【高配当:決算】アルトリア・グループ(MO)で配当生活?配当金は1.02ドル!54年間連続増配の配当王の魅力に迫る!
- 本稿では、注目の米国高配当銘柄であるアルトリア・グループ(MO:配当王・予想配当利回り7.71%・配当性向79%・1株当たり配当金1.02ドル)の2025年1月30日に発表された最新の2024年度第4四半期決算と配当推移の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 同社は、たばこ・嗜好品市場で圧倒的なシェアを持ち、「マールボロ」ブランドを中心に高い市場競争力を維持しています。さらに、電子たばこ市場への参入や戦略的投資を通じて事業の多角化を進めています。
- 同社は54年間連続で増配を継続していることから米国株配当王の一角を担っている一方で、2024年の配当成長率は4.10%、予想配当利回りは7.71%と高水準です。配当性向は79%と高めですが、堅実な財務基盤に支えられた安定した株主還元を続けています。
- 最新の決算では、EPSが1.29ドルとなり、前年同期比で増加しました。ROICは過去5年・10年の中央値を上回り、財務効率が高いことを示していますが、株価はやや割高と評価されており、今後の成長戦略が重要になります。
アルトリア・グループ(MO)の概要
セクター:たばこ製品
現在の株価:52ドル
時価総額:893.5億ドル
過去5年間の配当成長率:4.10%
前回配当落ち日:2024年12月26日
前回配当支払い日:2025年1月10日
予想配当利回り:7.71%
過去5年間の売上高成長率:1.90%
過去10年間の売上高成長率:2.60%
関連用語
安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。
売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。
足元の株価推移
(出所:筆者作成)
アルトリア・グループ(MO:配当王・予想配当利回り7.71%・配当性向79%・1株当たり配当金1.02ドル)は、米国バージニア州リッチモンドに本社を置く、たばこ・嗜好品業界の大手企業です。フィリップモリスUSA、USスモーキーレスタバコ、ジョン・ミドルトン、ホライズン・イノベーションズ、ヘリックス・イノベーションズなどを傘下に持ち、紙巻たばこ・無煙たばこ市場で圧倒的なシェアを誇ります。主力ブランド「マールボロ」は、2023年に米国市場で42%のシェアを獲得し、業界トップの地位を維持しています。さらに、電子たばこ事業の強化のため2023年にNjoyホールディングスを買収し、日本たばことの合弁を通じて加熱式たばこ市場にも参入しています。
アルトリアは、たばこ以外の事業展開にも積極的で、世界最大のビールメーカーであるアンハイザー・ブッシュ・インベブ(AB InBev)に8%出資し、大麻メーカーのクロノス(Cronos)には42%の株式を保有しています。こうした戦略的投資により、嗜好品市場の多角化を進めています。
配当政策も同社の大きな魅力の一つで、2024年の年間配当成長率は4.10%、予想配当利回りは7.71%と高水準を維持。2025年の次回配当権利落ち日は3月25日に予定されており、長期的な配当成長の見込みもあります。高い配当性向(79%)を維持しながらも、堅実な財務基盤に支えられた安定した配当を提供しており、インカムゲインを重視する投資家にとって魅力的な選択肢となっています。さらに、同社は54年間にわたり連続して増配を実施ており、米国株配当王の一角を担っています。
そして、同社は2025年1月30日に2024年第4四半期決算を発表しており、本稿では同社の最新の決算と財務パフォーマンス、並びに配当推移を詳しく分析していきます。
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アルトリア・グループ(MO)の最新の2024年度第4四半期決算発表に関して
アルトリア・グループ(MO)は、最新の最新の2024年度第4四半期決算において、特別損益を除いた1株当たり利益(EPS)を1.29ドルと発表しました。
これは前四半期の1.38ドルから6.5%の減少となる一方で、前年同期の1.17ドルからは増加しています。
また、希薄化後のEPSは1.79ドルとなり、前四半期の1.34ドルから上昇しました。
1株当たり売上高は3.014ドルで、前四半期の3.138ドルからは減少しましたが、前年同期の2.842ドルからは増加しています。
加えて、過去5年間のEPS(特別損益除く)の年平均成長率(CAGR)は5.00%、過去10年間のCAGRは6.90%となっています。
さらに、粗利益率は、過去10年間で最高の70.28%に達し、10年間の中央値である63.35%を大きく上回っています。
また、同社の自社株買い比率は過去1年間で4.10%に達し、流通株式数を減らすことでEPSの向上に貢献しています。
これは過去10年間の自社株買い比率の中央値である1.20%と比較して、積極的な買い戻し戦略を取っていることを示しています。
今後の見通しとして、市場のアナリストは次年度のEPSを5.246ドル、その翌年のEPSを5.368ドルと予測しています。
一方で、業界全体の成長予測は今後10年間で中程度の成長にとどまる見込みであり、大幅な売上成長を維持するのは難しい可能性があります。
次回の決算発表は2025年4月25日に予定されており、同社の今後の業績や戦略についてさらなる情報が得られるでしょう。
非経常損益項目を除くベースでのEPS
(年間ベース:直近4四半期の合計値)
(出所:筆者作成)
関連用語
EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。
非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。
希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。
1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。
粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。
自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アルトリア・グループ(MO)の財務パフォーマンスに関して
アルトリア・グループ(MO)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。
同社は、ROICがWACCを5年・10年のいずれの期間でも上回っており、強固な財務効率と価値創造を示しています。
具体的には、過去5年間のROICの中央値は25.23%で、WACCの中央値である6.26%を大幅に上回っています。
この差は、同社が資本を効果的に活用し、資本コストを超える利益を生み出していることを意味します。
また、現在のROICは28.73%、WACCは6.94%であり、同社の株主価値創出能力の強さをさらに裏付けています。
この安定した収益性は、アルトリアの戦略的な資本配分と事業運営の効率性によるものです。
ただし、自己資本利益率(ROE)がマイナスであることは、同社のバランスシート構造に関する懸念材料となる可能性があります。
それでも、ROICがWACCを大きく上回っていることから、長期的な価値創出能力は高いと考えられます。
投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の比較
(出所:筆者作成)
関連用語
総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。
自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。
投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。
ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。
加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アルトリア・グループ(MO)の配当に関して
アルトリア・グループ(MO)は54年間にわたり連続して増配を継続していることから米国株配当王の一角を担っており、過去5年間の配当成長率は4.10%、直近3年間の成長率は4.40%とわずかに高くなっています。
また、直近の四半期では、1株当たり配当金を1.02ドルに増額(前回は0.98ドル)していますが、この増額は同社のキャッシュフロー創出能力への自信と、株主還元の継続的な意志を示しています。
さらに、同社の予想配当利回りは7.71%と高水準を維持しており、業界平均と比較しても魅力的な水準です。
また、同社のEBITDA有利子負債倍率は1.66倍で、低リスクであり、十分な債務返済能力を持つことを示しています。
これは業界平均と比較しても好ましい水準であり、同社が債務を適切に管理しつつ配当を維持できる体制にあることを示唆しています。
基本的には、EBITDA有利子負債倍率は2倍以下であれば財務リスクが低く、4倍以上であれば財務リスクが高いことを示すとされています。
さらに、今後3〜5年間の予想配当成長率は4.15%と見込まれており、株主への安定した還元が続くと予想されます。
ただし、配当性向は79%と高水準であるため、慎重な監視が必要でしょう。
高水準の配当性向が続くと、将来的な業績変動による影響を受けやすくなる可能性があります。
次回の配当権利落ち日は2025年3月25日と予想されており、四半期ごとの配当スケジュールが維持される見込みです。
この日程を考慮することで、投資家は配当取得の計画を立てることができるでしょう。
予想配当利回り:7.71%
配当性向:79%
配当カバレッジ・レシオ:1.64倍
過去5年間の配当成長率: 4.10%
EBITDA有利子負債倍率:1.66倍
DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出所:筆者作成)
Dividend Yield:予想配当利回り
(出所:筆者作成)
Dividend Payout:配当性向
(出所:筆者作成)
関連用語
1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。
配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。
予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。
配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。
EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。
配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。
配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。
配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アルトリア・グループ(MO)のバリュエーションに関して
アルトリア・グループ(MO)の現在の株価は52.85ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である46.74ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-13.07%となっていることから、やや割高である可能性が示唆されています
一方で、直近12か月(TTM)のPER(株価収益率)は8.07倍で、過去10年の中央値15.51倍よりも低くなっています。
これは、過去の評価と比較して割安と見なせる可能性があります。
ただし、予想PERは9.9倍であり、今後の収益成長は控えめであることが示唆されています。
しかし、TTMのPSR(株価売上高倍率)は4.44倍で、10年中央値4.63倍よりやや低い水準にあります。
また、EV/EBITDA倍率(企業価値/EBITDA)は7.35倍と、過去10年の中央値12.29倍を大きく下回っています。
この点から、EBITDAを基準とした評価では割安感があると考えられます。
さらに、株価フリーキャッシュフロー倍率は10.81倍で、10年中央値12.12倍を下回っています。
これは、フリーキャッシュフローを基準とした場合も株価が割安であることを示唆しています。
加えて、市場のアナリストの目標株価は最近低下傾向にあり、現在の平均は55.05ドルとなっています。
これは慎重と楽観が混在している状況を示しており、大幅な上昇余地は限定的であるように見えます。
以上より、同社は過去の評価基準と比較した場合の低いバリュエーションを踏まえると、今後の経営戦略や業界動向次第では投資機会を提供する可能性もあるでしょう。
(出所:筆者作成)
上記グラフにおける関連用語
Price:現在の株価
Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値
DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価
DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価
Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価
Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価
赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値
関連用語
実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。
株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。
株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。
EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。
PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アルトリア・グループ(MO)のリスクとリターンに関して
アルトリア・グループ(MO)のリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。
まず、同社のリスクプロファイルは一長一短です。
配当性向が79%と高いため、収益の減少が続くと配当維持に関するリスクが高まります。
この状況は、キャッシュフローに圧力をかけ、配当継続のための資金繰りが厳しくなる可能性を示唆しています。
また、株価が過去5年間の高値付近にあるため、上昇余地が限られ、市場環境や企業業績の悪化時には調整リスクが高まる可能性があります。
一方で、ピオトロスキーのFスコアは7と高く、同社が効率的に事業運営を行っていることを示しています。
また、アルトマンのZスコアも4.65と高く、財務破綻のリスクが低いことを示しています。
さらに、営業利益率の改善は収益性の向上を示しており、配当性向の高さや収益減少のリスクを一定程度緩和する可能性があります。
ベニッシュのMスコアによる分析でも、財務操作の可能性は低いとされており、報告された財務データの信頼性は比較的高いと考えられます。
総じて、同社の財務健全性は高いものの、高い配当性向や株価の水準を考慮すると、慎重なモニタリングが必要です。
投資家は、これらのリスクと成長の可能性を天秤にかけ、投資判断を行う必要があるでしょう。
関連用語
財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。
アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。
ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。
ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。
ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アルトリア・グループ(MO)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して
過去1年間のインサイダー取引を見ると、アルトリア・グループ(MO)のインサイダーによる取引は最小限にとどまっています。
この期間中、インサイダーによる買い付けはゼロで、売却は1件のみでした。
このデータからは、インサイダーが株価の現在の水準に対して特に強い信頼や懸念を持っていないことがうかがえます。
インサイダーによる取引が活発でない理由として、企業の安定性や、市場価格に対する満足感が考えられます。
ただし、取引規制や個人的な財務戦略の影響もあり得るでしょう。
ただし、現在、インサイダーによる同社株式の保有比率は0.62%と低く、対照的にプロの機関投資家の保有率は59.84%に達しています。
このことから、同社の株価はプロの投資家による監視が厳しく、機関投資家の影響を強く受ける可能性が高いと考えられます。
インサイダー(内部関係者)による売買
(出所:筆者作成)
関連用語
インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。
機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。
アルトリア・グループ(MO)の流動性に関して
アルトリア・グループ(MO)の流動性分析によると、市場での取引環境は安定しており、1日あたりの平均取引量は8,382,889株に達しています。
これは過去2か月間の平均取引量(8,081,642株)を上回っており、最近になって株式への関心や取引活動が活発化していることを示しています。
取引の観点から見ると、取引量の増加は流動性の向上につながる可能性があり、結果として売買スプレッドの縮小や価格の発見機能の向上が期待されます。
これにより、トレーダーや投資家はよりスムーズに売買を行うことができるでしょう。
また、ダークプール指数(DPI)は現在59.67%と高い水準にあり、取引の大部分がダークプール(非公開市場)で行われていることが分かります。
この数値は、全取引の半数以上が通常の証券取引所を介さずに執行されていることを示しており、プロの機関投資家の関与が大きい可能性があります。
こうした取引形態は、個人投資家が見える価格動向に影響を与えることも考えられます。
総合的に見ると、同社の現在の流動性や取引データは、プロの機関投資家の関心が高く、流動性の確保が進んでいることを示しています。
このことは、大口投資家が同社の将来性に対して一定の信頼を持っている可能性を示唆していると言えるでしょう。
関連用語
※ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。
※ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。
さらに、その他のアルトリア・グループ(MO)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、アルトリア・グループのページにアクセスしていただければと思います。
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アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏
📍バリュー&インカム・テクノロジー担当
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