【半導体・AI】台湾Computex 2024:インテルとは対照的にAMDはマイクロソフトのCoPilot+を支持
ウィリアム・ キーティング- AMD(AMD)のリサ・スーCEOは、Computex 2024の基調講演で、インテル(INTC)よりもCoPilot+に対して肯定的な反応を示した。
- マイクロソフト(MSFT)のダヴルリ氏は、AMDとクアルコム(QCOM)と共にステージに登場し、CoPilot+のパートナーシップを強調していた。
- スーCEOとダヴルリ氏のやり取りで、NPUの重要性とそのダイ面積の占有について興味深い議論が交わされていた。
※「【半導体・AI】マイクロソフトのCoPilot+とインテルの対立、台湾Computex 2024の注目ポイントを徹底解説」の続き
Computex 2024に対するAMDの反応
AMD(AMD)のリサ・スー最高経営責任者(CEO)は、Computex 2024における基調講演でインテル(INTC)と比較してCoPilot+に対してより肯定的な反応を示している。
まず、マイクロソフト(MSFT)に関しては、サティア・ナデラCEOがビデオリンクで短く登場するのではなく、Windowsデバイス担当コーポレート・バイスプレジデントのパヴァン・ダヴルリ氏が一緒に登壇していた。
注:前編のインテルの基調講演に関するセクションでは触れなかったが、ここでは代わりに、マイクロソフトのダヴルリ氏がAMDとクアルコム(QCOM)の両社と共にステージに登場し、CoPilot+のパートナーシップをアピールしたという事実を強調したい。
彼がインテルのゲルシンガーCEOとともにステージに登場しなかったことは、どうとでも解釈できる。
当初、スーCEOは主にAI PCについて言及していたが、すぐに方針を転換し、Ryzenプロセッサ向けの新アーキテクチャ「Strix Point」を紹介する下記のような基調講演のスライドを含め、CoPilot+について何度も言及した。
2人のやりとりの中で、NPUNPU(Neural Processing Unit / ニューラル プロセッシング・ユニット)の話題が出ていた。
スーCEOは、かなりユーモアを交えて、ダヴルリ氏に直接、「あれだけのTOPSを使って何をしているのですか?(What are you doing with all those TOPS?)」と質問をした。
そして、ダヴルリ氏がその質問に答える前に、スーCEOはNPUがどれだけのダイ面積を占めるかについてコメントしている。
これはすべて面白半分で言ったことだが、根底にある真実、つまり、NPUは本当に大きく、ダイ面積を大量に消費するという事実がここに露呈している。
NPUのTOPSがなぜ必要なのかについての2人の議論は、短いが非常に興味深い内容となっており、23:49時点から再生していただければと思う。
そして、インテルのパット・ゲルシンガーCEOがNPUについて語ったことと比較しながら聞くことをお勧めする。
この問題に対する両者の考えは正反対であることが分かるだろう。
マイクロソフト(MSFT)によるRecall(リコール)計画の変更
Computex 2024が閉幕した2024年6月7日金曜日、マイクロソフト(MSFT)のパヴァン・ダヴルリ氏はブログを投稿し、CoPilot+のリコール機能の展開方法に関する計画の変更を発表した。
その詳細は以下の見出しの下に記載されている:「顧客からのフィードバックに耳を傾け、行動する(Listening to and acting on customer feedback)」
(原文)Even before making Recall available to customers, we have heard a clear signal that we can make it easier for people to choose to enable Recall on their Copilot+ PC and improve privacy and security safeguards. With that in mind we are announcing updates that will go into effect before Recall (preview) ships to customers on June 18.
(日本語訳)Recallをユーザーに提供する前にも、ユーザーがCopilot+ PCでRecallを有効にすることをより簡単に選択できるようにし、プライバシーとセキュリティの安全策を改善できるという、マイクロソフトからの明確なシグナルであると見ている。このことを念頭に置いて、6月18日にお客様にRecall(プレビュー版)を出荷する前に実施するアップデートを発表します。
(原文)First, we are updating the set-up experience of Copilot+ PCs to give people a clearer choice to opt-in to saving snapshots using Recall. If you don’t proactively choose to turn it on, it will be off by default.
(日本語訳)まず、Copilot+ PCのセットアップ体験を更新し、Recallを使用してスナップショットを保存することを選択できるようにします。自らオンにすることを選択しない場合、デフォルトではオフになります。
(原文)Second, Windows Hello enrollment is required to enable Recall. In addition, proof of presence is also required to view your timeline and search in Recall.
(日本語訳)次に、Recallを有効にするにはWindows Helloの登録が必要です。さらに、Recallであなたのタイムラインを見たり、検索したりするには、出席証明(Proof of Presence)も必要です。
(原文)Third, we are adding additional layers of data protection including “just in time” decryption protected by Windows Hello Enhanced Sign-in Security (ESS) so Recall snapshots will only be decrypted and accessible when the user authenticates. In addition, we encrypted the search index database.
(日本語訳)第三に、Windows Hello Enhanced Sign-in Security (ESS)によって保護された 「just in time」復号化を含むデータ保護のレイヤーが追加され、Recallスナップショットはユーザーが認証された時のみ復号化されアクセスできるようになります。さらに、検索インデックスデータベースも暗号化しました。
私は、マイクロソフトが顧客からのフィードバックに耳を傾け、対応していることは良い兆候だと思うが、そもそもこれらの問題はかなり容易に予測できたことだとも思う。
これら一連の流れを見る限り、結局は、マイクロソフトも完璧ではないようである。
CoPilot+を愛するTSMC / 台湾積体電路製造(TSM)
先に、AI PC「CoPilot+」の発表にまつわるドラマにもかかわらず、ある企業がもうかり過ぎて笑いが止まらないというのを耳にしているが、それはもちろんTSMC(TSM:台湾積体電路製造)である。
TSMCは、インテル(INTC)のパット・ゲルシンガーCEOのPC部門に関するスピーチにおいても特別に言及されている。
TSMCは、我々の現在のAI市場の急成長を活用するための投資戦略の要であり続けている。
もちろんエヌビディア(NVDA)ほどエキサイティングではないが、我々はTSMCがAIハードウェア関連の多くのビジネスに関連している点が気に入っている。
Computex 2024に関するまとめ
クアルコム(QCOM)は、マイクロソフト(MSFT)のCoPilot+に関する限り、全力を尽くしている。
AMD(AMD)も乗り気ではあるが、40TOPS超という要件には満足していないようにも見える。
インテル(INTC)も乗り気だが、ゲルシンガーCEOが実際に「CoPilot+」という言葉を口にしたがらなかったり、NPUの役割について異例のコメントをしたり、マイクロソフトのダヴルリ氏が壇上にいなかったりしたことから分かるように、ある意味、受動的で、また、積極的な態度(Passive Aggressive)で臨んでいるように見える。
今はマイクロソフトが主導権を握っており、インテルもそれを知っているが、インテルはそれを好んでいない。
今後、どの様な展開となるか注目していきたい。
最後に、Chat GPT 4oを用いてComputex 2024に関するハイライト・サマリーを作成したが、これには感銘を受けたので、是非、読者の皆様とここで共有したい。
Computex 2024のハイライト
6月4日から7日まで台北で開催されたComputex 2024は、ハイテク業界において極めて重要なイベントであり、主要企業による重大な発表やイノベーションが注目を集めた。
そして、主な見どころは以下の通りである。
AIとデータセンターの進歩
エヌビディア(NVDA)はAI技術の限界に挑み続け、生成(ジェネレーティブ)AIをデータセンターに統合することを目的とした新たな開発を発表した。
CEOのジェンスン・フアン氏は、AIを産業全体に広く普及させるという同社のビジョンを強調し、AI駆動グラフィックスとデータセンターGPUの進歩を強調している(Counterpoint Research)(HPCwire)。
インテル(INTC)は、新しいXeon 6プロセッサとLunar Lakeチップを展示し、電力効率とAI機能を強調した。Xeon 6プロセッサは高密度データセンター向けに設計され、Lunar Lakeプロセッサは統合型ニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)と強化されたグラフィックスを備えた次世代アーキテクチャを搭載し、2024年第3四半期に出荷される予定である(HPCwire)。
AMD(AMD)は、2024年後半にリリース予定のMI325X GPUと、ラップトップ向けの新しいStrix Pointプロセッサを発表した。これらのプロセッサーは、Zen 5 CPU、RDNA 3.5グラフィックス、XDNA 2 NPUを組み合わせ、低消費電力で高いAI性能を実現している。AMDの第3世代Ryzen AIプロセッサーも、AIと演算能力の大幅な向上を特徴とし、脚光を浴びた(Counterpoint Research)。
モバイルとコネクティビティの革新
MediaTekはDimensity 9300チップとDaVinciプラットフォームを発表し、モバイル機器向けの生成AI(GenAI)アプリケーション開発を強化した。また、車載アプリケーション向けの3nmスマートコックピット・システム・オン・チップ(SoC)や、効率性とコンパクト設計を重視したIoTデバイス向けの新しい5G RedCap RFSoCプラットフォームも展示した(Counterpoint Research)。
クアルコム(QCOM)は、高度なAI機能でPC市場の変革を目指すSnapdragon X Eliteプラットフォームを強調した。マイクロソフト、デル・テクノロジーズ(DELL)、Lenovo等の大手ハイテク企業との協力がクアルコムの戦略の鍵となり、AI PCにおける電力効率とユーザーエクスペリエンスの向上を重視している(Counterpoint Research)。
PCおよびラップトップの革新
ASUSは、クリエイティブなパフォーマンスと携帯性に重点を置いたAI主導のProArtとZenbookの新モデルを発表した。ウルトラポータブル・ノートPCであるZenbook S 16は、先進的な冷却機能とセキュリティ機能を備え、外出先でも堅牢なパフォーマンスを必要とするプロフェッショナル・ユーザーをターゲットにしている(Counterpoint Research)。
Gigabyteは、ディープラーニングモデルを大規模にサポートするために設計されたスケーラブルなAIスーパーコンピューティングインフラ、GIGA PODを展示した。このソリューションはNVIDIAとAMDのアクセラレータを活用して高いスループットと計算能力を実現し、ギガバイトをAIインフラストラクチャのリーダーとして位置付けている(Counterpoint Research)。
AIエコシステムと戦略的パートナーシップ
アーム・ホールディングス(ARM)は、2025年末までにAI対応のArmデバイスを1000億台以上にするという野心的な目標を発表した。同社は新しいクライアント・ソリューションとCortex X925を発表し、次世代PC向けのAIとセキュリティ強化に注力した(Counterpoint Research)。
アマゾン(AMZN)のAWSをはじめとするクラウド・サービス・プロバイダーは、AIとクラウド・コンピューティングにおけるイノベーションの促進を目的とした新たなリーダーシップ体制を導入し、AI機能のサービスへの統合を強調している(HPCwire)。
持続可能性と将来のモビリティ
持続可能性と未来のモビリティは、Computex 2024の中心的なテーマであった。
そして、さまざまな技術分野の企業が、環境への影響を低減し、接続性を高めるためのイノベーションを披露した。
先進的な冷却ソリューションからAI主導のモビリティ・アプリケーションまで、持続可能で効率的な技術エコシステムの構築に焦点が当てられた(Counterpoint Research)(HPCwire)。
Computex 2024への結論
Computex 2024は、AI、データセンター、モバイルおよびワイヤレス接続、そして持続可能な技術における大きな進歩を強調した。
このイベントは、AIをコンピューティングの様々な側面に統合し、イノベーションを推進し、この変革を支援する戦略的パートナーシップを育成するというテック業界のコミットメントを強調している。
画期的な製品と野心的な目標により、テクノロジーの未来はAI主導の新時代へと向かっていると言える。
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