10/15/2024

【Part 1:後編】AzureとGCPとOCIの比較:AzureとGCPとOCIの違いとは?マイクロソフトのクラウド業界での優位性に迫る!

the google logo is displayed in front of a black backgroundコンヴェクィティ  コンヴェクィティ
  • 本稿では、マイクロソフト(MSFT)のAzureをグーグルのGCP(Google Cloud Platform)とオラクルのOCI(Oracle Cloud Infrastructure)との詳細な比較を通じて、これらのサービスの違い、さらに、Azureのクラウド業界における優位性を深掘りしていきます。
  • マイクロソフトのAzureはエンタープライズ市場に強く、統合プラットフォームとハイブリッドクラウド戦略により、市場シェアでグーグルのGCPを上回っています。 
  • GCPはデータ分析や機械学習で強みを持つものの、エンタープライズ市場での採用が遅れ、成長に限界があるように見えます。 
  • また、オラクルのOCIは、クラウド移行が遅れたことや複雑なライセンス体系が原因で、Azureに大きく遅れをとっています。

※「【Part 1:前編】AzureとAWSの比較:AzureとAWSの違いとは?マイクロソフト(MSFT)のクラウド業界における強みに迫る!」の続き

マイクロソフト(MSFT)のAzureとグーグル(GOOG)のGCPの比較

マイクロソフト(MSFT)のAzureの主要な競合相手はAWSですが、グーグル(GOOG/GOOGL)のGCP(Google Cloud Platform)も独自の強みを持つ挑戦者として存在感を示しています。

GCPは、データ分析や機械学習(ML)、そしてグーグルが開発したKubernetesを通じたコンテナオーケストレーション(複数のコンテナ化されたアプリケーションを自動で配置、管理、スケーリングするプロセスのこと)に早期から注力しており、この分野でのイノベーションにおいて優位性がありました。

ご参考までに、コンテナ化とは、アプリケーションとその実行に必要な依存関係(ライブラリや設定ファイルなど)を1つのパッケージ(コンテナ)にまとめて、どの環境でも一貫して動作できるようにする技術のことです。

しかしながら、GCPはマイクロソフトが支配する従来のエンタープライズ市場に食い込むことに苦戦していました。

グーグルはマイクロソフトのように確立されたエンタープライズとの関係を持っていなかったため、GCPのハイブリッドクラウドの展開やエンタープライズ市場での成長が限定的でした。

BigQuery(グーグルが提供するフルマネージドのデータウェアハウスで、大量のデータを高速に分析・クエリできるクラウドベースのサービス)やTensorFlow(グーグルが開発したオープンソースの機械学習ライブラリで、ディープラーニングを含むさまざまな機械学習モデルの構築、トレーニング、実行を効率的に行うことが可能)といったAIツールでのリードはありましたが、マイクロソフトのAzureのように、既存の企業とのつながりを活かすことができませんでした。

グーグルはKubernetesでコンテナ技術をリードしましたが、それを商業的に展開するのは容易ではありませんでした。

コンテナやKubernetesは複雑で、多くの企業はよりシンプルな仮想マシン(VM)のソリューションを好んでいたのです。

GCPのモジュール型のアプローチはスタートアップに好まれましたが、エンタープライズ市場での採用が遅く、また、グローバルなインフラの規模も限られていたため、市場拡大には限界がありました。

一方、Azureはハイブリッドクラウド(オンプレミスのデータセンター「自社内のサーバー」と、パブリッククラウド「外部のクラウドサービス」を組み合わせて利用するクラウド環境のこと)に注力し、Office 365やDynamics(マイクロソフトが提供する企業向けの統合業務アプリケーション)などのツールを統合することで、企業にとって使いやすい統合プラットフォームを提供しました。

この戦略に加えて、Azureの広範なインフラや充実したプロフェッショナルサービスが、特に規制の厳しい市場での強みとなりました。

まとめると、Azureの成功は、エンタープライズのニーズを理解し、導入しやすいエコシステムを構築したことにあります。

GCPは分析、機械学習、コンテナ技術に強みを持っているものの、エンタープライズ市場での導入の遅れやハイブリッドクラウド機能の不足により、これらの強みを十分に活かせていません。

Azureは統合されたアプローチとエンタープライズ向けの戦略で、GCPを市場シェアで上回る結果となっています。

マイクロソフト(MSFT)のAzureとオラクル(ORCL)のOCIの比較

マイクロソフト(MSFT)のAzureとオラクル(ORCL)のOCI(Oracle Cloud Infrastructure)の比較は非常に興味深いです。

どちらの企業も2010年代初頭には、オンプレミスのエンタープライズソフトウェアやデータベースに強みを持ち、似たようなスタート地点にいましたが、AzureはAWSとの距離を大きく縮めたのに対し、OCIは同じレベルの成功を収めることができませんでした。

この差を生んだ大きな要因のひとつがリーダーシップです。

マイクロソフトのサティア・ナデラCEOはクラウドコンピューティングを早い段階で受け入れ、「クラウドファースト」戦略を推進しました。

この先見性がAzureの成長を加速させた一方で、オラクルの前CEOで現在CTOのラリー・エリソン氏は当初、クラウドを「ナンセンス」と見なし、その結果、クラウドへの移行が遅れ、OCIの成長が制限されました。

ナデラ氏は、マイクロソフトのビジネスソリューションやサーバー&ツール部門での豊富な経験を持ち、それがAzureの成功に貢献しました。

彼は、SQL Server(マイクロソフトが提供するリレーショナルデータベース管理システム)をクラウド向けに再設計し、スケーラビリティと柔軟性を重視したAzure SQL Databaseを開発しました。

また、Azure SQL Managed Instanceを導入することで、オンプレミスからクラウドへの移行をよりスムーズにし、企業がAzureを採用しやすい環境を整えました。

これに対して、オラクルはクラウド移行に慎重で、利益性の高いオンプレミスライセンスモデルを守ることに注力していました。

Autonomous Databaseなどのクラウドソリューションを導入するまでに時間がかかり、さらにインフラ面での課題や顧客の懐疑心がOCIの成長を妨げました。

特に、オラクルの従来の顧客である銀行や公共サービス業界では、業務の機密性が高いため、クラウドへの移行に対する抵抗が強く、それもOCIの普及を遅らせた要因の一つです。

マイクロソフトは、Azure Hybrid Benefitといった柔軟なライセンスオプションを提供し、クラウド移行の障壁を低くしましたが、オラクルは複雑で高額なライセンス体系が顧客にとっての負担となりました。

さらに、マイクロソフトはオープンソース技術への積極的な取り組みやGitHubの買収を通じて、開発者コミュニティに対する魅力を高めました。

一方で、オラクルは独自技術に依存する傾向が強く、その結果、広範な開発者層を取り込むのに苦戦しました。

最終的に、マイクロソフトはクラウドネイティブ技術への早期投資、柔軟なモデル、そして開発者との強力な連携によってAzureをクラウド業界のリーダーに育て上げました。

一方、オラクルは慎重なアプローチと複雑なライセンス構造により、競争の激しいクラウド市場で出遅れていると言えます。

Part 2では、マイクロソフトがAzureを活用してどのようにして世界最大のサイバーセキュリティ事業を構築したのか、そして、今後の業界全体への影響について詳しく解説していきます。

また、グーグルのサイバーセキュリティ分野での展望についても触れていきますので、是非、ご覧いただければと思います。

また、その他のマイクロソフト(MSFT)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、マイクロソフトのページにアクセスしていただければと思います。


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