四半期の売上高を前四半期比6%増の25億ドル、前年同期比では同程度と予想している。

KLAコーポレーションのリック・ウォレスCEOは、ラムリサーチ(LRCX)の決算説明会で彼の同僚が語ったように、楽観的な見解を示し、3月期が谷だと宣言している。

(原文)We're confident that KLA's quarterly revenues bottomed in the March quarter, as expressed in our prior earnings call. In foundry/logic, simultaneous investments across multiple nodes and slowly rising capital intensity continue to be a long-term tailwind.

(日本語訳)我々は、前回の決算説明会で表明したように、KLAコーポレーションの四半期売上高は3月期に底を打ったと確信しています。ファウンドリー/ロジックでは、複数のノードにまたがる同時投資と資本集約度の緩やかな上昇が、長期的な追い風であり続けています。

しかし、2024年暦年の見通しについては、楽観的な見方と同時に慎重な見方も示している。

準備された発言には最新情報はなく、決算説明会議に出席したアナリストの発言は次のようなものであった。

(原文)Right now, when I look at the overall business first half versus second half, I think the second half is in the high single digits versus the first half in that ballpark. We're not guiding, but I think it's going to end up in that range as we progress through the year.

(日本語訳)現在、事業全体の上期と下期を比較すると、下期は一桁台後半、上期はその程度だと思います。まだガイダンスは提供していませんが、年を追うごとにその範囲に収まっていくと思います。

そして、これはラムリサーチとよく似ている。

多くの会話が交わされているが、今年を適切に導くには十分な自信がないのである。

KLAコーポレーションのツールのリードタイムを考えると、不確実性がかなり高いことがわかる。

今四半期のガイダンスと、上半期に対する下半期の伸びの乏しさを考えると、2024年暦年は2023年暦年のような着地になりそうである。

同時に、KLAコーポレーションの株価は史上最高値に近いというのも現状である。

下記では、2024年暦年がどのようなものになるのか、私たちの同社に対する懸念を共有し、中国関連ビジネスの数字を掘り下げ、Q&Aセッションからのいくつかの重要なポイントを深堀していきたい。

KLAコーポレーション(KLAC)の中国における売上高

前四半期のラムリサーチ(LRCX)と同様、KLAコーポレーション(KLAC)も中国からの売上が42%を占め、前四半期の41%からわずかに増加している。

上記の通り、中国での売上高は、次に大きな販売先地域である台湾(18%)からの売上高のほぼ2.5倍である。

ちなみに、ASML(ASML)の2024年度第1四半期の中国からの売上高が49%に急増している点にもご留意いただきたい。

経営陣による準備発言では、中国向け販売によるこの継続的な売上高についての言及は避けられたが、質疑応答ではこれに関連する質問が出ていた。

リック・ウォレス最高経営責任者(CEO)のコメントで最も重要だったのは、中国向け売上が今年いっぱいは横ばいで推移するとの見通しを示したことだろう。

(原文)So, China is interesting. I think it's probably flattish over the course of the year. Second half is more or less flattish with the first half. The mix is changing a bit in terms of the end market mix. But we see it as a percent of the total coming down as we see most of the growth in the year coming from our non-China customers.

(日本語訳)中国は興味深い。おそらく、今年いっぱいは横ばいだと思います。下半期は上半期とほぼ横ばいです。最終市場の構成比は少し変化しています。しかし、今年の成長の大半は中国以外の顧客からもたらされると見ているため、全体に占める割合は低下すると見ています。

短期的には、中国向けWFE(半導体前工程製造装置)販売のかつてない好調さは、WFEメーカーにとって大きな恩恵である。

しかし、このことは、控えめに言っても非常に大きな問題であると言える。

その中でも重要なのは

1. これらのツールは発注され、稼働しているのか?どの企業がこれらのツールを購入しているのか?

2. なぜ中国は、WFEツールを購入することに関して、世界の他の国と同期していないのか?

3. なぜ、購入された全ての新しいツールを反映するように、中国から出荷される半導体が大幅に増加しないのか?

実際、これらの中国製半導体を購入しているのはいったい誰なのか?

まだまだ言いたいことはあるが、だいたいお分かりだろう。

これらの疑問は、KLAコーポレーションだけでなく、すべてのWFEメーカーに等しく当てはまる。

私に言わせれば、この中国向け売上高の大幅な増加は、事実とするにはあまりにも出来過ぎている。

そして、この中国向け売上高の大幅な増加が、いつ、どのように終わるかはわからないが、中期的にはおそらく良い結果にはならないだろうと見ている。

一方、WFEプレーヤーはいずれも史上最高値かそれに近い株価水準にありながら、さらに4分の2、いや3分の1の低成長に直面している。

そのため、投資家という観点から見ると、これらのポイントは私を惹きつける内容ではなく、むしろ逆で、懸念材料であるように感じる。

では、さらに詳細に見ていきたい。

KLAコーポレーション(KLAC)のアドバンスト・パッケージングに関して

質疑応答では、アドバンスト・パッケージングについて多くの議論が交わされた。

重要なテーマは、KLAコーポレーション(KLAC)が通常フロントエンド工程で使用されるツールを、バックエンド、特に最新のAIアクセラレーター・チップで使用されるような高度なパッケージングに再利用する、新たなエキサイティングな機会を提供しているということである。

(原文)Sure. And we had, yes, let's be clear. I mean we have some of our products already from the front end that are being used in the back end. That started a while ago. We're just seeing an accelerated conversation about more tools where some customers will actually name specific tools that they want. So, it very much depends on the tool, and I can give you a range where it could be from three months, it could be a couple of years, depending on whether you're modifying something that's already being used in that kind of application and specializing it. So, it really depends, but I do think that we have some that are already there. So, part of our $400 million is from tools that were from the front end.

(日本語訳)もちろんです。そして我々は、そう、はっきりさせておきましょう。つまり、フロントエンドで使用された製品がバックエンドで使用されているのです。それは少し前から始まっていました。ただ、より多くのツールに関する会話が加速しており、実際に欲しいツールを具体的に挙げる顧客もいます。ですから、ツールによって大きく異なります。すでにその種のアプリケーションで使われているものに手を加えて特別なものにするかどうかにもよりますが、3カ月から数年の幅があると思います。そのため、本当に場合によるのですが、私たちはすでにそこに到達しているものもあると思います。そして、4億ドルのうちの一部はフロントエンドのツールによるものです。

KLAコーポレーションからすれば、これは簡単なことだと思います。

これらのツールを開発するための研究開発は、すでにサンクコストとなっている。

それらを微調整し、再展開する新たな方法を見つけることは、同社にとって新たな、そして以前は予想もしなかった収益源を生み出すことになる。

最後に

KLAコーポレーション(KLAC)は、決算説明会でAIについてほとんど触れなかった数少ない企業の一つである。

これが良いことなのか悪いことなのか、私には判断がつかない。

テスラ(TSLA)やパランティア(PLTR)など、多くの企業が自社のAIの実力を誇示する中、少なくともほとんどの企業はAIの潮流に乗ろうと少なくとも何らかの試みをしているように見える。

そのため、KLAコーポレーションがここで何を考えているのか、ちょっと興味があるというのが本音である。

KLAコーポレーション、そしてその同業他社はほとんどが素晴らしい企業であり、経営も非常にうまく、半導体業界の将来において重要な役割を担っている。

しかし、KLAコーポレーションを含め、現在の関連企業の株価はどれも割高である点に加えて、2024年の成長率はせいぜいごくわずかであり、且つ、売上高の大半を中国に頼っているという事実は懸念材料である。

さらに、その他のKLAKLAC)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクよりKLAのページにアクセスしていただければと思います。


アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

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