11/01/2024

KLA(KLAC)今後の株価見通しとは?最新の2024年第3四半期決算は好調も株価は下落!

A micro processor sitting on top of a tableウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるKLAコーポレーション(KLAC)の10月30日に発表された最新の2024年第3四半期(会計年度:2025年度第1四半期)決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • KLAは、2024年第3四半期で前年同期比18.3%の売上増を達成し、最先端ロジックとメモリ市場の成長が2025年も事業の主要な成長エンジンになると見ています。 
  • 中国市場が全体売上の42%を占めていますが、2025年には30%前後に減少する見通しが示され、中国以外の地域での成長が期待されています。 
  • 従来技術の成長が停滞する中、最先端技術分野への投資が2025年の成長を牽引するとの見通しが強調され、業界における再編が進行中であるとの見方も示されています。

KLA(KLAC)の最新の2024年第3四半期決算発表に関して

KLA(KLAC)は10月30日に2024年第3四半期(会計年度:2025年度第1四半期)決算を発表し、売上高は28億4,000万ドルと報告し、ガイダンスの上限に達しました。

そして、前四半期比で10.5%、前年同期比で18.3%の増加となり、過去最高だった2022年第4四半期の29億5,000万ドルに次ぐ、同社史上2番目に高い売上を記録しました。

また、2四半期連続で着実な成長を遂げています。

KLAの四半期別売上高と純利益の推移(単位:百万ドル)

(出所:筆者作成)

同社の最新の決算説明会では、下記の点が強調されました。

(原文)As expected, we are encouraged by the signs of a strengthening leading-edge logic and memory market environment for our top customers and remain very confident in our plan for steady improvement and continued growth in calendar 2025.

(日本語訳)予想通り、主要顧客向けの最先端ロジックとメモリ市場に回復の兆しが見られ、当社は2025年も安定した成長と改善を続けられるという確信を持っています。

2025年に向けて、最先端ロジックとメモリが成長の原動力となることが、今回の決算発表全体を通じて強調されました。

この点に関しては、詳しくは後ほど説明します。

今四半期(2024年第4四半期)の売上予想は29億5,000万ドル(±1億5,000万ドル)で、前期比約4%、前年同期比18.6%の増加となります。

これは、2022年第4四半期の過去最高売上に並ぶ水準でもあります。

(原文)In conclusion, we are guiding to our third consecutive quarter of sequential revenue growth and improving market demand at the leading edge and expect annual growth to continue in calendar 2025

(日本語訳)総括すると、当社は3四半期連続の売上成長と最先端分野での市場需要の改善を見込んでおり、2025年も年間成長が継続すると期待しています。

KLAが今四半期のガイダンスの中央値を達成すれば、2024年通年で前年比10.8%の成長となり、好調な結果といえます。

中国は引き続き同社の売上の大部分を占めており、今回も全体の42%(前四半期の44%から若干の減少)を占めました。

一方、米国からの売上比率は前四半期の12%から18%に大きく増加しています。

これはおそらく、TSMC(TSM)のアリゾナ工場の生産増加が影響していると考えられます。

(出所:KLAの2025年度第1四半期決算資料)

今回の決算説明会では、中国向けの売上見通しや新たな制裁措置の影響に多くの時間が割かれました。

2025年の見通しについては「成長の継続」を強調したものの、詳細については控えめな発言にとどめており、慎重な戦略がうかがえます。

ただし、2025年についての具体的な言及が少なかったにもかかわらず、アナリストたちの間でいくらか混乱が生じました。

特に、「中国の売上比率は低下するが、金額自体は同水準が見込まれる」という発言が注目されました。

これは、中国以外の地域で売上が大幅に増加する可能性を示しています。

さらに、最先端顧客についても「最先端には多くのプレーヤーがいる」と述べた直後に、「ここ数年、最先端分野では実質的に1つの主要プレーヤーのみだ」と発言しており、これも混乱を招くものでした。

これらの点については後ほど詳しくお伝えします。

最後にKLAについてレポートを執筆したのは5月です。

レポートの詳細に関心のある方は、インベストリンゴのプラットフォーム上より、下記レポートをご覧いただければと思います。

KLA(KLAC)の将来性:最新決算と強み(競争優位性)分析を通じて今後の株価見通しに迫る!

そして、そのレポートの結論において、下記の様に述べています。

「KLAコーポレーション、そしてその同業他社はほとんどが素晴らしい企業であり、経営も非常にうまく、半導体業界の将来において重要な役割を担っている。しかし、KLAコーポレーションを含め、現在の関連企業の株価はどれも割高である点に加えて、2024年の成長率はせいぜいごくわずかであり、且つ、売上高の大半を中国に頼っているという事実は懸念材料である。」

その後の2か月間で、KLAと同業他社の株価は急上昇し過去最高を記録しましたが、最終的には2024年3月から4月の水準に戻り、現在もその近辺で推移しています。

(出所:Smartkarma)

最新の決算発表は株価にほとんど影響を与えず、特に目立ったサプライズがなかったことを示しているようです。

ただ、意外だったのはロジックとメモリの「最先端技術」への強調でした。

KLAは、大胆にも最先端技術が再び従来技術を上回り、事業全体(おそらく同社のみならず半導体業界全体)において最大の割合を占めると予測しています。

(原文)But when we look to 2025 and then look beyond to the model we had for 2026 or even what we'll start talking about 2030. We think we're getting back to the historical levels where leading edge is what's driving the growth, it's the largest percent of the business and the legacy will be a smaller percent. When exactly that happens, we don't know.

(日本語訳)ただ、2025年以降、さらには2026年や2030年について見据えると、成長を牽引するのは最先端技術で、事業の中心を占める一方、従来技術の割合は小さくなるという、過去の水準に戻ると考えています。それがいつになるかは、まだ確かではありません。

なぜこれほど「最先端技術」について時間を割き、再び従来技術を上回ることが事業全体にどのような影響を与えるのかを強調したのでしょうか?

詳しく掘り下げてみましょう。

今回のQ&Aセッションには特に目立った内容はありませんでしたが、テーマとしては「最先端技術」(ロジック、メモリ、先進パッケージング)が将来の成長を牽引するという点が印象的でした。

まずはこの点から見ていきましょう。

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KLA(KLAC)の最先端技術への注力

前述の通り、KLA(KLAC)は2025年について具体的な見通しは示さず、「成長の年になる」と述べるにとどまりました。

(原文)While we will not be overly specific on expectations for next calendar year until we report in January, we continue to expect another growth year, fueled principally by increasing investment in both leading-edge Foundry/Logic and Memory, mostly DRAM, offset by lower China demand as customers absorb the equipment investments made over the past couple of years

(日本語訳)来年の具体的な見通しについては1月の報告までお待ちいただきますが、来年も成長の年になると期待しています。成長の主な要因は、最先端のファウンドリやロジック、特にDRAMを中心としたメモリへの投資増加にあります。一方で、中国では過去数年の設備投資を顧客が吸収するため、需要はやや落ち着く見込みです

準備された発言やQ&Aで繰り返し強調されていたのは、「成長は最先端技術から生まれる」という点でした。

つまり、半導体業界の従来技術からは今後の成長が期待しにくいというメッセージが含まれているように思えます。

そして、ここ数カ月、このメッセージが何度も示されてきました。

半導体業界は回復基調にありますが、その牽引役は生成AIへの投資による最先端技術です。

一方、業界の大半を占める従来技術分野は、期待以上に回復が遅れています。

KLAが述べたように、最先端技術が再び事業の最大の割合を占めるという見通しについて、ふと「最先端技術はもともと最大の投資先だったのでは?」と思うかもしれません。

実際、そうだった時期もありますが、一時的にそうではなくなり、今またKLAの予測では再び最大の割合を占める見込みです。

この点については、多くの要素を検討する必要があり、決算シーズンが落ち着いたら別のレポートで詳しく解説したいと思います。

現時点では、KLAの発言を「従来の半導体分野が過剰供給に陥る可能性がある」という警告として受け取っておくと良いでしょう。

KLA(KLAC)の中国市場における見通し

次に、KLA(KLAC)の中国での需要低下について、もう少し詳しく見ていきます。

(原文)If we look at the fourth quarter, as I said before, I thought we would see the percent come down. And it looks like it is coming down to somewhere in the mid-30s for the fourth quarter. And then so if you look at 2024, it's been elevated into the low 40s as a percent.

(日本語訳)第4四半期についてですが、前にも言ったように割合が減少すると思っていました。そして、第4四半期にはその割合が30%台半ばまで下がりそうです。2024年全体では割合が40%前後と高めに推移してきました。

(原文)And so when we look into next year, expecting some digestion next year, I would expect that to drop somewhere down to around 30% plus or minus a couple of points or so moving forward.

(日本語訳)来年に向けて、需要の調整が進むことを考えると、その割合は30%前後、多少の上下はあるかもしれませんが、その程度まで下がると予想しています。

つまり、中国の割合はラムリサーチ(LRCX)の予測と同様に、通常水準である30%程度まで下がる見込みです。

しかし、別の質問に対して、CEOのリック・ウォレス氏は次のように述べています。

(原文)Yes. I mean, Harlan, if you think about at the exit rate that we're talking about for Q4 -- that is -- if you keep that rate for 2025, that's a higher number. So you could have China be at a similar dollar level but a lower percentage.

(日本語訳)そうです。つまり、第4四半期の終了時点の割合をそのまま2025年も維持すると、金額自体は同じでも全体に占める割合は低くなるかもしれません。

ここで彼は、中国からの売上額は2024年と同水準を維持する可能性があるものの、割合としては30%まで下がるかもしれないと示唆しています。

つまり、そのためには中国以外での売上が同程度に増加する必要があるということです。

この点で混乱が生じ、あるアナリストが確認を求めることになりました。

(原文)First of all, I want to clarify something, Bren. You mentioned that China could go from 40% to 30% of sales next year, but dollar value remains the same. Is that true? If so, then your overall revenue should still grow pretty strongly compared to what WFE is expected to be. I'm just trying to figure out how to think about those two metrics?

(日本語訳)まず確認したいのですが、ブレン。来年、中国の売上比率が40%から30%に下がる一方で、金額は変わらないということでしたか?もしそうであれば、WFEの予想に比べても全体の売上は引き続き大きく成長するはずですよね。この2つの指標をどのように理解すればよいか整理したいのです。

CFOのブレン・ヒギンズの回答は、非常に混乱を招くものでした。

(原文)Yeah. I think it's a trend down. Look, we'll see how the year plays out. But I would expect it could be the same. It could be a little bit less.

(日本語訳)そうですね、全体としては下向きの傾向だと思います。年末に向けてどうなるか様子を見ていきたいですが、おそらく同じくらい、もしくは少し減るかもしれません。

(原文)I think what we were trying to say earlier is that investment levels have been pretty stable. So we'll see how it plays out. It's a little bit difficult to see into the second half of the 2025 from here.

(日本語訳)先ほどお伝えしたかったのは、投資水準は比較的安定しているということです。ですので、どのように推移するかを見守りたいと思います。ただ、現時点から2025年の後半を見通すのは少し難しいですね。

(原文)So I was just trying to give you some sense of directionally where things are moving as we see next year from percent of the overall.

(日本語訳)来年の全体に対する割合がどのように動いていくか、方向性だけでもお伝えできればと思っていました。

これらのポイントは重要で、理解に高度な知識が必要なわけではありませんが、今回の決算発表は今までで最も混乱を招くものでした。

混乱を整理した上での主な理由としては、KLAは2025年も成長を期待しており、最先端技術の強さが中国売上の減少を十分にカバーすると見込んでいるようです。

また、特に2025年前半までは中国事業が引き続き好調と見られる一方で、それ以降の見通しは不透明さが増している印象を受けました。

KLA(KLAC)は唯一の最先端プレーヤー?

Q&Aセッションでは、アナリストが次の難しい質問を投げかけました。

(原文)What would the implications be if we saw more consolidation? Would that provide some pressure because just more suppliers than simply more suppliers and customers?

(日本語訳)業界の統合が進んだ場合、どのような影響が考えられますか?単に供給者や顧客が増えるだけでなく、何かしらの圧力が生じる可能性はありますか?

それに対して、やや冗長な回答が返ってきましたが、一番興味深いのは最後の部分でした。

(原文)I think it would depend on the drivers. In other words, in a world where there was a single driver for the leading edge, say, take a microprocessor than -- and it had been made at multiple places, then you'd argue, sure, consolidation would be more efficient. What's interesting now is because there are so many advanced designs, the efficiency -- you need scale to have efficiency and they already have that scale. So I don't think it changes that much.

(日本語訳)それは要因によると思います。つまり、たとえば、最先端技術でマイクロプロセッサのような単一の要因があり、それが複数の場所で製造されていた場合、統合が効率化につながるという主張があるかもしれません。ただ、現在は多くの高度な設計があるため、効率を高めるには規模が必要であり、すでにその規模を持っているので、大きく変わることはないと思います。

(原文)I do think you have some people still making investments to do leading edge, say, in Japan, for example. And there's -- that -- that -- they're hoping to get part of the market. Our assumption is it remains at about the efficiency and the way we measure that and model for it as we think about what is the capital efficiency or the intensity of capital and process control for that segment as we go forward. And we're not really modeling it to go up significantly because there's a lot of players at the leading edge.

(日本語訳)また、日本などで最先端技術への投資を続けている企業もいます。彼らは市場の一部を狙っていますが、当社の想定では、効率性や資本効率、そしてプロセス制御に関しては現状維持の見込みで、特に大きな上昇を見込んでいません。なぜなら、最先端分野にはすでに多くのプレーヤーがいるからです。

(原文)Truthfully, there haven't been. I mean, for years now, we've really had primarily one major player at the leading edge. And so that's for most of the volume. So we're kind of already there.

(日本語訳)実際のところ、長年にわたり最先端分野では主要なプレーヤーが1社しかおらず、大部分の生産を担ってきました。そのため、現状ですでにその段階にあるといえます。

こちらの最後の段落には驚くべき発言が含まれています。

CEOのリック・ウォレス氏は、「ここ数年、最先端分野は事実上の1社独占状態だ」と一言で表現しています。

つまり、アナリストが指摘した業界再編は、すでに起こっているということです。

この発言に対して、サムスン電子(005930.KS)やインテル(INTC)はどのように感じるのでしょうか?

KLA(KLAC)に最新決算に対する結論

KLA(KLAC)は順調に業績を伸ばしており、2024年には成長率10.8%を見込んでいます。

また、2025年も引き続き成長が予想されています。

同社の中国市場への依存度は依然として42%と高いものの、2025年には縮小する見通しです。

ただし、その減少の程度については決算説明会で少し不透明な発言があり、混乱を招いています。

さらに、2025年の成長は最先端技術分野の需要に支えられ、従来型分野の投資を上回ると予想しています。

このことから、従来型分野には過剰供給の兆しが見られ、特に自動車、産業、IoT分野の回復の遅れが2025年まで続く可能性が示唆されます。

では、今後も同社の動向を見守っていきたいと思います!

さらに、その他のKLAKLAC)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクよりKLAのページにアクセスしていただければと思います。


アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

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