強気メタ・プラットフォームズメタ・プラットフォームズ(META)自社LLM「Llama」のオープンソース化の狙いは?他社のLLMと徹底比較!
コンヴェクィティ - 最新のメタ・プラットフォームズ(META)に関する分析は、2つの長編レポート(Part 1とPart 2)と1つの短編レポート(本稿)に分けられており、Part 2は数日後にリリース予定です。
- そして、本稿では、オープンソース化を含め、メタ・プラットフォームズの自社LLMであるLlamaの展開における同社の戦略を、他社のLLMとの比較を通じて詳しく解説していきます。
- LLM(大規模言語モデル)技術の掌握は、同社の広告技術での優位性を強化し、ROAS(広告費用対効果)やユーザーエンゲージメントの向上、さらに将来のAIを活用したチャットボットやレコメンデーションシステムといったプロダクトにも大きく寄与します。
- 同社の戦略は、過去のプロジェクトから学びながら、エコシステム構築や長期的な技術基盤への投資に焦点を当てており、これはアルファベットのAndroidオープンソースプロジェクトと似たアプローチです。
- 近日リリース予定のPart 2では、Llamaの収益化の可能性についてさらに詳しく掘り下げます。実際には、トレーニングコストが1,000億ドルに達すると、同社はより直接的な収益化戦略を検討する必要に迫られることが予想されます。
※「Part 1:メタ・プラットフォームズ(META)のLlama 3とは?競合他社比較を通じて生成AIでのLlamaの強みを探る!」の続き
メタ・プラットフォームズ(META)のLlamaの展開におけるバリューチェーンの管理とオープンコア化
メタ・プラットフォームズ(META)のOSモデルは安定しており、統合の準備が整っているように見えます。しかし、実際には、桁違いの規模でのビジネスの拡大はテクノロジー業界の巨人たちにとってさえも容易な道ではありません。
マイクロソフト(MSFT)のようなハイパースケーラーは、10億~100億ドルの投資を管理できますが、1000億ドル規模に拡大するには強い投資家の信頼か、収益成長が必要です。足元、AIへの設備投資は戦略的な重要性から正当化されますが、現在の財務的なリターンは限られています。
例えば、マイクロソフトはGPT-4への投資を通じて、年間収益をわずか10億ドル増加させたにすぎません。しかし、一方で、GPT-4への投資による間接的な利益も存在します。GPT-4はアマゾン(AMZN)のAWSの顧客をAzureに引き寄せ、Azureの基盤を拡大することに成功しています。
しかしながら、メタ・プラットフォームズの戦略は異なります。マイクロソフトとは異なり、メタ・プラットフォームズは企業向けのテクノロジーから直接的な利益を得ていません。その代わりに、メタ・プラットフォームズはLlamaをOCP(Open Compute Project)のように活用しています。
OCPは業界標準となり、Llamaもオープンソース化することでコミュニティ主導の改善に依存しています。すでに多くのLlamaベースのLLM(大規模言語モデル)が登場しており、メタ・プラットフォームズはLlamaを直接収益化することなく、これらのイノベーションを統合しています。
また、生成AIはメタ・プラットフォームズの収益にとって重要です。同社のLLM技術はROAS(広告費用対効果)を100%向上させ、広告主に利益をもたらす可能性があります。
さらに、LLMはレコメンデーションエンジンを支え、ByteDance(TikTok)との競争やメタ・プラットフォームズのReelsの改善に役立ちます。LLMへの投資はユーザーエンゲージメントやユーザーあたりの収益を増加させ、同社の競争力を高めるでしょう。
加えて、LLM技術は将来のAI製品にも関連しています。Meta AIチャットボットは、メタ・プラットフォームズの所有するWhatsAppやMessengerを強化し、収益化の可能性を開くかもしれません。LLMを自ら自社で開発することで、メタ・プラットフォームズはアルファベット(GOOG/GOOGL)や他社に依存せず、コストのかかるLLMアクセスを回避することができます。
一方で、主流のLLMを使った消費者向けアプリケーションはまだ発展途上ですが、メタ・プラットフォームズは、今後も、LLM開発を自らコントロールする必要があります。これにより、柔軟で革新的であり続けることができ、これが同社がLlamaに大規模な投資を行い、オープンソース化した理由だと考えます。
しかしながら、多くの人が、「なぜメタ・プラットフォームズがLlamaを直接収益化せずにオープンソース化したのか」と疑問に思うかもしれません。しかし、同様の戦略は過去に成功しています。例えば、アルファベットはAndroidのAOSPをオープンソース化しましたが、GMSを通じて収益化し、クラウドプラットフォームに主要なアプリを束ねることが出来ました。
そして、これにより、アルファベットはモバイル広告市場を支配することができました。さらに、アルファベットのプライバシーポリシーの変更は、顧客には好評でも、メタ・プラットフォームズや他のアドテク企業には影響を与えています。メタ・プラットフォームズはモバイルOSを自社でコントロールしていないため、コストが増加し、不利な立場にあると言えます。
関連用語
オープンコア: ソフトウェアの基本部分をオープンソースとして公開し、誰でも無料で利用できる一方、追加機能やサポートなどの高度な部分は有料で提供するビジネスモデル。これにより、広範なユーザー層にリーチしつつ、収益化も図ることができる。
OSモデル: オペレーティングシステム(OS)のアーキテクチャや設計のこと。ハードウェアとソフトウェアの動作を管理する。
ハイパースケーラー: 巨大なデータセンターやクラウドサービスを運営する企業。マイクロソフトやアマゾン等が代表例。
OCP(Open Compute Project): データセンター向けのオープンソースハードウェア設計を提供するプロジェクト。メタ・プラットフォームズが主導し、効率的なデータセンター運用を目指している。
オープンソース: ソフトウェアのソースコードを公開し、誰でも使用、修正、配布できるようにすること。
ROAS(広告費用対効果): 広告にかけた費用に対して、どれだけの収益が得られたかを示す指標。
レコメンデーションエンジン: ユーザーの行動や好みに基づいて、商品やコンテンツを自動的に推薦するシステム。
Android: 元々、Android Inc.によって開発され、その後2005年にGoogleが買収してモバイルOSとして広く普及させたオペレーティングシステム。現在、世界で最も多くのスマートフォンに搭載されているOSで、オープンソースとして提供され、幅広いデバイスで利用されている。
AOSP: Android Open Source Projectの略で、アルファベットが提供するAndroidのオープンソース版。
GMS: Google Mobile Servicesの略で、アルファベットの主要アプリやサービスをバンドルしたパッケージ。
モバイルOS: スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイス向けに開発されたオペレーティングシステム。
メタ・プラットフォームズ(META)の発展途上国での無料インターネット競争とLlamaの展開
メタ・プラットフォームズ(META)のLlama戦略は、過去の経験から形成されているように見えます。Internet.orgやFree Basicsのような初期のプロジェクトは、発展途上国への拡大を目指しましたが、結果は限定的でした。これにもかかわらず、メタ・プラットフォームズが長期的なプロジェクトに賭ける姿勢は明確です。
同社のWhatsAppやInstagramの買収も、競合他社が市場を奪うのを防ぐための戦略的な動きであったと言えます。例えば、WhatsAppは買収当初収益を計上していませんでしたが、同社は190億ドルのコストをWhatsApp買収のために計上しています。一方で、10億ドルのコストを要した買収により手に入れたInstagramは、同社の広告エコシステムに上手く統合されていると言えます。ただし、全体として、これらの同社の買収、並びに、投資の動きは、同社が即座のリターンがなくても、将来のプラットフォームに投資する準備があることを示しているように見えます。
そして、同社のLlama戦略は、これらの教訓を反映しています。過去の無料インターネットプロジェクトと同様に、Llamaはインフラへの長期的な賭けであるように見えます。Llamaをオープンソース化することで、同社は広範なAIエコシステムを構築し、アルファベットのAndroidモデルに似たアプローチを取り、直接の収益化を必要とせずにAI分野で中心的な役割を果たすことを目指しています。
要するに、メタ・プラットフォームズのLlamaアプローチは成熟した投資戦略を示しているように見えます。つまり、オープンなエコシステムを促進し、過去の取り組みから学ぶことで、同社はソーシャルメディアやメッセージングと同様にAI分野でリードすることを目指しています。そして、この戦略により、メタ・プラットフォームズはAI開発の最前線に立ち続け、過去の失敗を回避することができると見ています。
関連用語
Internet.org: メタ・プラットフォームズが推進したプロジェクトで、開発途上国でのインターネットアクセスを拡大し、無料で基本的なウェブサービスを提供することを目的としている。
Free Basics: Internet.orgの一環として提供されたプログラムで、特定のウェブサービスを無料でアクセスできるようにするもの。
過去の無料インターネットプロジェクト: Internet.orgやFree Basicsのようなプロジェクトを指し、メタ・プラットフォームズが無料または低価格でインターネットアクセスを提供する試み。
アナリスト紹介
弊社のその他のテクノロジー関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、弊社プロフィールページにアクセスしていただければと思います。
2019年に設立されたコンヴェクィティは、AI、サイバーセキュリティ、SaaSを含むエンタープライズ(企業)向けテクノロジーを扱うテクノロジー企業に関する株式分析レポートを提供しています。セールス・チャネルや分析対象企業の経営陣との関係に依存する投資銀行や証券会社のアナリストとは異なり、対象企業のプロダクト、アーキテクチャー、ビジョンを深掘りすることで投資家に付加価値の高い、有益な情報の提供を実現しています。
当社のパートナーであるジョーダン・ランバート氏とサイモン・ヒー氏は、「最新のテクノロジーに対する深い洞察」、「ビジネス戦略」、「財務分析」といったハイテク業界におけるアルファの機会を引き出すために不可欠な要素を兼ね備えております。そして、特に、第一線で活躍する企業やイノベーションをリードするスタートアップ企業を含め、テクノロジー業界を幅広くカバーすることで、投資家のビジビリティと長期的なアルファの向上に努めています。
ジョーダン・ランバート氏 / CFA
ランバート氏は、テクノロジー関連銘柄、および、リサーチとバリュエーションのニュアンスに特別な関心を持つ長年のハイテク投資家です。ランバート氏は、CFA資格を取得した後、2019年10月にコンヴェクィティを共同設立しており、新たな技術トレンド、並びに、長期的に成功する可能性が高い企業を見極めることを得意としています。
サイモン・ヒー氏
ヒー氏は、10年以上にわたってテクノロジーのあらゆる側面をカバーしてきた経験を生かし、テクノロジー業界における勝者と敗者を見極める鋭い洞察力を持っています。彼のテクノロジーに関するノウハウは、ビジネス戦略や財務分析への理解と相まって、コンヴェクィティの投資リサーチに反映されています。コンヴェクィティを共同設立する以前は、オンラインITフォーラムでコミュニティ・マネージャーを務め、ネットワーク・セキュリティ業務に従事していました。ヒー氏は、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンを卒業し、商学士号を取得しております。
その他のテクノロジー銘柄関連レポート
1. ① Part 1:クラウドフレア / NET:サイバーセキュリティ銘柄のテクノロジー上の競争優位性(強み)分析と今後の将来性(前編)
2. ①ルーブリック / RBRK(IPO・新規上場):サイバーセキュリティ銘柄の概要&強み分析と今後の株価見通し(Rubrik)
3. クラウドストライク(CRWD)システム障害で世界中のPCがクラッシュ!原因と対策、今後の株価への影響と将来性を徹底解説!
その他のメタ・プラットフォームズ(META)はに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、メタ・プラットフォームズのページにアクセスしていただければと思います。
インベストリンゴでは、弊社のアナリストが、高配当関連銘柄からAIや半導体関連のテクノロジー銘柄まで、米国株個別企業に関する動向を日々日本語でアップデートしております。そして、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は250銘柄以上となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームよりレポートをご覧いただければと思います。
※インベストリンゴ上のいかなるレポートは、投資や税務、法律のアドバイスを提供するものではなく、情報提供を目的としています。本資料の内容について、当社は一切の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。具体的な投資や税務、法律に関するご相談は、専門のアドバイザーにお問い合わせください。